第七話 今回はすこし日常回です。
どうぞご覧ください
朝というのは本当にイイ時間だ。
お天道さんものぼりはじめ、空気が『澄み渡っている』この感覚が実に最強
風が冷たい感じだと、もー100点!
私はこれが止められなくて朝早く起きて登校をしている、というのもある。
というかそれが主な理由なのかもしれない。
校門を越える。校舎の前の坂道は少し急だけど私にとってはちょうどいい運動だったりする。
校舎に入り、私はすぐに部室に入った。
すると、思わぬ来客が。
「おや!ミス・カンナギ、ようやくいらっしゃったようですね!」
「あ、キャスターさん、・・・おはようございます。ってことは澪尾も?」
キャスターさんは部室にある将棋の駒でピラミッドを作っていたようだ。
登山部も、実は学校の開いている部屋を部室として使わせてもらった。おそらくきっと、前は将棋部がこの部屋を使っていたんだと思う。
今は6段目、もう少しでピラミッドが完成するところ。
「えぇ、ただいま職員室にて先生とお話をしているようでございまして、私は待つようにと頼まれたんですが・・・私手が落ち着かぬ性分でございまして、生前からの趣味も人っ子一人おらぬようでは腐ってしまうようなものでございます故に・・・暇つぶしにしてはなかなかのボリュームにございますね!」
そう話しているうちに、澪尾は部室に戻ってきた。
「あぁ、楓花。いたんだ。」
澪尾はどうやら、私の包帯の巻かれているところをみたのか。
「昨日は、...その、ごめんね。」
澪尾は暗い顔をして私に謝った。
「あぁ、いやダイジョーブだって!もうすぎたことっしょそれにさ、走れるようになるまで治療してもらったしもうフェアってことで!」
澪尾はちょっと笑った。
「それにさ、元はこっちだし、謝るの。」
場が少し辛気臭くなる。
カシャン、とトランプの三角が水平線になった。
・・・
「いやはや!このままだと空気もどよんと重くなりてございますゆえ、他の話でもされたらどうです? 私は邪魔にございましょう。カードの手癖には自信がありますよ!あっという間に、はい!」
キャスターさんはそういうと、ばらばらになっていたトランプのカードをすぐに束一つにまとめた。本当にあっという間だった。
「あっそうだ。昨日の、あの子のことなんだけどさ。」
見当はついている。アサシン(仮)の人である。
「あのあと、すごかったよねえ。」
「うん。担任に話したら、二木さんは意識を取り戻したみたいなんだけど、片頭痛が起きたり記憶がいくつか抜けている、みたいなこと言ってた。」
「うへぇ・・・、澪尾、もしかしてその二木さんに打ったワクチンみたいなもののせいじゃない?」
若干私は冗談交じりで言った。
澪尾は若干考えるように抱え込む。
「いや・・・うーんあのワクチンはキメラ専用だしぶっちゃけ人に打つと悪影響が出るのは否めないけど・・・おかしいんだよね。」
マジになっちゃったやつ
「あくまでもあれは睡眠剤というか・・・若干のスタンガン、スタンワクチン?みたいなもんだけど、頭痛はともかく記憶までは干渉しないはずなんだよね。なにか絶対種がある。」
へぇ~、といってしまった。
「それよりさ、どうだったの。そっちこそ。」
不意に澪尾が質問を投げかけてきた
「へ?あぁ。私!?いや私はその二木さん・・・には何もやってないよ」
「いや、あの後。お爺さん相当怒ってたくない?」
「あ、そっち? いや~大丈夫大丈夫! げんこつ一発で済んだし。」
私と澪尾はあのドンパチの後、倒れている二木さん(ちなみにこの子の名前は今さっき知りました・・・昨日は色々あったし・・・)を119で病院に連れて行った。
二木さんが意識不明で病院に運ばれたことから、そのあとは110もおまけで来て私たちは事情聴取を受けた。
・・・が、なんかあっさりいった。
後から聞くと、澪尾はちょこっと警察に暗示なるものをかけていたらしい。よくわかんないけど。
その後、保護者が来るまで警察署まで待つように言われ、その後おじいちゃんがきて、警察や澪尾にあいさつしながら深々と頭を下げて
「何しとるかお前は。
と、げんこつを一つ食らって家に帰った。 ただそれだけである。
私も一応、すみませんでした。と警察にお辞儀をしてからじいちゃんのところへ行った。
「それだけ。」
私は何ともなく言った。何ともないんだもん
「まぁそれならいいけど。」
「じゃあさ、放課後、少しどっかで話そ。」
澪尾が言ってきた。
「何を?」
「・・・色々。」
予鈴が鳴る。もうおしゃべりは終わりのようだ。
「んじゃ、終わったら私のクラスの前で待ってて。」
と澪尾は部室の扉をばたんと閉じて消えた。
教室に入る。
「覡さん。」
「ほえぁ!?」
急にびっくりした。
「隣のクラスの倒れているの、見たんだって?」
5、6人が私を取り囲んで聞いてきた。
「あぁ、うん。」
「それで、今はどうなってるって・・・?」
「う~ん、記憶がトんでる?っぽいよ・・・」
今までかかわらなかった子たちが急にぐいぐい来るもんだからたじたじしちゃっている。いかんぞ覡。最強じゃない。
ぐいぐい来る子たちは勝手に話を進める。
「ほぉらやっぱり。最近ここら辺おかしいって。」
「二木さん昨日は登校してたよね。今日は?」
「いなかった、ってさ」
「えぇ~やばいじゃん。」
ぽかん、と立ちながらもそういえばここ最近物騒だなぁ。とはよく聞く。
「あっあとさ。谷城のホテルで喧嘩のあとガラスが割れたって。」
ひやり。
「それはさすがに関係ないでしょ~」
「考えすぎだって」
「えぇ~私は関係あると思うな~。」
勘が鋭いなこの子
しかしほかの子たちは、あまりにもちぐはぐだと笑いながら騒ぐ
今がチャンス・・・!
私はすぐ席に着いた。
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授業が終わると、私はすぐ澪尾のクラスの前の廊下で、澪尾が来るのを待っていた。
「お待たせ。」
しばらく待つと澪尾が来た。担任と話していたしきっと昨日のこととかなんだろうなぁ、と
歩きながら喋る。
「担任と話していたの、昨日のこと?」
「いや、欠席してたじゃん?あれでなんで二木さんを連れてこれたんだって。楓花。私のことねん挫って言ってたのもきいたよ。」
「うん。ホテルの時、こう、巻いてたじゃん?あの巻くやつ。」
語彙力
「うん。伝わるからいいよ。」
「だからそうなのかな~って」
「なる」
無気力な会話である。
「んで、どこ行くの?」
「家」
澪尾は即答した。
「さ、入って入って。」
昨日よろしく屋敷に入る。
「あ、セイバーもせっかくだからもう霊体化解いて大丈夫だよ。」
あっそうだ。セイバーがいたの忘れてた。
「・・・んじゃ、実体化するぜ。」
「ごめん、セイバー。すっかりいるの忘れてた・・・」
セイバーは豪快に笑い飛ばした。
「だッはッはァ!ま、そりゃ、俺ァ『ガッコ―』っちゅーもんを俺も黙ってみていたからな。」
なぜかセイバーは得意げに語る。
と、入ったはいいものの、澪尾を見失ってしまった。
「って、あれ?澪尾は?」
すると、どこからともなく、少し洒落たスーツ姿の見知った姿が
「マスターは何やら準備をしていらっしゃるようで!ええ。ささ。私がご案内いたしましょう。」
案内されるまま進むと、そこには昨日の有れようとは大違いなほどにきれいになっていた。
居間と思われる広い空間の真ん中には、低めのテーブルとその高さにあったソファがあった。
キャスターさんが、どうぞ。といったので私とセイバーはそれぞれ適当なところに座った。
「ふぅ。・・・どっこいしょ。」
青くて分厚いファイルをどさっと音を立ててテーブルの上に乗った。
ファイルには「聖杯戦争」と書かれてある
「え、何それ。」
「聖杯戦争の情報とかいろいろ。集めるの大変でさ~。」
私は一つ手に取ってパラパラ、とめくった。こんなにも集めたのか・・・と感心した。
「楓花、ロクに聖杯戦争のこと知らないでしょ。」
唐突に聞かれて、そういやそうだ。とはっとなった。
「セイバーに教えてもらったこととか、・・・それくらいしか思いつかないなぁ」
えへへ、と笑ってごまかす
「まあそうだろうと思った。から今から手取り足取り教えてあげる」
セイバーは澪尾に視線を感じたのか、セイバーは急に釈明をし始めた。
「なぁ嬢ちゃんよ。そりゃあ説明責任はあるのはわかってるぜ?だがよ。あん時ゃ何から何まで急だったんだ。契約するかどうかくらいの話だぜ?付け焼刃程度の知識しか俺は教えねえよ。」
正論に聞こえるが、なんだか腹が立ってきた。
「はいはい。それじゃ。教えるね。」
流れるようにいなした澪尾は、そのまま授業を始める。
「まず『聖杯戦争』が何かわかる?」
単純だけど唐突な質問。これはたしかセイバーに教わったやつ
「えーとね、分かるよ。確か、7人の魔術師・・・参加者が『聖杯』を取り合って戦うんだっけ。んでその『聖杯』はなんでも願いをかなえることができる。 そうでしょ?」
「うん。合ってる。」
澪尾は頷きながら説明を始める
「で、その聖杯戦争において重要なのが『サーヴァント』っていう存在ね。セイバーからサーヴァントのことに関して聞いていない?」
「うーん。まず、『契約しないとマリョクが切れて消滅してしまう』、とか、レイジュとかなんとかは聞いた。それ以外のことはあまりわからないかな。」
「もっと教えたはずだけどねぇ。」
「あの時はね、色々あったし、えへへ・・・」
セイバーは半ば呆れながら、挑発にのる5秒前のような顔をしている。
「うん。オッケーじゃあ私が教えるから、」
澪尾はすぐなだめた
「サーヴァント・・・英霊ってたまーに呼ばれたりするけど、過去の伝承とか昔話、歴史の偉人をこう、魔術的なアレで召喚するらしいの。詳しいことを話すとついていけないと思うから話さないけどね。実のところ私もちょっと時間かけて読まないと分からないところがあったし。」
澪尾は続ける。
「サーヴァントは7つのクラスがあって、召喚される際はそのうちの1クラスで召喚されるの。うん。そう書いてある。」
「クラ......ス......?」
澪尾が口を開ける前にぴきーんときた。
「あっ、待って!わかった!待って待って待って待って待って!!!アレでしょ!セイバーってヤツ!」
澪尾はうなづいた
「そう。それ。・・・でも楓花、他のクラスわかる?」
「ちょっとまってね。・・・えーと、セイバーでしょ。キャスターでしょ、アサシン?も入ってるんだよね。あとは・・・ラン・・・忘れた。」
「オッケー。全部教えるね」
そういうと、澪尾はファイルをパラパラ、とめくった。
「えーと、あった。これ。セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、そしてバーサーカー。これで7つ・・・って書いてあるね。んでさ、サーヴァントって真名があるって言ったじゃん?でも真名がお互いわかんないから、お互いクラスで呼び合うらしい。」
「なるほどね。それで最初からセイバーとかキャスターとか。」
「実際最初から相手の真名がわかりゃ世話ねえんだけどな。武器とノリで分かるし名乗るやつはクラスを自分から言いやがるからな。そこんところは問題ねえさな。」
こういう感じで、澪尾の、聖杯戦争講座は1時間かけて終わった。
「なるほどね・・・なるほどなるほど。・・・大体わかった。ありがとね。」
「うん。」
澪尾はすくっと立ち上がり、くるっと後ろの方を向いてどこかへ行こうとする。
「澪尾、どこか出かけに行くの?」
澪尾はきょとんとしている。
「何って・・・今から戦いに行くんだけど。」
早すぎない!?と声が出てしまったが、いや、そういうものなのか。と私は理解した。
戦うときのような嵐の雰囲気って、こういう静けさの後に急にくるんだもん
「楓花は?こっち的には協力してほしいけど、爺さんに昨日こっぴどく叱られたでしょ。」
「爺ちゃんのことは大丈夫だと思う。夜遅く出歩くのはあまり怒らないんだ。そこんところずれてる人なんだよね。」
我ながら思う。昨日は頭に山ができるほど痛かったし、そこんところの線引きがガタガタなのでは・・・?
「じゃあ、ついてきて。」
澪尾は若干にやっと口が緩みながら、立てた親指でいく方向を指した。
向いている方向を少し良く見ると暗くてよくは見えない。
しかし、私には不安はなく、むしろワクワク50パー、ドキドキ50パーで中身が埋まっていた。
~~~~~~~~
これは、奇怪な事件が起こるようになった海谷市の、
窓越しにうつる紺色、目の前には扇形の光が二つ。
運転席の中央に埋め込まれてあるデジタル時計は「21:37」の数字列を見せている。
『高瀬』のほうで水道の破裂が起こったらしく、その調査をするために俺と宇津木が突発で駆り出された。
俺だけでもいいとあれほどいったんだが、新人の教育のために、ということで宇津木も連れていくことになった
「―続いてのニュースです。相次いで起こる失踪事件、またも海谷市に行方不明者が出ました。行方不明になっているのは高校生の―」
行方不明、意識不明、こういうのが相次いでいる。なんでも夜にふらついてる人が帰ってこなかったり、病院でおねむの状態で戻ってくるんだとか。
いつもだと車の量が多くて渋滞を起こすのもしばしばあったが、おかげで今じゃその車も少なくてすいすいいける。
「この連日続く海谷の失踪者は現状100人を超えており、これにより観光業に大きな被害が出ている模様です。」
無味乾燥なラジオの声から発せられるとてつもない内容には内心驚かされる。
「やべーっすよね。これ。」
助手席に座っている宇津木はゲームをしながら世間話を切り出した。
「まぁ、そうだな。上もさっさと、早いうちに帰らせてくりゃいいんだけどな。」
「そーっスねぇ。夜早く店も閉まるようになりましたし、ここら辺の夜景もなくなりましたよネ。あの景色マジで好きだったんだけどな~。」
窓をちらっと見て宇津木はすぐゲームに戻った。俺も寂しくてすこし歯がゆかったので窓の方へ眼をやった。本当に暗い、しか感想が出ない。
左折しようと周りを確認すると、サイドミラーに少し大きなトラックが走るのが目に留まった。
まぁ疲れてるんだろ、と俺はランプをたいた。
と、先ほどのトラックがすごい物音を立て、電車のような速度でこちらを通り過ぎた。
「うおっ。」
さすがに俺も面食らった。
「あのトラック・・・やばくないっすか。キシロさん。」
「俺も長いこと外で仕事してるけどよ、あのデカさは見たことがねえな・・・」
かれこれあって、現場についた。とりあえず現場をポールで囲んでおく。
改めて、俺と宇津木は破裂している水道を見て調べる。
「ふぅ、これか・・・」
道路に亀裂が生じ、水道管がむき出しになっている、
しかし、どうやらおかしい
「ちょっといいっっスか。キシロさん。」
「あぁ。」
こんな漫画みてぇなことおきるわけがない。
「コレ、
経年劣化によるものにしてはあまりにも新しすぎる。
「とりあえず、もっと調べるか。」
と、俺は宇津木に手取り足取り教えながら調査に移った
しかし、
「うーん・・・」
「やっぱりあれっすかね。」
「そうだな。これに関してはあまりにもレアケースだな・・・」
どう報告書を書こうか。原因不明と書くか人為による損壊と書こうか考えこんでいた。
「とりあえず、もうここら辺の作業は済んだし、帰るか。お前、家近くか?」
「いや、すんません。職場まで送ってもらってイイっスか?職場のほうが近いんで。」
「おう。せっかくだし飲みモンくらいは奢ってやるよ」
うっす。あざっす。と宇津木は会釈をした。
「じゃぁ、リンゴジュースで。」
斜め上の注文で耳を疑った。
「おまえ、変わってるな。コーラとか、コーヒーとか飲まねえのか。」
「ああいうのあまり好きじゃないんで。炭酸は腹壊しますし、コーヒーって苦いじゃないっスか」
「ハハハ。最初は、カフェラテとかでなれたらいいんじゃねえか?」
「・・・イイっス。とりあえず、リンゴジュースで。」
少し不機嫌そうな後輩はせめてもの愛想笑いをした後助手席へ向かう。
にしても、不思議なことが立て続けに起きるもんだ。と俺は運転席のドアを閉めてエンジンをかけた。
新人にしては物覚えが良く。作業もすんなりいったが、時計には「0:45」と表示されている。
眠気がすこし頭の中を支配し始めている。
宇津木をちらっとみたが、ゲームをせずにフロントガラスの向こうを見ているようだ。ゲームの音が聞こえてこない。
「どーした宇津木。眠いのか?夜間は初めてだろ。寝てもいいぞ。」
と笑い交じりに言ってみたが。宇津木からうんともすんとも帰ってこない。
「宇津木?」
あまりにもおかしいと思ったので宇津木の方をみた。
「先輩、あれ・・・」
指がさす方をみると、先ほどのトラックが空を飛んでいる
いや、先ほどの、馬鹿デカいトラックなんだが、
俺は直感で「やばい」と感じた。
「おい、宇津木。しっかりしろ。」
宇津木はまるでこっちの声がきいていないようで。ついにはドアを開けて車から降りようとした。
「あぁっ・・・くそっ・・・!」
俺は宇津木を助けようと身の回りのものを探し始めた。
あった。
休日に家の日曜大工の際につかってたロープと、夜間作業の時のアイマスク。
外に出てる宇津木を俺はすぐに追いかけ。
「宇津木、スマンッ・・・!ふんっ!」
ヘッドロックをかけてオとし、車へ引きずる。
アクション映画の見よう見まねでやってみたが・・・。あとはコイツが起きることを祈ろう。
起きても暴れないように、またあのトラックを見ないようにと俺は宇津木を縛り、アイマスクをかぶせた。
上へ少し目をやると、またあのやばいトラックが空を飛んでいる。
俺は視界に注意しながら、暗い道路を全速力で走らせる。
しかし、走っているときにもおかしなことが起きるばかりだった。
「何じゃこりゃ・・・」
今まで人っ子一人いなかったここらへんの通りに、人がわらわらと出てきては、その焦点が合わない目で上のデカブツへ向かって歩いている。
「やべえ、やばすぎる・・・!」
一刻も早く職場に戻らなくては・・・しかし道路歩道の判断すらつかないようで、ハンドルを右左と素早く回す。
「ハァ・・・ハァ・・・」
一心不乱にフロントガラスとその先に照らし出されるコンクリートだけに目を凝らす。じゃないと宇津木の二の舞だ。
が、
「うっ・・・」
少しずつ、ではあるが幻覚がうっすら見えてきた。
これも
ここでトんだら・・・
「クソっ・・・!」
頭突きでクラクションをならし、音と痛覚で商機を取り戻した。
「絶対に、絶対に生きて帰ってやる・・・!」
こうして、俺は『谷城』へ出た。
『谷城』を抜けた途端、空を飛ぶトラックは見えなくなったのでコンビニにとまると宇津木の縄をほどきアイマスクは・・・職場に戻るまでそのままにしておいた。
翌日、破裂した水道の調査にもう一度向かおうとすると、所長にとめられた。
なんでも、急遽別の会社が調査と修復をやってくれることになり、やむなくこっちが引かざるを得なくなったらしい。
そうですか、と自分は机に戻り別の報告書を書こうとした。
「先輩、昨日はありがとうございました。」
声をかけてきたのは宇津木だった。
「おう。宇津木。大丈夫だったか。」
「? いや、自分はあのあとフツーに起きて家に帰りましたけど。あーでも、なんか肩が軽くなった気がします。」
「そうか・・・」
若干苦笑いをしてしまった。いや、よくなるのかい。
にしても、昨日のことはさっぱり忘れてしまうのか。
いや、もしかしたら、こっちが変なのを見ていたのかもしれないな。
「あっそうだ。宇津木、コンビニ行くぞ。」
「え、何スか。」
「何って、昨日の約束だろ。昨日お前眠っただろ?来いよ。今日は少し気分がいいから、弁当も奢るぞ。」
「え、マジっすか。」
少し宇津木は笑いながらも、俺の後をついていった。
「宇津木、お前は、リンゴジュースだったか。」
「いや、・・・イチゴオレにしよっかなーって」
おぉ・・・おぉ!?・・・おぉ・・・となる回答だった。
「そこは、カフェラテじゃねえんだな。」
「せめてもの妥協点です。毎日成長っスよ。」
不思議なことは、立て続けに起きるものなのだ。と俺はつくづく思いながらも、コンビニへ向かった。
如何でしたでしょうか。
次回は、いよいよ戦闘に移ろうかな、と予定しております。
感想、評価などいただけましたら幸いです。