淫獄都市ブルース 外伝集   作:ハイカラさんかれあ

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学生時代編<性春姫>です戦闘パート増やすと分量が増えすぎてまとめられぬぇー!
そりゃ菊地先生も短編だと敵がヤクザ中心で瞬殺しますよね。
魔界都市ブルース風にすると<性春鬼>のヒロインであるゆきかぜ、凜子の二人死んじゃうんで、終わり方とか考えたら間違いなく長くなるのでしばらくお待ちください。戦闘重視の作風にしたら分量がおかしくなったのでプロローグのみ投稿します。
ちなみに性春姫で「せいしゅんき」と読みます


性春姫その1(魔界都市ブルース×対魔忍ユキカゼ)

近未来の日本。

人間達の世界と魔族と呼ばれる魔物が住む魔界が隣あった世界、古に結ばれた人と魔の間での相互不可侵の約定が人の堕落(だらく)により破られ、魔界の住民達が人間界で活動を始めた魔都東京。

両者が結託した企業や犯罪組織の登場によって、時代は混沌(こんとん)と化していった。

しかし闇の勢力に対抗できる者が現れ、いつしか人々は其の者たちを対魔忍と呼んだ。

 

1、

 

月が出ている。 魔都東京キングダムの一角にあるビルは月光の下で影絵(かげえ)のように見えた。

そこに佇む一人の男、闇が生んだような漆黒(しっこく)のコートを着たあどけなさを残す少年。

もしもこの場に画家や彫刻家(ちょうこくか)がいたのなら、その月に照らされた少年の姿を永遠に残そうとすべてを美に捧げるであろう。

たとえ叢雲(むらくも)がなくとも月さえ(かす)美貌(びぼう)を誇る少年の名前は秋もときといった。

 

「おい、秋! 聞こえているのか!?」

「うーん……?」

 

耳につけている無線に答えようとしたが、銃声が雷鳴(らいめい)のように響き渡り通信を遮った。

もときは音を生み出している無骨な人型の金属の(かたまり)へ視線を向けた。

 

強化外骨格(きょうかがいこっかく)

 

陸上自衛隊が開発した純日本製の新世代兵器だ。 

ヘリや戦車に対抗しうる火力を持ち、テクノロジーの(すい)を集めた最新鋭兵器である。

先日盗まれ責任問題が紛糾(ふんきゅう)していたが、どうやらここで使われていたようだ。

 

もときの姿を見つけ銃弾を放った強化外骨格のパイロットは月の光を浴びるもときの姿を改めて見たことで少しの間、陶然(とうぜん)とするがすぐに正気に戻り再び銃口をもときに向けた。

 

爆音と真紅の炎が闇夜に刻まれる。

右手に構えた五十口径自動砲の猛打(もうだ)である。

アスファルトを打つ空薬莢(からやっきょう)(ひび)きを聴きながらパイロットは(うめ)いた。

戦車に匹敵する装甲を持つ強化外骨格の右腕がぱっくり口を開け、鮮血(せんけつ)が溢れた。

五十口径自動砲は半ばから斜めに切断され、右腕と共に残骸(ざんがい)が大地に轟音(ごうおん)を響かせる。

 

あたればその箇所が挽肉(ひきにく)になる威力の五十口径の銃弾の雨を浴びせようと引き金が引かれたはずだが、もときは先程と同じ様に月光に濡れ、神殿の奥で静謐(せいひつ)と佇む偶像のように立ち尽くしていた。

常と変わらぬその姿はあまりの美しさに銃弾さえも意志を持ち、少年を傷つけまいと避けてしまったのだろうか?

 

「化け…物……」

 

そして強化外骨格はパイロットごと頭頂(とうちょう)から股下(またした)にまっぷたつに両断された。

 

「『糸鎧(いとよろい)』」

 

死の刹那(せつな)、彼の目はもときの前に出現した銀色の盾を目撃したかもしれない。

nm(ナノメートル)の妖糸を凝集(ぎょうしゅう)させれば、あらゆる火器を()ね返すチタン(こう)(とりで)()すのだ。

 

「こちら、C班、敵の排除完了しました」

「了解、いきなり持ち場を離れて何やってるんだ。 後で間違いなく説教コースだぞ」

「はーい、でもそっちも無線で名前呼んだから説教コースだね」

 

噂のパワードスーツを見たくて目視できる距離までつい近寄ったら、敵に捕捉されたとはいえないもときである。

 

「先行部隊が目的に接触! 国家機密漏洩罪(こっかきみつろうえいざい)により指名手配犯、元大蔵大臣を処理完了。

現時点をもち作戦行動を終了する。 各自撤収命令のもと即時合流ポイントに集合せよ!」

 

作戦終了の連絡があがり、もときは指揮車に向かって歩き出したが足を止めて空へ視線を向ける。

 

「東南東より急速に接近する生体反応を確認!」

 

その声が通信により伝わる前に、もときは先程うっかり敵に察知されたために警戒して張り巡らせた糸でそれを察知した。

 

そしてもときから十メートルほど離れた位置に『それ』は着地した。

鈍い銀色の兜を被り、同色の鎧を(まと)い身の丈ほど大剣を担いだ中世の騎士然とした巨漢だ。

 

「間違いない魔族だ! 増援が来るまで時間がかかる、その場から離脱しろ!」

「逃してくれそうにないけどね」

 

そうもときがつぶやくと騎士は刃渡り一五〇cmを優に超す大剣をまるで小枝を振り回すかのように軽々と振るった。何と恐るべき膂力(りょりょく)だろうか。

このままではもときの体は大剣によって切り裂かれ、否、切り砕かれ原型を留めないであろうと思われた。

 

しかし兜の下の顔が僅かな驚きに彩られる。

剣を振った先にあるもときの美貌(びぼう)に対してだろうか?

魔族であろうと人間に近い感性があるなら、もときの美を見て何も思わぬ者など存在する筈がないのだから。

否、振り抜いた大剣から肉を斬り、骨を断つ感触が伝わらないのだ。

 

騎士が見るともときは数十メートル先の位置に移動していた。

妖糸を使いスリングショットがゴム紐を弾と一緒につまんで引っ張り打ち出すように自身を撃ち出し移動したのだ。

 

そのまま妖糸をネットのように使い、衝撃(しょうげき)を殺してふわりと着地する。

その動きを契機(けいき)に、チタン妖糸の一本が軽く地面に落下した、刹那(せつな)

地面を張っていた妖糸の全てが無音で跳ね上がり、稲穂に集る飛蝗のように騎士に襲いかかった。

 

そして今度はもときが驚きに目を見張る、上段に構えた大剣をそのまま振り降ろしたのだ。

もときが驚いたのはその凄まじい勢いで振られた大剣がビルを砕く威力をだしたことではなく。自分の糸が断ち切られ、攻撃が無効化されたことに驚愕した。

 

「面白い技を使う、糸か?」

 

転生してから初めて自分の技を初見で見抜く相手がここにいた。

 

「ええ、まぁ」

「我が名はナハトムジーク、名を聞こうか美しい少年」

「秋もとき、Nacht(夜の)Musik(音楽)ですか雅ですね」

 

つい応じて名のってしまったが言う必要なかったなー、と思うもとき。

この手の戦の作法は男のロマンだからしょうがない。

 

「つまらん仕事だと思ったが、お前のようなものがいるからこの仕事はやめられん」

 

見た目と同じくなかなかに古風な価値観をもっているようだ。

もときは僅かなやりとりで相手が技術と身体能力を高いレベルで組み合わせた高位の剣士であると確信した。

明らかに強者である眼の前の騎士姿の男、ナハトムジークに強烈な覇気(はき)が高まるのを感じて戦闘狂というわけでもないもときは内心うんざりした。

もときは好奇心で前線に踏み入ってしまったことを正直後悔したがもう遅い、そのまま戦闘に突入した。

 

ナハトムジークは大剣を、己の手足の如く振っていた。

大きい得物程、振い(づら)く扱いにくいが常識であるが、超常の粋に達した武人にその様な理は通じない。

まるで小枝でも振っているような俊敏さで両手で大剣を振い、もときが繰り出す妖糸を断ち切っていた。

 

もときも負けておらず不可視の糸を大剣を振るう軌道上(きどうじょう)に展開させ、先端が音速を超える(むち)を上回る速度で迫る大剣の軌道を逸らす、余裕があれば切断しようとするなど。

妖糸で行う事が可能な種々様々(しゅしゅさまざま)な防御を行い、(さば)いて行く。

 

もときの妖糸は指先に乗る程度の大きさの糸球で、2万km。

もときはこの大きさの糸球(いとだま)をコートのポケットや裏地のみならず、体内にすら隠し持っている。

手持ちの糸全てなら地球を何周しておつりがくる程の長さを(まか)う事が出来、 いくら斬られても大した問題ではないとはいえ、こうも容易(たやす)く斬られるのは良い気分ではない。

 

一方ナハトムジークも内心舌を巻いていた。自分に届く攻撃を大剣で切り裂いているが、チタン鋼の妖糸をもときは己の身体の周辺にさながら鉄条バリケードの要領(ようりょう)で張り巡らせている。下手な攻撃を仕掛ければ、何が起きるか解ったものではない。

しなやかな盾にして鋭き刃という矛盾を両立する攻防一体の戦闘技術。

ナハトムジークはそう認識していた。

 

常人には何が起っているのかも理解不可能な程の速度と密度で行われている、もときとナハトムジークの攻防の応酬(おうしゅう)

どちらが有利でどちらが不利なのかなど理解するどころか目視することすら不可能であろう。

超人と魔人の闘いの舞は理外の外にあるのだから。

 

しかしどちらが不利かといわれたらそれはもときである。

なにしろ今迄に妖糸がこうまで通用しない相手は初めてで、また長期戦も同様に初めてである。

妖糸を操るのに力はほとんどいらないが、常人なら発狂寸前になる程に追い込まれなければでない領域の集中力が必要だ。

単純に考えるなら大剣を振り回しているナハトムジークの体力の消費が激しいが人間と基本構造が違う魔族では筋力、耐久力など基礎能力が段違いである。

 

もっとも持久戦になれば援軍がくるので凌ぎきればもときが勝つが、それは相手も承知のはず。

そろそろなにか状況を変える為の一手を仕掛けてくる筈だ。

 

そう考えた直後、ナハトムジークの大剣が炎に包まれる。

次に振るわれた斬撃はチタン鋼の妖糸を斬り裂くだけでなく、触れた先から溶かしていった凄まじい高熱だ。

 

「なるほどこれが切り札か」

 

大剣に包まれた炎が剣先に集まり、火球となってこちらには飛んできた。

直撃すれば全身が燃え尽き灰も残るまい、しかし糸を束ねて盾にしても溶かされかねないともときは刹那(せつな)で判断して糸を使い高速回避をする。

それを予測していたのか炎を背に集め爆発させてロケットの様に推進力に変えてもときの退避先に廻り込みナハトムジークは大剣を振り下ろそうとした。

 

「終わりだ…!」

 

しかし炎を宿す騎士の動きがピタリと止まった。

そしてその隙を見過ごさず振るった妖糸の一閃が首を跳ね飛ばした。

その直後に空から降り立ってきた何かが鎧ごと騎士の体を両断した。

 

「遅れたわね」

 

最強の対魔忍と名高い井河アサギである。

 

「もうちょい、早く来れません? 死ぬかと思いました」

「自分で片をつけておいてよくいうわね高位の魔族よ。遠目からみて私でも正直勝てるかどうか怪しいレベルだったわ」

「へぇ」

 

どうやらこの騎士は魔族でも有数の猛者(もさ)だったようだ。

正直ほっとした、このレベルがゴロゴロしているようだったら対魔忍世界で生きていける自信がなくなるところであった。

アサギは勝てるかどうか怪しいとはいうが、話にエロ要素を入れる都合のせいでこの人は実力が結構ブレるのであっさり負けたり、逆にあっさり勝つかもしれないのであんまりそこら辺の情報はあてにならない。

 

「けどどうして途中で攻撃を止めたのかしら、あなた何をしたの?」

 

生半可な攻撃では対応してしまうであろう魔剣士がいきなり攻撃をやめたことに疑問を持ったアサギはもときに尋ねた。

その言葉にもときは微笑(ほほえ)んだ。

アサギの顔が一瞬で紅くなる、なにもしないでも歴戦の対魔忍ですら見惚(みほ)れてしまうもときの美貌(びぼう)で柔らかく笑ったのだ思わず動きが止まってしまった(、、、、、、、、、、、、、、)

 

「こうやって」

「――えっ、なにかしら?」

 

どうやらあまり美の衝撃に脳がフリーズしてしまったらしい。

 

「決め手は顔の差、ですかね。ハンサムに生まれて得しました」

 

そういって、もときは帰還するためアサギに背を向けビルから飛び降りた。




バトルメインの予定でつくりましたが現在は対魔忍RPG時空に入った性春姫です。
過去編の予定がパラレル時空にいっちゃうとは作者でも読めなかった(節穴
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