雪は溶けない   作:箱葉

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tgt.17 目指せリゾート・下

 

 

 赤ん坊たちが顔を見合わせる。

 

「見ろ、おしゃぶりが光ってる。知り合いだぜ」

「ああ。こんなくだらねーことすんのはスカルしかいねーな」

(おしゃぶりが光る……知り合い?)

 

 一瞬、ちらとズボンのポケットを見る。

 自分のおしゃぶりが光っていないことを確認してから問いかけた。

 

「もしかして、そのおしゃぶりって持ち主同士が近づくと光るの?」

「ああ、そうだ。マフィアランドに着いたときは、コロネロに反応して光ってたんだぞ」

「それでサプライズって言ったんだ……」

 

 最初から裏マフィアランドに送り込む気満々だったということではないか。けれど、ずっと気になっていたおしゃぶりが光る理由を知れて良かった。

 

 持ち主同士が近づくと光るらしい――ということは、あの倉庫ですぐにおしゃぶりをしまい、その場を離れたのは正解だったのだ。やはりリボーンは家継を探していた。

 

(これじゃ、離れた場所でも迂闊におしゃぶりを出せないな……)

 

 箱に入れている状態なら反応しないらしいことは、ここ半年ほどの共同生活で分かっている。

 箱に入れたままでも白い炎は出せるが、人間を凍らせるほどの量は出ない。

 ちょうど戦い方を変えると決めたところだし、おしゃぶりを使わなくてもいい立ち回りを考えなくては。

 

 ……と、そんなことを考えているあいだにも大砲の音が空気を震わせている。

 

「これは戦争だぞ。オレたち島にいるマフィアと、カルカッサファミリーとのな」

「しかもまずいぜコラ。今日島の警備をするはずのファミリーがボスの命日で本土に帰ってる……この島に戦える兵隊はほとんどいない」

「あれーー! それやばいよね! 負けちゃうよね!」

「どーすんだよーー!」

 

 綱吉とロンシャンが狼狽えている。

 しかし、家継はそれほど強い不安を感じていなかった。

 リボーンは無茶苦茶な存在だが強い。彼ならどうにか出来るだろうと思っているし、同類らしいコロネロも充分強いことは分かっている。

 コロネロが「もちろん、オレがいるかぎり奴らの好きにはさせん!」と頼もしく言い切った。

 

「心強いね~。じゃ、おれたちはどうすればいい?」

「だが……お昼寝の時間だぜ……」

「……ん?」

 

 コロネロが突然、鼻提灯を膨らませ始める。

 なんだか雲行きが怪しい。

 

「コロネロはほっとけ。ママンたちが心配だ。地下鉄でマフィアランドに戻るぞ……よ」

「ぞよ?」

 

 綱吉が首を傾げた途端、リボーンまで眠り始めた。

 

「うーーん、ダメかも!」

 

 家継は晴れやかな笑顔を浮かべ、彼らに頼ることを諦めた。

 

「ダメかもって、どーすんのさ!」

「せんせーたち寝ちゃったし、おれたちだけで地下鉄乗って帰ろ」

「えーっ悪魔ちゃん、マジのマジで言っちゃってる!?」

 

 そういえばロンシャンに自己紹介をしていなかったな、と思いながらも、不名誉なあだ名をスルーして頷く。

 

 あちこちで寝ている家継ですら、どれだけ眠くてもピンチのときには目が覚める。家継より強い赤ん坊たちがそうならない訳がないはずだ。

 ということは彼らが起きるまでもない程度の騒動、という可能性が高い。ここで迷って立ち止まるより、早く家族の安否を確認しに行ったほうがいいだろう。

 

「せんせーたちなら放っといて大丈夫でしょ、それより母さんたちが無事か確認しに行かないと」

 

 そう言って家継は綱吉とロンシャンを促し、その場を離れて駅へと向かった。

 

 

「あーもーリボーンのやつーっ! こんな大変なときに寝やがって! 起こしたら殺されるから起こせねーし! 地下鉄も停電で動かねーし! なんでリゾートきて線路歩いてんの!?」

「おれもビーチで遊びたかったな~……」

 

 薄暗いトンネルを歩きながらしょんぼりと肩を落とす。

 まさか電車が動かないとは思わなかった。とんだハプニングだ。

 裏マフィアランドに来る途中で見えたビーチが恋しい。冷えすぎて風邪を引くので海自体には入れないが、浅瀬で水遊びくらいしたかった。

 

 すこし先を行っていたロンシャンが、こちらを向いてぴょんぴょん跳ねる。

 

「沢田ちゃんたち、トンネル抜けたよー!」

「え!?」

「なるほど、ここに出るんだ! マフィアランドのシンボル、マフィア城!」

(そのまんますぎる……!)

 

 トンネルを抜けた先には、大きな城が聳え立っていた。

 テーマパークにしては随分と本格的な見た目だ。ネーミングはどうにかならなかったのだろうかと思ったが、島がマフィアランドという名前の時点で期待するほうが無駄かもしれない。

 

「ロンシャンくんこっちこっち! 早く城の中に!」

「マングスタ!」

 

 鉄扉を開けて手招きしていたのは、ロンシャンの仲間で長身の男だ。彼はこちらを見た途端「ボンゴレと金色の悪魔も一緒かぁぁ!」と怒り出したが、ロンシャンに宥められてなんとか落ち着きを取り戻す。

 

 城の中は大勢の人間が集まっていて、その迫力に圧倒された。この場にいる全員がマフィアなんてぞっとしない話だ。

 

「いーくん、ツッくん!」

 

 母の声がして、慌てて顔を上げる。

 すこし離れた場所で母が手を振っており、ビアンキとランボ、イーピン、フゥ太も一緒にいた。無事な様子にほっと胸を撫でおろしながら「母さん!」と駆け寄る。

 

「大丈夫だった!? すごい音してたけど……」

「ええ、大丈夫よ。このお城で敵マフィアを迎え撃つんでしょ?」

「えっ」

「なっ、母さんまでマフィアとか言ってる!?」

 

 予想もしていなかった言葉に家継と綱吉は固まった。

 しかし母はこちらの動揺をまったく気にせず、楽しそうに「面白いイベントね」と笑った。

 

「山本的ー!!」

「あっ、そうだね、面白いよね、斬新で……」

 

 これで誤魔化されてくれるのが奇跡みたいだ。

 いや、普通の人は抽選で当たった旅行で、マフィア同士の抗争に巻き込まれていますなんて言われても信じないかもしれない。母の反応が正常なように思えてきた。

 

「母さんたち女性は後方でご飯作るんだって!」

 

 浮足立った様子の母がそう言って、子供たちを連れて向こうへ行き、ビアンキが「ママンたちは任せといて」と後を追った。

 

「ちょっビアンキもメシつくんの!?」

「まあまあ、母さんたちの護衛をしてくれるならありがたいよ」

 

 ポイズンクッキングは我が家の壁すら溶かすのだ。

 万が一、敵と相対してもビアンキなら勝てるような気がする。彼女が傍にいてくれるなら安心だ。

 

「スパイを島に入れたトマゾの8代目ってのはおまえか!」

 

 大きな声が響き、視線を向けるとロンシャンがマフィアに絡まれていた。

 リンチに遭うのかと思いきや、周囲の大人たちは「よくやった!」「えらい!」と褒め始めたので拍子抜けする。

 

「リゾート気分に飽き飽きしてたとこよ! スリルがねえ!」

「やっぱマフィアは殺しあわねーと」

「久々に銃をぶっ放せると思うとワクワクしやがるぜ」

 

 男たちが続々とマシンガンやライフルを取り出す。

 家継は突然四方を嫌いな銃に囲まれて卒倒しそうになった。いっそ倒れたほうがマシかもしれない。

 

(マフィアってどいつもこいつも、銃ばっかり使っちゃって……!)

 

 戦いたいならタイマンで、自分の腕で戦うべきだ。

 マフィアたちは意気揚々と戦いに備えていたが、誰が連合軍の指揮を執るかという話になると揉め始めた。

 

 怒声が響くようになり、「ひいっ」と悲鳴を漏らした弟の腕を引いて後方に下がろうとする。

 そのとき「10代目~~! ご無事でしたか!!」と人波をかき分け、なぜか獄寺が飛び出してきた。

 

「あれ、獄寺くんも来てたの?」

「ご、獄寺くん、なんでここに!?」

「10代目にお供するため、密航してきました!」

「えっ」

 

 豪華客船でガードマンに探されていた密航者は彼だったらしい。しかもポップコーンの容器をふたつも肩から掛けている。

 

(おれたちより満喫してる……)

 

 ひとりで密航し、綱吉を探しながらちゃっかりマフィアランドも楽しんでいる逞しさに感心した。

 リボーンがいない今、獄寺が来てくれたのは素直にありがたい。彼になら任せてもいいかもしれない、と家継はほっとしながら声を掛けた。

 

「じゃー、おれ外の様子見てくるね」

「え!? なんでだよ、危ないって!」

「大丈夫大丈夫。獄寺くん、ツッくんを頼んだよ」

「お任せください! 10代目は死んでも守ります!」

「死なないでね~」

「ちょ、兄さん!」

 

 微笑みながら手を振り、弟たちに背を向ける。城の重たい扉を押して、すり抜けるように外へ出た。

 新鮮な空気を吸い込んで深呼吸する。

 

 辺りを見回すと、胸壁の上で守りを固めようとしているマフィアたちが見えた。あそこに登れば敵の規模くらいは確認できるだろうか。

 すこしでも攻めてくる敵を間引くことができれば、銃に囲まれることなく、家族を守れて一石二鳥だ。

 

 ――と、考えて胸壁に登ったが、上でもマフィアたちはライフルを持って敵を待ち構えていた。

 銃から逃げてきたのにまた銃だ。人数はこちらのほうが少ないし、囲まれていないだけマシだが。

 

 小さく嘆息しながら壁際に近づく。

 沖には数隻の戦艦が並んでいる。

 海岸からマフィア城にかけて森が広がっており、その中をヘルメットの集団が徒歩で進んできているのが見えた。数はすこし相手のほうが多いだろうか。

 

「おい、ガキは大人しく城の中にいろよ」

「うん?」

 

 隣でライフルの装填をしていたマフィアに声を掛けられた。

 

「大丈夫だよ~、状況を見にきただけだから。カルカッサファミリーって強いの?」

「ああ!? あんなのオレたちヌーボファミリーに比べたらアリみてーなもんだぜ! 酒を飲みながらでも倒せらぁ!」

「そ、そうなんだ」

 

 豪快に笑いながら言われたものの、まったく参考にならない。

 愛想笑いを浮かべながら別の場所に移動しようとしたが、男は続けて話しかけてきた。

 

「ま、カルカッサファミリーにはアルコバレーノがいるからな。そいつが来てたらちっとは苦戦するかもしれねーが」

「アルコバレーノ……虹?」

「おまえ、知らねえのか!? マフィア界でアルコバレーノと言いやあ、7人の最強の赤ん坊のことだぜ!」

「7人の最強の赤ん坊!?」

 

 まさかのところから新しい情報を得られた。思わず前のめりになると、男は頷きながらペラペラと話してくれる。

 

「そうだ、カルカッサファミリーにいる軍師スカルってやつもアルコバレーノでな。紫色のおしゃぶりを付けてっから見りゃすぐに分かる」

「へえ……おしゃぶりはみんな色が違うの?」

「おう、アルコバレーノ()だからな。7人の赤ん坊に7色のおしゃぶりだ」

 

 まるでマフィア界では常識のように話している。やっと、なんとなくリボーンたちの素性が分かってきた。

 

「だがな、実は幻の8人目がいるっつー噂もある」

「幻……? すごい、ポケ〇ンみたい!」

 

 声をひそめた彼へ、続きを促すようにワクワクした雰囲気を出しながら男を見上げる。

 

「そいつは白いおしゃぶりを持ってて、なんでも一瞬で人を消しちまうとか、そいつが真の最強の赤ん坊だとか、その気になれば地球を滅ぼせるとか噂されてんだ。誰も見たことはねーらしいがな」

「へ、へえ……」

(すっごい尾ひれがついてる!?)

 

 聞けば聞くほど、家継の立場だけ特殊すぎる。

 どう頑張っても地球は滅ぼせない。全力で炎を出したとしても、町ふたつ分くらいが関の山ではないだろうか。

 しかし、おしゃぶりについての情報は増えてきた。リボーンとコロネロは旧知の仲だったようだし、7人の赤ん坊は全員知り合いなのかもしれない。

 

(だとしたら、おれだけハブられてるって……こと!?)

 

 誰のことも知らないし、赤ん坊ですらない。

 心の底から、幼少期におしゃぶりを渡してきた謎の男にもう一度会って詳しい話を聞きたかった。結局彼の正体も分からないままだ。

 

 考え込んでいたとき、カルカッサファミリーが森を抜けてきたところが視界に入り、家継は素早く屈んで身を隠す。

 同時に「来たぞ!」と怒声が響き、激しい銃撃戦が始まった。

 

 上を取っているぶん、こちらが優勢ではある。しかし無傷とはいかないようだ。

 アルコバレーノについて教えてくれた男が呻き声を上げてしゃがんだ。腕を撃たれたらしい。

 頭を低く下げながら彼のライフルを「貸して」と奪い取る。

 

「おい、なにすんだおまえ……!」

 

 立ち上がって構える。

 指先に触れた引き金の感触にぞわりと鳥肌が立ったが、眉をひそめながらその感覚を無視した。

 

 あくまで殺さないように、しかし武器を持てないように。

 ライフルを肩と頬に押しつけて照準を合わせる。

 厄介になりそうな位置にいる敵の肩を、的確に撃ち抜いていった。撃った反動が体に響く。

 

 ――嫌いなものほど理解して、備えておくべきだよ。

 

 幼馴染にそう言われたことを思い出す。強制的に射撃の訓練をさせられたことが役に立つ日が来るとは思わなかった。

 

 男が負傷した腕を押さえながらも立ち上がり「すげえ……!」と家継の動きを見つめてくる。情報提供のお礼に庇っているのだから、大人しく座っていてほしい。

 

 敵の勢いが衰え始めたころ「果てろ!」と叫び声がして、ダイナマイトが敵を一気に吹き飛ばした。獄寺のものだろうが、すごい威力だ。

 勢いづいたマフィアランド側の軍勢が雄叫びを上げ「大将! 押してますぜ!」「しゃらくせー! このまま敵の船沈めに行きましょー!」とわらわら出てくる。

 

 そして、彼らに担がれて出てきたのが悲鳴を上げている綱吉で、家継は二度見した。

 

(ツッくん!? なんで大将って呼ばれてんの!?)

 

 弟がどんどんカルカッサファミリーの元へ運ばれていく。

 かなり敵の数は減ったし、獄寺もいる。あれだけマフィアに囲まれていれば大丈夫だとは思うが――リボーンがいない。

 一抹の不安を抱えながらも様子を見ていると、綱吉が運ばれる先の森のほうで何か大きなものが蠢いた。

 木々をなぎ倒していった影がちらりと見える。

 

「なにあれ、触手……?」

「ありゃ、スカルが使役してる巨大ヨロイダコじゃねえか!?」

「巨大ヨロイダコ!?」

 

 隣の男の言葉に目を見開く。

 そういえば、リボーンもコロネロもペットを飼っていた。ということは例の軍師スカルとやらも来ているのだろうか。

 ただの人間相手ならまだしも、アルコバレーノの強さは未知数だし、そのうえ巨大なタコもいるとなっては見守っている場合ではない。

 

「おじさん、手榴弾とか持ってない?」

「お? おう、あるが……」

「ちょうだい」

 

 手を差し出すと、男は素直に3つくれた。ありがと、と礼を言いながらライフルをぽいと返す。

 

「さっきの射撃、すごかったぜ。あんた何モンだ?」

「通りすがりのガキだよ、じゃあね~」

 

 ひらりと手を振り、胸壁から軽々と飛び降りた。

 

 

 足場の悪い森の中を駆け抜け、先頭に追いつくと本当に巨大なタコが暴れていた。木々を引っこ抜き、いくつもの触手で人を放り投げている。

 タコの足元にはフルフェイスのヘルメットを被った、ライダースーツの赤ん坊がいた。

 

(あれが、スカルか)

 

 紫色のおしゃぶりもしっかりと付けている。まさか1日に2人も新しいおしゃぶりの持ち主と対面することになるとは夢にも思わなかった。

 リボーンたちに比べるとあまり強そうには見えないが……最強と呼ばれているくらいだ。何かあるのだろう。

 

 スカルからすこし離れた位置に頭を抱えた綱吉がいて、ほっとしながら駆け寄る。

 

「ツッくん、大丈夫!?」

「あっ兄さん! 今までどこにいたんだよ!」

「お城の上! ツッくんが運ばれてるの見て、びっくりして追いかけてきたんだよ」

「そ、それはありがとう……」

 

 綱吉と会話している途中で、触手がこちらに振り下ろされようとしているのが視界に入る。流れるような動作で手榴弾の安全ピンを抜いて投げつけた。

 爆風がここまで届き、腕で顔を隠しながら見上げる。多少の牽制はできたようでタコ足が引っ込められた。

 

「ちょっ、何やってんの!?」

「通りすがりのおじさんに貰ったんだ、タコに効くかなと思って」

「手榴弾くれるおじさんって何ー!?」

 

 しかし一部が鎧に覆われているせいで、あまりダメージは与えられなかったらしい。

 さらに俊敏に動き始めた触手をハンドサインで操りながら、スカルが「さあ次は誰だ!」と声を上げる。

 

 あんな大きいタコ、どうしろというんだ。

 手榴弾を構えたまま思考を巡らせていると、ふいに聞き慣れた声がした。

 

「――なんだ、そのタコまだ食ってなかったのか? きっとうめーのに」

「リボーン!」

「せんせー!」

 

 眠りこけていたはずの家庭教師が、木の上から飛び降りてくる。

 その姿を見たスカルは「な……なぜここにリボーン先輩が……?」と呟いた。

 

「せ、せんぱいー!?」

(やっぱ知り合いなんだ……)

 

 驚く綱吉の隣で、複雑な気持ちになる。どんどん家継だけハブられている説が濃厚になってきた。

 ふたりの赤ん坊が言葉を交わす。

 

「せっかく会ったんだし一杯やるぞ。あのタコを刺身に」

「バ、バカいうな! オレは今カルカッサファミリーのボスから命を受けている! おまえは倒すべき敵だ!」

「おまえいっつも誰かのパシリだよな」

「パシリじゃない! おまえだけだオレをパシリに使ったのは! なめやがって、許さんぞ!!」

(コロネロのときも思ったけど、親しげというよりは……腐れ縁? みたいな距離感だなあ)

 

 7割くらいはリボーンが煽っているせいな気もするが。

 憤ったスカルがタコに合図を送った。伸びてきた触手がリボーンを力強く捕らえる。

 しかしリボーンも応戦し、巻きついた足の隙間から銃を素早く何発か撃った。ほとんどは弾かれたが、一発だけスカルの左手に当たる。

 

「さすが早撃ちだな、すこし油断した……。だが片手あれば充分だ。つぶしてやる!」

 

 そう言ってハンドサインを送っているスカルだが――自分の左手が、どんどん膨張していることに気づいていないようだ。

 

(なに、あれ……?)

 

 触手の力が緩み、リボーンが平然とした様子で拘束から抜け出す。スカルが慌てて「なにをしている! どーしたんだタコ!?」と呼びかけた。

 

「こいつ、戸惑ってるよーだな。おまえの左手のそんな姿、見たことねーだろーからな」

「ん?」

 

 やっと自分の状態に気づいたらしい。頭よりも大きくなったこぶしに、スカルが「デカッ!?」と叫ぶ。

 

「そーか! 死ぬ気弾をこぶしに撃てばゲンコツ弾! タコは命令の意味が分からず動けないんだ!」

「え、死ぬ気弾ってそんな効果あるの?」

 

 綱吉が解説してくれたおかげで状況は分かったが、あれを弟が毎回撃たれていると考えると恐ろしい。「うわあ……」と呟いているうちに、リボーンが動き出していた。

 

「次はオレの番だぞ」

 

 そう言ったリボーンがスカルに肉薄し、容赦なく殴り飛ばす。速すぎてほとんど見えなかった。

 木の幹に叩きつけられたスカルが崩れ落ちる。

 

「リボーンつえ~~!」

「さ、さすがせんせー……」

 

 スカルのヘルメットにヒビまで入っている。

 大丈夫だろうとは思っていたが、もしかするとリボーンは7人の中でもかなり強いほうなのかもしれない。

 

「くそ……こうなったら……戦艦から城を砲撃しろ! 許可する!」

「そいつはムリだぞ。コロネロも起きただろーからな」

「なっ、コロネロ先輩もここに!?」

 

 その言葉と同時に、海のほうから爆発音が何度か聞こえた。ヘルメットの通信装置から「スカル様! 全艦撃沈されました!」と聞こえてきて、スカルが絶句する。

 

 カルカッサファミリーのほとんどはやられ、戦艦も沈み、スカルも動けない。これで抗争は終わりだろう。

 マフィアたちが勝利に沸き立つなか、綱吉がリボーンに詰め寄った。

 

「そんなに強いなら寝ないで最初からやれよ!」

「いーだろ、おまえは戦ってねーんだから。オレのパシリはオレが締める」

 

 堂々とそう言ったリボーンに、家継は「あはは……」と苦笑を零した。

 

 こんな騒ぎは二度とごめんだが、得られた収穫は大きい。

 アルコバレーノの存在に、幻の8人目の噂。おしゃぶりが光る仕組み。これらが分かっただけでも、この島に来た価値はある。

 知識が増えたぶん、新たな謎も生まれたが……とりあえず、いまは思いっきり羽を伸ばして遊びたい。

 どうして南国のリゾートに来て、火薬の匂いに囲まれなければいけないんだ。

 

 

 ようやく島に平穏が訪れ、家継と綱吉、獄寺の3人は水着に着替えてビーチへ飛び出した。

 

「さーて! 入島許可もおりたし、やっと思う存分遊べるぞー!」

「お~~!」

 

 と、盛り上がったのも束の間。

 もう帰る時間だと母に告げられ、家継たちは結局南国のリゾートを堪能できないまま帰宅することとなった。

 前言撤回する。

 やっぱりこの島には来ないほうが良かったかもしれない。

 

 

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