痛みを識るもの   作:デスイーター

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七海玲奈③

 風の刃が、私の邪魔をする筈だったトリオン兵(やつら)を斬り裂いていく。

 

 誰がやったか、なんてすぐ分かる。

 

 迅くん。

 

 未来視なんて厄介な副作用(もの)を持って生まれてしまって、いつも苦しんでいる子。

 

 きっと、あいつらと戦っていれば私は間に合わなかったのだろう。

 

 だから、代わりに倒してくれた。

 

 私の願いを、叶える為に。

 

 ごめんなさい。

 

 私は、酷い女です。

 

 ああ言えば君は断れないって分かっていて、あの言葉を選んだの。

 

 君は自分の事を人でなしって言うけれど。

 

 本当の人でなしは、私みたいな人間なのかもしれないね。

 

 でも。

 

 それでも。

 

 私は、弟を助けたかったんだ。

 

 この選択が。

 

 君をどうしようもなく傷付けると、分かっていても。

 

 私は、弟を、玲一を、死なせたくはなかったの。

 

 恨んでくれて構わない。

 

 忘れてくれ、なんて言っても無理だよね。

 

 だけど。

 

 それでも。

 

 私の命が、君が自分を好きになれる未来に繋がってくれるんだったら。

 

 それはきっと、嬉しいなって。

 

 玲一の姿が、視えた。

 

 泣きじゃくる玲ちゃんも、傍にいる。

 

 玲一は、酷い状態だった

 

 腕が潰されて、血がたくさん出て

 

 とっても痛そう/痛み(きず)をなくしたい

 

 その光景を見て、私は思った。

 

 嗚呼、此処で私は死ぬんだなって。

 

 玲一の状態は、そうするしかない程手遅れに近かったから

 

 後悔はない、なんてそれこそ死んでも言えない。

 

 けれど。

 

 弟の。

 

 玲一のあんな姿を見せられたら、もう止まる事なんて出来ない。

 

 泣きじゃくる玲ちゃんを安心させるように笑って、玲一の傍へ行く。

 

 そして、願った。

 

 どうか、玲一が助かりますように。

 

 この命が、玲一の力になりますように。

 

 願いは、聞き届けられた。

 

 身体から、力が抜けて行く。

 

 視界が霞み、肉体が世界に溶けて行く。

 

 私の全てが、別のものに変わろうとしている。

 

 これで良い。

 

 これで、玲一は助かる。

 

 これで、迅くんが望んだ未来へ行ける。

 

 ごめんなさい。

 

 玲一/酷いお姉ちゃんで、ごめんね。

 

 迅くん/酷い女で、ごねんね。

 

 でも。

 

 皆を助けられて、良かった。

 

 幸せな世界に、なりますように。

 

 最期にそう願って、私の意識(いのち)は沈んでいった

 

 

 

 

「────」

 

 迅は、予想していた筈の光景を前に固まっていた。

 

 意識を失った、玲一の姿。

 

 そして。

 

 失われた右腕を補完するように存在する、黒い義手。

 

 形は違えど、それが何なのかはすぐに分かった。

 

 黒トリガー。

 

 玲奈がその命を対価として作り出した、彼女の遺産。

 

 ふと、黒い腕に触れる。

 

 冷たい。

 

 そこにあったのは、無機質な義手。

 

 その感触に、理解した。

 

 もう。

 

 あの温もりは、永遠に失われてしまったのだと。

 

「……っ!」

 

 迅は叫びそうになる己を抑えて、七海を抱き起こした。

 

 出血は止まっているが、相当量の血液を失った事に変わりは無い。

 

 このまま放置すれば、死んでしまってもおかしくはない。

 

 それは。

 

 それだけは、断じて許容出来なかった。

 

 彼は、七海玲一は、玲奈が文字通りその命を賭して救い出した人間だ。

 

 そんな相手を見殺しにしては、玲奈の遺志が無為に終わる。

 

 彼女の遺志を受け取った者として、そんな結末だけは認めるワケにはいかなかった。

 

「あ、あの……っ!」

 

 そこでようやく、迅は背後から必死に声をかける少女の存在に気が付いた。

 

 幼くも、整った容姿を持つ少女。

 

 那須玲。

 

 七海を案じて泣きじゃくっていた少女は、突然現れた迅を不安そうに見詰めていた。

 

「…………ああ、大丈夫だよ。俺は、玲奈の知り合いだ」

「……っ! おねえ、ちゃん……」

 

 那須は、玲奈の名を聞いた瞬間、悲痛な表情をして押し黙った。

 

 恐らく、彼女は全てを見ていたのだろう。

 

 玲一が、自分を庇って瓦礫に潰されたところも。

 

 玲奈が、黒トリガーに変わったところも。

 

 全て、全て、見ていたのだろう。

 

 目の前で起きた常識外の光景に、混乱はしている筈だ。

 

 けれど。

 

 迅は、理解した。

 

 この少女は、本能的に何が起きたか察している。

 

 玲奈が、何をしたのか。

 

 彼女が、どうなってしまったのか。

 

 だから、何も言わない。

 

 何故、彼女がああなったのか。

 

 薄々と、察してしまっているが故に。

 

 その姿は、既視感があった。

 

 何故なら。

 

 己の罪悪感に潰されそうになるその姿は。

 

 いつも、鏡で見ていた己の姿そのものだったのだから。

 

「この子は、俺が病院まで連れて行く。君も、一緒に行こう。もうあいつらはいないけど、瓦礫だらけで危ないからね」

「うん…………お願い、します」

 

 これ以上会話を続けてもお互いの為にはならないと判断し、迅はそう言って那須に付いて来るよう促した。

 

 那須は泣き腫らして真っ赤になった顔をさすりながら、黙って迅の後を付いて行こうとする。

 

 そして。

 

「迅」

「…………小南」

 

 その時。

 

 幼い小南が、険しい表情で迅の前に姿を現した。

 

 見れば分かる。

 

 今の小南は、泣き出す寸前だ。

 

「玲奈おねえちゃんは、どこ?」

 

 その言葉も、疑念ではなく、確認だった。

 

 彼女もまた、察している。

 

 察していながら、間違いであってくれと願っている。

 

 何故なら。

 

「玲奈なら、()()にいるよ」

「……っ!!」

 

 仲間が、黒トリガーになる。

 

 それは。

 

 これまでの戦争で何度も、経験してしまっていた事柄だったのだから。

 

 迅がそう言って七海の右腕を指さした時、全てを理解した小南はくずおれた。

 

 そして。

 

 那須を押しのけて、迅に詰め寄った。

 

「…………なんでよ」

「そうしないと、この子が死んでいたからだ」

 

 迅は、そう答えた。

 

 ただ事実だけを。

 

 淡々と、平静を装って。

 

「…………どうしてよ」

「俺が、玲奈に未来を伝えたからだ」

 

 恨むのならば、どうか己を。

 

 そう、願って。

 

「…………なんで、止めなかったのよ」

「それが、玲奈の望みだったからだ」

 

 けれど。

 

 小南が迅に向けた眼は。

 

 迅を心配するが故の、怒りに満ちていた。

 

「なんで、あんたは泣こうとしないのよ……っ!」

未来視(おれ)が、泣くわけにはいかないからだ」

 

 迅はただ、そう告げる。

 

 玲奈の遺志を継いだ以上、もう泣く事など許されない。

 

 彼女は、願った。

 

 幸せな、未来を。

 

 ならば、それを聞き届けた己は。

 

 願いを叶える神様のように、ただ己の役目を遂行する装置であれば良い。

 

 日常は要らない/彼女のいない日常など意味がない

 

 幸福も望まない/彼女がいない幸福など有り得ない

 

 ただ、最善の未来に辿り着く為。

 

 どんな事でも、やってやろう。

 

 迅の、その決意を聞いて。

 

 小南は、彼に縋り付いて泣き出した。

 

「なんでよ……っ!? 泣きたいなら、泣けばいいでしょ……っ!? あんたが泣いちゃいけない理由が、何処にあるって言うのよ……っ!?」

「小南」

「ふざけないでよ……っ! 玲奈おねえちゃんは、そんな事の為に命を投げ出したんじゃない……っ! だって、だって……っ!」

「小南……っ!」

「────────おねえちゃんは、誰よりもあんたに、幸せになって欲しかったんでしょうが……っ!!」

 

 小南の慟哭が、響き渡る。

 

 人目も憚らず、その場で小南は泣き出した。

 

 迅は、そんな小南を置き去りに。

 

 七海を抱え、那須を連れ。

 

 その場を、立ち去った。

 

 そんな事、言われなくても分かっている。

 

 けれど。

 

 誰よりも彼自身が、自身が幸福になる事を許せなかった。

 

 自分は、玲奈を死なせた。

 

 死ぬと分かっていて、止める事が出来なかった。

 

 それどころか、彼女がこの場に向かう事を助けさえした。

 

 たとえ、それが彼女の願いであったとしても。

 

 迅が、自分の意思で彼女を死なせた事に違いはない。

 

 自分は、人でなしだ。

 

 たとえ好意を抱いた相手であっても。

 

 愛していた相手であろうとも。

 

 未来の為に、その死すら許容してしまう。

 

 そんな、ろくでなしだと。

 

 だから。

 

 もう自分に、幸福になる権利など有りはしない。

 

 この身はただ、最善の未来の為に。

 

 それは、迅がこの日定めた誓い(のろい)

 

 彼のこれからを決定づける、悲壮な決意(ねがい)だった。

 

 

 

 

 

 迅は七海と那須を病院に送り届け、再び瓦礫の街に舞い戻った。

 

 応急処置程度ならともかく、本格的な治療に関しては迅は門外漢。

 

 病院に送り届けた以上、出来る事は何もない。

 

 故に。

 

 一人でも多く。

 

 この崩壊した街に取り残された人々を助ける為に。

 

 トリオン兵は大方片付けてあるが、まだ残敵がいないとも限らない。

 

 大型のバムスターは全て駆逐した後だが、小型のトリオン兵が残っている可能性はある。

 

 その掃討の為、迅は再び街へと繰り出していた。

 

「…………」

 

 街には、死体が溢れていた。

 

 瓦礫で潰されたもの。

 

 トリオン機関を抜き取られ、致命傷を負ったもの。

 

 火災に巻き込まれ、焼け死んだもの。

 

 様々な死因で命を落としたヒトであったものが、街の至る所に転がっていた。

 

「姉さん、姉さん……っ!」

 

 そんな、地獄のような光景の中。

 

 あり触れた、けれど見過ごせない姿があった。

 

 胸に穴の空いた女性を抱え、泣き叫ぶ少年。

 

 恐らく、抱えている女性は彼の姉なのだろう。

 

 既に致命傷を負い、傍目から見ても手遅れと分かるその女性に。

 

 少年は、縋り付いていた。

 

「……! あなた、は……」

 

 そこで、少年が迅に気付いた。

 

 手に持っている剣から、トリオン兵を倒した一団────────ボーダーの一員である事を察したのだろう。

 

 縋るような眼で、少年は助けを乞うて来た。

 

「助けて……っ! 姉さんが、姉さんが死んじゃう……っ!」

 

 けれど。

 

 もう、彼の姉の未来は視えない。

 

 未来が視えないという事は。

 

 彼女の未来(いのち)は、此処で尽きる。

 

 それを理解した迅は、踵を返した。

 

 他の。

 

 まだ、手遅れになっていない者を救う為に。

 

「待って、待ってよ……っ! お願いだから、助けてよ……っ!」

 

 しかし。

 

 そんな事は、目の前の少年には分からない。

 

 少年には、ただ迅が。

 

 自分たちを見捨てようとしているようにしか、見えなかった。

 

「姉さんを、助けてよ……っ!」

 

 迅は、止まらなかった。

 

 背後で、少年の慟哭が響き渡る。

 

 彼の姉の未来は、視えなかった。

 

 けれど。

 

 彼の、三輪の未来は、視えていた。

 

 三輪は近い未来、近界民(ネイバー)への憎悪を糧とし、優秀な戦力としてボーダーに貢献するようになる。

 

 ならば、此処で彼を見捨てたように振る舞えば。

 

 その憎悪を、(じぶん)に向ける事が出来る。

 

 自分が、彼の憎む対象となれば。

 

 彼の進む方向性は、ある程度誘導出来る。

 

 無軌道に憎悪を燻ぶらせるよりもそれが最善に繋がると、今の迅は判断した。

 

 そう、敢えて恨みを買うように振る舞ったのはその為だ。

 

 けれど。

 

 心の何処かで。

 

 自分を心底恨んでくれる人がいればいいと。

 

 望まなかったとは、言えなかった。

 

 

 

 

「迅は、泣かないのですね」

 

 玉狛支部。

 

 かつてはボーダー本部であったそこで、迅にそう声をかけた少女の名は忍田瑠花。

 

 同盟国、アリステラの王女であり。

 

 今は、ボーダーの(マザー)トリガーを動かす大役を担った亡国の生き残りである。

 

「突然どうしたんだい、瑠花ちゃん。俺が泣かない事が、そんなに不思議かい?」

「ええ、不思議ですね。私は玲奈のような副作用(サイドエフェクト)は持っていませんが、今のあなたが無理をしている事くらいは分かります」

 

 だって、と瑠花は続ける。

 

「あなた、玲奈が好きだったのでしょう? 好きな人が死んだのに悲しみを覚えないほど、あなたは非人間ではありません」

「…………さて、ね。どうかな? 俺は割と、ひとでなしですよ」

 

 現に、今泣いてなんかいないでしょう? と迅は告げる。

 

 そんな迅を、まるで瑠花は痛ましいものを見るかのような眼で、見据えた。

 

「一度しか言わないから、良く聞きなさい。あなたは確かに人間としては最低かもしれませんが、それでも私や陽太郎がこうして生きているのは、紛れもなくあなたの尽力のお陰なのです」

 

 あなたがアリステラの戦争で予知を駆使したからこそ、こうして亡命出来たのですからね、と瑠花は続けた。

 

 瑠花は年齢不相応に落ち着いた振る舞いを見せながら、同時に年頃の少女らしい笑みを浮かべ、告げた。

 

「今すぐわかれとは言いません。けれど、あなたが動いたからこそ助かった人間がいる事を、忘れないように」

 

 瑠花はそう言って、話を打ち切った。

 

 迅はその言葉に、頷けなかった。

 

 彼の自責は、自分自身を許せるようになるには大き過ぎた。

 

 故に、彼女の話は受け入れられない。

 

 今は、まだ。

 

 

 

 

 三門総合病院。

 

 その一室で、迅は少年と────────七海と向き合っていた。

 

 先日ようやく意識が戻った彼を視て、迅は己の未来視(ちから)を再確認した。

 

 細い。

 

 けれど確かな最善への道が、彼の辿る未来(さき)にあった。

 

 話によれば、今の彼は無痛症を患っているのだという。

 

 しかし、どうにも医学的な症例としては不可解な点が多い。

 

 玲奈の黒トリガーが何らかの影響を与えた結果である可能性も、充分考えられる。

 

 無論、それは口にしない。

 

 ただでさえ一杯一杯な今の彼にそれを話したところで、受け入れられるワケがないからだ。

 

 それに。

 

 玲奈が命を賭して彼を救ったのに。

 

 その結果として痛覚を失うなど、信じたくなかったという想いもあった。

 

 だから。

 

「混乱するのも分かる。だけどその上で、こう提案させて欲しい」

 

 迅は、己の職務を。

 

 誓いを果たす為。

 

 七海に、問いかけた。

 

「君、ボーダーに来る気はないかな?」

「え……?」

 

 それが、始まり。

 

 七海玲一という少年がボーダーに関わる事になる、最初の一歩となった。

 

 

 

 

「────────見つけた」

 

 そして現在。

 

 秋口のある日。

 

 迅は、ボーダーの入隊試験を受けに来た人々を視ていた。

 

 新入隊員候補の中に、ボーダーに貢献大きく出来る人物がいないかどうか。

 

 それを、探る為に。

 

 無論、これは彼の独断だ。

 

 今の迅は、本部とは距離を置いている。

 

 彼一人の判断で試験の結果を左右する事までは出来ない。

 

 けれど。

 

 もし此処で最善の未来に繋がる者を見つける事が出来れば、相応の便宜を図る事が出来る。

 

 そう考えて、迅はこの日もやって来て。

 

 一人の受験者を、視た。

 

 お世辞にもトリオンは多いどころか、確実に落とされるであろう量しかない。

 

 戦闘に適しているようにも見えず、戦いの心得があるようにも見えない。

 

 されど。

 

 眼鏡をかけたその少年の、辿る未来。

 

 その未来(さき)には確かに、光があった。

 

 最善の未来へと、繋がる光が。

 

 まだ、最後の欠片(ピース)は嵌まっていない。

 

 けれど。

 

 彼が、二つ目の希望(かけら)である事は、間違いなかった。

 

 恐らく、彼は試験に落とされるだろう。

 

 トリオン量が、戦闘員として適正な基準に足りていない。

 

 彼を入隊させるには、相当な裏技を使うしかないだろう。

 

 だが、問題はない。

 

 既に迅の眼には、彼が無断で警戒区域に侵入する未来が視えている。

 

 あとはその場に偶然を装って居合わせ、そのまま流れでスカウトすれば良い。

 

(玲奈、待っていてくれ。必ず、最善の未来に辿り着く。その為に、やれる事はやってやる。誰を利用する事になろうと、きっと)

 

 

 

 

「よう。無事かメガネくん」

 

 迅は、眼下でへたり込む少年を見下ろしながら、そう告げた。

 

 突然の事態に驚く少年は、固まっている。

 

 けれど。

 

 その眼には。

 

 確かな、強い意志の光が宿っていた。

 

 少年の名は、三雲修。

 

 物語(みらい)における、重要人物(キーパーソン)

 

 迅が最善の未来に辿り着く為に選んだ、二人目の人間であった。




 迅悠一

 ポジション:攻撃手(アタッカー)

 年齢:19歳

 誕生日:4月9日

 身長:179cm

 血液型:O型

 星座:はやぶさ座

 職業:不明

 好きなもの 七海玲奈、ボーダーの皆、優しい世界

〔FAMILY〕

 母

〔RELATION〕

 七海玲奈←大切な人。君との誓いは、忘れない。

 七海玲一←大切な人の忘れ形見。君のお陰で、大切な事に気付けたよ。

 小南桐絵←旧友にして戦友。ここぞという時、欲しい言葉をくれる。

 木島レイジ←旧友にして戦友。頼りにしているよ。

 忍田瑠花←あの時はありがとう。今度は、自分を許せる気がするよ。

 城戸正宗←道は違えたけど、大事な仲間である事に変わりは無い。玲奈の遺志を慮ってくれて、ありがとう。

〔PARAMETR〕

 トリオン:7(37)

 攻撃:10(24) 

 防御・援護:15(18)

 機動:7 

 技術:9 

 射程:1(10) 

 指揮:7 

 特殊戦術:3 

 TOTAL 59(120)

 『副作用(サイドエフェクト)

 『未来視』

 目の前の人間の少し先を視る事が出来る。

 一度視認しさえすれば未来が変わる度にその映像を見られるが、定期的に会っていなければ未来は更新されない。

 幾つもの並列した未来を同時に映像として視認する為、あまり多くの人間の未来を一度に視ようとすると処理が追い付かなくなる場合がある。

 彼は幼少期からこの異能があるが故に助けられない人間を見殺しにする罪悪感に耐え切れず、精神が擦り切れていた。

 笑顔の仮面は、七海の成長によって取り払われた。

 
 未来視を持つ少年。副作用の被害者。

 玲奈の死によって「最善の未来へ至る」という強迫観念に取り憑かれ、その為に自らを省みなくなっていた。

 誰に何を言われようと止まる気はなかったが、成長した七海に玲奈の声を代弁され、ようやく後ろを振り返る事が出来た。

 今の彼は玲奈の遺志を正しく理解し、その為に腹の内を前より打ち明けるようになった。

 未来は続いている。

 希望は、視えたのだから。
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