痛みを識るもの   作:デスイーター

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未来を識るもの

部隊得点追加点生存点合計
那須隊81211
弓場隊71 8

 

「試合終了……っ! 弓場隊長を那須隊長が撃破し、那須隊には生存点が加算。11:8で、那須隊の勝利です……っ!」

 

 羽矢の宣言と共に、会場が沸き上がる。

 

 互いのエース同士がぶつかった、最終局面。

 

 高度な駆け引きの末の、決着。

 

 今の攻防がどれだけのレベルか、此処にいる正隊員達は理解しているだろう。

 

 だからこそ歓声よりも、感嘆が先に来る。

 

 ただ、高いレベルの戦闘に沸くだけではない。

 

 いつか、あそこに。

 

 そんな想いを、此処にいる誰もが抱いているのだから。

 

「凄まじい攻防でしたね。個人的には、風間さんが落ちた事が何より驚きです。見せて頂いたA級ランク戦のログでも、中々落ちた姿を見ていませんし」

「あいつも落ちる時は落ちる、ってこった。それに俺ぁ、七海が落ちたのも驚きだぜ? 確か今期のランク戦じゃ、東さん相手にしか落ちてなかっただろ」

 

 風間と七海。

 

 この二人は、どちらも試合で落ちる事は早々ない。

 

 風間は積み重ねた経験と、その観察眼故に。

 

 七海は、そのサイドエフェクトを活かした回避能力故に。

 

 彼等が落ちる、という事は滅多に無い。

 

 無論、東レベルとまではいかないが、それでも充分に驚嘆すべき生存能力を持っている。

 

 七海が今期のランク戦で落ちた回数は、僅かに二度。

 

 ROUND3で東に狙撃された時と、ROUND5で東に捨て身で挑んだ時のみだ。

 

 そして今回はROUND5と同じく、捨て身の策。

 

 つまり、そこまでしなければ獲れない、と七海が判断したという事でもある。

 

「犠牲なしでは落とせない、と踏んだのでしょうね。風間さんは、生存能力が高いですから」

 

 生存能力の高い駒、という性質はランク戦ではこの上なく厄介だ。

 

 何せ、相手を全滅させなければ生存点を取れないランク戦で、追加点を得る為の最大の障害と成り得るのだから。

 

 しかも、そういった駒は往々にして厄介な能力を持ち確かな実力を誇る。

 

 東であれば、他に比類しない戦術能力に変態的な狙撃技術が。

 

 二宮であれば、圧倒的なトリオンによる弾幕の暴威が。

 

 七海であれば、非常に高い機動力とえげつない攪乱能力が。

 

 それぞれ確かな脅威として、存在している。

 

 相手からすれば無視出来ないが、かといって易々と落とせる相手では無い。

 

 ただ単純に強い相手よりも、ある種厄介な相手でもあるのだ。

 

 風間の場合は、ただただ()()()()()

 

 近界遠征を含めた、長年の戦闘経験。

 

 状況を俯瞰する観察能力と、それを活かす判断能力。

 

 情報収集を怠らない貪欲な姿勢と、常に冷静さを失わない精神力。

 

 そしてそれらを下敷きとした、高い戦闘能力。

 

 自らの力に驕る事もなく、あらゆる状況に冷徹に対処する。

 

 それが、風間の強さ。

 

 倒すには七海がその身を犠牲にする他無いと判断した、傑物なのである。

 

「今回、風間さんを倒す為に那須隊は隊の力を結集しました。七海隊員が捨て身で特攻し、日浦隊員が転移狙撃を敢行。そしてシールドを那須隊員が破壊して勝負を決めた。見事な戦術ですが、逆に言えばこれだけやってようやく倒せた相手、という意味でもあります」

「だな。誰か一人でも欠けてりゃ、風間の野郎は落とせなかっただろーぜ」

 

 諏訪は苦笑いしつつも、そう告げた。

 

 風間とは同い年で腐れ縁な諏訪であり言葉も乱暴だが、その実力は当然認めている。

 

 気の置けない間柄だからこそ、その圧倒的な実力は他よりも良く知っている。

 

 だからこそ内心、その風間が落ちた事に誰より驚いていたのが彼である。

 

 先ほど口には出さなかったが、風間の実力を知るからこそ、諏訪は彼の攻略を成し遂げた那須隊に感心していた。

 

 前期まで奮わなかった部隊とは、とても思えない。

 

 今期での那須隊の成長度は、矢張り桁が一つは違う。

 

 何処か眩しいものを見るような目で、那須隊を見ていた諏訪であった。

 

「しかし、七海も凄ぇが那須もやべぇな。相手の移動先とか完璧に読み切って、キッチリ嵌め殺してるじゃねぇか」

 

 どんな頭してんだありゃ、と諏訪が溢した。

 

 確かに、最終局面における那須の所業は、驚愕するしかなかった。

 

 連携の拙さを技術力で強引にカバーし、外岡の転移先まで読み切り仕留めた手腕。

 

 そして、仲間の援護を行いながらも弓場に理不尽な二択を迫ったと見せかけ、隠れた本命の一発で仕留める強かさ。

 

 オペレーターの支援ありきとはいえ、空間把握能力や行動予測の精度が半端ではない。

 

 改めて、那須の脅威を実感した諏訪であった。

 

「那須隊長は、バイパーの特性を十全に活かした立ち回りをしていましたね。真の性能を引き出している、と言っても過言では無いでしょう」

「まあな。バイパーといえば那須、ってくらいにゃ知られてるしよ」

「いずれにしても、那須隊長の技術と空間把握能力、そしてオペレーターの高い解析能力あってこその結果です。射手の中でも、個人戦闘能力はトップクラスと言っても過言ではないでしょう」

 

 サポーターとしても優秀ですしね、と村上は語る。

 

 確かに那須はその派手な機動力と弾幕のインパクトが強いが、サポーターとしても非常に優秀だ。

 

 今回も最後に七海と茜の支援を完璧に成し遂げてみせたし、そもそも前衛がいてこそ輝くのが那須である。

 

 高い実力を持つ者を前衛に出来れば、那須は相手の攻撃を気にする事なく弾撃ちに専念出来る。

 

 今回は足が削れた為に嵐山との連携で凌いだのが、良い証拠だろう。

 

 無理に自分で点を取る必要はなくなったが、いざとなれば点取り屋にもなれる。

 

 その柔軟性が、ある意味最大の武器と言えよう。

 

「さて、では総評に移って頂きます。お二人とも、お願いします」

「了解しました。では、最初からおさらいしていきましょうか」

 

 村上はそう告げると、顔を上げた。

 

「まず序盤。市街地Dという特殊MAPと暴風雨という天候になりましたが、これが図らずもある程度試合の方向性を決定づけましたね」

「モールに入っての屋内戦、だな」

 

 そうです、と村上は諏訪の言葉を肯定した。

 

「屋外では、天候の所為で視界も悪く、射程持ちが多い那須隊と戦うには環境が悪い。だからこそ、弓場隊は迷うことなく屋内戦を選びました」

「那須隊も、点が取れなきゃ意味がねーからな。結果としてモールに全員が集まったワケだ」

「モール内も、那須隊からしてみれば上下に広く障害物が多い為に悪くない戦闘環境でしたからね。そこまで抵抗感もなかったでしょう」

 

 それに、と村上は続ける。

 

「七海隊員が、最上階へ転送されていた事が最も大きかったように思えます。開幕爆撃開始で、主導権を取れましたからね」

「結果的に、神田を釣り出せたしな。まあそれも弓場隊(あいつら)の作戦のうちじゃあったが、最初にイニシアチブを取れた、ってのはデカイな」

 

 二人の言う通り、七海が最上階へ転送されていた事は大きなアドバンテージであった。

 

 吹き抜けを通じて爆撃を広範囲に仕掛けられる為、弓場隊としては即座に対処する以外の選択肢は無い。

 

 ビッグトリオン偽装の為の思惑もあって神田が出て行く事に迷いはなかっただろうが、それでも釣り出された、という事実は消えない。

 

 最初の流れを掴めるか否か、というのは結構尾を引く場合が多いのだから。

 

「その後は熊谷隊員がビッグトリオンであると早々に判明して、神田隊員はそれに乗じてエスクードを展開し自身がビッグトリオンであると偽装する事に成功しました。熊谷隊員相手だった、というのも大きかったですね」

「熊谷がビッグトリオンだったから、同じように派手にやらかしたから神田もそうだ、って思い込んじまったしな。まんまと騙されたぜ」

 

 直前に熊谷が隠す事なく自身がビッグトリオンであると喧伝する行動を取っていた為、神田の偽装が巧くいった、という面は確かにある。

 

 要は、既視感によるものだ。

 

 直前に熊谷が派手に弾をばら撒いてビッグトリオンであると証明した為、同じようにエスクード大量展開という目立つ真似をした神田も同じ状況である、と誤認し易い状況だったというワケだ。

 

 実際は大部分のエスクードは隠れていた外岡が出したものだが、状況を巧く利用してそれを気付かせなかった、というのは大きいだろう。

 

「その後神田隊員が離脱して、最上階と五階での戦闘が始まりましたね」

「あれで主戦場が決まったみてぇなモンだったな。まあ、下手に下にいっと爆撃が降って来る危険もあったから当然っちゃ当然だがよ」

 

 そう、七海が最上階に陣取った時点で、下層にいるリスクはかなり高まっていた。

 

 事実、七海は爆撃連打で下層にいる神田を炙り出そうとしていたし、主戦場が移動した以上下層に留まり続ける意味は無い。

 

 上層が戦場になったのは、当然の結果と言えるだろう。

 

「そんで佐鳥が帯島を撃って、木虎が離脱して帯島が追ったな」

「あそこで帯島隊員が重傷を負ったのは、どちらにとっても影響が大きかったですね。そうでなければ、他の隊員が追っていた可能性もあったでしょう」

「まあ、結果としちゃ木虎と帯島が相打ちみたくなったんだが。てか、今回相打ち多かったよな。大体相打ちで落ちてるしよ」

 

 確かに諏訪の言う通り、今回の試合は相打ちのような形で落ちる事が多かった。

 

 最初に落ちた熊谷と歌川。

 

 次に落ちた木虎と帯島。

 

 最上階で相打った佐鳥と菊地原。

 

 五階の戦闘で落ちた時枝と神田。

 

 そして、風間と相打ちとなった七海。

 

 殆どの隊員が、相打ちの形で落ちている。

 

 一度や二度ならまだしも、合計5回。

 

 確かにこれは、いくら何でも多過ぎるというものだ。

 

「恐らく、お互いの隊の事情が重なった結果でしょうね。今回は、どちらもより多くの得点が欲しかった。それこそ、失点よりも優先して」

「あー、そういう事か。確かに、どっちも失点より得点を取るわな」

 

 諏訪は村上の言葉に得心したように頷き、顔を上げた。

 

「今回那須隊と弓場隊にゃあ、10点の点差があった。だから那須隊としちゃあ弓場隊がある程度得点しても追いつかれる心配はそうねぇし、何より二宮隊を上回る得点が欲しかっただろうしな」

「弓場隊も、今回は相手が四人部隊が2チームという巧くやれば大量得点が狙える相手でしたからね。少しでも得点が欲しい身としては、前のめりになるのも頷けます」

 

 そう、今回の試合開始時のお互いの得点は弓場隊が15Ptで那須隊が25Pt。

 

 弓場隊は少しでも多く点が欲しい状況であり、那須隊もまた二宮隊がどれだけ得点するか分からない以上より多くの点が欲しい。

 

 だからこそ、多少の失点には目を瞑り多くの得点を重ねる方針としたのだろう。

 

 そういった事情が重なった結果、相打ちが多く発生する事になったワケだ。

 

「いずれにせよ、今回は総じてレベルの高い戦いでした。互いの戦略の読み合いと、高い地力のぶつかり合い。かなり見応えのある試合でしたね」

「だな。これまで見た中でも、屈指の名勝負と言って良いかもだ」

 

 二人は口々に双方を称賛し、顔を上げた。

 

「弓場隊は、戦術は見事と言う他無いですね。ビッグトリオン偽装の戦略は、かなり効果的でした」

「ああ、木虎をあそこで落とせたのはでかかったしな。全体的に、巧く嵌まってたと思うぜ」

 

 強いて言うなら、と諏訪は続ける。

 

「この戦略が巧く嵌まったのは、市街地Dっつう特殊な地形だった、ってのも大きかったかもしんねーな。まあ、運も実力のうち、って事かもしんねーがよ」

「その場合は、また別のプランがあったのではないでしょうか。MAP選択がランダムである以上、どんな地形でも戦えるよう戦略は練っていたでしょうし」

「ま、それもそうか。ならホントに言う事はねーな。巧くやったが、読み負けちまった、くらいしか言いようがねーしよ」

 

 

 

 

「確かに、諏訪さんの言う通りですね。あそこで読み負けたのは俺の責任っす」

 

 外岡は解説を聞きながら、そう言って陳謝する。

 

 そんな外岡に弓場はギラリと眼鏡を輝かせ、ポン、と肩に手を置いた。

 

「外岡ァ、んな事誰も思ってねぇよ。読み負けたのは俺も同じだ。おめェー1人に責任おっ被せるとでも思ってんのか、コラ」

「そうですよ。それを言うなら、俺も那須さんの戦術能力の想定が甘かった。充分高い評価を下していたつもりですが、更にその上を行かれましたしね」

 

 そう、今回は誰一人として那須隊を、那須を甘く見た者はいない。

 

 その能力の高さと技術力は、誰もが実感している。

 

 だが。

 

 かなり高めに考えていた想定すら、那須は軽々と超えて来た。

 

 オペレーターの支援ありきであったとはいえ、あそこまで行動を読み切られるとは考えていなかった。

 

 戦術自体が悪くなかった分、口惜しい、と感じているのは誰もが同じだろう。

 

『そうだな。那須の成長は俺の想定以上だった。それに、こちらも非が無いとは言い切れない』

 

 菊地原も佐鳥に嵌められたしな、と風間は通信越しに告げる。

 

 通信の先で菊地原がむぅ、と唸っているのが聞こえるが、それは聞かなかった事にした。

 

 此処で絡めばどう返して来るか予想出来る以上、藪は突かないに限る。

 

『戦術は悪くなかった。目立ったミスもなかった。ただ、想定の上を行かれた。今回の敗因は、それに尽きる。今回はそれを踏まえて、次に活かせるよう努力する事だ』

「うす。ありがとうございましたっ!」

 

 弓場が大声で一礼し、他の者もそれに続く。

 

 風間はそれを聞き、通信越しに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「那須隊は、かなり大胆な戦術を取っていましたね。ビッグトリオン継承のルールを最大限に活かした、と言って良いでしょう」

「確かに、後半は那須がかなりやばかったからな」

 

 二人の総評は、那須隊へと移る。

 

 そして矢張り、話題になったのは那須のビッグトリオン継承であった。

 

「最初から那須隊長がビッグトリオンとして前線に出ていたなら、何処かで痛打を負っていた可能性は高かったでしょう。それこそ、外岡隊員が狙う相手が彼女に変わっていた可能性もありました」

「結果的に、終盤になってから万全の状態で那須が暴れられたのは大きかったな。あれがなきゃ、外岡は雲隠れに成功しててもおかしくなかったしよ」

 

 もしも那須が最初からビッグトリオン適用者として暴れていた場合、弓場隊は動きを大きく変えていた可能性が高い。

 

 それこそ、外岡の狙撃対象を木虎から那須に変えていた可能性もある。

 

 幾らトリオンが多くなっても、無敵になるというワケではない。

 

 事実、那須は足を削られるという痛打を負った。

 

 もしも最初から前線に出ていた場合、もっと早い段階で負傷していてもおかしくはなかっただろう。

 

「それから、今回の試合ではテレポーターの脅威が改めて伝わって来ましたね。熊谷隊員も佐鳥隊員も、これ以上なく有効に使っていましたし」

「癖は強ぇが、初見殺しとしちゃあ凶悪だからな。だからこそ、使い手なのが知られててもあの手この手で使いこなしてる日浦はやべーが」

「テレポーターは、戦術の幅をかなり広げられるトリガーである事は確かですからね。ただ弱点もハッキリしているので、使ったからと言ってお手軽に強くなれる、というものでもありませんが」

 

 なので矢張り、しっかり考えて使う必要があるでしょうね、と村上は告げる。

 

 テレポーターの最大の脅威は、その初見殺し性能の高さだ。

 

 故にこそ、使用者である事が知られているのに毎回有効活用して来る茜の発想力は驚嘆に値する。

 

 今回も、きっちりと転移狙撃で勝利に貢献したのだから。

 

「今回の那須隊は矢張り、その場その場の判断能力がとにかく際立っていましたね。部隊としても、非常に高いレベルで戦えていたと言えるでしょう」

「那須なんざ、まるで未来でも見えてるかのように動いてたしな。ったく、末恐ろしい奴らだぜ」

 

 互いに那須隊を称賛し、二人は総評を締め括った。

 

 それを確認し、羽矢はマイクを取る。

 

「総評。お疲れ様でした。これでA級昇格試験第三試験を終了致します。そして、この試合を以て第三試験夜の部の全工程が終了致しました。暫定順位は、こちらになります」

 

 

部隊順位得点
那須隊 1位36Pt 
二宮隊 2位35Pt 
影浦隊 3位33Pt 
弓場隊 4位24Pt 
香取隊 5位23Pt 
生駒隊 6位20Pt 
王子隊 7位17Pt 

 

 画面に映し出された順位を見て、会場がどよめく。

 

 那須隊は、遂に二宮隊を得点で上回り一位に躍り出た。

 

 一点でも逃していれば、この逆転は有り得なかっただろう。

 

「那須隊が単独一位に躍り出る結果となりました。残るは、最終試験ですが」

『────────それについて、諸君に話しておくべき事がある。突然で悪いが、傾聴して欲しい』

 

 羽矢が意味ありげに画面に目を向けると同時、スクリーンに一人の男の姿が映し出された。

 

 顔に大きな傷のある、壮年の男性。

 

 城戸正宗。

 

 このボーダーの本部司令にして、最高司令官。

 

 名実共に、ボーダーのトップに位置するこの組織の長である。

 

『最終試験の形式は、これまでの試験とは全く異なる。最終試験はA級部隊とは組まず、各々の部隊単独で行って貰う』

 

 城戸の突然の宣言に会場で困惑の声があがり、諏訪もまた解説席に座ったまま思案する。

 

(どういうこった? A級部隊との連携を深めるのが、今回の趣旨の一つっつう話じゃなかったのかよ)

 

 そう、A級部隊と組んで試合を行う事で、普段組まない相手との連携が出来るようにする。

 

 これが、今回の試験の大まかな指針の一つであった筈だ。

 

 なのに何故、最終試験ではそれを覆すような真似をするのか。

 

「まあまあ、最後まで聞きなよ。ちゃんと意味はあるからさ」

「……!」

 

 その疑問に答えるように、声をあげたのは────────迅。

 

 いつの間にか城戸の映るスクリーンの近くに立っていた彼が、意味深な笑みを浮かべていた。

 

『…………迅の言う通り、無論意味もなくこんな事をするつもりはない。だが、敢えて結論から先に言わせて貰おう』

 

 城戸は画面越しに迅を見据え、その宣告を告げる。

 

『最終試験は、迅と。いや────────』

 

 そして迅は、それに応えるように腰のトリガーを、一振りの剣を、掲げた。

 

『────────(ブラック)トリガーと、戦って貰う』

 

 迅が掲げた、一振りの刀。

 

 その名は、『風刃』。

 

 彼が持つ、黒トリガーであった。

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