セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
ベル達が迷宮探索に精をだしているころ、ヘスティアはこのところのドタバタとバイトの疲れでぐったりして眠っていた。
普段はベル君との楽しい出来事を夢見るのだが、今夜はどうしたことか様子が違っていた。
夢の中、ヘスティアは見知らぬ場所にいた。数分ごとに稲妻がひかり、大勢の人間が暗闇のなか、吊るされている。
この領域の奥の祭壇にリリルカとベルが首だけとなって転がっていた。
「ベル君、リリルカ君、どうしてこんなことに」
後ろから声が聞こえた。
「ヘスティア、おまえの恐怖と絶望をいただいた。神の恐怖と絶望とはまた珍しいものを蒐集できて光栄だ」
「お前は誰だ。僕の目はごまかせないぞ。これは幻だろう。僕のベル君はこんなふうに死んだりしないんだ。」
首に蛇を巻きつけ、髑髏のついた杖を持つチミっ子が顕現した。
「ははは、よくわかったな。だが、一瞬だけでも恐怖を感じたなら、私にはそれで十分だ。」
「我はヴァーミルナ。人は夢のなかで我が家を訪れる。神がやってくるのはとてもめずらしいのだが、なにかきっかけでもあったのか?」
「また、へんなのに出会ったよ。このところヒドイことばかりおきてるからそのせいなのかな。」
「まあ、ゆっくりしていくがよい。だが、ニルンから訪れたのではなさそうだな。ああ、シェオゴラスが言っていた神はお主のことだったのか。」
「え?そんな奴、僕は知らないんだけど。」
「ああ、狂気に陥っているとき、心のなかで共にいるのがシェオゴラスなのだ。だから気づかないのだろうな。」
「次から次へ、寝ているときまで土足で踏み込まれるなんて、最近はどうなってるんだい。」
「なにやら、二つの世界が融合してしまったことが原因らしいぞ。ニルンには、この世界の事実を書き換えてしまう巻物があるのだが、シェオゴラスによると、それが読まれたときになにかがおきたそうだ。」
「もしかして、セラーナって子が巻き込まれた惨事のことかい。」
「そうだ。あのときすべての事象が書き換わってしまった。本来、終末を迎え、新しく生まれ変わるはずだったニルンの世界はオラリオの世界とところどころで融合してしまったらしい。今は、我々の領域からそちらへと繋がりをもつことができるようだ。」
「うわっ、それってほんとに大惨事じゃないか。」
「まあ、竈の炎を守護する娘よ、またくるがよい。」
そこでヘスティアは目ざめた。
「なんかヒドイ夢をみた気がするんだけど、ベル君たち遅いなぁ。」
そのとき、扉がひらいて、ドタドタと三人が帰ってきた。
「神様、ただいま戻りました!遅くなって、すみません。」
「ベル君、心配したんだぜ。おかげでひどい夢を見たし。」
「おや、神も悪夢をみることがあるのですね。もしかしてヴァーミルナに会いました?」
「そういえば、そんな気も。なにかセラーナくんのことで大事な話をしたような気がする」
「ここに『夢中の歩み』という本がありますが、読みますか?そしたら思い出すかもしれませんわよ。」
「そうだね。なにかとんでもないことだったような気がするんだ。でも今思い出すのはやめたほうがいいって気がする。いずれ、読まなきゃいけないときがそのうちくるんじゃないかな。」
「そうですわね。気が向いたら、いつでもおっしゃていださいな。」
つづく