異世界転生でもふもふ生活   作:黒猫黒

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自由に生きる銀狼
ついていく銀狐


今日も今日とて

意識がうっすらと覚醒する、瞼の裏に光が見え窓の外からはピチチチチと小鳥の鳴く声が聞こえてきた。

 

「ううん、もう朝か…あ?」

 

ベッドに昨日一緒に寝た筈の銀狐の姿が見えない、確かに昨日の夜は一緒に寝ると駄々をこねた銀狐に、仕方がないと折れた俺と一緒に寝た筈だ。

 

何だか尻尾がむずむずする、ベッドの上の掛け布団を捲るとそこには俺の尻尾を抱き枕代わりにする銀狐がいた。

 

よく見てみると俺の大切な尻尾に涎を垂らしている、確認した瞬間おぞけが走った。

 

「おい、銀狐起きろ」

 

「…うう、ずず」

 

銀狐に声をかけて起こそうとしたが帰ってきたのは、涎を啜る音だけだった。

 

「こいつ…」

 

取り敢えず尻尾から銀狐を離そうと、尻尾をぶんぶんと振り回すが銀狐は一向に離れない。

 

どうやって離そうかと思案しながら、取り敢えず銀狐を抱き上げて見ると今までの苦労が嘘のように、するりと尻尾から離れた。

 

「なんだこいつは?…な!」

 

離れたのもつかの間、抱き上げた腕に全身で絡みついてくる。

 

「お前起きているだろう!」

 

そう言うと銀狐はぴょんとベッドに飛び移り、にししと楽しそうに笑っていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

朝からの銀狐とのじゃれあいですっかり疲れてしまった、ただひとつ救いなのは銀狐が朝食を既に作っていた事だ。

 

「いただきます」

 

「我の作った朝食しかと味わうが良いぞ!」

 

「朝食ってパンとハムとスープだろ」

 

後はジャムとバターのいたってシンプルな、朝食が用意されていた。

 

「…うぅ!」

 

「まぁ美味いけどな」

 

シンプルな物でも人が作ってくれた物なら、何でも美味しく感じる。

 

「おお気に入ったか!」

 

「お前もさっさと食べろよ、無くなるぞ」

 

「なに?それはいかん、それでは我もいただきます」

 

姿勢を正しちゃんと両手を揃えて、いただきますをしている。

 

「おー、ちゃんといただきますが出来るのか偉いぞ」

 

銀狐の頭を撫でてやると照れたのか、言い訳の様に

 

「主の真似をしただけだがな」

 

と言った、けれどもその頬は誰が見て分かるほどに桜色に染まっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「それでは主よ、我は買い物に行ってくるぞ」

 

二人の朝食が終わり、洗い物を済ませた狐は買い物に行くと言いだした。

 

「おーちょっと待て、今お金を渡すから」

 

「?お金なら持っているぞ」

 

ほれ、と見せた狐の手の中には確かに少しのお金が握られていた。

しかし、お金と言っても二人分のご飯の材料を買えばすぐに無くなってしまう位には少なかった。

 

「お前、それは何処で手に入れたお金なんだ?」

 

「我が森で魔物を狩って、素材を売った物だ」

 

「はぁ」

 

狼はため息を吐きそれから、狐にどの位の魔物を売ったのか聞いた。

 

「ん?どの位?確か大きい魔物が5匹は居たぞ。どうだ我は戦いでも主の役にたてるぞ」

 

狐はむふぅーと息を吐き、それから尻尾を揺らし何やら自慢げに胸を張っていた。

しかし狼が言いたいのはそうじゃない。

 

「お前それは…」

 

「ん?どうした?」

 

自慢そうな狐を哀れそうに見つめる狼

 

「魔物を売った店に大分ボッタクられてるぞ」

 

「なっ!そんな筈は無い!見よこのお金を、我が魔物を売って貰えるのは何時もこれよりも少くて、店の者はオマケしておくとまで言っていたのだ!何時もよりも多いのだぞ!」

 

お金を握り締め涙目の狐は、悪い人間に良いように利用されていたらしい。

狼は頭が痛いとばかりに額に手を当て、やれやれと説明をする。

 

「あのな、お前大型の魔物なんて普通は精鋭クラスのパーティで倒すものなんだ、それを5匹も売ってその小銭の山は流石に無いだろう?」

 

「?せいえいくらすのぱーてぃ、とは何だ?」

 

「そこからかよ…」

 

普通に誰でも知っている事をこの狐は知らない、流石森で育っただけの事はある。

 

「さてはお前無知だな?」

 

「なんと失礼な!我はこう見えても何百年と生きてきた長寿の銀孤、知らぬ事など有るものか!」

 

「そうか、それで生きてきた中で人間と関わった回数は?」

 

「うっ!」

 

「狩り以外のお金の稼ぎ方は?」

 

「うぅ…」

 

「お前このままだと、人間に良い様に利用されて生きていく事になるぞ、もう成っているがな」

 

「…」

 

ぐぅの音も出なくなったのか、狐は俯いてプルプルと震えていた。

 

「我何でも出来ると言っておきながら…人間についても、お金についても何も知らない…」

 

「はぁ…」

 

また狼がため息を吐くと、狐は見放されたとでも思ったのかますます俯いて涙目になっていく。

 

「狐」

 

「…何だ主よ、使えぬ我は必要ないか?人間に騙され利用されていた我を笑うか?それともこの家から追い出すか?」

 

鬱々と言葉を並べる狐の頭を、狼は優しく撫でながら話す。

 

「お前がこれからも人間に騙されていると、俺が困る」

 

「…そうだな主やはり我は…」

 

「だから、これからは騙されない様に俺がお前に教育をしていく」

 

 

狐は俯いて涙目になっていた顔をガバッと上げ、狼を見ると喜色満面の顔で質問する。

 

「主よ!本当に良いのか?!」

 

「あぁ」

 

「でも面倒事は嫌いではなかったか?我に教育なんて面倒以外の何物でもなかろ?」

 

「そうだ面倒だ。だがその面倒をしても良い位には狐、お前が大切と言う事だ」

 

「主!」

 

耳をピンと立て、尻尾をブンブン振りながら狐が抱き着いてくる。

 

「主!我も主が大切だ!身を粉にして尽くしても良いと思える位には、だ!」

 

「そうか、よし!今日の買い物は勉強の後だ、先ずはお金の勉強からだ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

狼は勉強を狐に教えていくうちに狐の賢さに気づく、教えれば教えるほど狐はスルスルと学んだ事を自分の中に取り込んで行く。

狼が数日かけて教えようと思っていた事も、ものの見事に狐の中に取り込まれてしまった。

 

「主、これで合っているか?」

 

啞然としていた狼の服の裾を掴み、狐は聞いてくる。

 

「あ、ああ、全部合ってる…」

 

「合っているのならどうして、主は動揺しているのだ?」

 

狐は不思議そうに頭にはてなマークを浮かべて聞いてくる。

 

「いや、お前の頭の出来の良さに驚いていたんだ」

 

「なんと!我は頭が良いのか?!」

 

「あぁ、かなりな」

 

「おぉ〜」

 

それを聞いて狐は嬉しそうにしているが、ふと狼は不思議に思う。

 

それは、こんなに頭が良いのに何故簡単に人間に騙されて居たのか、考えれば簡単な事だった、この狐には勉強を教えてくれる人が誰一人いなかったのだ。

 

「なぁなぁ、主よ。勉強とは楽しいなぁ」

 

「普通はつまらない物なんだけどな」

 

「?主はおかしな事を言う、知らない事を知れて知識が沢山増える、そうすればもう人間に騙され無いし何より…主がつきっきりで教えてくれるしな!」

 

「そうか…」

 

「そうじゃ!」

 

なんだか狐が可哀想になり、狼は狐の頭を撫でる。

 

「何じゃ主」

 

「いや、勉強頑張ったからな。

良し今日の勉強はコレまで、今教えた事を覚えていればもう悪い人間に騙されて泣く事は無いからな」

 

「な、泣いてなどおらぬ」

 

「そうだな。

じゃあこれから俺がお金を渡すから、勉強した事を活用して買い物してきてくれ、実地練習だ」

 

「うむ、完璧に買い物してみせるぞ!」

 

そう言って胸を張る狐に、小袋に入れたお金を渡す。

思っていたより重たかったのか、狐はたたらを踏んでいた。

小袋の中を恐る恐る確かめた狐は、驚愕の声を上げた。

 

「あ、主よ」

 

「なんだ?足りないのか?」

 

そう言うと狼は小袋の中にお金をもう一枚チャリンと入れた。

 

「ち、違うぞそうじゃない」

 

「じゃあ何だ?」

 

狼が不思議そうに首を傾げると

 

「たかが夕飯の買い物で、こんなに金貨を渡す必要はない!」

 

「へ?」

 

狼はまた首を傾げていた

 

「だめじゃ、これからは我がしっかりせねば、主は金銭感覚が可笑しいのじゃ!」

 

「失礼なこれは夕飯の分のお金も有るが、これからはここからお前の欲しいと思った物を買う、所謂お前の財布だな」

 

「あ、そうじゃったのか、てっきり主は少し頭が緩いのかと思うたぞ。

だが、主流石に金貨は多すぎないか?精々銀貨数枚で良いのではないか?」

 

「そんな事ないぞ、もし街に出て掘り出し物に出会った時、お金が無いと困るからな、金貨は必要だ」

 

「そうかの?なら貰っておくが金貨なんて始めて見たのう。さてとそろそろ本当に買い物に行ってくるぞ!」

 

「ああ、スリと誘拐には気をつけるんだぞ」

 

「大丈夫じゃ、両方とも返り討ちにしてくれる!」

 

「そうかお前強かったもんな」

 

「うむ、それでは行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 




金貨の詰まった袋を、昨日出会ったばかりの同居人にポンと渡す主人公、やはり金銭感覚は可笑しい。
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