セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
では、続きをば、どうぞ
リリが正式にヘスティア・ファミリアの家族となったことを皆で祝ったあと、セラーナさんが二冊の本、
「ナイチンゲール第1巻」
「ナイチンゲール第2巻」
を取り出した。
「ベルさん、リリさん、二人にお話しがあります。黄昏の墓所がこの廃れた教会になり、リリさんがその守り手になったので、この本を読み聞かせたいと思います。この本はノクターナルの守り手の一人が書き残した本で、本来の持ち主から私が荷物持ちとして預けられていたのよ。それと、神ヘスティア、あなたにも知っておいてほしいのでよろしくおねがいします。」
「なんだか悪い予感しかしないのだけれど、知っておいたほうがよさそうだね。」
「リリさん、この本を読めば、ノクターナルの守り手の本当の意味を知ることになるわ。」
ガクガクブルブル。リリは目がグルグルしはじめた。
「そう悪いことではないわ。もう決まってしまったこと、いえ、もしかしたら、もともと決まっていたことについて知るだけのことよ。」
「それと、ベルさん、黄昏の墓所の守り手は、本来三人が選ばれるみたいなのよ。たぶん、一人では荷が重いからなのか、理由はよくわからないのだけれどね。ただ、守り手を引き受けるかどうか、この本を読んでから、決めてもらったほうがいいと思うわ。リリさんは仕方ないにしても、私やあなたが神ヘスティアに黙って引き受けるのは、誠実とはいえないからね。」
「では、はじめますわよ。ところどころ、他の本で読んだ知識を交えてわかりやすく話しますわね。」
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ノクターナルは盗賊の後ろ盾ではないが、ナイチンゲールとその仲間を支援してくれているのだと俺は信じている。
三人衆は、闇の女王にして、黄昏の娘、女公ノクターナルに仕える。祈りも施しも祝うこともなく仕える。
ノクターナルとの絆は「誓約」とよばれ、商取引みたいなもの。誓約の内容は簡潔で拘束力がある。守り手はナイチンゲールと呼ばれ、聖堂と黄昏の墓所を脅威から守る義務を負う。
対価として、ナイチンゲールとして与えられた恩恵を自分や仲間の蓄財に使える。
死後は、守り手の亡霊として黄昏の墓所に縛られ、最後にはエバーグロームという影の生まれ故郷、終わりのない薄日の射す場所に巡りつき、魂は影と一つとなり、仲間が盗みを働くときに覆い隠す影となる。これが仲間との合言葉、『影とともに歩まんことを』の由来なのだ。
黄昏の墓所を通じて、この世界とエバーグロームは結ばれていて、墓所の中心部にはエボンメアと呼ばれる闇が水のように湧き出すところがある。エボンメアは、鍵穴から『不壊のピック』を抜くことで封印される。
この『不壊のピック』には未知の力を解除できる力がある。だが、欲に駆られたものが使えば、恐ろしいことになる。だからその守り手となるのがナイチンゲールというわけだ。
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「ノクターナルは、よく物を盗まれることで有名で、目を盗まれたり、衣を盗まれたり、大事な鍵も盗まれたり。ツンデレじゃないかっていうぐらい、わざと盗みに挑戦させて、盗んだ者を助けているのよ。」
「ただ、ノクターナルに仕えるということは、最終的に影と一つになるということを受け入れることになるわ。」
「リリは、多分、もとよりその運命にあったのだと思うわ。私は元いたところでの関わりから、すでにそうなる可能性はあるわね。ベルがどうするかは、自分で決めるべきね。今はまだそのときではないという判断もありだと思うわ。以上が私が知っていることですわね。」
「うわぁ、ノクターナルの聖地って、思っていたよりえらいことなんじゃないかぁー!そんなの聞いてないんだけどぉ!」
「ヘスティアよ、まあ起きてしまったことは受け入れるがよい。もう道はできてしまっているからの。それに、良からぬ輩のところに結び目ができるよりよかったのではないか?この地も、安心できる場所だけとは限らぬようであるしの。」
「え、どういうことだい?」
「お主のように心優しい神ばかりではないということじゃよ。この地と結び目を作るとき、我もある程度、選別はしたのでな。まあ、ここには怒らせると危ないメリディアもおるようだし、しばらくは大丈夫ではないかの。」
「神様、僕は女の子を守る。そんな英雄になりたいです。神様もノクターナルさんも絶対守ってみせます。」
「ベル君、なにがあっても僕を一人にしないでくれ。」
「もちろんです、神様」
そういうわけで、廃れた教会はエライコッチャな場所になり、ベル君とセラーナさんも守り手となった。
つづく