雪は溶けない   作:箱葉

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tgt.16 目指せリゾート・中

 

 

 ただ船に乗って移動しただけなのに、随分と疲れたような気がする。

 それでも何はともあれ、無事に上陸することができた。

 

 名前が名前だけに警戒していたのだが、マフィアランドは拍子抜けするほど平和で楽しそうな遊園地にしか見えなかった。

 客の中には普通に家族連れもいるようだ。フードエリアからはいい匂いがするし、あちこちで風船も飛んでいる。

 リボーンの顔をかたどった巨大なバルーンまであったが、彼はそんなにマフィア界で有名なのだろうか。

 

(顔がバレてるって不利な気がするけど……変装上手いし、問題ないのかな)

 

 テーマパークに来たというのに、そんなことばかり考えてしまう。絶対マフィアランドという名前のせいだ。

 恨めしく思いながら横目でリボーンを見る。

 そして、家継はぴたりと足を止めた。

 

(――……!)

 

 動揺したのがバレないようにすぐ歩き出したが、もうすこしで声を上げるところだった。

 

 彼の胸元にあるおしゃぶりが一瞬光っていたのだ。

 

 以前、自身のおしゃぶりに起きた異変と似ている。

 尋ねないでおこうと思っていたが、はっきりと目撃したうえに足まで止めてしまった。これでは話しかけないほうが不審かもしれない。

 あくまで平静を装って「ねー」と声を掛ける。

 

「せんせー、いまおしゃぶり光ってなかった?」

「ん? なんのことだ?」

「いや絶対光ってたって、ピカピカしてたよ」

「まー気にすんな。リゾートにはサプライズがつきものなんだ。すぐに分かるぞ」

「え、なに……」

 

 ニヤリと笑ってはぐらかされたが――

 

(サプライズってなに!?)

 

 あまりにも不穏すぎる。リボーンがニヤリと笑って良いことが起こった覚えがあんまりない。

 

(まさかバレた訳では……ないよなあ。ボロは出してないはず……)

 

 とりあえず光る理由だけでも知りたいのだが、教えてくれそうな雰囲気ではない。

 普通っぽい遊園地に上がりかけていたテンションがまた下がってきた。この先、嫌な予感がする。

 

 家継がひとり悶々としているなか、一行は賑やかなビーチに着いた。水着に着替えた子供たちとビアンキが真っ先に飛び出していく。

 

「よーし! 嫌なこと全部忘れて遊びまくるぞー!」

 

 浮かれた様子の綱吉に、とりあえずノリを合わせておくため力なく「お~~」と片手を上げる。

 しかしリボーンが「ツナとツグはダメだぞ」と水泳帽を被りながら言った。

 

「え!?」

「ええ、なんで?」

「入島手続きがあるからな」

 

 ここまで来たのにまだ手続きしていなかったのか。

 

「受付にいって着いたって報告するんだぞ。ツナを代表者にしてるから、ツグは付き添いだ」

「そーゆーのはせんせーがやるべきなんじゃないの」

「赤ん坊のオレが手続きできる訳ねーだろ」

「あ、ずる!」

 

 いつもは大人を自称したり家庭教師として振る舞っているくせに、都合のいいときは赤ん坊であることを主張してくる。いや、実際赤ん坊なのだけれども。

 母にも「ここにいるから、さっさと行ってらっしゃい」と言われたため、家継と綱吉は肩を落としながらその場を離れた。

 

「しょーがない、さっさと終わらせて遊ぼ」

「調子狂うな~……つーかなんでオレが代表なんだよ」

「ボスだからじゃない? ほら、マフィアランドだし」

「そういう基準!? オレはボスじゃないって、もー!」

 

 憤慨する綱吉を宥めながら、入島手続きをするため案内所に入る。

 受付の女性に、緊張している様子の綱吉がどもりながら名乗った。

 

「沢田です。ボ……ボ……ボンゴレファミリーの……」

「ご推薦状かご招待状はお持ちでしょうか?」

「い……いえ……」

「招待状なし……と。そうしますとマフィア審査が必要となりますね」

 

 そんな話は聞いていない。

 

「マフィア審査?」

 

 首を傾げると、受付の女性は立ち上がって「こちらへどうぞ」と奥にある扉を示した。

 弟と顔を見合わせ、とりあえず家継が先にゆっくりと扉を開けてみる。

 

 部屋の中心には、葉巻をくわえた厳つい男が座っていた。いかにもマフィアですというような見た目だ。「誰……?」と弱々しく呟いた綱吉に、受付の女性がなにかを持ってくる。

 

「彼は政府にコネクションのある人物です。ここに100万ユーロありますので、彼に正しいやり方でワイロを渡してください」

「なんじゃそりゃー!!」

「お客様がボンゴレ10代目の沢田様であると証明するものをお持ちでないので、実技審査で証明していただく形となっております。審査を放棄なさると連れの方共々、皆殺しですよ」

「笑顔でなに言ってるのー!?」

 

 またとんでもないことになってきた。

 黙ったままどうしようか悩んでいると、綱吉が「どうしよ~~!」と助けを求めるようにこちらを見てきた。家継にだって分からない。

 

「と……とりあえず、やってみようよ。案外なんとかなるかもしれないし」

「え~~そんな……ワイロの渡し方ってなんだよ……」

「では始めてください」

 

 100万ユーロを渡された綱吉が、しばらく悩んでから座っている男に近づく。そ知らぬふりをしながら隣に立ち、こっそり札束で男の腕をつついた。

 

(おお、それっぽい!)

 

 やはり弟は天才かもしれない。そこまで、と女性が手を上げる。

 

「まず『この金はワイロです』と言わなければ何のお金か分かりませんよ」

「露骨すぎない!?」

「残念ですが失格です」

「そんな、待ってお姉さん!」

 

 慌てて家継があいだに入った。

 まさか容赦なく失格にされるとは思わなかった。このままでは家族ごと危ない。

 

「黙ってたけど、実はおれが10代目なんです。身長のせいで勘違いされやすいんですけど」

「そ……そ~なんですよ! ほんとに、こっちが兄貴で!」

「あら、そうだったんですか? 分かりました。ではそちらの方も試験をお願いします」

 

 嘘は言っていない。家継だって補欠とはいえ10代目候補だし、ちゃんと兄だ。

 助かったとばかりに目を輝かせた綱吉に札束を渡される。受け取りながら「まあ任せて、頑張るよ」と軽く自分の胸を叩いた。

 ワイロを渡したことはないが交渉は得意なほうだ。

 

 座っている男へ近寄り、柔らかく微笑みながら札束をひらひらと振ってみせる。

 

「――ここに、100万ユーロあるんだけどさ。これでひとつ便宜を図ってもらえないかな」

 

 笑みを浮かべたまま、高級そうな椅子のひじ掛けにガンッと片足を乗せた。

 一瞬びくりと動いた男に顔を近づけ「できなかったら……分かるよね?」と囁く。その場に張り詰めた静寂が訪れた。

 男の頬を札束で軽く叩きながら「ねー、聞こえてる? 分かったかな」と促していると「そこまで!」と女性の声が響く。

 

「それはワイロの渡し方ではなく脅し方です。残念ですが失格になります」

「そんな! マフィアっぽく頑張ったのに!」

「マフィアっぽくはあったけども!!」

 

 綱吉の叫び声とともに、屈強なガードマンたちがわらわらと入ってきた。家継と綱吉を羽交い絞めにしてどこかへ運ぼうとしている。

 

「ちょっなにすんの!?」

「あなたたちは不法侵入とみなされました」

 

 綱吉の前でガードマンたちをタコ殴りにする訳にもいかず「いたた、やめてよ~」と言いながら、抵抗せずに様子を見る。

 家族の安否が脳裏を過ぎったが、そもそもリボーンに差し向けられてここへ来たのだ。あまり心配はしなくてもいいかもしれない。

 

 せっせと運ばれた先には地下鉄があり、なぜか電車の中に放り込まれたかと思うと、扉が閉まり発車してしまった。

 

「地下鉄!? えっどこ行くの!?」

「どこだろう……」

 

 辺りを見回すと、後ろの座席でくつろいでいるリボーンと目が合って「あ」と声を漏らす。彼はニヤリと笑った。

 

「向かうのは裏マフィアランドだぞ」

「リボーン!」

 

 綱吉も教師の存在に気づき、怒りながら詰め寄る。

 

「おまえこーなるって分かってたろ! オレたちどーなるんだよ!」

「行けば分かるぞ」

 

 やっぱり仕組まれていたらしい。安心しつつも呆れて溜息を吐いた。

 地下トンネルを抜けて、車内がパッと明るくなる。

 窓の外には先ほどまでいたビーチが広がっており、海で遊んでいるランボやイーピンたちが見えた。

 

「た、楽しそ~……」

「なんでオレたちだけこんな目に! オレも遊びたいよ!」

「そーだそーだ、遊ばせろ~!」

 

 ふたりでリボーンに抗議したものの、聞き入れてもらえることはなく。ほどなくして電車が止まった。

 

「ついたぞ、こっちだ」

 

 渋々リボーンの後ろをついていくと、遊園地などがあるエリアの裏側――殺風景な崖の上に到着した。

 硝煙と潮の匂いがする。

 そっと眉をひそめながら周囲に目を配っていると、足元から「よく来たな、コラ! 名乗れコラ」と声がした。

 

 下を見て、小さく息を呑む。

 

 足元には頭に鷹を乗せ、ライフルを背負った金髪の赤ん坊が――()()()()()()()を付けて立っていたのだ。

 

(また別のおしゃぶりだ! ……やっぱり、赤ん坊なんだ)

 

 おしゃぶりの持ち主は、基本的に赤ん坊の姿をしているのではないかという仮説は合っていたらしい。

 ならば、どうして家継もおしゃぶりを持っているのだろう。

 それぞれ色が違うのも気になる。家継は白色で、リボーンは黄色、目の前の彼は青色。法則はあるのだろうか。

 

「ちゃおっス、コロネロ」

「リボーン!」

 

 赤ん坊ふたりは、目を合わせた途端に銃を抜いて撃ち合い始めた。鳴り響く銃声に綱吉が「ひいいいい!!」と頭を抱える。

 とりあえず弟に流れ弾が行かないよう、庇いながら前へ出たが、数回の応酬で彼らは銃を収めた。

 

「この軟弱な銃弾、間違いなくリボーンだぜコラ!」

「どでかいライフル、相変わらず趣味わりーなコロネロ」

 

 お互いに頭をぶつけ合って、あれは威嚇……しているのだろうか。知り合いではあるのだろうが、どういう関係なのか分からない。

 

「ええと……せんせーの友達?」

「そんないいもんじゃないぜコラ! こいつとは腐れ縁だ」

「オレたちは同じところで生まれて育ったんだ」

(同じところで……?)

 

 綱吉が「幼馴染かよ……どーりで変なやつな訳だ……」と呆れたように言う隣で、顎に手を当てて考え込む。

 彼らが同じ場所で生まれ育ったというのなら、余計に沢田家でポンと生まれた家継のイレギュラーさが気になる。本当に、一体どういうことなのだろう。

 

「何しに来た」

「見学に来ただけだぞ。オレの生徒たちがここで修業することになっちまったからな」

「はぁ!? なんだよ修業って!」

「裏マフィアランドは修業場なんだぞ。審査で失格した者にも、一度だけ再審査のチャンスが与えられる。そのために鍛える場所がここだ」

 

 どこからどう見ても、ワイロの渡し方を鍛える場所には見えない。殺風景な自然が広がっているだけだ。

 

「そして教官が、元イタリア海軍潜水奇襲部隊COMSUBINのコロネロだ」

「この赤ん坊軍人だったのー!?」

(経歴的にやっぱり赤ん坊じゃなくない!?)

 

 いよいよおしゃぶりに身長を縮める能力がある説が有力になってきた。

 しかし家継のおしゃぶりにそんな機能はない。あるいは、まだ使いこなせていないだけかもしれないが。

 

「なんだツグ、難しい顔して」

「いや……せんせーたちってほんと、謎の生き物だなと思って……」

「せんせー? そーか、おまえたちがボンゴレ10代目候補たちかコラ!」

 

 納得したようにコロネロが歩み寄ってくる。

 

「リボーンが家庭教師では審査不合格は当然だぜ。安心しろ、オレがびっしり鍛えて再審査を受からせてやる! あそこにうずまきが見えるか」

 

 そう言って彼が指差したのは、崖下の海だった。確かに荒々しく渦巻いている場所がある。

 

「見えるけど……」

「ふたりとも飛び込めコラ!」

 

 家継と綱吉は、揃って「無理無理無理!!」と首を横に振った。彼はリボーンと同じく無茶ぶりをしてくるタイプらしい。

 

「オレはリボーンよりすごいぜコラ! 生徒が言うことを聞かない場合、どうしてるんだ? リボーン」

「こーだぞ」

 

 リボーンが綱吉の腕を捻り上げ、弟が「いででで!」と悲鳴を上げた。理不尽すぎる。

 

「だからおまえは甘いんだぜコラ! おれならこーする」

 

 その発言を聞いた家継は、間髪を入れず綱吉とコロネロのあいだに滑り込んだ。

 飛んできたコロネロの蹴りを、三節棍を仕込んでいる腕で受け止める。重い衝撃が骨に響いた。

 

「ちょっと、なんでも暴力で解決しようとしないでくれるかな……!」

「ん? オレの蹴りを受け止めるとは……ならコレはどうだ!」

 

 コロネロの攻撃が激しさを増し、片手で捌ききれなくなった家継は、素早く三節棍を取り出した。目にも止まらぬ連撃を両手で受け流す。

 

「ひえっ……に、兄さん! 大丈夫!?」

「全然、大丈夫じゃ、ないかも!」

 

 さすがは元軍人といったところか、的確に急所を狙ってくるうえ一撃が重すぎる。こんな小さい体のどこから力が出ているのか不思議だ。

 冗談でなく押し負けそうになっている。

 

「なんで反撃してこないんだコラ!」

「おれは、暴力反対の精神で、生きてるから!」

「暴力反対のやつが持てる戦闘力じゃねーぞ!」

 

 やかましい、綱吉に聞こえるから黙ってほしい。

 腕が痺れて息が上がる。

 やっぱり絶対赤ん坊じゃない。リボーンと戦ったときにも思ったが、規格外の強さだ。ディーノはまだ理解できる強さだった。でも、リボーンとコロネロは別格だ。

 

(やばい、ほんとに腕が――……)

 

 額に一筋の汗が流れたとき、ようやくコロネロは攻撃の手を止めた。

 

「おまえやるじゃねーか。その歳でここまで動けるなら充分強いぜ、コラ!」

 

 どっと疲れた家継はその場にへたり込んだ。息を整えながら弱々しく答える。

 

「いや、おれはただの貧弱な学生だから……もっと強い人いっぱい居るから……」

 

 短時間でこんなに消耗させられたのは初めてかもしれない。まるで本当に貧弱な学生になった気分だ。

 綱吉が「だ、大丈夫……?」と屈んでおそるおそる尋ねてくるのに「うん、うん」と短く答えることしかできなかった。

 

「へえ。そういや、おまえらが居るところって並盛町だっけか。強いやつといえば……リボーン、例のアイツはいたか?」

「確実に並盛町にいるってことは分かったぞ。このあいだおしゃぶりが光った」

「なんだと!?」

「アイツって?」

 

 綱吉が不思議そうに尋ねる。

 会話の内容的に嫌な予感がした家継は、できるだけ不審に思われないよう、同じように「うん……?」と首を傾げた。

 

(おれのことじゃありませんように、おれのことじゃありませんように……!)

「そういえば言ってなかったか。並盛町にはもうひとり、白いおしゃぶりを付けた赤ん坊がいるはずなんだ」

(おれだ……)

 

 話を聞きたいとは思っていたものの、綱吉の耳に入る可能性はまったく考えていなかった。絶対に知られたくなかったのだが、もう止めようがない。

 

「えっ、おまえみたいなのがまだ居んの!?」

「ああ。一切の痕跡を残さずに人を消せる殺し屋なんだが、はっきりと姿を見たやつが誰もいなくてな」

「そんな物騒なヤツが並盛にいるのー!?」

 

 家継は「うわあ……」と小さく呟いた。

 これは並盛町に潜む殺し屋への言葉ではなく、自分の悪行が広まっていることに対する「うわあ……」である。

 

「あー……もしかして、このあいだせんせーが探してたのもその子?」

「そうだ。おまえらの恩人でもあるんだぞ。ここ10年弱、ツナたちに差し向けられてた殺し屋130人くらいがそいつにやられてるからな」

「ウソーーッ!?」

(めちゃくちゃバレてる!!)

 

 上ずった声で「うそ、ぜ、全然気づかなかった……!」と言葉を絞り出す。どうやって反応すればいいんだ。

 殺していることも、人数も把握されている。あとは顔だけではないか。

 

「つまり、オレたちその赤ん坊に命を救われてたってこと……?」

 

 綱吉がそう呟く。

 そんなに大層なものではないし、恩人と呼ばれるのもすわりが悪い。

 さすがに苦しいかと思いつつ「……そう? 偶然じゃない?」と訝しげに言ってみたが、意外にもリボーンが「そうかもな」と言った。

 

「そいつはネーヴェって呼ばれてるんだが、とにかく何を考えてるのか分からねーんだ。たまたま並盛町に居座ってるだけなのかもしれねー」

 

 とにかく態度に出ないことに全意識を集中させながら、何気なく聞いてみる。

 

「せんせーたちはなんでその赤ん坊を探してるの?」

 

 リボーンとコロネロは顔を見合わせた。

 

「趣味だ」

「手合わせするためだ、コラ!」

「そ、そうなんだ……」

 

 絶対嘘だ。今の間には何かがあった。

 だが、これ以上深く追及すれば怪しまれるかもしれない。

 それに今のところ、彼らの反応を見るかぎり家継が白いおしゃぶりの持ち主だとは微塵も思っていなさそうだ。余計な材料は与えないほうがいいだろう。

 

「ヒバリのやつは知ってるっぽかったんだが、教えてくれなくてな。ツグはなんか聞いてねーか?」

「え!? 全然聞いてないけど!?」

 

 今日一番大きな声が出た。リボーンとそんな話をしたということすら聞いていないが。

 

「さすがヒバリさん……やっぱ怖い人と繋がりがあるんだ……」

(いる、いるよ目の前に、その怖い人が)

 

 綱吉の言葉に内心傷つきながら「はは……ま~恭弥ならあり得るかもね」と苦笑いを浮かべた。これは、並盛に帰ったらすぐ問い詰めなければいけない。

 帰宅後の予定を組み立てていたとき「おーい!」と駅のほうから声がした。

 

 手を振りながら駆け寄ってきたのは、豪華客船で遭遇したチャラい男のロンシャンだ。船を降りてから別行動だったはずだが、どうしてここにいるのだろう。

 

「ピースピース! 沢田ちゃーん!」

「な、なんでロンシャンまで!?」

「いやー身ぐるみはがされちゃってさっ、招待状もなくなっちゃったのよ! ほら新しい彼女連れてきてたでしょ?」

 

 確かに、彼は何人か女の子を連れていたが、そのうちの誰かだろうか。ロンシャンはあっけらかんと笑いながら「あの子、カルカッサファミリーってののスパイだったみたいで騙されちったー!」ととんでもないことを言った。

 

「はあ!? あの子がスパイ!?」

 

 綱吉が叫ぶのと同時に、近くで大きな爆発音が響いた。

 島全体にアナウンスが響きわたる。

 

『敵襲! 敵襲! みなさん避難所へ避難してください! 業務連絡――迎撃態勢にシフト――』

「カルカッサファミリーにマフィアランドの場所を察知されたな」

 

 リボーンの言葉に、家継は慌てて立ち上がった。

 

「やばい、母さんたちが!」

「そ、そうだよ、どうすれば……!」

「落ち着け、今ごろママンたちは避難所に行ってるから大丈夫だ」

 

 リボーンはいつもと変わらず、平然とした様子だ。彼が落ち着いているのなら大丈夫かもしれない、と動きかけていた足を止める。

 

「なんでマフィアがマフィアランドに攻めてくるんだよ! ファミリーが金を出し合ったんだろ?」

「全部のファミリーじゃねーんだ。ここを作ったのは麻薬に手を出さないいいもんのマフィアだ。それを面白く思ってないマフィアもたくさん居てな、カルカッサファミリーもそのひとつだぞ」

「マフィアにいいもんとかねーだろ!」

 

 綱吉のツッコミに(そりゃそーだ)と内心同意する。

 

「ということは、ここで抗争が起こるってこと?」

 

 だとすれば一秒でも早く家族を守りに行かなければならない。眉をひそめながらリボーンを見下ろすと、彼は「ってより戦争だな」となんでもないように答えた。

 

 次の瞬間――リボーンとコロネロ、ふたりのおしゃぶりが光った。

 

 

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