友人のぬはら氏との共同制作です。
こちら、舞台や登場人物、登場するサーヴァントは全てオリジナルになっております故、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
では、何卒よろしくお願い致します。
とある所の暗い夜、
それが終わった。
「やったぞ、勝ったぞ!セイバー。これで全てが終わった!」
「あぁ!!.....ってことは、これでゲンイチともお別れ。って言うことになるな」
セイバーは半ば作った笑いで俺を祝福した。
そうだった。来るべき時が来てしまったのだ。根源へ到達するには6騎と残った1騎、つまり目の前にいるセイバーを自害させなければいけない。
「......なぁセイバー」
「どうした?」
「願いって残酷だよな。いや、人間が欲張りっつうべきか。一つしか叶えられねえってなると、二つ、三つって不思議に叶えたい願いが増えてしまうんだよな...」
「それでさ、なんでもないようなつまんねえ願いも大切に錯覚してしまって、結局迷っちまう」
目のあたりが熱い。こういうのは記憶する中で生まれて初めてだ。
「......泣いてんのか...?ゲンイチ。」
「ハハッ。そうかもしれねえな。あまり知らねえんだ。こういうの」
俺は手で、目から出る水を拭った。拭き損ねたのか、その水が少しばかり口に入った。しょっぱく、ほんの少しだけ甘さを感じる。
「...わかるぞ。オレも泣いたのは片手で数えるくらいだったからな」
気がつくと、俺はうずくまっていた。セイバーは、そんな俺の背中をさすっている。ここからは顔が見えなかったが俺にはわかる。きっと、憐れみと同情と、その他の色々な感情を持ちながら笑っているんだろう。
でも、やる時はやらなくちゃあならない。こういう風の吹き回しだったのだ
「......令呪を以て命ずる__」
~~~~~
ぼんやりと覚醒した。
意識はある。だけどまぶたが本当に重い。
今の時間はざっと5時半だろう。10分くらいなら床の上でダラダラしても無茶は効く。
「......うぅ」
けだるい体を、誰かがつつく。
「......わかった、...わかった起きるからピノ」
そうやって私は使い魔の頭をくしゃくしゃに撫でながら自分を立ち上げた。
「はぁ......」
私はあくびみたいなため息をついてしまった。
体も文句なしに良好、天気も憎たらしい程にいい。学校には行きたくない訳では無い...っていうのは少しばかり嘘になる。
「だけど、まあこれのせいかな」
右手に謎のアザができているからだ。
線上のが手の甲に3つ。やや左右対称だけど、その形は少し歪。
...否、謎では無い。もう正体は知れている。
令呪だ。令呪の兆し。それが現れてしまった。私は聖杯戦争のマスター...とやらに選ばれてしまったのだ。
これができてかれこれ7日経つ
「どうしたものかね……」
このあざについては、調べる内に二つ驚かされた。まず1つ目は、これが聖杯戦争っていう、騒々しいモノの参加権のようなものであり、その際に召喚される使い魔「サーヴァント」に対する命令権であったこと。
繰り返すが、マスターの資格を得た、ということになるのだ。
聖杯戦争は7騎のサーヴァントが殺し合い、最後の1騎になるまで戦う。
文字通りの戦争。と言ってもでかい規模の戦争では無い、そのサーヴァントと契約を結んでいる「マスター」同士の争いである。
まあいわば白羽の矢がたってしまったのだ。
2つ目は、この聖杯戦争自体が、もう既に開催することがありえないものであること。
10年以上も前にどうやら、聖杯戦争が起こっていたところで聖杯をぶんどる魔術師と解体する人達がドンパチ起こしたらしい。
...ドンパチレベルのもんじゃあないが。
それでも...私の生活は変わらない。というか、より前に進んだ。
「よし、やるぞ。材料は揃った。今日でやるんだ。今日しかない」
...と、私は意気込んだものの
「......フフフッ」
仰々しい独り言を吐いたのか、目の前にいる使い魔2匹の目が点になっているのを見て我に返った。そしてそいつらのおかしさに少し笑ってしまった。
「まあごめんね。先に笑わせたのはウチだからね」
そう言って2匹の首あたりを順番にくりくりとする。どっちも気持ちよさそうだ。
「うしっ。今日も頑張るか」
ピノ、ミケを片手ずつで抱えてリビングに向かう。
「おはよう。ボス、タロウ。早速だけど...朝ご飯の手伝いをしてくれないかい?」
使い魔2匹に朝の挨拶をする。こっちは自分の部屋に向かわなかったヤツら。飼い主である自分の命令を待っていたのだろう。
「ピノ、ミケは洗濯物を干しておいて。それが終わったら、朝ごはんができるまで待っておいてね」
2匹は、なー、とかくるる、とか言いながら布、服、毛布、その他諸々を干していく。小動物が口で咥えて連携が取れているような、それでいてちょこまかとうごく仕草は朝の癒しになる。...まあ少し扱いが乱暴なのが玉に瑕だが、
「__おーい、できたぞぉ」
朝食、弁当の分の料理がやっと出来上がったので食事にありつく。
使い魔達には、特製のドッグフード的なのを各々の皿に適量入れて済ます。
「どうしたボス、...ごめんね。今月はちょっとピンチなんだ。聖杯ぶんどったら鱈腹食わせてやるからね。お前達の中で1番図体でかいのはお前なんだから、ほら、心もでかくなりな」
申し訳なさそうに私はいう。それでもボスは悲しい顔をしていた。
色々な、簡単な身支度を済ませ、登校する。
「それじゃあ行くよ。絶対に暴れないでね」
全員元気な返事をした。いつもの事だが、これなら安全そうだ。
扉を閉め、外に出る。
ここで、魔術を取り扱ってるお家の一仕事
「...ッ!」
はい。これで終わり。端的に言うと結界を張った。一般人の目につかないようにする程度だけど。
言い忘れてたけど、私、
どちらかと言うとキメラ作りの家系だ。動物と動物を合わせて別の生き物にするという、傍から見たら倫理感が欠如したような事をコソコソとやっている。
母は私という一人娘が生まれてから、父の正体を知って卒倒、後に父が追い出したらしく、父は「時計塔へ行く」と書き置きを残したまま帰ってこない。二人とも子供をなんだと思ってんだか。
~~~~~
しばらくして、学校に着く。
「おはよー澪尾」
「あぁ、おはよう」
いつもと変わんない朝。だけどこれから少しだけ、これが少なくなっていくのかと思うと、少し頬辺りにピリピリと、緊張感と表した方がいいのだろうかこれは
「......澪尾、どうしたの?怖い顔して」
「あっ!?えっ、あっ...ちょっと変な夢見てさ」
「何の夢?」
クソッ、咄嗟についた嘘がさらに墓穴を掘る結果になってしまった。めんどくせえ
「あぁ......なんだったかなぁ。ウチがペットと、知らない人と一緒に......悪いヤツらをぶっ飛ばす...夢だった気がする」
とんでもない捏造である。しかもこれが後に起こることだとはこの友人も知る由もなかろう。
「...ふーん。で?」
「で?」
「うん。で?なんかこれだけじゃ漫画の1話だけ読んだ感じでつまんないんだけど」
なんだよコイツ。普通『ふーん』ってのは興味無い時に言う台詞と相場が決まっているだろうが。私は精一杯の誤魔化し笑いをするが、多分やばい感じに引きつってるかもしれない。
「ア、アハハ......そのあとは忘れちゃったカナァ...あぁっ!そういえばぁ!部活の用事があるんだったぁ!ごめン!先急ぐね!」
「あっ!―ねえちょっと待ってよ!」
颯爽と、自分が意識してる中で最優の演技をして、私は部室に入る。
「ぷはァーッ!振り切ったぜ...!」
息を切らしながらもガッツポーズ。上を向いて、親指を天井に突き上げる。
と、教室4分の1の大きさくらいの部室をキョロキョロする。そして横を見ると、床に座ってる一人の少女の姿が。
「...見ちゃった?」
黒い髪のポニーテール、高校二年生には見えない顔の幼さ、そして身長の小ささはぶかぶかの制服と長めのスカートが喋らずとも物語っている。
間違いない。
少女は、うん。と声を発しながら首を下に傾けた。いやぁ我ながら顔が本当に熱い
「...まぁいいや。ってか楓花、もしかして毎朝そこにいるの?」
また、うん の声。
「だって、朝早く来たら誰もいないんだもん、机が行儀よく並んでるだけでさ、殺風景だよ。」
「...じゃあもっと遅く来ればいいだろ。」
私はすぐそこにあった椅子に足を掛けて座りながらため息混じりに吐いた。
「......」
...アレ?地雷に触れちゃった?
「そうだよ!それすごく最強!そしたらもっと寝れるし一石二鳥だそれ!」
ガバっと起き上がって急にハイテンションになった。喜んでるならよかった。
「なら明日から快適な眠りを...」
「あーでも私やっぱり人が喋ってるのあんまり好きじゃないし、遅く来ても結局部室かなー」
と、顎あたりに人差し指を当てる。優柔不断だなオイ
「それに...明日はホラ私達登山部作ってからの初めての活動!眠れるわけないじゃん!」
あー...そうだった。それがあった。
「だからアレは結局、海側のホテルに泊まる仲良し会レベルのもんでしょ?部費使ったら生徒会やらにぶち殺されるよ?」
「まぁまぁ、TGIFでござるよ澪尾殿ぉ...今日を乗り越えられれば明日は休日!これ以上最強なことってないよね!」
ハイテンションだなぁ。と自分はため息をついた
そんなこんなで朝の予鈴が鳴る。
「...おっ、そろそろだな。じゃあうちは行くよ」
「うん」
私はカバンを背負い、2年4組に向かう。
教室に入るや否や、クラスメイトは机を囲んでそれぞれの話をしていた。
「...でさー...そうそう、んでねー...」
「いやまじで...だから...」
そんなこんなで席につくと、先程の友人が話しかけてきた。
「みお~」
「うぉっ!?何さ」
あまりの急さにビックリした。先程、私が撒いた友人だ。不覚にも、死角をつかれてしまったようだ
「あー...夢の話ならきれいさっぱり忘れちゃったから話せないよ?」
「いや、そうじゃなくてさ...」
何かきな臭い顔をしている。
「ココ最近さぁ...ボロボロの馬に乗って、変なヨロイ?のコスプレしてるジーサンがウロウロしては目が合った人に話しかけて来るらしくてさ~...」
はぁ。としか言えなかった。エンカウントも急なら振ってくる話も急なのか
「誰かのウソでしょ?エイプリルフールじゃないんだよ今日は」
「ホントだよ!クラスの他の人も見たし...」
信じられない。ただの噂だろう。と、思ったが、もしかするともしかするかもしれない。
「何話しているかわかんなかったし、終わったと思ったらどっか行ったし...訳わかんなかった。」
「...ふーん。まあ気ぃつけとくわ」
~~~~~
「...以上が今日の連絡だ。各自気をつけて帰るように」
いつものHRが終わった。担任のけだるそうな連絡も、いつもと変わらない。
私は席を立とうとした
「あっ...まだあったわ。すまんすまん。お前ら着席ィ」
生徒からの総ブーイング。自分も大事な用事があるので正直今のには少しイラッときた。
「『最近、この辺りの人が失踪する事件が多発しています。生徒はいつも以上に警戒して、己の身を守る行動をとってください』......だそうだ。あんまり1人でほっつき歩くなよー」
なんだよー、と、ザワつくが、中には噂のあのジジイじゃね?と話をするヤツも。
と、まあそんなこんなで学校が終わった。私はすぐさまカバンを持ち上げここからの任務を遂行する。
「降り立つ風には壁を...四方の門は通じ.....これ結構難しいな...」
メモに書かれた文とにらめっこし、その文をそらでブツブツ唱えながら歩いていた。なんでも英霊を召喚するための詠唱らしい。
台座の役割を果たす魔法陣、喚び寄せるための詠唱、喚び出す際に英霊を絞って召喚出来る触媒を用意する必要があるらしいが、
文献によると触媒に至っては用意しているマスターとそうでも無いマスターがいるらしく、詠唱の有無に関わらず英霊が召喚される事例があるらしいのでよくはわからない。
「三叉路は...巡回......!あー違ったのかよなんだよ循環って」
暗記科目が苦手なのがここで響く。召喚詠唱を考えた人を呪う一方で、こればかりは才能なのか、と溜息をつきながらそれでもメモに書かれてある嫌になるほど長い文と格闘する。
「物事の初めこそちゃんとやんなきゃ。あとこれだけ...これだけ揃えば」
真っ赤に染まる夕陽は、いつもの夕日に見えて何か別物の風景を見ているようだと感じた。
_夜遅く、正確に言うと...11時頃。 キメラたちは完全に寝て、ちょっとの騒音でも主人である私が命令するまで起きないようにしてある。
私は、地下の物置にいた
「ふぅ...やっとこの時が、来たか...」
魔法陣を書くためのキメラの血を、健康管理という建前であの子達にチュウチュウ吸い取っていた罪悪感もこれで終わり。
でも予備の分も用意された大量の赤い液体を見ると、それはぶり返してくる。
「...ッ! やんなきゃ。もう採っちゃったんだもの」
私はケースに血液を入れると、それを万年筆にカポッ、とねじ込み魔法陣を描いていく
「えぇと......?消去......退去......退去、これをあと三つ、か」
消去、退去、退去と繰り返していき、そして遂に魔法陣は完成した。
「よし...!行くよっ......!」
はるか遠くにある、古代の物とされている鎖。私はそれを陣の傍らに置く。これを手に入れるのにかなり苦労した。ありとあらゆるところを探して、この歳に見合わないような大きすぎる買い物をしてやっと手に入れたのだ。今更疑おうが、おいそれと気を変えられるものじゃない
「スゥッ...」
大きく深呼吸をして...痣のある右手をかざして...
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
いい感じ。絶対に間違えてない、という自信がある。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
赤かっただけの魔法陣が白く光った。行ける。しかし気を抜いてはダメだ。ここからが本番 だんだん強くなっていく風のためか、右腕を左手で支えるようにして掴んだ。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
よしっ...!よしっ...! と思わず心の中で叫んでいた。
光っていたものがさらに光り、ものすごい風を巻き起こしている。
目をつぶっちゃダメだ、と私は直感でそう思った。今まで張った糸が、全部途切れてしまうような確信がそこにあったからだ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
激しい衝撃の後、ホコリのせいでその男を認識できたのは幾秒経ってからだった。
そうしてシルクハットを被った、胡散臭そうな姿をした男は、右手に持っている杖をクルクルさせ私にこう告げた。
「―サーヴァント、キャスター。ン召喚に応じ馳せ参じ致しました......見ましたところ...貴方がマスターのようですね。」
ここで、1話は終了です。
次回はこの物語の主人公、覡 楓花の視点からスタートします。
彼女が、どうやって、どうなってしまうのか
それを2話にてご覧下さい。
感想頂けたら幸いです。