雪は溶けない   作:箱葉

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黒曜編
tgt.20 襲撃


 

 

 夏休みが明け、2学期が始まった。

 

 まだ暑さが残る夜、子供たちを抱えて母の部屋へ向かう。半分夢の世界へ旅立っているランボとイーピンを布団の上に転がすと、ふたりはむにゃむにゃと呟いて眠りに落ちた。

 布団を掛けておやすみと囁き、自分の部屋へ戻る。

 

 そろそろ寝ようと自室の電気を消そうとしたとき、枕元に置いていた携帯が震えた。草壁からの電話だ。

 もう夜の10時だ。こんな時間にどうしたのだろう。

 訝しく思いながら通話ボタンを押す。

 

「はい、どうしたの?」

『ツグさん、今から並盛中央病院に来れますか? 少々問題が起きまして……』

「分かった、すぐ行くよ」

 

 即座に答えて電話を切った。門限はとうに過ぎているが、呼び出された場所が病院というのが気になる。

 急いで玄関から靴を持ってきて、窓からこっそり抜け出した。

 

 病院に着き、夜間の救急外来に向かう。

 待合室には草壁と恭弥の姿があった。壁に背を預けていた恭弥が「来たね」と顔を上げる。

 

「何があったの? 誰か怪我した?」

 

 駆け寄ってふたりに尋ねると、草壁が深刻そうな表情で口を開いた。

 

「実は今日の午後8時から9時にかけて、風紀委員が4人重傷で発見されたんです」

「えっ、重傷!?」

「はい。複数箇所の骨折やヒビ、それにほとんどの歯を故意に抜かれています。命に別状はありませんが……」

「歯を? うーん……そんなに恨みを買うようなことした?」

「身に覚えがないね。ただのイタズラかもしれないけど、いい度胸だよ」

 

 恭弥が不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 そうは言うが、結構恨みは買っていると思う。どちらかといえば心当たりがありすぎて犯人を絞れない、というほうが正しいのではないだろうか。

 

「とりあえず、明日から見回りを強化する予定です」

「風紀委員を重傷に追い込めるほど強いなら、無駄に増やしたって余計に被害が増えるだけじゃないかな?」

「増えたっていいさ。襲われた場所で犯人の活動範囲を絞れるでしょ」

「……なるほど」

 

 負けるような奴の安否は知らんということらしい。家継は肩をすくめて聞かなかったことにした。

 

「ツグさんはご自宅の周りの警備のほうがいいですよね」

「そうだね。でもいつもより広めに見ておくから、そのぶん他の人は別の場所に配置していいよ」

「助かります。風紀委員が襲われた地点に人員を増やしましょう」

 

 草壁が頷き、手元のメモ帳に書き込んでいく。

 見回りの配置を決め終わり、草壁と家継のふたりで委員会の各メンバーにメールを送った。

 

「見つけたら、僕が咬み殺すぶんは残しておいてよ」

「は、はい!」

「おっけー」

 

 軽く頷き、その場で解散する。

 帰宅するため夜の町を駆け抜けながら、家継は気を引き締めて見回りをしなければと考えた。

 ただの不良やヤクザの仕業ならまだいいのだが……なんとなく嫌な予感がする。

 

 

 翌日の日曜日。

 見回り中、新たに別の地点で風紀委員が4人襲われたと報告が入った。また歯を抜かれていたらしい。おそらく同一犯だ。

 住宅街のなか足を止め、携帯を見下ろしながら考え込む。

 

(ペースが速すぎる……ひとりじゃないな、これ)

 

 被害が拡大する前に捕まえたいところだ。しかし、家継が見ている範囲で怪しい人物はまったくいない。

 風紀委員だけで済めばいいが、深い恨みを持っている場合はその家族にまで手を伸ばす可能性もある。

 大丈夫だとは思うものの、一度家に戻って家族に注意しておこうと踵を返した。

 

「母さーん」

 

 靴を脱ぎ捨ててリビングへ向かうと、母とリボーンがくつろいでいた。綱吉たちはまだ寝ているようだ。

 

「あら、どうしたの? 見回りに行くってさっき出ていったのに」

「忘れ物でもしたか?」

 

 リボーンに尋ねられ、ううんと首を横に振る。

 

「さっき連絡があったんだけど、昨日今日で風紀委員が8人も襲われてるらしくてさ」

「ええっ、襲われてる!?」

「多分風紀委員だけが目当てだとは思うんだけど、危ないから一応気をつけてって言いに来たんだ。せんせー、母さんが買い物行くときとか付き合ってくれない?」

「いーぞ。身内が狙われる可能性もあるからな」

 

 いつものニヒルな笑みで承諾してくれたリボーンに表情を緩める。助かった。リボーンが付いてくれるなら安心だ。

 しかし、母は心配そうに手を口元に当てた。

 

「風紀委員ってことは、いーくんも危ないんじゃないの? おうちで過ごしてたほうがいいんじゃない?」

「おれは大丈夫! この辺大丈夫かなーって見て回ってるだけだから。じゃ、行ってくるね~」

「あ、ちょっと!」

 

 母の制止をさらっと流し、笑顔で手を振りながらリビングを出る。

 

 見回りを再開してすぐ、新たに連絡が来た。

 襲われた風紀委員たちは全員、抜かれた歯の本数が違うということが分かったらしい。

 昨日病院に運び込まれた4人はそれぞれ24、23、22、21本。

 さらに今日発見された4人は、20本から1本ずつ減っているという。明らかになにかのメッセージだ。

 カウントダウン……だろうか?

 

(でも、何の?)

 

 犯人はどういう意図で風紀委員を襲っているのだろう。

 今まで家継に襲い掛かって来た者は、だいたい恭弥に恨みがあるか、風紀委員に指導を受けた者たちばかりだった。

 風紀指導の記録を一度漁ったほうがいいかもしれない。今日進展がなければ、明日にでも調べよう。

 

 そう思っていたが……その日、風紀委員だけでなく、一般の並中生にまで被害者が出た。

 

 

 

 

「いーい、危ない人に会ったらすぐこの紐を引っ張るのよ」

「うん、うん、もう3回聞いたよ……」

「どこに付けるのがいいかしら、カバンとか?」

「ズボンのポケットに入れとくから……もう行くからね、行ってきまーす」

 

 翌朝。母から押しつけられた防犯ブザーを手に、家継は渋い顔をしながら家を出た。

 心配してくれるのはありがたいが、綱吉には格闘技のチラシを渡していたのに、家継には防犯ブザーという格差が納得いかない。母にもまだ病弱だと思われているようだ。

 

 溜息を吐きながら、おしゃぶりの箱が入っているポケットとは反対のほうに防犯ブザーを突っ込む。

 昨日、並中生からも被害者が出たことで騒ぎが大きくなった。それで母も余計に心配しているのだろう。

 

 狙いが風紀委員だけではないとなると、犯人の意図が分からなくなってしまった。並中生の歯も抜かれているが、相変わらず1本ずつ減っている。

 今日だけでもう10人ほど運び込まれている状況に頭を悩ませていたとき、携帯が震えた。草壁からだ。

 

『ツグさん、犯人の特徴がわかりました』

「え、ほんと!?」

『はい。意識を取り戻した風紀委員によると、どうやら黒曜中の生徒らしいです』

「黒曜中……って隣町の?」

『ええ。申し訳ないのですが、今から調べに行ってもらえませんか? ご自宅の周りには他の者を向かわせますから』

「わかった、任せて。今から向かうよ」

 

 家継は基本的に誰にも警戒されないため、情報収集などの仕事を振られることが多い。快く頷いて、隣町へ向かうためにバス停へ足の向きを変えた。

 

 黒曜中の生徒ということは、マフィア関係などのヤバい案件ではなさそうだ。

 良かったと胸を撫で下ろして目的地に向かう。

 

 しかしその途中で、道の真ん中に倒れている人間を見つけた。遠目でも分かるくらい怪我をしている。

 慌てて駆け寄り、抱き起こして驚愕した。

 

「笹川くん!?」

「うっ……さ、沢田か……」

「喋らなくていい、すぐ救急車を呼ぶから」

 

 ひどい怪我だ。

 即座に救急車を呼び、それから了平の怪我の状態を見る。かなり痛めつけられたようで、骨折していそうな箇所もある。口から血を流していたのでまさかと思い「ちょっとごめんね」と口を開けさせると、歯が5本抜かれていた。

 

(まただ……)

 

 彼も黒曜生にやられたのだろう。

 了平を横向きに寝かせ、近くの電柱の上に飛び乗って辺りを見回したが、もう犯人らしき人物はいなかった。

 眉間に皺を寄せながら恭弥に電話をかける。

 

「笹川くんがやられたよ。周囲に犯人は見当たらないから、今から黒曜中に行ってくる」

『そう』

 

 了平のことは、正直そこらの風紀委員よりも強いと思っていた。それなのにあんな怪我を負わされるなんて、やはり警戒していたほうがよさそうだ。

 5本。もしこれがカウントダウンだとしたら、1本になったあと、彼らは何をするつもりなのだろう。

 

 考えながら地面に降り立つと、了平は意識を失っていた。首元に触れて脈を測り、無事であることを確認する。

 こんな状態で放置するわけにはいかず、救急車が来るのを待ってから改めて隣町に向かった。

 

 

 黒曜中の制服は特徴的だから分かりやすい。

 登校時間は過ぎてしまったので、生徒はあまり見当たらない。それでも学校の周辺を歩き回っていると、コンビニにたむろっている不良たちがいたので声を掛けた。

 

「こんにちは、お兄さんたち、ちょっといいかな」

「んー? どうした、ボク」

「迷子かなぁ」

 

 タバコを吸いながら笑いかけてくる不良たちに、困ったように笑いながら首を傾げる。

 

「おれ並中なんだけどさ、最近並中の生徒が黒曜中の生徒に襲われてるの知ってる?」

「え、マジかよ。並中生が襲われてんのは知ってたけどウチの連中なん?」

「うん。だから犯人を捜してて……黒曜中のなかで強い人、思い当たる人はいるかな」

 

 そう尋ねると、不良たちは表情を暗くして顔を見合わせた。

 

「あー……」

「思い当たるっちゃ思い当たるけど……」

「関わんねーほうがいいって、アイツらやべーし」

「おれは関わんないよ! ただ、うちの怖い先輩に犯人を見つけて来いって言われててさ……誰なのか教えてくれるだけでいいんだ、お願いだよ~」

 

 両手を合わせて頼み込むと、渋々彼らは情報を教えてくれた。

 

「10日前に転入してきた帰国子女の3人組じゃねーかな」

「すっげー強くて、一瞬で不良グループをシメたらしいぜ。オレらは別に喧嘩とかしねーから巻き込まれてねーけど」

「旧国道沿いの……なんだっけ? 黒曜ランド? によくいるって聞いたことある」

 

 思っていた以上の大収穫だ。

 家継は「ありがとう、すっごく助かったよ!」と満面の笑みで礼を言ってその場を後にし、すぐに恭弥へ連絡した。

 

「――って感じで教えてもらったよ。十中八九そいつらが犯人だと思う」

『わかった。あとは僕がひとりでやるから』

 

 言葉少なにそう告げ、恭弥は通話を切った。

 自分の縄張りを荒らされて相当怒っているのだろう。手を出したら家継にまで怒りが向きそうだ。

 とりあえずこれで解決かな、とバス停へ向かう。

 

 しかし、何かを忘れているような気がした。

 不良たちの話を聞いたときからずっと――もう一度、内容を頭の中で反芻して、ようやく違和感の正体に気づいた。

 

(――帰国子女だ!)

 

 犯人の特徴のひとつだが、獄寺もそうだった。

 海外から来たということは、マフィアに関係している可能性がある。

 ……自分も黒曜ランドへ向かったほうがいいだろうか。もしディーノくらい強い相手だったら、さすがに恭弥でも苦しいだろう。

 

 行こうか、どうしようか。迷いつつ、マフィア関係者かもしれないということだけでも伝えようと電話を掛けたが繋がらなかった。運転中かもしれない。

 

『相手はマフィアかもしれない。気をつけて』

 

 と、短いメールを送り、その場にしゃがみこんだ。

 

「あ~~……どうしよっかな……」

 

 同年代のマフィアというと、獄寺かロンシャンくらいしか例がないので、犯人たちの戦力を測れないのが厳しい。しかし、了平を倒したのだからある程度は強いはずだ。

 悩んでいたとき、握りしめていた携帯が震えた。恭弥からかと思ったが、風紀委員の高橋からだった。

 

『ツ、ツグさん! いま、副委員長が襲われて病院に運び込まれて……! 委員長にも連絡がつかないんです!』

「草壁くんが……!?」

 

 驚いて立ち上がる。

 草壁までやられたとなると、やはり並の生徒ではない。『どうすれば……!』と焦る高橋を宥めるように、家継はのんびりと声を掛けた。

 

「大丈夫だよ~。おれが恭弥に犯人の根城を伝えたから向かってるだけだと思う。おれも今から向かうから安心して、計画通りに見回りを続けてくれるかな」

『よかった……! 分かりました、ご武運を』

「はーい」

 

 ひとりでやるからとは言われたが、来るなとは言われていない。

 恭弥が善戦していたら後ろから眺めればいいだけだ。保険のために、一応見に行くだけ。

 そう心の中で言い訳しながら、家継はバス停へと駆け出した。

 

 

 全速力で走ったほうが早かったのではというくらいの時間をかけて、ようやく目的地に到着した。

 恭弥のようにバイクを持っていれば楽だったのだが、まだ免許を取れない年齢であることが悔やまれる。

 

(来年になったら絶対ソッコーで免許取ろ……!)

 

 そう決意した家継の目の前には、廃墟同然の黒曜ランドが広がっていた。

 人の気配は感じない。しかし、恭弥からの連絡がまったくないということは、ここで確実になにかが起きているということだ。

 わずかに残っている人の通った跡を追って、家継は足を踏み出した。

 

 早足で移動し、辿りついたのはボウリングやカラオケが入っていたらしい大きな施設だった。

 周辺で黒曜生が大量に倒れている。傷の具合から見て、やったのは恭弥だろう。ここに来ているようだ。

 

 落ちている生徒を踏まないように避けながら施設の中へ入る。ざっと確認したが、1階に人はいないようだった。

 2階に上がっても物音ひとつしない。次が最上階だが、家継はずっと嫌な予感がしていた。

 

 あまりにも静かすぎるのだ。

 犯人たちをとっくに恭弥が片づけていたから……という理由ならいいのだが、その逆である可能性もある。

 敵の手の内が分からない以上、慎重に、まずは弱い人間のフリをして様子を見たほうがいい。

 

 家継は深呼吸して、すこし背を丸めながらおそるおそる階段を上り始めた。

 

「い……委員長、どこですか~……」

 

 胸に手を当てながら、きょろきょろと辺りを見回す。

 やがて辿り着いたのは、映画館として使われていたらしい部屋だった。扉の向こうからやっと人の気配がする。

 

「こ、怖いよう……」

 

 声を震わせつつ、片手で扉を押し開けていく。

 ゆっくりと視界に入った光景に、家継は演技でなく息を呑んだ。

 

 部屋の真ん中で、ボロボロになった恭弥が倒れている。「委員長!」と叫んで駆け寄り、首元に手を当てた。脈はある。息もしている。

 だが、ひどい怪我だ。こんなに傷ついているところは初めて見た。

 

「おやおや……ひとりで委員長を探しに来たんですか?」

 

 突然、部屋の奥から声がして勢いよく顔を上げる。

 ……動揺しすぎたのか、奥に人がいることにまったく気づかなかった。

 黒曜中の制服を着た、妙な髪型の青年がソファに座ってこちらを見ている。

 

「勇気のある風紀委員さんですねえ」

「あ、あなたは……?」

「ここは危ないですよ。と言っても、もう遅いですが」

 

 間違いない、彼が親玉だろう。只者ではない気配を漂わせている。

 家継はしゃがんだまま、怯えるフリをして彼を見上げた。

 

「委員長の怪我……あ、あなたが、やったんですか?」

「ええ。そして君も、これから同じ目に遭うかもね」

「……どうやって?」

「クフフ、どうやってだと思いますか?」

 

 飄々とした態度で質問を躱される。得体の知れない男だ。

 

「こんなところにまで迷い込んでしまったのは気の毒ですが――」

 

 そう話しながら青年が立ち上がり、近づいてくる。

 警戒して身構えた家継は周囲に素早く視線を巡らせ、思わず驚きの声を上げた。

 

「あれ……フ、フゥ太!? どうしてここに……!」

「――おや?」

 

 物陰に隠れて見えにくかったが、確かに、ここにいるはずのないフゥ太が立っている。

 ぼんやりとどこか遠くを見ているようで様子がおかしい。

 家継は恭弥から手を放し、フゥ太に向かって「大丈夫!?」と駆け寄る。

 しかし近づいた瞬間――フゥ太は三叉の剣のようなものを取り出して襲い掛かってきた。

 

「うわ……っ!」

 

 あまり俊敏に動いては演技がバレる。

 避けるのに失敗して転んだようなフリをしながら、がむしゃらに振り回した手で剣を払いのけた。

 フゥ太が弾き飛ばされた剣を追おうとしたので、強く抱きしめて動きを止める。彼は「うう……うう……!」と唸りながらもがいた。明らかに正気じゃない。

 

「やめてよ、フゥ太、どうしちゃったんだ!」

「クフフ……これは、思わぬ収穫だったようです。君はボンゴレ10代目を知っていますか?」

「……!」

 

 青年の口から飛び出した言葉に目を見開く。

 どうやら、嫌な予感が当たってしまったらしい。彼はマフィア関係者だった。

 

 しかも狙いはボンゴレ10代目――綱吉だ。

 

 どんな手を使ったのかは分からないが、恭弥を一方的に傷つけることができるほどの相手に綱吉の存在がバレる訳にはいかない。

 家継はおそるおそる口を開いた。

 

「……もし、おれが10代目だって言ったら、どうするつもりなんですか?」

「……君が、10代目?」

 

 呆気にとられたような表情で目を丸くした青年に、無言で頷く。すると彼は高らかに笑いだした。

 

「クハハハ! まさか神の采配と謳われ、人を見抜く力に優れているボンゴレ9代目が後継者に選んだのが、こんなにも弱く小さな男だったとは!」

「お、おれが目的だったなら、どうして風紀委員たちを襲ったり……フゥ太をこんな目に遭わせたんですか?」

「フゥ太くんに関しては、大したことはしてません。ただのちょっとしたマインドコントロールですよ」

 

 唸り続けるフゥ太を押さえながら「マインドコントロール……?」と眉をひそめる。

 

「我々はボンゴレ10代目の所在のあたりをつけて日本に来たのですが、特定には至らなかった。そこで10代目と顔見知りと噂のフゥ太くんに来てもらったのですが、沈黙の掟を貫き通してだんまりでしてねぇ」

「そんな……」

「しかし並盛の喧嘩の強さランキングは入手できたので、それを使って炙り出そうとしたんです。結果は大成功でしたよ」

 

 喧嘩の強さランキングと聞いて、すべての点が繋がった。

 カウントダウンのように抜かれていた歯はランキングの順位だ。マフィア関係者なら強いだろうと踏んで、24位から虱潰しに襲っていったのだろう。

 

「……おれを炙り出して、何がしたいんですか」

「僕の目的、ですか。それは君が知らなくてもいいことですよ。だってもうすぐ――」

 

 笑みを浮かべていた青年の言葉が途切れる。そして突然、目の前にいたはずの彼がふっと消え、背後から声がした。

 

「君は、君でなくなるのだから」

 

 殺気を感じ、振り向きざまに三節棍を振るう。

 ガキンと鋭い金属音がして、いつの間にか背後にいた青年が持つ槍と三節棍がぶつかり合った。「おや?」と彼が意外そうな表情を浮かべる。

 演技をするのも潮時だろう。片手でフゥ太に手刀を入れ、意識を失った体をそっと横たえた。

 

「よく分かんないけど……おれを傷つけようとしてるんだよね?」

 

 首を傾げて青年を見上げながら、素早く腹を蹴り上げる。「ぐっ」と呻き声を漏らしながら彼が飛びのく。

 家継は三節棍を両手で構え、困ったような笑みを浮かべた。

 

「じゃあ――きみを、ここで必ず倒さなくちゃいけないな」

 

 

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