セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
地上までの道すがら、白いローブの女の子にベルが問いかける。
「僕はベル・クラネル、ヘスティア・ファミリアに所属している。セラーナさんも同じファミリアだよ。」
「まあ二人しかいない小さなファミリアなんだけどね。君のことも教えてくれる?」
「私はリリルカ・アーデです。サポーターです。助けていただいて、本当にありがとうございました。」
「サポーター?僕はまだ駆け出しであまり知らないのだけど、冒険者とは違うの?」
「ああ、そうでしたか。サポーターとは荷物持ちですね。戦いはしません。弱いので。」
あのすごい荷物を持てるというのはひとつの才能ですわね。これは繋がりを持っておくのは悪くありませんわね。さてさて。
「あら、元いたところだと、荷物持ちは従者がやってましたわ。とある従者は、主に『命をかけて、剣となり、盾となりましょう。』などと曰わってましたわ。そこまででなくても、ただの荷物持ちですと、戦いに巻き込まれただけですぐに死んで、さらに荷物が増えるという悪循環になりますわよ。」
『ヒエ!どんな怖いとこなんですか?そこって!』
「そうですわね。道を歩いていたら、空から太古のドラゴンが襲ってくるって感じですわね。まあ、村人も貴族も商人も旅人も衛兵も、油断してるともれなく死にますわね。」
「世も末ですね。」
「ええ、世界の終末を告げるドラゴンが相手でしたからね。」
『ヒエエエエエ』
「というわけで、これもなにかの縁ですし、生き残るために戦い方を覚えたいというなら教えてあげなくはないですわよ。」
「道具が持てるなら、私がさっきやったみたいな戦い方もできるわけですから。機転さえきけば、生き残ることは難しくはないですわよ。こう見えて、私、錬金術師ですし、鉱石や調合材料など荷物が増えがちなので、ちょうど荷物持ちがほしかったのですわ。」
「うぇ?私も、た、戦うんですか?あ、あんなふうに?」
ガクガクブルブル!!!
「残酷なようですが、この世は勝利か死か、どちらかしかありませんわよ。見た感じ、あなたいつも損しているでしょ。」
「グハッ」「うわっ。セラーナさん、そこまで言わなくても。」
「逃げ回っても何も残りませんわよ。いつの時代でも、どこでも。さぁ、今だと、ちょっと給金をはずんで、さらにいろいろ錬金術師として教えて上げてもよろしくてよ。魔法もね。どうしますの?」
「え?魔法って、私、持ってませんよ?」
「え?そんなの呪文書を読めばだれでも覚えられますわよ。ただ、唱えるのに必要な魔力がないと不発になりますわね。ベルさんみたいに。」
「へ?いやいやいや、誰でも覚えられたら苦労しませんよ。」
「うーん、呪文だけなら手持ちの本で軽く30種類ぐらいは覚えられる筈ですわ。まあ、初歩の明かりの呪文や治癒の呪文、それに魂縛が使えるだけでも足手まといにはなりませんわよ。それに魔石は魂石の代わりになりそうですし、魔石と付呪でエクスプロージョンの魔法を込めた杖を使うか、スクロールを使えば、ちょっとした移動砲台の出来上がりですわね。」
「へ?え、え、えええええええ!」
リリルカは混乱した。常識が崩れていく。
「セラーナさんのいたところって、ちょっと非常識ですよ!それだとそこらじゅうで、魔法が飛び交ってるような気がするんですが。」
「え?まあ、そうですわね。街道を歩けば、弓矢といっしょにアイススパイクが飛んできたり、ファイアボールが飛んできたり、ヒドイときには雷の精霊が召喚されて襲ってきたり。山賊ごときでも油断してると痛い目にあうのはふつうでしたわね。」
「なので、戦えないと死にますわよ。」
「いやああああああ」
「さあ、ということで、私と契約するとよいのですわ。」
「あ、あい、け、契約します。」 「ええええええ!本当にいいですかリリルカさん」
リリルカは目がグルグル回っている。セラーナさんはなにかやり遂げた感がでている。
やりましたわ。なぜか、最後は話術より魅了が効いたようですわね。なかなか可愛い子ですし、昔だと、この流れで眷属にしてたかもしれません。
「契約条件はあとで詰めましょう。セラーナの名にかけて、損はさせませんわ。」
「リリルカさん、大丈夫ですか?」
「なにか、ふらっとしましたけど、だ、大丈夫です。」
「ところで、話をもとに戻すと、なにがおきていたんでしったけ。」
「いつものように冒険者の方と二人で6階層で探索をしていたのですが、ウォーシャドウとはちがう影のような化け物の集団に襲われて、冒険者様が斃され、這々の体で逃げてきたのです。」
「なるほど、セラーナさんによると死霊の類だということだけど。。。」
「ベルさん、私の見間違いでなければ、『穢れた影』という魔物ですわ。元いたところではマルコランという死霊術師が使役していましたが、私の仲間が斃したので、それとは別ということでしょうか?メリディアならなにか知っているかもしれませんわね。」
「もうすぐ地上ですね。いちおうギルドに報告に行きましょう。」
「ええ、それがいいですわね。」
つづく