セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
二人で5階層を進んでいると、ウォーシャドウが3体が現れた。セラーナさんは、かつてキルクリース聖堂にいた『穢れた影』のようなモンスターに似ているなと思った。
「ベルさん、今のベルさんには光の戦士の契約があるので、不死の魔物に特効があるはずですわ。」
前衛のベルに声をかけながら、牽制のため、アイススパイクを放ち、モンスターを減速させる。
「わかりました。思いっきり切りつけてみます。」
ベルは幸運のダガーを抜いて切りかかった。ダガーはウォーシャドウの繰り出した腕を切り落とした。
そのまま、胸の魔石を切り裂いたことで、一体目は消滅。
二体目の個体が左からすばやくベルに近づきベルの顔に斬りかかる。
「うおおおおおおお」
そのときベルの左手が輝き、光を放つかにみえたが、何も起きなかった。
慌てて、ベルは盾で防御した。爪による攻撃を弾かれた魔物にベルはダガーで斬りかかり、キルムーブが発生した。
ダガーで魔石を穿たれて消滅した。
セラーナさんに向かってきた三体目は、アイススパイクを3発食らって動きが止まり、消滅した。
「さっきの光って、ま、魔法。僕、魔法が使えるんでしょうか?」
「その光はペリナル・ホワイトストレイクが使っていた輝ける左手かしら。不発だったようですが、まずは伝承より控えめな力でよかったですわね。」
「え?これなにかよくない力なんでしょうか?」
「いえ。伝承だと、山や街が一撃で消し飛んだとされているので、そんなことにならずにすんでよかったですわね。」
「ええええ。それを先に言ってください~」
「まあ、ベルさんはもっと基礎となる魔法が使えるようにならないと発動できなそうですわね。」
「今夜は別の本を読みましょうか。」
「ヒエ。また怖い夢を見るんでしょうか?」
「いえ、普通の呪文書ですわ。怖いのがいいですか?そういうのもありますが」
「イヤイヤイヤイヤ」
「装備を整えたことで余裕がありそうですし、どんどん探索を進めますわよ。鉄は熱いうちに打て、ですわね。」
5階層の探索を順調に進めて、もうすぐ6階層に向かうかといったところで、悲鳴が聞こえてきた。
「いや死にたくない。だれか、だれか助けて。」
白いローブをまとって大きな荷物を背負った女の子が迷宮の奥から逃げてくるのが見えた。
その後ろを、腹を切り裂かれ、明らかに致命傷と思われる傷を負った冒険者が剣を振り回してフラフラと追いかけている。
「セラーナさん!助けましょう」
「お待ちになって、あの冒険者は死霊術で操られているようですわ。死者は火に弱いので、この松明を使いなさい。」
「ありがとうございます。」
動く死体は一人だけかと思ったら、後ろから続々と穢れた影が現れた。セラーナは炎のマントのスクロールを取り出した。
「ベル、数が多いので、あの冒険者を倒したら下がってくださいまし。私に考えがあります。」
「分かりました。」
白いローブの女の子をかばうようにベルが冒険者に向い、冒険者のショートソードを松明で受けとめた。弾けた炎が冒険者の死体を炙る。
「契約していた冒険者があの影に殺されて、影といっしょになって襲ってきたんです。助けてください。」
「もう大丈夫。後ろに下がっていて。」
「うぉおおおおおおお」
火がついて怯んだ死体にダガーで斬りつける。もともと致命傷を負って破れた防具ではダガーの刃を防ぐこともできず、心臓のあたりに深々とささり、冒険者は倒れて灰になった。
セラーナは炎のマントのスクロールを唱え、さらにつづけてジェイ・ザルゴの火炎のマントのスクロールを唱えた。全身を二重の巨大な炎の渦に包まれた状態で穢れた影の群れに向かって駆けていく。
「セラーナさーーーーん。」
「巻き込むかもしれません。下がってくださいまし。」
ベルはぎりぎり炎を避け、女の子を連れて下がった。
「死体はおとなしく灰になりなさい。」
穢れた影達は燃え盛る炎の渦に巻かれて、次々と灰になっていった。
「ふぅ。こんなところでジェイ・ザルゴのクエストを果たしてしまうとは思いませんでしたわ。」
「とりあえず、今日は探索を切り上げて地上へ戻りますわよ。」
「大丈夫ですか。やけどしてませんか?」
「いえ、味方も燃やしてしまうのが欠点ですが、自分が燃えるわけじゃないので、大丈夫ですわ。」
『ヒエ』
恐ろしい戦い方に白いローブの女の子もガタガタ震えている。
「た、助けていただいて。あ、ああ、ありがとうございます。」
カミカミだった。
「私はセラーナ、よしなに。事情は地上へ戻る道すがら、教えて下さいまし。」
「はい。ありがとうございます。」
「行きましょう。セラーナさん。」
つづく