たった2人の住人である、提督と艦娘の物語
世界観は拙作「孤島鎮守府の奮闘」と同じですが、特に出てきません。
海軍の重要な拠点、横須賀鎮守府。その沖、およそ100キロにあるほぼ無人島。島の人口2人。いや、1人と1隻がいた。
これはちっぽけな島にある小さな鎮守府の提督と艦娘の物語である。
私の朝は秘書艦に起こされることから始まる。
「提督。朝ですよ?起きてください」
目を覚ますと、美しい銀色の髪の少女が映る。
「あぁ。おはよう、涼月」
彼女は涼月。この島のもう1人の住人だ。美しい銀髪と涼やかな瞳から怜悧な印象を受けるが、実際は穏やかで優しい娘だ。
「おはようございます提督。朝ごはん出来ていますよ。カボチャのお味噌汁です!」
「またカボチャか」
「何かおっしゃいました?」
後、怒ると怖い。
麦ごはんにカボチャとダイコンの味噌汁。いつもの朝食だ。
「「いただきます」」
質素な朝食が終わったら、私は書類仕事。涼月は掃除や洗濯だ。
2人しかいない鎮守府ではなんでも自分たちでしなければならない。だが、私はその手の家事は全く出来ない。毎日文句も言わずにこなす涼月には頭が下がる。
「提督、おいも焼けましたから一緒に食べましょう?」
書類仕事がひと段落した頃を見計らって涼月が呼びに来た。そのあたりのタイミングは流石である。
「わかった。行くよ」
庭の落ち葉を集めて焼いた芋。二つに割ると、湯気と共に現れる黄金色の断面。一口かぶりつくと自然な甘みが口いっぱいに広がる。しかし・・・
「今コレ食べたらお昼が入らないんじゃないか?涼月?」
「???」
涼月はキョトンとした顔で、
「コレが今日のお昼ですよ?」
マジっすか?いくらなんでも質素すぎやしませんか?お涼さんや?
質素すぎる昼食を済ませると、野良着に着替えて畑仕事だ。もはや、提督業の合間に畑仕事してるのか、畑仕事の合間に提督業をしてるのかわからん!
今日はモンペ姿に着替えた涼月と鎌を振るってカボチャの収穫だ。
「ほら、見てください提督!こんなに大きくなりましたよ!」
カボチャを両手で抱えて私に見せる涼月。
やはり、農作業は収穫が一番楽しい。重たいカボチャも、自分で育てて収穫作業と考えたら苦にならないから不思議だ。
収穫作業を終え、乾燥のために倉庫に運んで今日の仕事は終わりだ。
シャワーを浴びて着替えたら、涼月がすでに夕食の準備をしていた。艦娘の制服の上からエプロンを着て、台所に立つ涼月。なんというか、
「若奥さんみたいだな」
「ハイハイ。もう少しでご飯出来ますから我慢してくださいね。旦那様!」
涼月も軽い感じで返してくる。長い間2人きりなのだ。もはや、夫婦みたいなモノかもしれない。
「「いただきます!」」
麦ごはんにカボチャとダイコンの煮物。ダイコンの葉のおひたし。アジの開き。
魚がある分、豪勢な食事だ。
「なぁ、涼月」
「キミが望むのなら、それこそ、横須賀鎮守府に勤務することだってできるだろう?私はもうココから異動することはないだろうが」
涼月はため息をつきながら、
「ごはんも炊けない。洗濯したらシャツを破く、掃除道具の場所もわからない。生活能力ゼロの提督が一人で生きていけるワケありません!」
涼月は呆れた声で言う。
「それに、横須賀鎮守府(ソコ)には提督(あなた)はいませんから」
「すまん」
「わかったら早くご飯食べてくださいね。洗い物ができません」
娯楽のない小さな島だ。夜は必然的に早く寝る。
「それではおやすみなさい。提督」
浴衣姿の涼月が就寝の挨拶に来る。制服姿とは異なった色気がある。
さて、そろそろ私も寝るか!明日はサツマイモの収穫作業があるしな。
横須賀鎮守府沖にある小さな島の小さな鎮守府。
コレはたった2人の提督と艦娘の物語。
「涼宮ハルヒの憂鬱」
言わずと知れた角川アニメの金字塔。
番外編の短編なので、PCゲームじゃないですが、ご容赦ください。
特に連載する予定はないです!