セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
翌朝、ヘスティアは神友に会うため、ガネーシャのパーティにでかけた。
このところ、廃れた教会に次々とやってくる異世界の神たちのことが気になって、親友に相談しようと思ったのだ。
「やあ、ヘファイストス。君に会えてホッとしたよ。」
「どうしたの?ちょっと見ない間にやつれたような気がするんだけど。」
「話せば長くなるんだけどね。眷属が三人に増えたんだよ。」
「よかったじゃない。この短期間に三人も増えるなんて、ヘスティアにしては、ずいぶん頑張ったじゃない。それにしてもやつれてるわね。」
「ああ、それがね。同居人として他に二人ほど、変なのがいるんだよ?」
「ん?あんた、まさかあの教会を又貸ししてるんじゃないわよね。」
「そんなことするもんか。むしろ、わからないことだらけで、そのことについて相談したいんだ。頼れるのヘファイストスだけだよ。」
「なにか厄介事じゃないでしょうね。」
「うぅ。まあそうなんだけどね。ヘファイストスのところでは、変なことは起きてないかい?たとえば、眠ったら、見知らぬ土地へ行ってて、いきなり子供達が首だけになっている夢を見るとか?」
「何を言い出すの?ヘスティアらしくないわよ。能天気なあんたがそんな夢を見るなんてただ事じゃないわね。」
「じゃあ、変化があるのは僕だけなのかぁ。パーティのあと、そのことで少し話したいんだ。」
「厄介事はごめんなんだけど、やつれてるあんたをほうっておくのも嫌なのよね。いいわ。でも、そのかわり隠し事はなしよ。私ってば、自分でも嫌になるくらい損な性格よね。」
「ありがとうー。もう一人で抱えるのは無理なんだー」
そこへ、ロキがやってきた。
「ヘスティア、自分、どないしたん。今にも天界に帰ってしまいそうなくらいやつれとるで。こんなんやったら、からかい甲斐があらへんやんか。」
「ああ、ロキかい。そうだね。このところ、いろいろありすぎてね。でも僕の子供達はものすごく良い子ばかりだよ。君も子供達がたくさんいるからいろいろ苦労しているんだろうね。子供達は可愛いからね。」
「ええっ、ほんま調子狂うんやけど。大丈夫か?もしかしてラグナロクでも起きるんとちゃう」
「ああ、世界の終末ね。そんなことは、よくあるみたいだね。」
「いやいやいや、そんなん、しょっちゅうあることちゃうで。ほんま、どないしたんや。こんなん、うちの知っとるヘスティアとちゃうで。」
「いろいろバイトとかがんばっとるみたいやけど、ゆっくり養生したほうがええんとちゃう。」
「うん、ありがとう、ロキ。」
「う、うん。まあな。なにか困ったことがあるんやったら、たまには話ぐらいは聞いたるで。助けになるかどうかはしらんけどな」
「君ってば、いいやつだったんだなぁ。今度、相談するかもだよ」
「お、おう。じゃあな」
「ふぅ。ほんとどうしたの。パーティが終わったら、うちのホームで話しましょ。ここじゃ、駄目な話なんでしょ。」
「うん。」
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パーティが終わり、ヘファイストスのホームについた。
「で、いったい何があったの?」
「神威を使える状態で送還されない神が二人も僕んちにやってきたんだ。しかも、二人ともあの教会を聖域に指定しているんだよ。」
「しかも、僕が眠ったら、眠ったで、夢の中でその二人とは別の神の家に呼び出されて、悪夢を見させられるんだ。しかもびっくりして気が動転したら、そこで僕を乗っ取る神までいるらしいんだ。」
「はぁ?ヘスティア、あなた正気なの?神威なんて使ったら、すぐに天界に送還されるでしょ。それは私達にとって絶対のルールよ。」
「聞いてくれ、ヘファイストス。原因はわかっているんだ。僕達のいるオラリオとは別のニルンという世界が融合したらしいんだよ。それでニルンの神には僕達のルールは適用されないんだ。なぜだかしらないけど、ニルンの神達はオラリオにくるとなぜかチミっ子になるんだけどね。」
「ち、チミっ子?それって、力が制限されてるってこと?」
「いや、ちょっとちがう。性格が丸くなるみたいだね。」
「どうやって世界が違うってわかったの?」
「本神達の自己申告と本だね。たとえば、これ『デイドラ全書』。注意深く読まないと、影響を受けちゃうから読むのなら気をつけてね。」
「なにその恐ろしい本。」
「この本に出てくる、ノクターナルとメリディアが、君から借りている教会を聖域に指定して、こっちに来ちゃったんだ。あと、こっちに来てはいないけど、ヴァーミルナは夢のなかで僕を自分の家に呼び出すんだ。そして、シェオゴラスは僕が動揺すると僕を一時的に乗っ取るらしい。」
「ヘスティア、あなた大丈夫。これ大変なことになってるわね。教会は元々廃れた場所だから、住神が二人増えたぐらいどうってことないんだけど。問題は、このことが他の神に知れたときにどうなるかよね。」
「それもまあ問題かもしれないんだけど、もっと問題なのは、あっちの世界がわりとやばい場所だってことだね。」
「向こうだと、魔物は迷宮に閉じ込められてなくって、ドラゴンですらどこでも襲ってくるらしいんだ。それも世界の終末を告げるドラゴンがね。」
「それで、ロキに世界の終末がよくあることだなんて言ってたのね。嘘をついてないみたいだったから、ドキッとしたのよね。」
「で、どうするの。こんなの私もどうにもできないわよ」
「新しく入ったセラーナという子供が鍵なんだ。向こうの世界の終局を防ぐ戦いの途中で吹き飛ばされて僕のところに来た。」
「そのときにすべてが始まったっぽいんだけど、僕はその子の手助けをしたいんだ。」
「もしかしたら、オラリオ中の神の力を借りないといけないかもしれない。」
「起きてしまったことはもう元には戻せないんだと思う。きっと、だれも無関係ではいられないとも思う。だからこそ、このことを最初にヘファイストスには知らせておきたかったんだ。」
「その子の日記を読んで。どうしても、じっとしていられなくなったんだ。」
「その子が鍛冶でなにか作って欲しいとき、もちろん対価はきちんと払うけど、そっと手助けしてほしいんだ。」
「そういうことなら、なにも問題ないわよ。」
「なんだ、ちゃんと親をやっているじゃない。問題は向こうの神々よね。その本によると、他にもやばい神がいるんでしょ。」
「そうだね。ただ、向こうでは、神は人によって封じられていたらしいんだ。セラーナって子の話だと、向こうの子供達はちょっとイカれてるんじゃないかってぐらい強いらしいんだ。だから、僕は子供達の力を信じようと思うんだ。」
「そうね。子供達の活躍ほど眩しいものはないわね。フフ、ヘスティアってば、しばらく見ない間にすっかり親になったのね。」
「話はそれだけさ。聞いてくれてありがとう。ヘファイストス。」
「どういたしまして。あれ?」
ヘスティアは疲れたのか、そのまま、床で寝てしまった。
つづく