セラーナさんがダンジョンに絆を求めるのは間違っているだろうか 作:スキマ時間
ベル君はセラーナさんの朝ごはんにならずにすんで、なかよくじゃが丸君で食事をすませた。
「神様、セラーナさんを冒険者として登録しに行ってきます。」
「ベル君、セラーナ君のことをくれぐれもよろしく頼むよ。」
「もちろんです神様!行きましょうセラーナさん」
「行きましょう。新たな冒険のはじまりですわね。」
廃れた教会を出て、冒険者ギルドに向かう途中、バベルの塔が目に入った。
「大きな塔ですわね。シロディールにある白金の塔とはまた違った趣きですわね。」
「セラーナさんの故郷にもあんな大きな塔があるんですか?」
「そうですわね。アイレイドという古代のエルフが建造した巨大な塔ですわ。わたしが埋まっている間にできたシロディールの帝国が本拠地として使っているのだそうですわ。」
「え?埋まってたんですか?」
「まあ、その事は追々。それよりも、ここは面白い街ですわね。神がそこら中にいるなんて・・・みなさん大丈夫なのかしら。タムリエルだとそんなことになったら大惨事ですわ。」
「なんでも神様達は天界から下りてくるときに、力を封印することが条件となっているんだそうです。だから普通の人とかわらないんだそうです。」
「そうなんですの」
「タムリエルでも、オブリビオンからデイドラロードがやってこれないように神アカトシュが結界を張っていたのですが、わたしが埋まっている間に結界が失われたことがあって、デイドラロードの一柱メエルーンズ・デイゴンがやってきただけで、帝都が破壊される大惨事になったそうですわ。そのときは、クヴァッチの英雄と皇帝の隠し子の活躍で追い返したそうですのよ。」
ベルは、クヴァッチの英雄に憧れているようですわね。目が輝いていますもの。でも、今の可愛い男の子のままだと、デイドラロードの恐ろしさを知ったら、正気ではいられないでしょうね。そういう出会いがないとよいのですけれど。
「その話、もっと聞きたいです。僕、女の子を守れる英雄になりたいんです。ダンジョンに行けば、ハーレムを作って英雄になれるってお祖父さんから教わったんです!」
「あらまあ、それはちょっと変わったお祖父様ですわね。それならハーレムの前に修羅場を乗り越えないとヨイオトコにはなれないですわよ。」
「そうなんですか?」
あの荘厳な白い柱で造られている建物がギルドのようですわね。ベルとセラーナさんは中に入っていった。
受付らしき女の人がこちらを見て、声をかけてきた。
「おはよう、ベル君。」
この子の最初の修羅場はすぐそこに待っているかもしれませんわね。
「おはようございます、エイナさん。こちらのセラーナさんがファミリアに加わったので、冒険者として登録しにきました。」
「セラーナと申します。よしなに」
「はじめまして、エイナです。ベル君の担当アドバイザーをしています。これからよろしくね。」
「では、登録ですね。」
「セラーナさんは遠くから来たばかりで、字が書けないそうなので、代筆でお願いします。」
「あら、それなら早いうちに共通語を覚えたほうがいいわね。共通語なら私が合間を見て教えてあげるわよ。それとダンジョンについての基礎講習もね。冒険者は冒険してはいけないとかね。」
「それはありがたいですわ。ぜひよろしくお願いしますの。こちらでは新手のジョークが流行っているようですわね。冒険者なのに冒険しないとは、おもしろいことを言うエルフさんですわね。実は、この街にはシェオゴラスの信者が多いのかしら・・・」
しーん。
「セラーナさーん?!エイナさん、セラーナさんはたまに心を抉るようなことを言っちゃうんですけど、本当は素直ないい人なんでどうか許してください。この通りです。」
「えっ、ええ。ベル君がそういうなら、でも講習は気合をいれてしっかりやりますからね!!」
「望むところですわ」
「ウヒャー」
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お昼になって、順調に講習も終わった。
「では、ダンジョンに行きましょう。ベル、先導してくださいまし。」
「ちょっと待って、装備は大丈夫なの?すごい身軽そうなのだけど。」
「あら、この間までトロールやドラゴンと戦っていたので、装備なら問題ありませんわ。そうですわね、力についてはちょっとどうなっているかわからないので、今日はお試しですわね。」
「えぇっ?それはちょっと、いくらなんでもありえないでしょ。武器とかは持っているの?」
「エルフのダガーとかなら持っていますわよ。」
ドヴァーキンにいろんな荷物を預けられていたので、そこそこ装備や薬や素材はありますわね。でも補充がきかないものもあるでしょうから、余っているもので最初はやってみましょう。
「うーん?本当に大丈夫なの?」
「そんなに心配ばかりしていると、いくら寿命が長くても、あっという間に老けますわよ。」
「もう、ちゃんと無事に帰ってこないと許さないんだからね!セラーナさん、強がりもほどほどにして!ベル君、今日は一階層までだけにするのよ。」
「ハヒ、わかりました。エイナさん!」
「それじゃあ、行ってきます」
「行きましょう。まずは日の差さないところへ?洞窟でもよくってよ?」
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ダンジョン1階にて、
「ここはなんだか、ジメジメしていますわね。ずいぶんと歪んだ場所のようですの...おかしな感じがしますわ。」
「まだ浅い階層だから、コボルドとかゴブリンぐらいしかでませんけどね。まずは僕が前で戦いますので、セラーナさんはカバーをお願いします。」
「わかりましたわ」
この世界のゴブリンはどの程度なのかしら、シロディールのゴブリンは10から20匹とか数が多い上に、麻痺毒の弓矢とか、シャーマンやトロールまで一緒にいるとなかなか面倒なはずでしたが...
曲がり角からゴブリンが2体ほど現れた、戦闘だ。
ベルが素早い動きで、右側のゴブリンに斬りかかる。
「戦い方はまだ覚えていますの。これでも喰らいなさい。」
ゴロゴロピシャーン、ピシャーン
セラーナさんの左手からいきなりライトニングボルトが放たれた。
左側にいて、ベルに襲いかかろうとしたゴブリンは一撃で倒された。
右側のゴブリンもベルに首を斬られて倒されたようだ。
「うわっ。今のは魔法?セラーナさん、魔法使えたんですか?」
「ええ。普段は片手剣か片手斧、それと魔法、といったスタイルですわね。」
「カッコよすぎます。」
憧れで、ベル君の目がキラキラと輝いた。
『おかしいですわ。もう吸血鬼の魅了は使えないはずですのに。』
「えい!甦れ」
シュワ~。倒されたゴブリンの一体が青い光に包まれ、ふらふらと立ち上がった。
「うわわわ。何が起きているんですか?」
「いつもの調子で、幽鬼作成してみましたの」
蘇ったゴブリンはふらふらとセラーナさんに従っていたが、しばらくするとシュワ~と音をたてて崩れ灰になった。
灰の山からは魔石が見つかった。
「すごい。便利すぎるんですけど!」
この世界に来ても、灰の山はなかなか消えないようだ。セラーナさんはまったく気にしてない。
「では次の敵を探しますわね。」
「そうですね。僕は魔法について詳しくないのですが、すごく強力な魔法のようですし、無理はしないでくださいね。」
「あら、心配してださるの。魔力でしたら、お腹さえ空いてなければ、すぐに回復しますのよ。」
「ぼ、僕を食べるのはなしでお願いします。」
「そういえば、ベルは美味しそうですわね。うふふ」
「ヒエ、さっさと次へ逝きましょう、セラーナさん」
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いたるところに灰の山を築きつつ今日の探索は終了した。
「エイナさん、無事戻りました。換金をお願いします。」
「おかえりなさい、ベル君。それに、セラーナさんも。見たところ大丈夫そうね。」
「エイナさん、セラーナさんはすごいんです。」
目がキラッキラッしているベル君にエイナさんは呆れていた。
「はいはい、これからも無事に帰ってきてね。これが今日のゴールドよ。5,000ヴァリスね。おつかれさま。」
「やったー。セラーナさん、今夜は神様と一緒に美味しいものを食べに行きましょう。」
つづく