第七章『B級ランク戦/ROUND7』
ラウンド7の相手は再戦の王子隊、そして初試合の弓場隊です。
この章は多分ワートリ二次創作者が初めて本格的に描いたであろう「神田がいた時代の弓場隊」を描いた試合でした。
神田は「弓場さんが暴れる間指揮を執って部隊を回していた」という表現から、犬飼のようなサポータータイプの隊員だと考察しました。
個人戦力ではなく、チームを動かす能力で隊に貢献するタイプの後方支援役。
そういったキレのあるブレイン役、といったイメージで描きました。
また、原作での表現から犬飼と同じくクレバーな判断が可能な駒であるとも考えました。
そうでなければ、「生駒隊を動かしてヒュースを取らせる」という案が「神田らしい」という表現をされる事はなかったでしょうから。
飄々とした兄貴分タイプだけど根は真面目、的なキャラ付けで描いたつもりです。
受験の為にボーダーを辞める決断をするくらいですから、将来設計がしっかりとしていて真面目な受験生のような側面もある進学校の部活の先輩、といった感じで。
まんま、イメージは「進学校の運動部の成績優秀な頼れる先輩」って感じです。
原作で実際に登場したシーンからもそのイメージは大きく乖離する事はなく、他の方にも私の描いた神田は好評を頂いたので方向性は間違ってはいなかったと自負しています。
さて、そんな神田の活躍する第七ラウンドですが、まず此処で実装したオリジナルMAP「渓谷地帯A」は荒野での決闘が描きたくて実装したMAPです。
折角弓場さんが二丁拳銃のガンマンなのですから、荒野での決闘は映えるだろう。
そんな思い付きで実装したMAPですが、初手の荒野仁王立ちも含めて中々良いMAPを思いついたと自負しています。
地形自体は、グランドキャニオンのような場所をイメージして頂ければ結構です。
天候が砂嵐になっていないと相手の動きが基本的に丸見えに近いので、そうなるとまた別物の試合になっていたと思います。
砂嵐という天候もオリジナルの実装ですが、暴風雨なんて設定もあるのでこれくらいはあっても良いだろうと考え実施しました。
実際、「視界を塞ぐ」という観点なら砂嵐ほど明瞭なものはありませんしね。
ちなみにこのMAPは高所自体は多いけど隠れる場所が殆どないという地形条件から、二宮さんが晴れた天候で高所を取ると地獄になります。
あの二宮さん相手に隠れて近付く事も出来ず、こちらの動きが丸見えの状態であの弾幕が降り注ぐのですから基本的にクソゲーになりますので。
まあ、傍目から見てもそうなるのはまる分かりなので二宮隊相手に晴れたこのMAPを選ぶ部隊はいないでしょうが。
実況解説を結束ちゃんと嵐山、生駒の面々にしたのは弓場さんをイコさん・嵐山の19歳組に解説させたかったから、というのが大きいです。
迅・嵐山・生駒・弓場・柿崎の19歳組は色々絡みがありそうなのに原作ではそのあたりあまり描写されていないので、この作品ではなるべくその関係性もピックアップしたい、という思惑がありました。
来るべき迅さん編に向けて、この面々の関係性描写もしておく必要がありましたし。
ある程度関係性が伺わせる描写をやっておくのは、物語の流れとしては基本ですから。
いきなり「このキャラ達はこういう関係性があったんだ」と言われるよりは、仲の深さが垣間見える描写を挟んでおいて「実はこういう関係だったんだ」と説明がある方が説得力がありますからね。
人情派なキャラが割と揃っているので、言動や展開自体は違和感なく描けたつもりです。
生駒さんも原作で嵐山さん相手に指ツンツンするくらいなので、仲は良いみたいですしね。
また、嵐山さんを配置したのは生駒さんに生駒隊ムーブをさせない為でもあります。
イコさんは天然のボケキャラなので、突っ込む相手がいなければどんどん脱線していく事でしょう。
そこで天然に見えて妙な芯が通っている嵐山を、セーブ役兼相方としてセレクトしたワケです。
彼なら生駒さんの脱線を自然に牽制出来ますし、気心も知れているので違和感のないやり取りが出来ると踏んだ為です。
結束ちゃんを実況に選んだのは単に嵐山さんの快活オーラと並んでも大丈夫そうなオペをセレクトした結果です。
原作でもハキハキとした垢ぬけた印象の子だったので、丁度良いかなと思い選びました。
雰囲気重視、と言っても過言ではないかもです。
真面目にトークする嵐山に、ボケもこなす生駒。
そして淡々とアナウンスする結束、といった感じでテレビ番組のレギュラーメンバーみたいな空気感です。
あと、イコさんを起用したのは弓場さんの荒野仁王立ちに対する突っ込みも任せたかったのもあります。
ああいう反応をさせるには、生駒さんが最適ですから。
さて、その仁王立ちに反応してやって来たのが七海ですが、爆撃を落とす弓場さんのシーンは彼らしい戦闘を描写するには何処に注力するべきか、とこの試合に至るにあたって色々考えました。
弓場さんの特徴といえば、その早撃ちです。
至近距離では反応すら許さない早撃ちと、適切な判断力。
そのあたりが、弓場さんの持ち味だと考えました。
また、原作ではついぞ出番のなかった
ですが最初から見せていては芸がないので、時間差射撃によるメテオラの誘爆撃墜という技をまずは見せました。
作中で言及のあった通り、七海の
高精度な銃撃が行える弓場さんからしてみれば、それを狙うのは差ほど苦ではなかった筈。
だからこそ、爆撃という対応のし難い脅威に対して真っ向から迎撃出来たワケですね。
さて、この試合での王子隊の動きですが、前回の那須隊との戦いと原作での遊真達との戦いが元ネタとなっています。
原作の修を執拗に狙う動きから、王子隊に対して「落とせる相手を狙って落とす」というイメージがありました。
強敵とは無理にぶつかり合わず、漁夫の利を狙う形で点を取る。
そんな狡猾なイメージを、王子に対して抱いていました。
前回の試合ではいいとこなしで落ちてしまったので、その分王子らしさを出そうと頑張った結果でもあります。
茜と熊谷を狙う、という方針自体は前回の香取隊と同じですが、王子隊の場合はもう一つの対戦相手が弓場隊だった、という関係もあります。
王子と蔵内は元弓場隊なので、弓場や神田の動きを良く知っています。
それを利用して弓場隊の動きを利用して、取れる点を取ろう。
そういった思惑が、王子にはありました。
ですが同時に、前回徹底的に那須隊に叩きのめされた記憶が半ばトラウマじみた思い出として残っていました。
「正面からは敵わない」「エースがいないとガチるのは厳しい」といった認識が、その足を鈍らせてしまった側面があるのは否めません。
最終的には漁夫の利的に点を取る事には成功しますが、MAP選択権があるにも関わらず点が振るわなかったのはそのあたりが原因とも言えます。
もっとも、私自身王子隊を描写するのに四苦八苦していたので、王子隊らしさ、を出せていたかどうかはそこまで自信はありません。
思っていた以上に王子隊が動かし難かったのも、今後の課題ですね。
しかし、そんな王子隊の策の煽りを最も受けていたのは弓場隊と言えます。
那須隊も三次元機動がやり難い開けたMAPという事でやり難かったのは確かですが、弓場隊のメンバーはその殆どが市街地戦向けの性質を持っています。
弓場さんの持ち味である早撃ちも入り組んだ街中での遭遇戦でこそ真価を発揮する代物であり、開けた場所ではまず近付くのが難しい為に行動に制限がかけられるからです。
隠密を旨とする狙撃手の外岡は言わずもがな、神田と帯島も開けた場所よりは街中で戦いたかった筈です。
だからこそ、那須による高所からの弾幕が効果覿面だったワケです。
蔵内が速攻で落ちた時点で、狙撃手以外に高い射程を持てるのは那須さんしかいなくなりました。
銃手は即応性という点で射手に対してアドバンテージがありますが、応用性と言う点では全く及びません。
射手は威力・射程・弾速を自在に調整出来るが故に、やろうと思えば射程をかなり伸ばす事が可能です。
そしてそれを使うのが縦横無尽に
また、この試合は那須さんの
原作でも存在だけは語られていたコブラですが、那須さんという駒を扱う以上使わない手はないと考え実装しました。
バイパーを防ぐならシールドを広げるのが手っ取り早いですが、コブラはその広げたシールドを文字通り貫通して来るのでバイパーを相手にするつもりで対処したら作中の蔵内のように即死するワケですから。
大まかな位置さえ分かればそこに撃ち込むだけで効果を発揮するトマホークとは真逆の、
蔵内を倒した次のシーンでは、帯島ちゃんと熊谷さんがそれぞれ活躍します。
帯島ちゃんは原作でも見せたクレバーな判断で樫尾を落とし、熊谷は自分の役目は済んだとばかりに神田に痛手を負わせて退場します。
身体を使った肉弾戦を交えた戦闘は、現実でも運動をやっている熊谷らしさを活かした形です。
原作では弓場ちゃんキックやレイジパンチが目立つ肉弾戦ですが、普段からスポーツをやっている熊谷さんならそういった動きも出来るだろうと考えた次第です。
また、ROUND3以前と違い平然と捨て身の策も使えるようになったので、いざとなれば自分の身を捨て札として用いるやり方も出来るようになったというのも大きいです。
そういった捨て身を躊躇なく行えるといった描写も、次の試合のあの展開の為のものだったワケですが。
その後の戦闘では王子が漁夫った後、外岡がその引き金を引いて那須さんを狙った所を茜ちゃんが撃ち抜きました。
此処で用いた高低差はレーダーには映らないといった仕様の策は、このMAPを選んだ時点で想定していました。
戦闘シミュレーションを回す中で、チャンスがあったら使ってみようと考えていましたので。
結果的に外岡は那須さんを狙った瞬間を逆に狙われ、ライトニングの精密高速狙撃によるカウンター
茜ちゃんは狙撃手も中でも結構な小柄な上にテレポーターで瞬間移動出来るので、こういった策には最適なのです。
外岡は隠密特化の狙撃手ですが、チャンスがあれば逃さないタイプでもあります。
原作でもその性格を利用されて玉狛に釣り出され、隠岐に撃たれていますから今回もまた彼のそんな性質を利用した結果となります。
その後の帯島ちゃんの奮闘と、王子の二度目の漁夫の利。
今度は捨て身にならざるを得なかった王子ですが、彼らしいムーブを少しは出来たかなと思います。
帯島ちゃんは頑張ったのですが、流石に相手と条件が悪過ぎましたね。
孤立無援の状況で背後に王子、正面に那須さんですから、無理もありません。
そして、最終局面では弓場さんと七海の一騎打ちとなります。
折角なので、原作で判明したグラスホッパーの仕様を利用した展開を描きました。
蔵内くらいしか知らないんじゃない? と小南ぱいせんは言っていましたが、蔵内は元弓場隊です。
元隊長の弓場さんと旧弓場隊時代にそういった話をしていても不思議ではないので、早速使わせて貰いました。
弾丸に触れれば相殺されるといったグラスホッパーの仕様は、便利過ぎたグラスホッパーに付加する「縛り」としてはこの上ないので助かりました。
グラスホッパーはあるだけで回避率が上がる便利過ぎるトリガーですが、持たせていると被弾に説得力が足りないという展開になりかねない、という物書き側から見たデメリットもあります。
そこでこういった弱点が公開された事で、逆に使い易くなったワケですね。
縛りのない強い武器よりも、制限付きの武装の方が描写する側としてはやり易いものですから。
そんな弓場さんとの対決を制した決定打は、茜ちゃんによる転移狙撃でした。
那須さんは帯島ちゃんの最後っ屁で足が削れていたので自力で二人の一騎打ちに間に合わせる事は出来なかったのですが、そこは割り切って茜ちゃんを文字通り「撃ち出し」ました。
グラスホッパーは適性の関係でセットする事はなかった茜ですが、那須さんは着地の事を考えず全力で茜ちゃんを「砲弾」にして戦場に叩き込んだワケです。
「どぅわぁぁぁぁぁぁ」というお決まりの叫びをあげながら空に撃ち出される茜ちゃんの姿は、とても絵になった事でしょう。
砂嵐という環境と他に横槍がなかったという二点がなければ、隙が多過ぎてとても使えたものではない手ではありましたが。
試合が終わり、弓場さんが影浦さん家に連れてったのは最後の試合をやるにあたっての決意表明や、最後の神田の相談をする為でもありました。
決意表明は言わずもがな、二宮さんにライバル心バリバリな弓場さんと、最終試合で遂にぶつかり合う事になる師である影浦との顔合わせの為です。
此処で対二宮隊の伏線を敷くと共に、改めて七海の決意を表明する場としました。
イコさんがやって来たのは、なんか流れです。
最初はプロットにいなかった筈なんですが、書いてたら勝手にやって来たんですよね。
イコさんは使ってみると予想以上に使い易いので、度々驚く事となりました。
また、神田の悩みに関しては学生が兵士をやってるボーダーならではの悩みでありながら、部活を頑張っている三年生特有の苦悩でもありました。
将来の事を考えれば、もう部活は辞め時。
なのに、今後の事を左右する試験にすぐいなくなる自分が出ても良いのか。
そういった、真面目な神田らしい悩みです。
結果的に、イコさんの開き直った見解と村上譲りの七海の言葉が決定打となりました。
イコさんはちゃらんぽらんに見えて決める時は決める人だと思っているので、時にこうした鋭い意見が出ても不思議ではないと思います。
七海の場合は完全に村上の受け売りではありますが、それを自分の意見として言えるようになったので、成長した証とも取れます。
そんな神田の話を聞いて「将来の事なんか考えてなかった」と焦る年頃の学生らしい那須さんの悩みですが、此処で七海の将来設計を聞く事になります。
七海は無痛症の自分が普通に生活出来るようになった恩人である鬼怒田さんにとても感謝していて、その伝手で将来戦闘員を引退した後は開発室に入ろうと考えていました。
これは彼本人は口にしなかったですが自分と離れる事はまず出来ないだろう那須が将来ボーダーに就職する可能性が高い、と考えていた為でもあります。
那須が自由に動けるのは、トリオン体の恩恵があるが故です。
なので今後もボーダーとの縁を切る事は出来ないので、必然的にボーダーに就職する可能性は高かったのです。
頭の回転の速い那須さんならオペレーターも充分こなせるでしょうし、沢村さんという前例もいます。
もっとも、可能な限り前線で弾幕を撃ち続けるであろう事は言うまでもありませんが。
その後は出水・米屋・烏丸の旧太刀川隊+αによる対二宮隊想定の戦闘訓練です。
最終ROUNDの「二宮落とし」を達成する為の、下準備的な回ですね。
裏では茜ちゃんも奈良坂に猫可愛がられながらも最後の「詰め」を行っていますし、決戦の前の準備が着々と進んで行った形です。
こうして全ての準備が整い、決戦の日が訪れたのです。
第八章『B級ランク戦/ROUND8』
ランク戦編の最終試合、最終ROUNDの章です。
この章の、この試合の大きなポイントは二点。
「二宮落とし」と「師匠超え」です。
原作でも手を尽くしてようやく届いた二宮匡貴という高い高い壁を超える為の、「二宮落とし」。
二宮の格を落とさずに勝つ為の、二宮隊包囲網。
それが、最終ROUND前半のコンセプトでした。
最初に適当メテオラを使った影浦隊の「釣り出し」は、彼等がこの試合にかける意気込みを現したものです。
義務感だけが先行すると影浦は動きが固くなってしまいますが、今回は七海との決戦という本人にとって最大の「楽しみ」が待っていました。
その為原作ROUND7のように動きが固くなる事なく、彼らしい動きを最後までやり通せたと言えます。
ゾエさんと隠岐を序盤で落としたのは、以前に話した通りこの二人はいるだけで盤面への影響力が強過ぎるが故です。
まず、ゾエさんは適当メテオラを連打するだけで盤面をひっくり返す契機を簡単に作れます。
隠岐の場合は彼と言う観測者がいるだけで、生駒旋空の脅威度が跳ね上がります。
そういった要素はこの試合においては障害になりかねなかったので、早々に盤面から排除したワケです。
犬飼と熊谷のカチ合いについては、熊谷の成長を描写しつつ犬飼の「怖さ」を徹底して描写したつもりです。
私はもし全部隊の中から自分の隊の隊員を選ぶのであれば、真っ先に犬飼は取ります。
彼のサポーターとしての能力が尋常ではなく高く、隊のバランサーとしてもこの上ない逸材だからです。
犬飼がチームにいるだけで、部隊としての動き易さが全然違います。
周りを見る能力と、冷静に戦況を分析して的確に嫌がらせを行う能力。
それらが最高水準で揃っている犬飼は、数あるサポーターの中でもハイエンドの一人と言えます。
だからこそ、ダメージを負っても尚暴れ続け、三人相手に翻弄してみせた事でその有能さを描写出来たかな、と思っています。
原作でチラ見せしただけの射撃トリガーのハウンドとスコーピオンも、私なりに活用させられたので満足です。
また、熊谷は此処まで散々捨て身の策を取った事が情報アドバンテージとなって犬飼を倒す一手となりました。
敢えて捨て身に徹していたのも、この決戦で彼を打倒する為の伏線でした。
熊谷なりにあの敗戦は悔いていたので、此処で犬飼を乗り越えROUND3での雪辱を晴らせた事は熊谷にとって大きなプラスとなりました。
この犬飼超えがなければ、この後の彼女の活躍はなかった事でしょう。
また、犬飼の「ナイスキル」は彼なりの最上級の賛辞だと思って言わせました。
本当にそれを言いたかった相手はもういないから、その代替行為ではあるんでしょうが。
この世界線で果たして彼が千佳ちゃんに同じ事を言えるかは、神のみぞ知るといったところです。
その後の「二宮落とし」は、各部隊の総力の結集とも言える作戦でした。
ユズルと七海が牽制し、那須さんが
そこを南沢が旋空で狙い、生駒隊としての本命の生駒旋空を放つ。
それさえ躱した二宮に那須が追撃を見舞い、ユズルがアイビスを撃つ。
此処までやっても落とせないのが、二宮匡貴という男です。
二宮スライドでユズルの弾を回避して、追撃として来るであろう茜のライトニングを広げたシールドで防ぐ。
それで、終わりの筈でした。
ただ一点、茜がイーグレットを持ち込んでいなければ。
此処まで徹底して、茜はライトニングでの高速精密射撃のみを用いていました。
それは練度の問題もありますが、この最終局面でライトニング以外の狙撃銃を切り札とする為でもありました。
当初は他二種類の狙撃銃の練度を捨ててライトニングに集中する事でマスタークラスに至った茜ですが、当然彼女も日々鍛錬は重ねています。
ランク戦を戦う中でも鍛錬を怠らなかった結果として、練度はライトニングほどではないもののイーグレットも充分に扱う事が出来るようになったからこそ、此処で切り札として切ったのです。
最終ROUND前の奈良坂との訓練描写は、イーグレットの出来栄えの確認の為だったワケですね。
ちなみにもしも二宮が広げたシールドを展開したのは、茜の腕前を評価していたからでもあります。
二宮はあのラウンド3で那須隊の中で唯一戦果を挙げた茜の事を、密かに評価していました。
だからこそ集中シールドでは隙を突かれると考えてシールドを広げたのですが、その評価が仇となったワケです。
こうして茜は東さんに続き、二宮さんという大駒を落とした英傑となりました。
那須隊の真のポイントゲッターとして、恥じない活躍であったと言えます。
その後の茜とユズルの狙撃手対決は、楽しみながら描けました。
狙撃手同士の異色の戦いという事でしたが、だからこそ何処までもロジカルに描く事が出来たと満足しています。
どちらも近接戦闘が不可能な狙撃手である為、その戦いは自然頭脳戦となります。
どちらがどちらの裏をかき遂げるか。
これは、そういう戦いでした。
軍配を挙げたのは、自身のメテオラという第二の隠し玉を用意し、更に転移零距離狙撃でアイビスの練度を補った茜でした。
この時の零距離狙撃でのフィニッシュは、我ながら中々絵になるラストだったと思います。
空中で抱き合うように密着した形での、アイビス零距離狙撃。
それに文字通りハートを撃ち抜かれたユズルくんは、晴れやかな顔で敗北を受け入れました。
次こそは、と誓い合う姿が中学生同士らしいやり取りで微笑ましいですよね。
この後の影浦・那須・辻の三竦みに至った時、実は辻ちゃんが此処まで生き残る事は当初想定していませんでした。
というより、こと此処に至って「もう辻ちゃんのぶつかる相手、那須さんしかいなくない?」と気付いたのです。
辻ちゃんは知っての通り、女性が苦手です。
今作の小夜子のように疾患レベルではないようですが、那須さんの身体のライン出まくりの隊服を前にして平静が保てるワケがありません。
そこで、辻ちゃんにはそんな自身の性質を利用して影浦に那須さんを落とさせるアシストに徹底させました。
二宮隊最後の一人になってしまった彼の、最後の大仕事となったワケですね。
攻撃手のサポーターという珍しい立ち位置の辻ちゃんなので、その持ち味を活かす形でこうなりました。
影浦も利用されている事を知りつつもそういう心意気は嫌いではないので、敢えて乗った形です。
カゲさんがこういう決意を、無駄にするワケがありませんからね。
次の生駒戦は再戦となるワケですが、生駒旋空が初見ではない分以前よりも初見殺しを警戒しなくても良いという点が異なりました。
加えて七海は前回の戦闘に用いたフェイント戦法によって叩き込んだ印象を利用し、茜の捨て身のメテオラ起爆から繋げた
もぐら爪マンティスは説明されている通り、かなりの諸刃の剣です。
身動き出来ないというもぐら爪のデメリットと両手が塞がるというマンティスのデメリットの二重苦ですから、遠距離からの横槍の心配がないこの局面だからこそ取れた一手と言えます。
誰も見た事がなかった組み合わせだからこそ、生駒を落とす事が出来たワケですね。
最後の師弟対決は、とにかく燃える表現を多用して戦わせました。
普通のランク戦ではまず有り得ない、一切の横槍なしの一騎打ち。
それを実現する為に、この最終ROUNDはあったと言えます。
最後のサブタイトルの表記をこれまでの「影浦隊」ではなく「影浦雅人」にしたのは、あくまでも影浦個人との決闘である事を強調した形です。
師弟対決は、最高の形で終えられたと思います。
その後のパーティでは、七海達の健闘を称えつつ色んなキャラとの交流を描きました。
影浦は自分越えをやり切った七海を褒めたくて仕方なかったので、うきうき気分で自分の家に皆を招待しました。
出来るだけ多くの人に、七海を労って欲しい。
影浦がこの食事会を開いたのは、徹頭徹尾そういう理由からです。
結果として多くの人に囲まれ、労われたのでその目論見は大成功と言えます。
裏では那須が小夜子の発破で交流を広げようとしていますが、ぶっちゃけどちらもコミュ障である事に違いはないので割と小夜子も空回っています。
そこを巧くフォローしたのは作者公認リア充部隊である柿崎隊の面々です。
照屋さんも事情を知れば快く那須さんとの友誼を結ぶと思うので、そういう意味で適役でした。
ちなみに木虎だった場合はさっさと会話を切り上げてました。
後に明かされる理由から那須に対して良い印象を持っていなかったのでまあ当然ではありますが、それを鑑みても照屋を選んだ小夜子の選択だけは間違ってはいなかったかと。
王子隊の描写など心残りはありますが、概ね描きたい事は描けたと思います。
こうして、ランク戦編は終幕となりました。
次は昇格試験編の解説となります。