Fate/Subsequent   作:マッポーゲニア

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こんにちは、マッポーゲニアです。
第6話でございます。

澪尾と楓花、果たしてどうなってしまうのか
ご覧ください

色々詰め込みすぎたのでいつもより結構長いです。
覚悟して、ゆっくりして読んでいただければ。




第6話 二人主屋敷の契

午前8時、宍戸澪尾は起床した。

もっとも、午前8時であると気づいたのは時計を見てからであり、咄嗟に学校の支度をする。

が、あることを思いつくと私はそれをすぐやめた。

「・・・今日はさぼりでいいや。」

私をずっと起こしていたのだろうか、ピノはわたしが仕度をやめたのを少し不審がっていた。

 

「ピノ・・・今日は学校休みなんだ。今日はお前たちと十分遊べる日だよ?」

ピノはくるる?と首をかしげるが、ピノを手に乗せている私はこのこの~と両翼をすこしなでる程度で、くしゃくしゃにしてごまかす。

 

頭が犬の猫、ミケ。

 

二足歩行するワニ、タロウ。

 

「ドラゴン」を再現しようとしたキメラ、ボス。

 

そして足が六本ある鳥、(正確な種類はモズだったっけ・・・)のピノ。

 

この子たちが、私が小さいときに作ったキメラであり、私が気に入り、またあの子たちも私を気に入ってくれた、いわば魔術師にとっては貴重な、お互い心を通わせた友人である。

いまでは性能を重視した合成獣の作成が専らだが、この子達に関しては私の愛を注いだ。といっても過言ではないくらいに

 

私の家には私と、今紹介した四匹の友人くらいしかいない。

 

「ンマスターァッ!おはようございます!不肖キャスター、少しでもお役に立てられればと思い、ブレークファストをご用意いたしました!ささ、種も仕掛けものうございます故、冷めないうちにお召し上がりくださいませ!」

いや、このうるさい英霊とあわせて6人である。

 

重い瞼をこすりながら洗面所に向かう手前、テーブルを見た。本当に朝食が用意されている、使い魔の分十分によそってあり内心、ちょっと感心した。

 

 

食卓の前には、カリッカリのトーストの上に、脂でテカテカしているベーコンを下敷きにしてプルンプルンの目玉焼きが乗っていた。ベーコンエッグ、というやつか。

普通にうまそうなのが余計癪に障る。

「・・・まあ、いただきます。」

ふいに、目玉焼きを食べるときの癖なのか私は、ベーコンエッグの上に醤油をかけてしまった。

 

これにはキャスターも驚いたらしい。

「いやはや!マスター。さすがは日本人、といったところでしょうか。・・・しかしそこにソイソースをかけるのは少し似合わないのでは?」

ここで引けばよかったものを、私は変な意地を張ってしまった。

「・・・べ、ベーコンエッグは私はこういう食べ方なの!キャスターも騙されたと思ってかけて食ってみれば?お、おいしすぎて悶絶するよ?」

 

覚悟を持って口に入れた

 

 

普通にうまかった。

 

「あっそうだ。キャスター。あんたの真名さ、まだ聞いていないけどどの英霊なの?」

私の真似をして醤油ベーコンエッグをほおばってるキャスターはこちらのほうを見た。

「私の真名、にございますか。」

のこりのベーコンと目玉焼きを飲み込むと、彼は信じられない言葉を口にした。

 

「ん~、今は教えられませんね。」

「はぁ?」

あまりにも軽いノリだったので声が出てしまった。

 

「いやはや、二度もマスターの支持を無視するのはいささか許されざる行為ではございます。私が()()()()()。ただそれだけなのです。」

はぁ、ものすごく面倒くさい。

「なんでそんなに喋りたかないのさ。」

 

今度は、キャスターは伏し目がちに心の内を明かす

「ご友人と対峙したとき、ランサーが乱入いたしましたでしょう?彼の真名、孫悟空にございますよ?これではまず名前の時点で負けにございます。ええ。しかし!私の宝具はそれをも超える、空前絶後の大演目にございます故!その幕が開いたときにこそ演者である私が輝くというものですとも。」

 

らちが明かない。令呪で無理やり言わせようと思ったが・・・こんなことに令呪は切ってられないし。

・・・まあ教えてくれないならこっちから看破してやろう。

 

そんなこんなでピノやミケたちと遊んでたり、家の警報装置などの点検をしていたら夕方になった。

 

その夕方の時だ。私の運命を大きく変えることになったのは

 

「・・・ッ!これは!」

警報が鳴る。 外敵が来た。ということだ。

魔術師の工房にわざわざ立ち入るとは、変な奴だ。

変な奴・・・まさか

私はすぐ窓から外のほうを見た。

 

小さい身長にうちの高校の制服、それにポニーテール。

あぁ、あいつだ。あいつがいる。覡 楓花だ。

 

「昨日の友人にございますか。」

何気に一緒に覗いていたキャスターが話しかけてきた。

「うん。キャスター。こっちが指示を出すから、その指示通りに動いて。」

あの子たちにも戦闘態勢を取らせる

「ミケとボスは玄関近くで待機、敵が来たら応戦すること。タロウはキャスターと連携して行動して。」

 

と、この中で一番小さいミケがそのやる気を、私でもわかるようにふんすふんすと跳ね回っている

「う~ん・・・ピノは小さいから、私と一緒ね。」

 

ピノは一瞬固まりながらも、喜んで自分の肩の上に乗ってくれた。

 

「よし・・・!キャスター、タロウと一緒に連携お願いね。家に仕組んである術式は言ったから、それに注意して迎撃して。」

「ふむ。」

キャスターは、なんだか考え事をしているようだ。

「どうかしたの?キャスター」

「いや、一つ質問してよろしいです?」

今までとは違うような真面目な顔だ。

 

「ええ、ただ一つ単純な質問にございます。先ほどの警報装置についてなんですけれども。あの装置、()()()()()()って外までです?」

「え、いや・・・この家の敷地内までだけど・・・」

「ふむ・・・だとしたらかなりまずい状況にありますね。」

 

すこし背筋が凍るような感覚を体験した。

想定外の連続である。こんなこと想像もしたくない。

「私の懸念が正しければ・・・」

 

そう話しているころには遅かった。

「―ッ!マスター!」

咄嗟に振り向いた。

 

すると目の前には髑髏の面をかぶり黒衣の布をまとった、死神のようなものが

 

     来る

 

ふいにつぶってしまった目を、恐る恐る開けた

「間に合いましたが・・・()には敬礼を。」

キャスターが防いでくれているが、ピノが目の前で倒れていた

「ピ・・・ノ・・・?」

 

「チッ・・・」

焦りからか、白面の向こうからは舌打ちが聞こえた。

 

「いやはや・・・気配遮断でこちらに近づき、殺しやすいマスターを襲撃、これにてキャスター陣営お粗末!という目論見にございますか。姿を消すのが得意な割には、ずいぶんと見透かされるものでございますねぇ!()()()()さん?」

「・・・っ!」

 

そうか。この見た目、確かに過去の記録にあった。

七つあるサーヴァントのクラスの一つである、隠密行動や気配遮断などでかく乱をするクラス、『暗殺者(アサシン)』がいると

 

私はそれより、頭の中がピノでいっぱいで、刺客の分析もこれで精いっぱいだった。

 

「・・・見透かしたところで何になる。」

アサシンは大きく後ろに跳躍し、間を取って仕切り直しをした。

キャスターのおかげで、何とか隙からの強襲は防げた。

が、惜しい友をなくしてしまった。

せめてピノの遺体を、アサシンも撃退しなければならないし、ピノも取り戻さなければならない

 

目の前にピノはいるのだ。

しかし、うかつに出てしまっては瞬で首を掻っ切られる。

相手は人の形をした影法師だ。 私がいつも相手している合成獣とはかなりわけが違う。

 

アサシンはあざ笑うかたちで啖呵を切る。

「貴様、キャスターと抜かしたな?笑わせる。手の内を自ら見せる阿呆に言われる筋合いはない。」

「阿呆で結構!地の利に甘んじてこそ驕れるというもの。私が今キャスターであると明かした所で、あなた、()()()()()()()()()()()()。と冷や汗かいたほうがよろしいのではないでしょうか?」

「ッ!」

 

キャスターが用意したのか、床から音を立てて、大きい爆発が轟いた。

よほどの爆発だからか、濃い煙が立ち込めている。

 

「マスター。今のうちに仕切り直しを。今のはただのかんしゃく玉みたいなものにございますゆえ。」

キャスターが耳打ちをした。

あれでかんしゃく玉・・・まあキャスターの道具作成によるものだろう。

 

いや、それよりもピノの死体だ。あの子をさがさなくては。

「マスター、早く!」

「え、あぁ、あぁ、ピノ! ピノは!」

襲撃に備えなくては、と同時に、ピノを探さなくては、と躍起になってしまう。

これじゃあだめなのに、あぁ、クソ。 早く、一刻でも早く、あのアサシンが襲ってくる前に―

「―サーヴァントも阿呆なら、主も阿呆か。」

 

声が聞こえたころには、アサシンがもう目の前にいた。

「ここで潔く死ね」

あぁ せっかくここまで来たのに

ピノにも手が届かないなんて。

魔術師なのに、友達にまんまとだまされ、挙句の果てには使い魔を探そうとして手間どり殺されるなんて

あの馬鹿(楓花)とも、これっきりか。

もしかしたら、馬鹿なのは―

 

すると、

 

「!?」

 

アサシンが玄関の方向から何かに気づいたか、身軽に退いた。

すかさず私も、つられてそちらの方向をみる。

 

バキッと鈍く大きい音が鳴る。

ドン、と厚い板が倒れたような音がするやいなや

しぃんと、静まり返ったこの空間に、大きな叫びが高らかに、玄関の先の居間まで響いた。

 

「たのもー!」

煙が晴れた瞬間、少女と偉丈夫のシルエットが逆光で際立つ。

その隔てていたドアを蹴破った彼らの後ろの光の先には、私も照らし出されていた。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

いよいよだ。いよいよ澪尾にごめんなさいできる。

「よし、行くよ。セイバー。」

「おう。」、

そうやって敷地に入ろうとした瞬間、

「うわぁっ!?」

 

警報らしきものが鳴った。おそらく私たちが入ったから・・・?

「さすがは聖杯戦争参加してるだけあるね・・・。セキュリティもしっかりしているんだね・・・」

急なサイレンでいままでの威勢がさらーっとくずれおちた。

 

「おい、何ぼさっとしてんだ。行くぞ」

「う、うん!そうだよね!」

 

気をとりなおして澪尾の家の門をくぐる。

それにしても妙だった。

 

いや、自分の気のせいかもしれないが、ふつう、警報装置とかそういうセキュリティは侵入者が入ってから作動するものである

それなのに、作動したのは確か、自分が敷地に入る前だったはず・・・

まあそれくらい用心深いっていうことでしょ。

 

と、思ったその時であった。

今度は屋敷の中から大きな爆発音がした。

「え、澪尾・・・大丈夫かな・・・」

「ほう・・・」

 

セイバーは辛気臭い顔で言った。

「この気配は・・・サーヴァントがもう一騎いるな。」

 

それって、澪尾が戦ってるっていうことだよね

だめ。だめだよ。せっかく言いたいことがあるのに

死んじゃったら。言えないじゃん。

 

「突っ込もう!セイバー。」

「あぁ、こんな状況じゃノックもしてられねえな。ぶちかますぞ!準備はいいな!」

「うん!」

 

セイバーは足でドアを蹴り飛ばした。

その向こうには、煙に包まれた澪尾がいた。

私は再会をよろこぶ意味で、こう叫んでやったのさ

「たのもー!」

 

 

~~~~~~~

 

「わぁ・・・セイバー、もしかしてアレ?」

澪尾のすぐ向こうには骨のお面をかぶった気味悪い人がいる

ナイフとか物騒なもんもってるし。

「そうだな。おそらくあれで間違いねえだろ。」

その黒い人は私たちを見るや否や、

「チッ・・・厄介な輩が・・・!」

すぐさま逃げた。

「おや、いけませんよ? せっかくですから、まだびっくりしてもらいましょう!」

キャスターが叫ぶと、不思議なことが起こった。

キャスターが、黒い人にいたところに・・・?

いや、違う。

先ほどまでセイバーの目の前にいたはずのキャスターは確かにそっちに移動した。

その代わりに、

「何っ!?」

黒い人がセイバーの目の前にいた。

「よっ。」

セイバーはとっさの移動で黒い人を気絶させる

さすがの黒い人も、あまりにも予想外な不意打ちには対処できなかったのか、あっさり倒れてしまった。

 

「・・・一回、お預けに致しません? 私、アサシンが気になりますので」

キャスターさんは親指で黒い人のほうをさしながら、目はどっかを向いてそう提案した。

「私が行く。」

()()()は言わなかったけど、「来るな。」っていうことだろう。そう言っていた気がした。

 

「ッ!?」

澪尾がすぐに後ずさりした。顔はかなり青ざめてる。

すぐさま私もその顔を覗いた。

 

見た途端、声じゃない声が出た。

 

いや本当に、びっくりするしかない。えぇ、本当に・・・嘘でしょ?

黒くてボロボロとした衣に紛れていたが、衣の下に来ていたのはうちの学校の制服

つまり、私と同じ高校生ってことだ。

 

しかも、この子・・・

「澪尾・・・この子、澪尾んとこのクラスメイトだよね・・・」

澪尾は戻らない青ざめた顔を、ゆっくりと、縦に振った。

「とりあえず・・・」

澪尾はどこから出したか、何やら注射器を出すと、そのままその子の首に打った。

私はびっくりして声を出してしまった

「ちょ、澪尾!なにしてん・・・」

すると、瞬きの間に人を殺すような目がこっちに向くと注射器を私めがけて投げてきた

「うわぁッ!」

私はとっさによけた。幸い当たらず、壁に注射器が勢いよく刺さる音がした。

「澪尾・・・」

 

 

 

澪尾はすぐこっちを睨みなおすと殺気立つようにこちらへ迫る。

 

「帰って。」

 

怖気ついたけど、ここでは戻れやしない

「澪尾! 私、澪尾と仲直りしに来たの!仲直りっていうか、ほんとのこととか、思っている事を話に来た。全部。」

澪尾の表情はかわらない。それどころかさっきより凶悪な何かが見えつつある。

「さっさと帰って。友達ごっこしてたよしみだから、今なら見逃してあげるよ」

私はおされて潰されそうな心をなんとか保たせて、できる限りぶちまける

 

「澪尾、聞いて。あの時は私にもわからなかったの。サーヴァントどころか、セイバーことも、そもそも聖杯戦争っていうのもわからなかったんだよ。」

「で? それを話に来たところで何? 私を殺さないでください? それともこのデスゲームから抜ける方法を教えて? ふざけないで。」

澪尾は持っていた空の注射器を落とすように捨てると、右手をこちらにかざしながらこう言った。

「忠告はこれで終わりだよ。」

 

なにやら、澪尾の右腕から紋様みたいなものが光るように浮かび上がる、令呪にしては多すぎるし、

私の勘はすぐさま、『危険』と判断した。こういう時に限って勘は当たる

(おい、やべえぞ。俺に早く指示を出せ。)

 

霊体化したセイバーも察知したのか、私に声をかけた

実体化しないのは、おそらく空気を読んでのことだろう

たしかに、このままだとかなりやばい 気がする。

けど

 

私はこっそり、『ダメ』のサインをだした。

(何やってんだ!死ぬぞお前)

死ぬのは怖いけど

ここでセイバーを出したら澪尾をさらに刺激してしまう。

 

 

時間の経過とともに澪尾の手から白い弾が現れ、大きくなっていく。

 

 

怖い、すごく怖い、けど

それで澪尾がわかってくれるんだったら...

その方が最強だし

 

「いいよ。澪尾、私、何発でも受け止めるよ。」

自然とその言葉が口に出た。

 

どんな顔で言ったんだろう、澪尾のさっきまでの硬い表情がすぐに崩れたかと思うと、もっと怖くなった。

 

吹き飛べ!!

その大きい声とともに、私は澪尾のそれ()をモロに食らった。

 

あぁ、 生きてる。

でも 痛い

いたい。 けど

こらえなきゃ

 

「澪尾、ごめんね。」

 

意識が ふわふら するけど、なんとか いえた。

 

「・・・ッ!」

 

澪尾は まだ、撃つ構えをしている。

 

あぁ、私 死―

 

「そこまでにございます。彼女、限りなくシロに近いシロだと思われるのですがね。」

キャスター、さん?

澪尾はけげんな顔でキャスターに言い返す

「キャスター。あなたまで何言ってるの?」

「すこし、冷静に・・・マスター?種明かしの時間に参りましょう!まず我々が初めて対峙したときからの話にございますが・・・」

身振りを大きくして、キャスターさんは弁明を始めた

 

「彼女、一切指示を出しておりませんでしたよね?あぁ・・・明確に申しますと、我々への攻撃はほとんどしてきませんでした。 攻撃といいます攻撃はすべてセイバーの意志によりますものと私は判断いたしますよ。答え合わせをしたいのですが、如何でございましょう?」

セイバーは霊体化を解き、話した。

「・・・あぁ。この醜女、本当になんも言わなかった。目の前に敵がいやがるのにだぜ? 事情を聴くまではこいつぁ外れだな・・・ったぁ薄々思っとったわ。」

 

澪尾は少し固まりつつも、こう返す

「私が想定外の時間にきたんでしょ? そもそも、あの部屋の誘導から色々臭すぎたんだよ。ホテルの支配人とグルだったんでしょう。」

「いやはや・・・それほどいたしますのならば自ら逃げるといった選択肢はとりますまい!『追い込んで、罠を使いまくっておさらば!』のほうがよほど合理的にございますよ?」

 

「あぁ・・・うん。・・・正直コイツ・・・・・・アホだから」

少しだけ、納得したのかちょっぴり澪尾はすねたように口をとがらせてその言葉を吐いた

 

衝撃の言葉である。仲たがいしたことよりも『アホ』って言われたことのほうが心にキテる・・・

「えぇ!お分かりになりましたか? 彼女がなぜ我々を攻撃しなかったか! まず彼女が仮に、魔術師にございました線をお話しすると『彼女がそもそもアホだった』か『マスターが来る時間が想定外だった』、この二つに絞れます。加えまして・・・。」

魔術師じゃないしそもそもアホじゃないです。

 

そして、キャスターさんは澪尾に諭すようにこう言った。

「彼女が仮に、魔術師ではなかったら?『予想外の現象が起き、予想外に喧嘩をしてしまい、予想外に敵意を向けられてしまった。』こういう一線しか考えられません。魔術師であるとしたらすかさず!ちょちょいのちょいっと攻撃いたしますし?なにより、なによりでございますがさきほどのアサシン襲撃、セイバー陣営が何気な~く派手に表れて何気な~くアサシン(仮)を見事討伐いたしました。」

さらにとどめを刺すように

「挙句の果てには! いやはや、アサシン(仮)を調べながらも我がマスターに何げな~く近づきました! 正直あの場面、彼女が魔術師であればすぐに殺せる距離でした。」

 

「それは、ミケやボスたちもいたし―」

キャスターさんは澪尾の言葉をさえぎるように続けた。

「あなたの使い魔も、セイバーほどのサーヴァントがお相手にございましたら一瞬でお生肉に変わっていましたよ?」

澪尾は目が開き、口から一瞬声が出なかった。

 

「そしてです!先ほどの口喧嘩! あなたも壮絶にございますねぇマスター。話を聞かず対大型魔獣の魔弾を人にBAN! あの時は私もおしっこちびっちゃいました。いやはや生きてて何よりでしたね。あぁそうですね、お名前を聞いておりませんでした。レディ、お名前をうかがってよろしいでしょうか?」

 

キャスターは、ショーのMCみたいな口ぶりで今更私の名前を尋ねる。

「え、あぁ・・・楓花、覡 楓花です・・・」

「カンナギフーカ! いいお名前にございます。・・・そうです!ミス・カンナギ、セイバーを実体化させましたら、あの魔弾は防げたはずにございますよね? あえてお聞きいたしましょう!なぜセイバーを出さなかったのです?」

 

私はちょっと自嘲気味に笑いながら話した

「いやぁ・・・あの時、セイバーを出したら、最強じゃないかなぁって・・・」

 

「いやはや、マスター?もうお判りでしょう。そう、結論から申しますと、ミス・カンナギは―」

ここまでの口上の流れの良さに思わず息をのんでしまう。

「『聖杯戦争を知らない、一般人ですこし間の抜けたレディ』にございましょう。えぇ!」

なんだろう、頼もしい仲間にフレンドリーファイアされたような気分だ。 私はアホでもなければ間抜けでもないのに―

 

「キャスター・・・」

澪尾はすこし申し訳なさそうに下を向きながら口を開ける

「・・・うん、薄々、いやもうそうなんじゃないかなって思ってた。だって楓花がアホじゃない魔術師だったらあんなことしないって・・・」

澪尾は顔をくしゃくしゃにして、私に抱きつきながら言った。

 

「ごめんねぇ・・・楓花。疑っちゃって・・・私、楓花のこと信じられなかった・・・本当の楓花は、少し抜けてるとこがあって・・・それでまっすぐで、私をこうやって貶めることなんか絶対にしないって・・・だって、あんなことがあって・・・それでもう・・・」

 

一言多い気がするけど・・・まぁいいや

「ううん。大丈夫だよ。澪尾。ちゃんとわかってくれて、・・・こっちこそごめんね? 今日は、それが言いたかったんだ。あと―」

私は澪尾の肩を両手でつかむと、澪尾と面向かうように手で抱き着いているのを離して、

 

「私はあほじゃない!」

と、ちゃんと目を見て怒った。

でも、なんだかだんだんおかしくなって

「「あっはははははははは!」」

二人とも笑ってしまった。

 

 

~~~~~~~~~

 

 

「で、どーすんの」

 

澪尾のベッドを借りて先ほどの重症を治してもらっている最中、私は澪尾にそんなことを聞かれた。

 

「・・・どうしよ。正直、決めてないっス。」

私は少し、ベッドに座っている澪尾の顔を覗き込んだ

少し考えこんでいるようだ。

「う~ん・・・」

「どうかしたの?」

澪尾は考えながら話す。

 

「いやさ、普通、聖杯戦争ってのは監督役っていうのがいてね、こう、参加者の中でズルしやがる奴がいないかっていうのを見張る役なんだけど、同時に聖杯戦争の事後処理役でもあるわけ。んで、楓花のような何にも知らない『巻き込まれた人』もそっちに駆けこめば保護してくれるんだよね。」

 

澪尾はさらに、少し真面目な顔で話した。

「問題はそこ。―結論から言うと、私もこの聖杯戦争の主催者が正直誰なのかわかっていない。から、監督役も全然知らないんだよね。」

「へぇ~。」

へぇ~。しかでない。こんなにしっかりしてるんだな聖杯戦争って

 

いやちょっと待て

「えっじゃあそれって、」

「気づいた? ・・・まぁこんなことないだろうと思うけど、極論、色々ガチでやべーやつが荒らしたりする可能性があるってわけ。あと・・・監督役って嘘ついて令呪をだまし取るマスターや魔術師が出てくるってことも全然ありうる」

「うぉぉ・・・」

 

「まあ主催者も魔術師だろうし、それもこんな日本の辺境なところで聖杯戦争するくらいだからさ、何か変なことでも企んでるんだと思うけど・・・やべーやつの暴走より、令呪詐欺がいちばん怖い・・・かな。」

恐ろしいことだ。 あっこれ戦争だった。 忘れてた そんじょそこらのお祭りじゃなかった

「うわぁ・・・すごいね。気を付けないとね・・・」

 

澪尾はぽかんとした。

「えっ、私、今あんたのことを言ってるんだよ?」

「えぇっ!?私そんな最強じゃないことしないよ!」

「いやそうじゃなくてさぁ。逆。楓花が騙されるの。 楓花さ、ほとんど知らないでしょ?聖杯戦争とかサーヴァントとか」

「あぁ・・・うん、アハハ・・・」

 

澪尾はため息をついた。

「わかった。じゃあさ、楓花。これは提案ね? 両方にとってウィンウィンな―」

澪尾が話を切り出したかと思うと、セイバーがドアを強引に開けてきた。

 

「おい!楓花ァ! キャス坊の奴ァなかなかに面白れぇぞ! 魔術師ってのは陰険な奴か胡散臭えヤツしかいねえと思ったがな。決めたぜ。てめぇは最後に()()()()やらぁ。」

セイバーはキャスターの頭を強くガシガシになでている。・・・いや、キャスターの頭をゲームのスティックのようにぐらぐら動かしている。

 

「お気に召していただけて何よりでございます! サムライの方。いやはや。あとその、レバーのように私の頭をぐらぐら揺らしなさるのを少し遠慮なさったらうれしいのですが。」

キャスターさんは頭が爆速で揺れながらもお構いなしにキャスターさん節である。

 

「ちょうどよかった。キャスターとセイバーも打ち解けたみたいだし・・・」

澪尾は単刀直入にその言葉を口にした。

 

「同盟、組まない?」

同盟・・・

「同盟?」

 

「うん。私と楓花はお互い、戦うことはしない。まあ、その場に応じて協力してほかのサーヴァントを倒したり、最後まで生き残ったり・・・的な。」

「それって、最後はどうなるの? 私と澪尾だけが残ったら」

澪尾は、当たり前でしょ?みたいな顔で返した。

 

「そりゃあ、私と楓花で一騎打ちだよ。」

「えぇ・・・」

「どうすんの、嫌なら、楓花、すぐ死ぬよ?」

だよね。

 

「う~ん・・・・・・いいよ。ってかお願い。仲間になってください!」

私は澪尾に右手を差し出した。 

「・・・楓花らしいや。」

澪尾は笑いながら私の右手を、澪尾の右手で握って応えた。

 

こうして、私と澪尾の少し小さくてすこし大きい喧嘩は幕を下ろしたのであった。




最後までお読みくださりありがとうございます。

サーヴァント、登場人物の設定などをちょくちょく載せていこうかな~と思っております。

感想、評価いただけたら幸いです。

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