気付いてしまった自分の本性。それは愛する人を傷付けるもので。でも愛しているからこそ抑えきれなくて。理性と本能の狭間で板挟みとなった夜々は静かに決断する。一緒にはいられないと。光莉と二人きりで過ごす運命の日曜日。もう後戻りは出来ない。少女の悲痛な告白が二人の仲を引き裂いていく。全てはただ光莉のために…。
今現在の二人を描く1話と前回の過去回想の続きを含む3話の合計4話でお届け。今回もオール夜々ちゃん視点の夜々ちゃん祭りですのでぜひよろしくお願いします。
■目次
<お目覚めにキスはいかが?アンコール>…南都夜々視点
━下の3話は過去回想です━
<さよならへの第一歩>…南都夜々視点
<誰よりも愛してる>…南都夜々視点
<バイバイ>…南都夜々視点
<お目覚めにキスはいかが?アンコール>…南都夜々視点
「夜々ちゃんっ!朝だよ~起きて~」
「んっ…。んん~。朝ぁ?って時間はっ!?」
光莉の声に目を覚ましハッと身体を起こすと私を覗き込む光莉と目が合った。
「おはよう夜々ちゃん。時間なら大丈夫だよ。まだ起床時間を少し過ぎたくらいだから」
「そっか」
安心して再びベッドに身体を預ける。頭が痛い…ような気がするけど、夢のせいかな?ひどい夢だった。正確には夢というより昔の出来事なんだけど、寝てる時に見てたんだからやっぱり夢でいいのかな。なんてくだらないことを考えて少しでも早く忘れようとしてみたり。
「珍しいね夜々ちゃんが私よりお寝坊さんだなんて」
普段は起床時間過ぎても全然起きないくせにこういうときだけ意外と早起きなんだから、困っちゃうなぁもう。
「うん、ちょっと嫌な夢見ちゃって」
「夢?」
「昔のこと。光莉に…自分のこと打ち明けた日の夢だった」
「あ~。それは悪夢だね。私もその夢は見たくないなぁ」
「でしょ?たしかあの日も日曜日だったよね」
「その話はやめようよ。お互い得しないよ?」
「うん…そうだね」
光莉の言う通りだ。これはどっちも暗い気分になるようなそんな苦い思い出。楽しいことでも考えよう。ベッドにごろんと転がったまま何か楽しいことはないかとうだうだしていると光莉が顔を近付けてきた。
「どうしたの?」
「ん~と。悪夢から目が覚めるように起こしてあげようかと思って」
「じゃあお願いしてみようかな?どんな風に起こしてくれるのか分からないけど、もし良いアイデアだったら光莉を起こすのにも利用させて貰っちゃおうかな~なんて」
「夜々ちゃんは知ってる方法だよ。この前してくれて気に入ってるんだ」
「へぇ?」
クスクス笑う光莉に返事をしながら記憶を辿っていく。 光莉が気に入った起こし方なんてあったかな?新しいのをいくつか試したけど、どれもイマイチだったような…。あっ、もしかして気に入らなかった方法を私にやり返して抗議するつもりとか?う~ん、ありそう。
「夜々ちゃん目瞑ってよ。じゃないと起こせないよ」
「はいはい。一応言っとくけど痛いのとかはナシだよ?」
「それはされてからのお楽しみ~」
「ええっ?」
まぁいっか。私も結構起こすの楽しんだりしてるし。たまには実験台になってあげましょうかね。
「ほら、目閉じたよ~」
「はぁ~い。いくよ~」
あ、意外と怖いかも。寝てればそうでもないんだろうけど起きちゃってるしな~。ううう、痛くありませんように。そんなことを祈りながら目を瞑る私の唇に突然柔らかい感触が訪れた。あれ?これって…キス?なんで?予想外の展開に戸惑う私をよそにそれは2度3度と繰り返される。光莉のキスはあったかくて優しくて…気持ちがいい。
「ふふふっ。どうだった?夜々ちゃんがこの前してくれたやつのお返し」
「光莉、あれ気に入ってくれてたの?」
「うん!キスで目覚めるなんてまるでお姫様になったみたいだったから。夜々ちゃんはあの時以来してくれないけど、結構気に入ってたんだよ」
「な~んだ。嫌なのかと思って遠慮してたのに」
「だって気に入ったって言うの恥ずかしいもん。それに毎日されたらドキドキして朝勝手に目が覚めちゃうよ」
「私はむしろ逆かな。気持ちよくて逆にまた眠っちゃいそうだったよ」
そう言いながら光莉の頬に手を当て視線を交わす。
「もう、夜々ちゃんってば~。欲張りなんだから」
満更でもない様子の光莉を見つめた後、私は再び目を瞑る。アンコールを求めて。
そして暖かな朝の陽射しに照らされながら…私と光莉の影が重なった。
「光莉。どこにも行かないでね」
「うん。私は夜々ちゃんの傍にいるよ。だから安心してね」
見つめ合った二人の、今度は影ではなく言葉が重なった。二人分の『愛してる』が…。
<さよならへの第一歩>…南都夜々視点
どんな風にさよならを告げようか悩んでいた。光莉は優しい子だから、生半可なやり方じゃダメかもしれない。私が光莉に近付かないだけではなく、光莉が私に近付かないように仕向ける必要もある。
(手っ取り早いのは嫌われることかな…)
嫌われてしまえば不用意に近付いてくることもないだろう。ならどうやって嫌われる?出来れば私が危険な人物だと分かってもらえた方がいい。
(やっぱり今までの事も言った方がいいかな。光莉のこと裏切ってたんだし)
私がしてきたことをそのまま言えば光莉はきっと私を嫌悪し、部屋を飛び出していくだろう。暴力とかそういうことよりも、同性からそういう目で見られていたという方が恐怖を感じるかもしれない。泣かせちゃうかな?たぶんショックを与えてしまうし、光莉を傷付ける結果になる。
(それでも、本当に襲われるよりは…ずっとマシ…だよね)
光莉に打ち明ける決意を固めた私は日曜日をその日に選び、光莉に相談した。
「ねぇ光莉。日曜日なんだけど時間あるかな?」
「日曜なら大丈夫だよ。あ、前に言ってたお買い物?」
ううん、と首を振って否定しながら私は答えた。
「ちょっと光莉とお茶でも飲みながらゆっくり話がしたくてさ。それで聞いてみたの」
「そっかぁ。あのね、夜々ちゃん何か悩み事とかあったりする?」
「え、なんで?」
「実は最近…なんとなくだけど元気ないように見えたから心配してたんだ。だからもし悩み事とかあったら私に話して欲しくて」
「大丈夫だよ。ちょっと聖歌隊の練習で疲れてるだけ。だから日曜日はのんびりしようと思ってるんだ」
「ほんと?よかったぁ。じゃあその日は、いーっぱいおしゃべりしようね!」
「うん、そうだね」
私のこと心配してくれてたんだ。そのことに嬉しさを覚えつつも同時に寂しさがこみ上げてくる。嫌われたらこうやって心配もしてもらえなくなっちゃうんだよね。結構辛いなぁ。それに私の話を聞いたらどんな顔をするんだろうかと想像すると、それだけで決意が揺らぎそうになる。光莉の言うようにただ楽しくお喋りできたらどんなに楽か。でも後戻りは出来ない。そんな道はもう残されていないのだから。
私にできるのは愛する人のために愛する人に嫌われることだけ。神様って残酷だな。
(ごめんね光莉。私がもっと早く自分のことに気付けていたらこんなことにはならなかったのに)
私頑張るから。頑張って光莉に嫌われるから。だから…少しでも早く。1分でも1秒でもいいから。
━━どうか私を拒絶して━━
<誰よりも愛してる>…南都夜々視点
日曜日までの間は不思議と光莉に欲情することなく穏やかに過ごすことができた。私はこんな風に光莉を見ていたんだと驚くほどに。なんだか光莉と出会ったばかりの頃に戻ったみたいで懐かしい気分になる。
「夜々ちゃん、なにか手伝おうか?」
「大丈夫だから光莉は座ってていいよ。玉青さんのみたいに本格的じゃないからさ」
私が用意しているのはカップにいれてお湯を注ぐだけの紅茶のティーバッグだ。茶葉のと違ってこれなら私にだって淹れられる。なにより今日はお茶ではなくお話がメインなのだから喉を潤す役目を果たしてくれればそれでいい。
「はい、光莉の分」
「ありがとう夜々ちゃん」
光莉の無邪気な笑顔がとても眩しく見える。私とお喋るするのを楽しみにしてくれてたのかな?そう思うと余計に眩しく感じてしまう。私の目にブラインドでも付けられればいいのに。小さなテーブルを挟んで光莉と二人きり。これが最後の光莉とのお茶会だ。
二つのマグカップが並んでいる。まるで親友のように仲良さそうに。熱々の紅茶から立ち昇る湯気がカップを飛び出し空中をふわふわと漂う。時折空気が揺らぐと湯気は楽しそうに踊っていた。これから起こる出来事など知る由もなく、ただただ楽しそうに。入れられた砂糖がスプーンでかき混ぜられて溶けていく。紅茶がとても美味しそうにカップを彩っていた。
「今日は何のお話する?結構色々考えてきたんだ。私部活にまだ入ってないでしょ?だから夜々ちゃんの聖歌隊のお話を聞いてみたいなとか。今度の校外学習楽しみだねってお話とか。夜々ちゃんはどう?」
「聖歌隊って結構大変だよ~。光莉が考えてるより10倍は厳しいかな」
「え~?それはいくらなんでも脅かしすぎだよ」
私もすぐに本題に入るのは怖くて、とりあえず光莉の話に合わせてしまった。失敗したかな?早く切り出さないと、言えなくなっちゃいそうだ。そう思いながらもズルズルと時間は経過していく。すっかり光莉の話題に乗ってしまった。
「あ、ごめんね私の話ばかりで。夜々ちゃん聞き上手だから話すのが楽しくて。次は夜々ちゃんのお話聞かせてよ」
「私の…話ね」
「うん。最初にお話ししようって言ったの夜々ちゃんだし、何か話したいことあるんでしょう?」
「あるよ、光莉に話したいこと。たくさん…あるよ」
自分でも予想してたけどすぐには言葉が続かなかった。どう切り出していいのかは結局今になってもわからないままだ。だからまずは自分の想いを伝えることにした。
「私ね、光莉のことが好きなんだ」
「え?」
一瞬キョトンとした顔を浮かべたけど光莉はすぐに笑って。
「突然畏まって言うからびっくりしちゃった。私もね、夜々ちゃんのこと好きだよ。だ~い好き。だって一番の親友だもん」
目を閉じ胸に手を当てながら私のことを好きだと言ってくれた。その様子からは嘘をついてるなんてとても思えない。本心なんだろうって思う。それは普通の女の子同士であれば最上級の愛情表現と言えるもので、本当は喜ぶべきなんだろうけど。私には…残酷な事実でしかない。嬉しいとは思う。私も光莉のことを親友だと思っている。でも同時に、心のどこかで光莉も私のことをと願う部分がなかったわけでもない。光莉も私と同じであれば、さよならは必要ないのだから…。
(やっぱりそうだよね。そんなわけ…ないよね)
間違いなく光莉は普通の女の子だ。同性に対して恋愛感情を抱いたりはしない。もちろん欲情したりなんて有り得ないだろう。一縷の望みが断たれてようやく諦めがついた。光莉は私といるべきじゃない。そう確信した。
「ありがとう。光莉にそう言ってもらえて嬉しいよ」
「ほんと?じゃあ夜々ちゃんも私のこと親友って思ってくれてる?もしそうなら私たち一緒━━━」
「━━━違うよ」
「えっ?」
自分でも驚くほど冷たく言い放った。それは嬉しそうに喋る光莉の声を遮り、場の空気を一瞬で凍り付かせてしまうほどに。私ってこんな声も出せたんだ。
「夜々…ちゃん?」
驚いた光莉が恐る恐る呼びかけてくる。私はそれさえも断ち切るように。
「━━━私は光莉のこと親友だなんて思ってないよ━━━」
「う…そ」
光莉の声は聞き取れないほど小さかったけど、口の動きでそう言っているのがわかった。そして俯きながら小さな声で尋ねてくる。
「えと。私何か夜々ちゃんに嫌われるようなことしちゃってたかな。もしそうなら言って欲しいな。私ほら、少し抜けてるところがあるから…。自分じゃ気付かないうちに気に障るようなことしたんだと思うから。だから…」
「光莉は何もしてないよ。何にも」
「じゃあっ!」
なんで?とこちらに向けた顔がそう訴えかけていた。でもこれは本当のことだ。だって当たり前じゃないか。悪いのは私なんだから。もし光莉に罪があるすれば…それは可愛すぎることくらいだろう。顔も、性格も、ここまで可愛くなければ私だってここまで愛さなかったかもしれない。
「さっき夜々ちゃん言ってくれたよ?私のこと好きって。なのに…親友じゃないの?あれは嘘だったの?」
「好きだよ。光莉のこと大好き。でもそれだけじゃないの」
「それだけって?」
「私ね、愛してるの。━━光莉のこと愛してる━━」
紅茶が少しずつ冷め始めていた。あれだけ楽しそうに踊っていた湯気も今はもう僅かに揺らめくだけ。溶け切らなかったお砂糖がカップの底に沈殿して静かに佇んでいる。まるで二人を見守るかのように。意味もなく紅茶をかき混ぜるスプーンがマグカップと擦れてカチャカチャと音を立てる。紅茶の色がほんの少しだけ濁り始めていた。
光莉から返事はない。驚いたような、困ったようなどっちとも取れない顔をして私を見つめている。
「ごめん、驚かせちゃったね。私が言いたいのは…光莉の好きと私の好きは違うってこと」
「そんなこと…ないよ。私だって夜々ちゃんのこと…あの、その」
少し待っても光莉の口から愛しているという言葉は出なかった。私だって出るとは思ってない。むしろ出てたら驚いたくらいだ。
そして代わりに出てきた言葉は…。
「ま、待ってよ夜々ちゃん。わ、私女の子だよ?」
「女の子が女の子に愛してるって言ったらダメかな?」
「ダメじゃ…ないけど」
私の返答に光莉は俯いてしまった。光莉はどう思ったんだろう?きっとおかしいって思ったんだろうな。
「よく聞いて欲しいの。私は光莉のことを恋愛対象として見てる。私は元からね、男の人じゃなくて女の子と恋愛をしたかったの。女の子が好き。女の子しか愛せないの!私の好きっていうのはそういう好きなんだ。光莉のこと愛してる。恋人になりたいと思ってる。だから私は光莉のことを親友とは思っていないの」
「ま、待ってよ。えっと、つまり夜々ちゃんは私に恋をしてるってこと?」
「そう…なるかな」
たぶんあんまり伝わっていないかな。そうだよね。光莉には分からないよね。私の答えに光莉は再び俯いたけれど、すぐにパッと顔を上げて冗談めかして笑いながら言った。
「そ、そうだ、夜々ちゃん私のことからかってるんでしょう?私が子供っぽいから、恋愛とか疎くてわからないってバカにしてるんだ。そうなんでしょう?もぉ~夜々ちゃんてば意地悪なんだから。たしかにその通りだけどさ」
私が何も言い返さずにじっと光莉を見据えていると、光莉は不安そうな顔を浮かべ始めた。そしてその不安を振り払おうとするかのようになおもしゃべり続ける。
「ど、ドッキリなら大成功だね?私すっごく驚いたもん。多分今まで一番驚いたよ。私ってやっぱりお子様だな~なんて、ね?夜々ちゃん?だからそろそろ…。あの…夜々…ちゃん?」
ネタバラシしてよと言いたげに光莉が私を見ている。その縋りつくような目に胸のあたりがズキッと痛む。
「光莉ッ!!」
そんな光莉を一喝するように大声で叫ぶと光莉はビクッと身体を弾ませた。少しずつ冗談ではないと気付いてきたのかその顔に緊張が見える。
「私は本気だよ。光莉には信じられないかもしれないけど、世の中にはそういう人もいて、私はその一人なの」
「ご、ごめんね。別に夜々ちゃんのことバカにしてりするつもりはなかったの。ただ、その…受け止められなくて」
「いいの。自分でも分かってる。普通じゃないって」
「そ、そんな…こと…」
直接ではないけれど、力のない声と途切れた言葉が如実に物語っていた。普通じゃないと思っていることを。
「私、女の子同士で恋愛とかそういうの分からないし、なんて言っていいかも分からない。でも夜々ちゃんのこと変だなんて思ったりしないよ。夜々ちゃんは夜々ちゃんだもん」
「本当にそう思ってる?」
「あっ…、う…」
二人の関係を示すように、マグカップの位置が離れている。あんなに近くに居たのに。いつの間にか遠くに。紅茶は冷めきってしまってもう湯気は一筋も出ていない。さっきまで美味しそうだったのが嘘のように今はくすんで見えた。
いきなり女の子に愛してるって言われてもどうしていいかわからないよね。それが普通だよ。
「ご、ごめんね夜々ちゃん。あの…えと…」
光莉は一旦言葉を区切り、気持ちを落ち着かせるように紅茶を口に含んだ。それに合わせて深呼吸も何度か繰り返す。
「恋人には…なれないよ。や、夜々ちゃんが嫌ってわけじゃないの。そうじゃなくてね。本当によく分からないの。友達としての好きくらいしか、まだ知らないの。だから夜々ちゃんが女の子とか関係なく、お付き合いとかそういうのは無理かなって…。ごめんなさい」
「光莉が謝ることないよ。私が一方的に言ってるだけなんだし」
「あ、あのね。恋人にはなれないけどこれからも仲良くしようよ。せっかくルームメイトなんだし。夜々ちゃんとだったらきっと楽しい思い出いっぱい作れると思うの。一緒に学校に行って、みんなと遊んで、休みの日にはどこかへ行ったり、時には部屋でゴロゴロして。私、夜々ちゃんとしたいことたくさんあるよ。だからこれまで通り仲良く━━━」
「━━━出来ないよ」
光莉の優しい提案を跳ね除ける。正直心苦しい。けれど…。これまで通り仲良く、か。それが出来たらいいなって私も思う。でも出来ないからこうしているんだよ。
「夜々ちゃんとしては…気まずい…よね。ごめんね、色々と気が回らなくて。そうだよね、難しい…よね。でもすぐにじゃなくてもいいんだ。しばらくは単なるルームメイトでもいいからさ、よかったら考えてみてよ」
「理由があるの。光莉と一緒の部屋で暮らせない理由が。私はまだ光莉に言わなくちゃいけないことがあるの。それを聞いたらきっと光莉だって納得するよ。ううん、納得なんてものじゃない。私に失望する。失望して…嫌いになるよ」
「夜々ちゃんは大袈裟だよ。私が夜々ちゃんを嫌いになったりだなんて」
「━━光莉のことを性的な目で見てたとしても?━━」
「せい…て…き?」
光莉の目が大きく見開かれる。その驚きようは愛してると告げた時の比ではない。信じられないものを見るような目で私を見ていた。
「うん。光莉のことエッチな目で、イヤラシイ目で見てたんだよ。気付かなかった?本当は今日最初に言おうと思ってたんだけど、怖くて言い出せなかったの。言えば光莉に嫌われるって分かってたから」
ついに言った。言ってしまった。ジェットコースターのように、後は堕ちていくだ。
「エッチって…うそ…でしょ?いくら夜々ちゃんが女の子を好きっていっても、そんなこと」
あるわけない、と光莉は言いたそうだったけど声にはならなかった。
「あるんだよ…そんなことが。私も最初は信じられなかったけどね。単に女の子が好きなだけかと思ってたのに違うんだもん。私の愛してるって、性的な欲求と切り離せないものみたい。おかしいよね。笑っちゃうよね。だって女の子なのに女の子の身体見て興奮しちゃうんだよ?」
「夜々ちゃん私の身体のこと子供っぽいって」
「途中までは…そう思ってた。華奢だし胸も薄いし。でもお風呂でシャンプー渡したときに違う感情が芽生えたの。光莉の身体を見てすごく綺麗だって思った。正直光莉みたいな身体つきの子に興奮するのか、それとも光莉の身体だから興奮するのかは分からない。どちらにせよ私が光莉に欲情してしまうのは事実なの」
「うそ…だよね?夜々ちゃんがそんなはず…ないよ」
初めて光莉の顔に浮かぶ僅かな嫌悪。余程ショックだったのか目尻に涙が浮かんでいる。
「本当だよ。朝の着替えの時だって光莉のこと見たくて見たくて仕方がなかった。今日はどんな下着かな?とか早く脱がないかなって思ってた。光莉が下着姿になると私喜んでたんだよ」
「やめてよっ!」
「学校での休み時間もおふざけで光莉が抱き着いてきたときいつも嬉しかった。制服越しでも光莉のこと抱き締められて、身体に触れることができて。自分じゃ気付かないかもしれないけど、光莉って凄く良い匂いがするんだよ?ミルクみたいな甘~い匂い。その匂いを嗅いでドキドキしてた。叶うならばみんなの前でキスしたいとさえ思ってた。そうすれば光莉を独り占めに━━━」
「━━━夜々ちゃんっ!お願いだからやめてっ!」
荒く息をつきながら叫んだ光莉を前に、私も一旦言葉を切った。見ればポタッ、ポタッと涙が頬を伝って床に落ちている。光莉の目から零れた涙はキラキラ光っていて 場違いだなってわかっていたけど それでも私は奇麗だなって思った。
「もういいよ。これ以上は…言わなくていいから」
「言わないとダメなんだよ。これはケジメなの。光莉のことを裏切り続けたことに対する私への罰。光莉が私のことを信頼してるのを良いことに…私はあなたを」
「もうやだ。聞きたく…ないよ」
「どうしても我慢できなくてあなたがお風呂に入っている時あなたの下着を盗んだことだってある。下着を盗んで、私は…あなたのことを想いながら自分を慰めたの。いけないことだって分かってた。ううん、いけないことだから余計に興奮したあなたが欲しくて欲しくて仕方がなかった。だからあなたが寝ている時だって━━━」
「━━━聞きたくない!聞きたくないよ!私そんなの知りたくない。なんで?どうして!?」
「寝ているあなたを…襲おうとしたのよ。朝起きてボタンが外れてたこと、なかった?」
「っ…!?」
光莉の身体がビクッと跳ねた。その顔がみるみる恐怖で歪んでいく。
「あれは…だって。うそだ、うそだよ。私がきっとボタン止め忘れちゃったんだよ。それか緩くなってて寝てる時に外れちゃったんだよ。私、寝相があまり良くないから…」
「外れてたのって二つ目のボタンまでだったでしょ」
それは外した私だから知ってる事実。私が外した証拠。
「あ、あれ。や…や…ちゃん…なの?夜々ちゃんが外したの?ほ、ほんとに…私のこと…襲おうとしてた…の?」
座ったままずりずりと後ずさりを始める光莉。でも光莉がいるのはドアの反対側だったから、どんどんドアから遠ざかっていった。溢れた涙でぐしゃぐしゃになりながら、怯えた表情を浮かべる。
「あ、ああ。ややちゃ…、うそ」
ドアから最も遠い壁まで行き着いた光莉は、そこで自分の身体を抱き締めるようにしてうずくまった。
(どうしよう、私怖いよ。夜々ちゃんが怖い。こんなの私の知ってる夜々ちゃんじゃないよ。私の知ってる夜々ちゃんは、いつも私のこと助けてくれて、守ってくれて。なのに…なんで)
「どう?光莉もそろそろ分かってきたでしょ?私がどれだけ危険な存在かって。私といると、いつか本当に襲われちゃうよ?」
返事をしようにも声が出なかったのか、コクコクと頷くのを繰り返す。よかった。これで光莉も私に寄り付かなくなる。いっぱい嫌われちゃったけど構わない。全部光莉のためなんだから。そう、上手くいったはずだった…。少なくともこの時の私はそう思ってた。なのに…。
「ま、待って。なんで襲わなかったの?あの晩、夜々ちゃんは私を襲わなかったよね?」
「だから、ボタンが外れて━━━」
「━━━夜々ちゃん自分で言ってたよ。『襲おうとした』って。それってボタンを外したところでやめたってことでしょ?本当に襲うつもりだったなら襲えたのに。それって夜々ちゃんがちゃんと自分を抑えられるって証拠だよ」
「違うっ!襲うつもりだった。私はそれしか考えてなかった。なのに途中で光莉が…寝言で私の名前を呼んだから!それで怖くなって」
「理由はどうあれ途中で止められたんでしょ?だったらまだ大丈夫だよ。今日だって、話をしようって言いだしたのは私に警告をするためなんじゃないの?私のこと心配してくれたんでしょう?」
「それは…」
当たってる。光莉が好きだから、光莉を傷付けたくないからこうしてるんだ。嫌われるために。
「夜々ちゃんは私のこと襲ったりなんかしない。きっとこれからも我慢できるよ。だから、これからもルームメイトでいよう?ね?」
光莉が手を差し伸べてくれている。言葉だけじゃなくて本当に。さっきまでうずくまってたのに、いつの間にか私の傍に来て私に向かって手を伸ばしてる。なんで?どうして?わからない。さっきまで震えてたんだから怖いはずなのに、それでどうして手を伸ばせるの?光莉にとって私はあくまで友情の対象でしかないのに。それとも私が知らないだけで友情ってそんなに強いものなんだろうか?でも…。
「ダメだよ光莉。私覚えてる。光莉の下着で自分の欲求を満たしたことを。パジャマのボタンに手を掛けたことを。次は未遂じゃ終わらない。自分が一番良く分かってるよ」
大丈夫なはずない。一度知ってしまった快楽を我慢できるわけない。それどころかもっと刺激を求めてしまう。鎮められるのは最初のうちだけで、いつかきっと本物の光莉じゃないと物足りなくなる。そうなった時に傷付くのは光莉なのに…
どうすればいいの?どうすれば光莉に分かってもらえる?私が危険だって。傍にいちゃいけないんだって。きっと光莉はまだ欲情するということを知らないから口で言っても分からないんだ。
だったら、だったら…こうするしか…ないよね?
「光莉」
「夜々ちゃん?」
床に座り込んでいた光莉の両肩に手を置き優しく呼びかける。すると光莉は顔をパァッと輝かせながら私のことを見上げた。あれだけひどいことをしたのにまだ私を信じてくれるなんて、本当に天使様みたい。でも、光莉が優しいからこそちゃんと最後まで果たさなければいけないんだ。差し伸べられた手を払いのけないと。
そう決意した私は…。
「ごめんね、光莉」
「えっ?」
私が無防備な光莉を床に押し倒すと、その拍子に足がテーブルに当たって大きく揺れた。上にあったマグカップがガチャンと音を立ててひっくり返る。
とうとうマグカップは倒れてしまった。床に倒れこんだ二人のように。その縁から紅茶が零れだしていく。とっくの昔に冷めた紅茶がテーブルの上を走り回り模様を描いていった。そして何かから逃げ出すようにテーブルの端へと向かっていく。果たして紅茶がカップに戻ることは出来るんだろうか?
光莉は何が起きたからわからないといった様子で瞬きを繰り返した。抵抗することもなく、私のことを見上げている。
「うそだよね…夜々ちゃん。夜々ちゃん?」
何も答えることなく無言で光莉に覆いかぶさる。
「わ、私信じてるからね?夜々ちゃんはこんなことしないって。これもきっと私を怖がらせるための演技だって。ねぇ夜々ちゃん、返事をしてよ」
光莉の頬に手を掛けてその瞳を覗き込むと、そこには強い意志が感じられた。私のことを信じるという強い意志が…。私はこの想いを踏みにじり折らなければならないんだ。
「ごめんね光莉。私もうダメみたい。私を信じてくれるあなたのこと欲しくなっちゃった。だって可愛いんだもの」
「欲しいって…」
「光莉と一つになりたいの。私と一緒に暮らすってこういうことだよ?」
「お、落ち着いてよ。とりあえず私の上から…ひゃあっ!」
光莉の太ももに手を伸ばし優しく撫で上げると光莉は可愛らしい悲鳴を上げた。
声を上げたのが恥ずかしかったのか顔がみるみるうちに赤くなっていく。私は太ももを撫で続けながら耳元で囁いた。
「光莉って案外おませさんなのね」
「ち、違うよ。突然だったからびっくりしただけ。そんなんじゃ」
「そんなことない。━━今の声すっごくエッチだったよ━━」
私の囁きに光莉の顔色が変わった。紅潮していた顔が途端に青ざめていき、自分の身体を守るように両手を胸の前で交差させる。
「や、夜々ちゃん?」
「ほら、手をどけてよ。でないと光莉に触れられない」
「や、やだ!やめてよ夜々ちゃん。私はそんなの望んでない。私は夜々ちゃんと前みたいに仲良く」
身体も声もどちらも震わせながら必死に訴えかける光莉の姿に、私の胸がズキズキと痛んだ。その痛みはまるで針で刺されたみたいで、呼吸も覚束ない。けれど私は…光莉に言い放った。光莉が少しでも傷付くように。自分の心も切り裂きながら。
「あ~あ。なんだか飽きてきちゃったな。━━光莉との友達ごっこ━━」
「えっ…?夜々ちゃん…なにを…言って」
光莉は口をパクパクさせながら言葉を絞り出した。
「だから~友達ごっこって言ったの」
「友達…ごっこ…?」
出来る限り口の端を吊り上げ、邪悪な笑みをしてみせる。
「まだ気付かなかったの?私は光莉との友情なんてどうでもよかったんだよ?今日だって遊びの一環。私の本性知ったらどんな顔するかなって思ってさ。そしたら面白いの。光莉ったら急に友達ごっこ始めるんだもん。何度も笑いそうになっちゃったよ」
「冗談…だよね?」
「そうそう、その顔とっても可愛いよ。あっそうか。光莉としてはここで冗談だよって言いながら優しく抱き締めて欲しかったのかな?」
「うそ…。あっ、だって。わたし、わた…。本気で」
「いいよね。光莉は可愛いからさ。そうやって可愛い子ぶってればみ~んなが優してくれるんだもの。欲しいものは何でも手に入ると思ってた?」
「ひ、ひど…いよ。私、夜々ちゃんのこと信じて…たのに」
嫌いになれ。嫌いになれ。私のことなんて嫌いになってしまえ!早く、一秒でも早く。お願いだから。そうでないと壊れてしまう。光莉より先に私の心が…。
「またそれ?だからさ~飽きちゃったんだって。それもうやめよ?そんな遊びじゃなくて私ともっといいことしようよ。友達ごっこなんか忘れさせてあげる」
「う、ぐすっ。夜々ちゃんひどいよ。ごっこじゃないもん。ごっこじゃ…ない」
とうとう完全に泣き出してしまった光莉の手首を掴み強引にこじ開ける。光莉の顔はもうクシャクシャに歪んでいた。
「そういうめんどくさいのどうでもいいからさ。光莉は身体さえ好きにさせてくれればそれでいいんだよっ!」
「や、やだぁ!やだぁ!放してぇ。こんなの夜々ちゃんじゃない。私の知ってる夜々ちゃんじゃない。助けてぇっ!夜々ちゃん!夜々ちゃん!」
暴れる光莉の足がテーブルを蹴り再び大きく揺らすと、マグカップはガチャリとその身を擦らせ不快な音を立てた。
ヒビでも入ってしまったんだろうか?少し見ただけではよくわからない。マグカップの中は空になり残っているのは底にへばりついていた砂糖だけ。紅茶はテーブルの上をひとしきり走り回ると、今度は床へとダイブしていった。一体どれほどの紅茶が流れ出したのだろう?それは涙の量と同じくらいだろうか…。それを知る者はここにはいない。
「光莉の信じてた南都夜々はもういないのっ!いい加減認めなさい」
「いやだ。いやだいやだいやだっ!私が認めたら夜々ちゃんは本当にどこかに行っちゃう」
「どうして!?こんなひどいことしてるのになんでそんなに信じられるのよ」
「いつも助けてくれた。いつも守ってくれた。私のこと大切にしてくれたのは私が一番知ってるもん。夜々ちゃんよりも私の方が知ってるよ!夜々ちゃんと意味は違ったって私だって夜々ちゃんのこと大切に想ってる。だからっ!」
なんで?なんでわかってくれないの。いつかこうなるのに。遅いか早いかの違いでしかない。今日じゃなくて1週間後とか1か月後とか。そういう違いでしかないのに。どうして!?
(光莉…拒絶してよ 早く。早く。そうでないと本当にあなたを襲うことになってしまう。そうしないために努力してるのに)
これ以上はしたくなかった。途中で私に失望して離れてくれればそれで済んだのに。必死で押さえつける私と、同じくらい必死で抵抗する光莉。揉みくちゃになって押さえつけるのだって大変だ。
ジタバタと藻掻く光莉を押さえていた手が光莉のブラウスを掴んだ…。そして…。
「あっ…」
私の情けない声と共にブチッと千切れたボタンが放物線を描いて宙を舞う。その光景はやけにスローモーションで、私はそれを呆然と眺めていた。
直接手を出すつもりは全くなかった。怖がらせるだけの…つもりだったのに。一瞬遅れて聞こえてきたのは声にならない悲鳴。
「あ、あああ。夜々ちゃん。夜々…ちゃん」
思わずごめんと謝りそうになるのを堪えながら私は光莉に手を伸ばした。そうだ、これでよかったんだ。どうせ嫌われるんなら、とことん嫌われたほうがいい。その方が光莉にとっても良いことじゃないか。
「光莉」
「っ!?いやぁああああああああああああ!!」
パンッと乾いた音が部屋に響き、気付いたら顔は横を向いていた。衝撃を感じた頬が少し遅れてヒリヒリと痛みだし、やがてジンジンとしたものへと変わっていく。
「━━━ライ。キライ。キライキライキライ。夜々ちゃんなんて嫌い。大っ嫌い!」
「ひ…かり」
「もう夜々ちゃんなんて友達じゃない!夜々ちゃんのバカぁーーー!!」
返事をする間もなくドンという鈍い痛みを感じると、私は後ろに倒れこんだ。どうやら突き飛ばされたらしい。光莉は胸元を押さえながら立ち上がると部屋の外へと駆けだしていく。その背中に向けて私は届かない呟きを口にした。
「さよなら光莉」
二つのマグカップはどちらも粉々に砕けてしまっていた。実際にはそうでなくとも、そう…見えた。テーブルから床へと紅茶が滴り落ちている。重力に逆らえず、ぽたりぽたりと。もう戻る場所はない。戻るべき場所は砕けてしまっているのだから。だから紅茶は戻らない。もう二度と。カップに残された砂糖がキラキラと輝いていて、それはまるで二人の楽しかった思い出を映す記憶の欠片みたいに悲し気な表情を浮かべていた。
「終わっちゃった。終わっちゃったよぉ。光莉ぃ。好きだったのに、愛していたのに…」
一人ポツンと取り残された部屋の中で、走馬灯のように光莉との日々が頭に浮かんでは消えてき、私は泣き崩れた。これでよかったのだと、自分に言い聞かせながら。
<バイバイ>…南都夜々視点
「部屋を変えて欲しい?」
不審そうに私を見ながらスピカの生徒会長は首を傾げた。光莉にビンタされた頬が少し赤くなっていたので仕方ないとは思うけど。
「はい。勝手なお願いだとは思いますが至急お願いできないでしょうか」
「それに見合う理由があれば考えないこともないけど…。一体どうしたというの?編入生の光莉さんとは上手くやれてるって聞いてたけど」
言外にビンタの痕のことを聞いてるんだと分かった。
「喧嘩をしてしまって。これはその時光莉に…。でも私が悪いんです。私が光莉の悪口を言ったから、それで…」
「喧嘩…ねぇ。仲直り出来そうにないの?」
そう尋ねるのは当たり前だろう。いちご舎だって無限に部屋があるわけではない。喧嘩したからといって毎度部屋を別々にしていたらあっという間に部屋が足りなくなってしまう。
「それは…無理です。だからお願いします」
深々と頭を下げた私を見て、困ったわね、と言いつつも事情を汲んでくれたらしく。
「とりあえず部屋は用意してあげる。ただし荷物は自分で運びなさい。いいわね?」
「ありがとうございます」
どうにかお許しが出て私は生徒会室を後にした。光莉が戻ってくる前に荷物を運び出さないといけない。
(といっても、しばらくは戻ってこないだろうなぁ)
その予想通りに私が全ての荷物を運び出し終えても光莉は戻ってこなかった。しばらくベッドに腰掛けて帰りを待ってみる。
(光莉を待って、私は一体どうするつもりなんだろう?あんなことをしておいて何て声を掛けるつもりなんだろう?意味ないのにな…。私ってばバカみたい。もう行こう)
そう思って立ち上がると部屋の入り口に光莉が立っていた。偶然にしては出来過ぎだ。
「ひ、光莉」
「部屋…出てくの?」
荷物が一つもないことからどうやら察したようだ。
「うん、出てくよ」
「そう…なんだ」
会話が続くはずもなく辺りはシンと静まり返った。私はこれ以上いても無意味だと感じ、部屋を出るために光莉の方へと進む。すると光莉は私に怯えたのかビクッと身体を硬直させて目を伏せた。
「っ…」
私はそれだけのことを光莉にしたんだ。何を今更驚いているんだろう。私が選んだ道だ。これでいいんだ。
光莉に触れることはもう叶わないだろう。だからせめてさよならだけ…。
「ごめんね光莉。怖かったよね?ごめんね。でも安心して。私はもう光莉の傍には近付かないから。━━だからバイバイ…光莉━━」
※改稿内容について。改行だけ入れました。
夜々ちゃんと光莉ちゃんの過去回想2回目です。いかがでしたでしょうか。前回の後書きはネタバレになるからと色々書くの諦めたんですけど今回は多少は書けそうです。アニメでは光莉ちゃんに手を出してしまった夜々ちゃんですが、この作品では自分の想いに気付き自ら身を引くという選択肢を取った夜々ちゃん。まさに愛ゆえに、といった感じですね。私の中では夜々ちゃんは元から女の子大好きという静馬様タイプに分類されるんですが…。果たして静馬様ならどんな選択をしていたのか気になりますね~。あっさりとベッドに押し倒した挙句に色々と事が済んだ後で「女の子同士も悪くないでしょ?」なんてセリフを言いながら相手の女の子の頭を撫でて慰めてそう。う~む流石エトワール様、お強い!
さて肝心の夜々ちゃんですが、好きと愛してるの狭間で苦悩するのではなく、『愛してる』がもう明確にあってそのうえで自分のモヤモヤに思い悩むという非常に濃いキャラクターを目指して書いたつもりです。回想時点だと中学2年生なんですけどすでに自分の中にしっかりした恋愛観があるという非常に大人びた性格の夜々ちゃん。カップリングの数だけ思い悩むポイントも違うのかなとは思っていて、好きから愛してるの間とか、愛してるけど肉体関係は興味ないよとか。色々あるとは思いますがこういったテーマをメインに扱えたのは夜々ちゃんならではかなぁって。やっぱり私にとって魅力的なキャラクターだなと再確認できました。
前回を読んでいただいた方の中には夜々ちゃんの暴走っぷりにびっくりしてしまった方もいるかとは思いますが、今回分も合わせることで多少なりとも夜々ちゃんの見え方が変わったらな、と。ただただ欲望の赴くままに行動するキャラではないと思っていただけたら幸いです。夜々ちゃんは本当に良い子なので、なにとぞよろしくお願いします。
一応予定としては次章で夜々ちゃんと光莉ちゃんの過去回想を終わりにしようかと思っています。玉青ちゃんや深雪さんのお話も書きたいと思いつつ、夜々ちゃんの話も終わらせたくないという贅沢な悩みを抱えつつ今回はこの辺で。それでは~。