セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか   作:スキマ時間

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人生においてまっとうに働いた事は一度もないんじゃないか?小娘

リリルカは契約していた冒険者が亡くなったことで、しばらくは仕事がないということに不安を覚えていた。

セラーナが新たな契約を持ちかけてくれたが、まだ、契約の条件を詰めてないのと、セラーナの黒い部分が果てしなく不安なのだ。

 

二人はギルドで魔石の換金など済ませたあと、より詳しい話をするために宿をとった。

セラーナは、リリルカに深い事情があるように思えたので、信者を募集しているチミっ子デイドラとかがいない落ち着いた場所で話したかったのだ。

 

「今夜の宿代は私がもちますわ。それで、契約の条件についてですが、こんな感じでどうかしら。

 

一つ、錬金素材などの荷物持ちの給金として、一回の探索ごとに金貨500枚、セプティム金貨で支払う。

一つ、セプティム金貨は換金が必要でしょうから、その手数料はこちら持ちでお渡しする。

一つ、約束どおり、あなたが生き残れるように戦い方や知識を指導する。これに関しては荷物を死守するために絶対に必要なことなので、かかる費用はすべてこちら持ち。

一つ、探索で得た対価の分前は、頭割り。ベルさんとまだ話し合っていないから、まずは私が得た分の半分を渡すとする。

一つ、互いのファミリアに関する事以外は、互いの一切の秘密を共有し、ヘスティア・ファミリア以外の者に話さないこと。

一つ、契約書はギルドに預け、どちらかが違約した場合は、違約した証拠とともにギルド員の立ち会いの元で、違約した者の名誉を貶める。

一つ、この契約の立ち会いのギルド員はエイナとする。」

 

「ええええ?こんな破格な条件でいいんですか?ただ、秘密の共有に関する条件はファミリアを裏切ることになるので難しいです。そもそも神に嘘をつくとバレますから。」

 

「ふむ、それなら、最後の一つについては、あなたの神やファミリアに秘密がもれないようにする方法が見つかるまで、あなたの秘密を教えてもらうだけにしましょう。これが条件です。」

 

リリルカは緊張から心臓が早鐘をうっているような気がした。これは大きな賭けだ。

 

「秘密を知ったあとで、話しを反故にしたりしませんか?」

「慎重なのはよいことですわね。では、この内容でエイナ立ち会いの元で先に契約してしまいましょう。」

「それなら、大丈夫ですね。」

 

リリルカはちょっとだけ、ほっとした。

まあ、話術と魅了を使えば、本当はなんでもありなんですけどね。私の名誉に賭けて、そんなことはしませんけれども。

 

二人は、もう一度ギルドを訪れ、エイナに事情を話して、契約書を纏めた。

 

「セラーナさんは、こういう事について随分手慣れているんですね。こういう事って、ほとんどの冒険者はおざなりで、ギルドが一から十まで面倒をみることが多いんですよ。」

「エイナには感謝を。まあ本当に久しぶりのことでしたが、まだやり方は覚えていましたのよ。今となっては、遠い遠い昔のことですわ。」

「セラーナさん、リリルカさんはソーマ・ファミリアの眷属ですので、ファミリアが違う、その点をよく理解してやってくださいね。」

「もちろんですわ。私の名誉にかけて。」

 

「では、セラーナさん、サポーターとして、よろしくおねがいします。」

「いきなり間違えてどうするのです。ファミリアが違うので表立っては明らかにしませんが、あなたはもうサポーターではなく、私の従者、そして、弟子ですわ。ともに生きるために戦うのですから。」

「では、宿にて、まずはお互いに最初の約束を果たすとしましょう。」

「は、はい。わかりました。」

 

変なの。誰からも見捨てられて、甚振られて、裏切られて、なにも信じられない。信じちゃいけないと思っていたのに。

期待しちゃいけないって思うのに、また裏切られるって思うのに、心がふわふわする。

 

宿について、セラーナは一冊の本を取り出した。そして告げた。

 

「秘密を教えてもらうといいましたが、多分、私、あなたの秘密を察してしまいましたわ。」

 

「元いたところの盗賊ギルドの幹部が言っていた口癖を真似ていうと、『人生においてまっとうに働いた事は一度もないんじゃないか?小娘』という感じでしょう。」

 

「え?え?どういうことですか?」

 

「私が錬金術師なのは本当のことですわ。ただ、元いたところでは、あなたのように私が従者で、私を救った人はいろんな役職を掛け持ちしてて、盗賊ギルドの棟梁や魔法大学の学長、首長の従士、吟遊詩人の大学の名誉ある詩人、ドラゴンの弟子、吸血鬼ハンターだったのよ。」

 

「な、なんですか、なんですか?その訳のわからない職歴は?そうだとしても、どうしてわかると言うんですか?」

 

リリルカの目がだんだんグルグルしてきた。

 

「『歩き方、身につけている物。一目瞭然ですわ』なんてね。まあ、あなたが盗人をやっていただろうことは、なんとなくですが、わかってしまったのですわ。」

 

「ええええええ!」

 

「衛兵に突き出したりしませんから、まあ、諦めて白状なさい」

 

「長い話になりますが、いいですか?」

「ええ、そのつもりで宿をとったのです。まだ夜は長いですわ。どうぞ、よしなに。」

 

リリルカは、ソーマ・ファミリアで生まれ、神酒で魅了されていること、その地獄、足抜けしようとしても付きまとわれ、居場所を失ったこと。今も、利用しようと付け狙う者たちが周りにいること。などを包み隠さず話した。

 

セラーナは話しを聞き終えたあと、最初に取り出した本を持ち、切り出した。

 

「誰にも話せず辛かったでしょう。でも、もう大丈夫。」

「約束どおり、まず、あなたに機会を与えましょう。」

「この世界に来てから、この世界の人たちは神と近いせいなのか、前の世界の物語を読み聞かせただけで、その本の内容から影響を受けてしまうようなのですわ。盗賊のあなたには、この本『影を盗む』を読み聞かせようと思うのですよ。」

 

「そ、それはアブなくないんですよね?ね?」

 

「どうかしら?あなた次第ですわね。ただ、知り合いの女盗賊の話しだと、『盗賊が崇めた神ノクターナルは、子供を叱咤激励する母親みたいなものじゃないかな。』とのことだから、対価は要求されるとしても、そんなにヒドイことにはならないと思いますわ。」

 

「か、神様が要求する、対価?よくない予感しかしないのですが?もしかして、これは新手の死刑宣告ですか?」

 

「冒険なくして勝利なしですわ。逝きますわよ。白狐盗賊伝説、ここに始まる」

 

.

.

.

 

セラーナによる長い読み聞かせのあと、激しい一日の疲れからすぐに寝入ってしまったリリルカは夢を見た。

 

夢の中、リリルカは泥棒の少女となっていた。隠密の達人に弟子入りし、一世一代の大仕事に挑む。

 

「なーんだ。夢の中でもわたしはしがない泥棒さんなんですね。なんか泣けてきました。」

 

だが、少女が狙う獲物はなんと盗賊達が崇めるデイドラの王女ノクターナルの衣なのだ。

夢の中で、リリルカはノクターナルを囲むカラスの一羽に化けていた。

本の主人公の少女と違い、リリルカにはシンダー・エラーという変身魔法があるため、完璧にカラスになりきっていた。

ほかのカラスを押しのけ、ノクターナルの衣に手が届くところまで近寄った。

 

そこに少女に隠密を手ほどきした隠密の達人が突然あらわれ、少女を裏切った。

 

「王女様!そこに泥棒がいます!うしろです。」

 

ノクターナルが振り返って、うしろを見たが、カラスしかいなかった。

 

「お前はなにを言っているのだ。カラスしかおらぬぞ。」

「汝、我を欺こうというのですか?」

 

「馬鹿な?」

 

本来だと、隠密がバレて、囮にされるはずだった少女は、隠密の達人にノクターナルが気を取られている隙をついて、衣を奪った。

 

つづく

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