バジリスク~狂賀忍法帖~   作:淫欲童子

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愛する者よ動き候へ

駿府城

 

「して、徳川の跡取りについて良きあんは無いのかのう」

 

皺だらけの顔に顎が膨れ上がった老人、徳川家康が、小柄の痩せ細った老人に語りかける。周りには武士の出で立ちの男が一人と忍が一人のみ

 

「長男、竹千代様と次男、国千代さまにござりますれば、竹千代様にあっては不穏な噂は絶えずして、しかし両者のお家争いに会っては血を血で洗う惨劇、重臣守役にいたるまで骨肉の争い」

 

「ふむ、竹千代はワシの子ではないとの噂か」

 

「成長するにつれ清談な顔立ちであるものの似ておらぬとほっほっほっ」

 

「そのようなことどうでも良い。してなにか無いのか?天海」

 

「ここは武家らしく剣の十番勝負をと思いましたが、これまた徳川の侍をこのようなことで潰すのは惜しい。なれば忍による十番勝負にて決着をつければよろしいかと。忍にあらばさして痛くも痒くもなし。」

 

「よかろう」

 

「お待ちを!」

 

そこへ一人の忍が割ってはいる

 

「なんじゃ、服部半蔵」

 

「はっ、もし伊賀と甲賀をお使いになられるのであれば、今一度御一考の程を、初代半蔵より賀神の逆鱗に触れることなかれとのことを伝えられておりますれば」

 

パシッ

 

扇子を閉じる

 

「時代将軍は忍法対決にするかは御前試合を見て決めよう」

 

「お待ちを」

 

「くどい!」

 

「・・・・・・」

 

「天海、すぐに文を飛ばせ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊賀お幻屋敷

 

「刃様!お許しを!蛍火は壊れてしまいますゆえ!何とぞお許しを!」

 

「はぁ!はぁ!刃殿!朱絹にもお情けを!」

 

屋敷の一室からはここ5日間艶声が鳴り響いていた

 

「刃様!御婆様がお呼びです。」

 

「小四郎か」

 

刃は部屋から出てくると小四郎についていく

 

お幻は神妙な赴きで座っている

 

「お幻ちゃん、どうした?」

 

「御前試合じゃ、伊賀と甲賀の」

 

「へぇ、それで?最初は夜叉丸を連れて行こうとおもうたがお主を連れて行こうと思う」

 

「なぁ、お幻ちゃんはどう思う?」

 

「さてのう」

 

「俺は臭いな、なぜ御前試合なんだ?たく、あいつらの祝言が間もないというのに全く」

 

「なにもなければ和睦が成立いたす」

 

「本気でそう思っているのか?」

 

「主もこれを待ちのぞんだのであろう」

 

「あぁ、無理やり和睦するのも簡単だかできるなら死んでいった奴らを犬死にはしたくないものだ。」

 

「主が本気を出せばこの長きに渡る因縁も終わっていたのでは無いか?」

 

「買い被り過ぎだ。そんなことならとっくに終わらせているさ。なぜ同じ人が争わなければならないのだろうな」

 

「それが定めというものじゃ」

 

「・・・・そうかい」

 

刃は縁側に立つと

 

「朧」

 

思い出すのはくりくりとした目の可愛らしい子供

 

「成すべきことを成せなかった俺に朧は光をくれた・・・・・そしてあいつと弦之介が会い弦之介も新たな光となった。俺はあいつらには幸せになって欲しいと思う。」

 

「そうじゃのう。願わくば平安の世を生きて欲しいものじゃ」

 

刃が思い出すのは、にぃやと叫びながトテトテとついてくる朧と小生意気につんけんしてくる幼き日の弦之介である

 

「朧は泣き虫でなぁ。よく泣いていた。それがどうだ今や恋煩う女になった」

 

「そうじゃのう」

 

「もし、昔に戻れるとしたら、弾正と平安の世を生きたいか?」

 

「いまさら思うても先無きこと。いかにお主の秘術とて時はもどせまい?」

 

「まぁな」

 

「さて、明日は駿府へと立つ」

 

刃は一人縁側で空を眺め続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駿府城

 

今、御前試合が始まろうとしていた。控えるは大御所徳川家康、徳川家指南役柳生宗矩、徳川忍組頭服部半蔵、伊賀のお幻、甲賀弾正

 

 

そして

 

「まさか、相手がお前とはなぁ将監」

 

刃の目の前には蜘蛛のような出で立ちの男が立っている

 

「かかか!まさかお主とはなぁ」

 

二人は睨み合う

 

「草水炎」

 

「ぬう!それは火紋字の!?」

 

「かっ!」

 

刃は炎を吐き、将監は炎をよけると痰をはく

 

「ほっほっほっ!甲賀卍谷衆が風待将監が淡はにかわのこどし粘りはその百倍よ、捕まればいかに刃とて逃げられん」

 

「ひっひっひっ!伊賀鍔隠れが加賀の前には如何様な忍法であろうと形無しよ」

 

刃と将監は庭で火の玉と痰を飛ばしあい牽制し合うものの火の玉のスピードは忍からすれば遅い

 

「将監よ、痰だけがお前の忍術か?」

 

「ぬかしよる!」

 

将監は歯の隙間から糸を出すように撒き散らし、刃は屋根へと逃げるが、最上部において腕が捕まる

 

刃までの間には蜘蛛の巣のようなものが出来上がっている

 

「かっかっかっ、さて、ゆっくりねぶるとするかのう」

 

将監は獲物を捕まえた蜘蛛のように近寄るが

 

「阿呆が!草水炎!」

 

今までにない豪火がまるで爆風のように広がり蜘蛛の巣を焼き払う

 

 

ぼっ!

 

炎の中から燃えかけるなにかが飛びだす

 

それはゴロゴロと転がると煙りを出しながら小刀をかまえる

 

風待将監である

 

将監は痰を、刃は炎を、打ち合う

 

 

「もうよい、やめさせよ」

 

大御所、家康公の一声により

 

「「それまで」」

 

お幻と弾正の声により二人は攻撃をやめる

 

お幻と弾正は家康の前に頭を下げると将監はその後ろに行き家康に頭を垂れる

 

 

 

 

 

「よう、あんたが今代の服部か?」

 

「さよう、しかし大御所の御前無礼であろう」

 

「先代の服部にはやられたよ。まさか俺が引き分けるとはなぁ。だがよう、お前は俺を止められるかい?」

 

「・・・・・・・」ギロリ

 

「・・・・・・・」

 

家康の顔が険しくなり

 

「刃よ。控えよ」

 

刃はお幻の後ろにいくと他は土下座しているところ片膝をつき軽く頭を下げるのみ

 

「まさか柳生の隣国にこのような者がおったとは、この宗矩不覚にござる」

 

「先代、服部半蔵より伝え聞いてはいたがこのものらの忍法は常のものを越えております。そして、ここにいる賀神は初代や先代服部半蔵をもってしても引き分けることしかできなかった化け物にございますれば」

 

「うむ、伊賀のお幻、甲賀の弾正。たいへん良いものを見せてもらった」

 

「「はっ!」」

 

「して、徳川の世継ぎを決める為。命賭けの忍法勝負をしてはくれぬか?」

 

「あ?」

 

ドスの効いた刃の声とともに一帯には殺気が充満する

 

「お幻、帰るぞ」

 

「徳川に逆らうと?」

 

大御所徳川家康、殺気のなか堂々と返す

 

「逆らうねぇ?服部が不戦の約定、次は徳川の御家騒動の為に戦ってしねと?戦ならいざ知らず」

 

「家督争いも、戦も、何も変わらぬ」

 

ピシッピシッと周りの砂利にヒビが入る

 

「伊賀、甲賀、ともにたくさんの血を流した。次流す血が天下のためならいざ知らず!御家騒動だ?嘗めてるのか?」

 

「家督争いで城内骨肉の争いが起きておる」

 

「だからどうした」

 

家康の君主としての覇気と刃の殺気があたりに立ち込める

 

「控えよ刃!伊賀鍔隠れが棟梁はこのお幻じゃ」

 

刃は家康と睨み合ったまま何も語らないが弾正が口を開く

 

「もとより、甲賀と伊賀は400年の怨敵どうし、徳川の御為といわずとも、初代服部半蔵様より定められし不戦の約定といてくださればすぐにでも」

 

「伊賀とて、もとより」

 

「お幻!弾正!」

 

「かっかっかっ!臆したならそう言えばよいものを」

 

「黙れ将監!この意味もわからぬ愚か者が!」

 

家康はニヤリと笑う

 

「服部」

 

「御意のままに」

 

「よくぞ申した服部!しからばこの2巻に各々十人の忍者の名を記せ」

 

それぞれが巻物を受けとる

 

「お幻、小四郎か夜叉を外せ。これからの伊賀を担うのはどちらかだ。どちらも腕は戦闘向き、今後何かあっても大丈夫であろうよ。それに、女の棟梁なら苦労も多かろう」

 

「うむ、主の予感があたりよったの」

 

お幻は巻物に名を書くと家康に渡す

 

「これをもって、次男国千代派は甲賀に、嫡子竹千代派は伊賀に徳川家三代将軍の命運を託すものとする。双方、闘い殺しあった末、この秘巻をもって生き残った者を勝者として一族栄録千年を約束しよう!!」

 

「くそったれが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲賀十人衆

 

甲賀 弾正

甲賀 弦之介

風待 将監

地虫 十兵衛

霞  刑部

鵜殿 丈助 

如月 左衛門

室賀 豹馬

陽炎

お胡夷

 

 

 

 

伊賀十人衆

 

お幻

賀神 刃

小豆 蠟斎

雨夜 陣五郎

蓑 念鬼

筑摩 小四郎

薬師寺 天膳

蛍火

朱絹

 

 

 

 

 

 

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