インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S)   作:フラッシュファントム

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転校生がやってきます。
この小説は基本的に一夏の一人称を中心に書いております。


オーダー8:2人の転校生

  ソロモンとの戦闘から数週間後、ある日の夜に転入生が来るのでこの部屋を2人部屋にしたいと山田先生から相談があったので俺は快く応じた。

 

(何かあるな……)

 

 ベッドや机を部屋に運ぶ作業を手伝いながら俺はそう思った。作業後、俺はパソコンに細工を施して黒鷲のデータを他者から閲覧不可に改めて設定をしておいた。

 

 

 翌日、1組に転校生が2人やって来た。1人目は中世的な顔立ちと金髪が特徴的な少年?、2人目は片目に黒い眼帯、長い銀髪と身長が低い少女である。特に銀髪の少女は軍人特有の威圧感を放っているようだ。

 

(この時期の転校生は諜報員と考えた方が良さそうだな)

 

 俺は2人の転校生を見て警戒をする。特に銀髪は要警戒だな…こっちを睨み付けているけど俺が何をしたんだ。金髪の男性が山田先生の指示で自己紹介をするようだ。

 

「フランスから来ましたシャルル・デュノアです、宜しくお願いします。

 同じ境遇の方が此処に居るという事なので、僕も転校して来ることになりました」

 

 ふむ……。俺の世界では外科手術がここよりもかなり発達しているので性転換は容易だ。しかしこの世界ではそこまでの技術は確立していないはずだ。体形である程度は誤魔化せているが……決定的な証拠が無いから様子見だな。

 教室で叫びが響くが戦場ではこの程度、日常茶飯事なので問題は無い。次は銀髪の軍人らしき少女が挨拶をするようだ。

 

「ボーデヴィッヒ、自己紹介をしろ」

 

「はい、教官!」

 

「私はもうお前の教官ではない。ここでは織斑先生と呼べ」

 

 やはり軍人だったか。織斑先生を教官と呼んでいる光景を見て確信した。

 この声…リジットさんに似ているが気のせいか……。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 名前だけの簡素な自己紹介にクラス中が困惑する。しかし奴はそれに構わず目を閉じてクラスメートと視線を合わせる気は無いという態度を貫く。第一印象最悪だが大丈夫なのかと俺は思った。

 ふと目を開けたとき、俺と目が合った。織斑先生と似た目元から間違いなく織斑先生の弟、織斑一夏だと確信したのか真直ぐに俺の前まで歩いて来た。残念ながら他人の空似だ。

 

「貴様が織斑一夏だな?」

 

「合っています。しかし最初に申し上げておきますが私は織斑先生の弟ではございません。名字は同じですが赤の他人です。その点は勘違いしないように宜しくお願い申し上げます」

 

 彼女に問いかけられたが俺は牽制の意味も込めて織斑先生とは無関係な人間であると告げた。

 

「そうか…」

 

 俺の発言を聞いた彼女はそのまま後ろの席についた。デュノアもそれに続いて空いている後ろの席に座り、HRが進んだ。

 

「1時限目は2組と合同でISの実習だ。着替えてグラウンドに集合しろ!」

 

「織斑、デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろ」

 

 織斑先生からそう指示を受けた俺はデュノアに軽く挨拶をして更衣室に案内をする。その途中で女子の軍勢が追ってきたが俺はアーセナルの訓練で鍛えた身体能力を最大限に活かして突破した。この状況にデュノアから困惑を感じ取った。何かあると俺は移動中ながらも考える。

 更衣室に到着した俺は直ぐに制服を脱いでアウタースーツに着替えた。その時、デュノアはこちらを見るなと言っていた。やはりこいつは何かあると確信、奴の裏を取ろうと決意した。

 先に着替えた俺は直ぐに更衣室から飛び出してグラウンドに来た。デュノアも俺の後に来たが間に合ったようだ。

 1限目が始まるチャイムが鳴ると共にジャージに着替えた織斑先生がやって来た。実機を用いる実習は今日が初めてなので内容は実際に乗って歩く程度の事だけだろう。

 

「最初はIS同士の模擬戦闘を見てもらう。オルコット、凰、前に出ろ」

 

 織斑先生からの指示を受けたオルコットと鳳は前に出た。2人はやる気がなさそうな態度をしていたが特に気にすることはなかった。2人が模擬戦をする相手は山田先生のようだ。

 山田先生対オルコット、鳳の模擬戦のようだ。デュノアはその間に山田先生が使用しているIS《ラファール》を説明するようだ。

 俺はデュノアの説明を聞いて更に確信を固める。模範的な解答で素晴らしい…普通なら問題は無い。しかしデュノアが男性だとしてもISの知識がかなり豊富で代表候補生をしている……怪しすぎるな。

 今の所、他の生徒は誤魔化せても残念ながらその程度の男装は俺に通用しない。男装するなら性転換をすることだなと俺が考えている内に模擬戦は山田先生の勝利で終わった。

 

「今の奴らではこんなものか…。諸君らもこれで教員の実力は理解出来ただろう。以後は敬意を持って接するように!」

 

 織斑先生は釘を刺すようにそう宣告した。その後は訓練機を用いた歩行訓練をする。専用機持ちがリーダーとなって生徒の訓練を見るという内容だ。尤も、アーセナルに乗る俺も専用機持ち扱いされているようだが……。

 俺とオルコット、鈴音、デュノア、ラウラがリーダーとなり打鉄2機とラファール3機の合計5機が支給された。織斑先生は専用機持ちの所へ自由に行くように一般生徒に指示を出した。すると俺とデュノアの所に生徒が殺到してしまった。

 

「自由に専用機持ちの所へ行けと言ったがな……均等に分かれろ!!」

 

 均等と指示を出さなかった織斑先生の落ち度だと俺は一瞬思った。彼女の一声で均等に集まってきたので気に留めることなく俺は歩行訓練を開始する。俺が今回の訓練で使う機体は打鉄だ。

 

「最初は相川さんですね。今日は宜しくお願いします」

 

 歩行訓練は滞りなく進んだが四十院さんの訓練が終わったところで少し問題が起きた。どうやら彼女が機体を解除する際に前屈みにするのを忘れていたようだ。

 仕方なく俺はアーセナルに乗る要領で跳躍、打鉄を装着して前屈みにしてから降りた。

 

「皆様もISから降りる時は必ず次の人が乗り易いように前屈みにしてから降りて下さい。宜しくお願いします」

 

 全員が頷くのを確認した俺は引き続き訓練を続ける。他の専用機持ちを見るとボーデヴィッヒ以外の所は順調に進み、授業が終わった。俺は片づけを済ませて更衣室で制服に着替えて教室に戻った。その際もデュノアは後ろを見ないようにと俺に告げる。

 

 

 

 授業が終わった放課後、俺はデュノアから模擬戦を申し込まれた。俺のデータ解禁と奴の情報収集を兼ねてそれを受ける事にした。

 デュノアが使用するISはラファールのカスタム機体だ。模擬戦が始まると共に俺とデュノアは空中で激しい銃撃戦を繰り広げる。お互い、高速で移動しているので狙いを付けるのは困難だ。

 デュノアは高速切替(ラピッドスイッチ)を駆使して遠距離は重機関銃とグレネードランチャーで中距離は突撃銃、近距離はショットガンと距離に応じて武器を自由自在に変える厄介な相手だ。

 

「これならどうだ!」

 

 俺はシールドシフトに切り替えて接近戦を仕掛ける。デュノアは銃撃がバリアに阻まれている事に驚くがそれに構わずブーストをして近距離に持ち込んでマシンガンの弾丸を連射する。

 奴は後退して距離を取ろうとするが俺はアサルトシフトに切り替え、肩のミサイルを発射して追撃を行う。デュノアはショットガンでミサイルを撃ち落とすが俺はそこにハンドグレネードを勢いをつけて投擲した。

 爆風の勢いで地面に墜落したデュノアが態勢を立て直す前に俺は右手に持っているマシンガンをプロミネンスに持ち替えてすれ違う瞬間に横一閃を浴びせた。これにより奴のシールドエネルギーは尽きた。

 

「それにしても織斑君のISはすごいね! 攻撃と防御が切り替えられるISは珍しいよ」

 

「恐れ入りますデュノアさん。しかしながら貴女は距離に応じて自由自在に武器を変える芸当は素晴らしいですよ!」

 

 俺は互いの健闘を称えあっていると周囲からざわめきの声が聞こえ始める。

 この感覚は……あいつだな。発生源に目を向けると右肩の大型レールカノンが特徴的な黒いISがピットに立っていた。

 

「織斑一夏、貴様も専用機持ちだったのか。私と戦え!」

 

「模擬戦をするのは構わないです。恐れ入りますが現在は他の生徒も使っているので日を改めますが宜しいですか」

 

 ボーデヴィッヒから模擬戦を申し込まれた。しかし周囲を見ると一般生徒が訓練機で練習をしている。本気で戦ったら巻き込み事になるので後日に模擬戦をやる事を俺は提案した。

 

「なら、戦わざるを得ないようするまでだ!」

 

 奴は俺の話を無視してレールカノンで砲撃を仕掛けようとした。その前に俺は右手のプロミネンスを突撃銃に持ち替えて3発、弾丸を放った。

 2発は砲弾を相殺して残りの1発は砲身の中に入り自動装填された砲弾に命中、これにより砲弾が暴発して砲身が爆発した。

 

「周囲を顧みずに攻撃とは……。貴女は教官からこのような事を教わったのですか。だとしたらその教官は無能ですね」

 

 俺は織斑先生の教え子がこんな野蛮な奴を生み出した事に呆れてそう呟いた。彼女は懲りずに攻撃をしようとするが管制室から注意を受けてその場から去った。

 

「部屋に戻ったら今回の模擬戦で得られたデータを確認しないとな……」

 

 今日の訓練を終えた俺はそう呟きながらアリーナを後にした。




次は2人の秘密を暴く予定です。
余談ですがデモンエクスマキナでは何と初回のキャラメイク後でも性転換が本当に出来ます。

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