CODE SUPERIOR   作:臨時総督府受付担当

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上位者=クイーン(成りかけ)
青ざめた血=クイーンの血(物理的に青い)
血晶石=血英
獣化=堕鬼化
内蔵攻撃=特殊吸血
血の意思=ヘイズ

色々と滾った結果の産物です。
意味がわからない?
ならブラボとコードヴェイン買え
(ダイレクトマーケティング)


夢の果てで

隔絶された次元の果て。見渡す限り霧と柱が埋め尽くす異界の辺境にポツリと浮かぶようにしてそこは存在していた。かつて赤子を欲した上位者に魅入られた者が囚われる夢。『狩人の夢』と呼ばれるそこは、現実に存在する棄てられた古工房を生地として練られた狩人の拠点だ。大樹の側に建てられた小ぢんまりとした工房と幾つかの墓、白い花の咲き誇る霊園のような風景を変わらず保っていた。

 

現在そこに座するは、原初の狩人と月の魔物を打倒し、上位者として新生することで所有権を受け継いだ一介の人だったモノである。幼年期を経て軟体生物のような見た目から、ある程度力を制御出来るようになり人の姿を象る最新の上位者。かつて獣狩りの夜を幾度となく駆け抜けた『狩人』である。

 

彼は繰り返す終わらない夜の中で悟った。上位者の接触から人々を守らねばならぬと。徒に狂気を振り撒く上位者との接触は人類には早すぎた。幾億もの時を経て自然進化によりその次元に至るならともかく、無理矢理に次元を引き上げようとその叡智や思考に触れれば、歪んだモノしか生まれないのはヤーナムが証明している。彼は上位者との接触により歪んだ都市ヤーナムとその一帯を自身の領域として現実と切り離し、隔離することで人類からの接触を断った。赤子を欲し人類へと干渉しようとする上位者を監視し、時には力でもって制することで神秘を秘匿し、人類を守護するのが彼が自らに課した責務だ。なんてことはない、獣狩りが上位者狩りに変わっただけだ。かつて人であったころからやって来たことの延長線に過ぎない。

 

 

 

 

そんなある日の事、本来現れる事の無い訪問者が現れた。狩人の夢は最も強く『狩人』の力が及ぶ領域であり、こちらに敵意のある上位者達もおいそれとは手が出せない場所だ。だが逆説的に敵意のない者が何らかの拍子に紛れ込む可能性もゼロではない。今回の件は、夢を通じて細く儚い縁が偶然繋がってしまった結果なのだろう。現れたのはまだ年若い少女だった。褐色の肌に白い長髪。酷く動揺するその目は血のような赤色。身に付けているのは検査衣だろうか。腕には幾重にも包帯が巻かれており痛々しさが際立つ。その姿はかつて訪れた医療教会の恥部、実験棟を彷彿とさせた。倉庫に仕舞い込んである肥大化した頭部がふと脳裏を過るが、それを意識の彼方に追いやり、今は珍しい客人をもてなすのに集中することにした。

 

物珍しさからかそこらの地面から沸いて出てきたグロテスクな姿の使者達を見てパニックになっている彼女を人形に任せ、使者達には姿を隠すように命じた。ついでに客人をもてなすように指示を出すとどこから出してきたのかテーブルセットが設置される。かなり背の高い動く人形に唖然とする彼女を使者達が用意した椅子に座らせ、落ちつくのを待つ。現在『狩人』はヤーナムを駆け巡っていた頃によく着ていた狩装束に身を包んでいる。厚手のコートに手甲、枯れた羽のような装飾が特徴的な狩人帽に血避けの覆面で鼻までをすっぽりと覆い、目元のみが覗くという姿だったことを失念していた。すっかりヤーナムに染まった彼は自分の装いが一般的にはかなり不審なことを自覚しておらず、なぜ怯えられているのか原因に気がつくのにいささか時間を要した。かつて狩人になる前の記憶がない彼はヤーナムを基準として考える悪癖があった。

 

普段暇をしている人形が密かに育てていたというハーブを用いてお茶を淹れて来たことで、場の空気がいくらか弛緩したのを見計らい、『狩人』はここが夢の中であることを少女に説明した。彼女の身体は現実で眠ったまま、意識のみがここに存在していると。本来あり得ないことだが、彼女の夢が何らかの要因でこの狩人の夢に繋がっていることなど、話せることは懇切丁寧に話した。あまりに荒唐無稽な話だろうに彼女はどこか納得したように、夢の存在に夢だと言われるのは初めてだ、と笑みを見せた。

 

『クルス・シルヴァ』と名乗った彼女はこれ以降、幾度となくふらりと狩人の夢に訪れ、他愛のない雑談をしては去っていくというのを繰り返した。その雑談の中で“審判の棘”やら“吸血鬼(レヴナント)”やらの聞き覚えのない単語が出てきたのでそれは何かと訊ねると、クルスの世界は突如地中から突き出てきた審判の棘が引き起こした大災害によって人類の半数が命を落とし、生き残った者も突如として現れたバケモノにより滅亡の危機に曝された。それに対抗するためにとある寄生体を死体の心臓に埋め込むことで不死身の戦士、吸血鬼(レヴナント)を生み出すことでバケモノに対抗しているのだという。

 

現実から切り離されたことで時間の概念やら次元やらを超越しているこの狩人の夢は揺らぎの中で揺蕩う場所であり、何処と繋がってもおかしくはない。外の世界の事情に疎い彼だったが、知る限りでヤーナムの存在する世界では審判の棘など発生していない。広義で言えば吸血鬼のような奴なら今ここにいるが。つまりクルスは遥か未来か、平行世界からの来訪者なのだろう。そして何となく感じてはいたが、ここに訪れる度にやつれ、同時に強くなるクルスの気配は御同輩(上位者)のそれの気配である。かつて三本目のへその緒により上位者へと変質していった狩人の軌跡をなぞるかのようだ。彼女の言うBOR寄生体とやらを呼び水として加速度的にこちらの領域へと押し上げられ上位者へと変貌しつつある彼女は酷く不安定だ。世界の危機を前に急ぐなと言うのは酷だが、あまりにも急激な変化に耐えられなくなり『狩人』の見立てでは遠からず暴走するだろう。そしてもしその時が来たら彼女は狩りの対象となる。無秩序に振るわれる上位者の力など悪夢に他ならない。異世界であろうが上位者と人類の接触を断つために例外なく狩りを成就する。そして彼女に安らかなる眠りと慈悲深き介錯を届けに行くのだ。

 

 

 

 

乱立する巨大な建造物の廃墟、見たこともない技術によって塗り固められた道、散乱する瓦礫、裂けた大地とそこかしこに見受けられる生物的な要素を内包した巨大な棘。よく分からない場所へ拉致同然に連れ去られるのはいつもの事とは言え、愚痴の1つも溢したくなる。近代的風景にミスマッチな古めかしいコートと象徴たる枯れ羽を模した狩人帽を身に付けた彼は呟く。

 

「何処だここは」

 

時は少し遡る。場所は狩人の夢。『狩人』は気分転換に久々の聖杯の儀式を行い、深層に潜んでいた胡桃頭をぶちのめしてきた帰りであった。その成果を確認していると、工房前の石畳に青い血晶石のような物が転がっていることに気がついた。はて、あんな血晶石なんて持っていただろうかと聖杯ダンジョンを荒らしまくった記憶を辿ってみるが、膨大すぎる探索回数と数えるのも億劫な血晶石の山を思い出し、きっと落として仕舞い損ねたものに違いないと思考を放棄した。何気無くそれを手に取り眺めると血晶石とは似て異なる物であることに気づく。よく見ると石英のように六角柱状の結晶体であることがわかる。ほんのりと青いオーラのようなものを纏ったそれをしげしげと見つめていると、結晶体が突然急成長し、毬栗のような鋭い針を伸ばし掌を刺し貫いていた。急な激痛と驚愕から固まっていると、身体が何処かへと引き摺り込まれるような感覚と共に薄れていく。通り掛かった人形はいつもの無表情でこちらを見ると、静かに一礼した。

 

「行ってらっしゃいませ。狩人様」

 

見るからに緊急事態だと言うのにこの慣れたような「ああいつものですね」と言わんばかりの塩対応。あんまりじゃあないか。

 

 

 

 

そんな一幕を経て、引き摺り込まれたのが先程の事。めっきり訪れなくなった客人が語っていた存亡の間際に立たされた世界に酷似した風景から、夢を縁としてクルスの世界に引き摺り込まれたと推測する。こういうのはよくあることだとこの間偶然会った異国の騎士が言ってた。ヤーナムでは拝むことのほぼ無い真昼の陽光が眩しい。獣狩りが夜に行われるのもあってか、ヤーナムはいつも夕方か夜かそもそも現実ではないパターンが多かったため非常に新鮮な感覚だ。稀有な体験に心踊らせていると、背後で瓦礫を踏み締める音が響く。そして荒々しい獣のような殺気が辺りに充満し始める。

 

振り向くとそこにいたのは人型の異形。顔全体を覆う口元に突起のあるマスクから覗く眼光は狂暴性を宿した紅に染まっている。血の気の失せた土気色の肌に襤褸布を巻き付け、身体のあちこちから侵食するかのように赤黒い結晶が伸びている。手には身体から伸びる結晶体と同種らしきものに侵食された幅平の剣。ブロードソードの類だろうか。低く唸っていたそれはこちらを発見するやいなや雄叫びをあげてこちらに真っ直ぐ向かってくる。ブロードソードを力任せに振り回し、大振りな動作で高々と剣を掲げ切りかかろうとするが、出鼻を挫くように弾丸が異形の腹に突き刺さった。

 

先程まで無手で突っ立っていた筈の狩人の左手には硝煙を吐き出す古めかしい散弾銃が握られていた。片手で扱うために様々な創意工夫がなされたそれは、獣狩りの散弾銃。ヤーナムではありふれた獣狩りのための銃である。ただしヤーナムにおいて銃はあくまで牽制や瀕死の相手への追撃に用いられるのが主流だ。体勢を崩した異形に悠々と歩み寄ると、狩人は右手を鋭く巨大な獣の手へと変貌させ、異形の腹部へと腕ごと突きこんだ。そして手頃な内蔵を適当に掴んで握り潰し、そのまま力任せに腕を振り抜いた。内蔵の残骸を辺りに撒き散らし、返り血でコートを赤黒く染めながら異形が吹き飛んで行った辺りを見やると異形は腹部に大穴を空けながら痙攣していたが、やがて動かなくなった。

 

そこまでを見届けて視線を逸らそうとしたが、狩人は次の瞬間目を見開いた。なんと異形の死体が粒状になって霧散していくではないか。数秒と経たずに死体は血痕を残して消えてしまった。狩人の経験上、霧散する死体は多くの血の意思を抱えており、血の意思の中毒者たる狩人に血の意思を根こそぎ奪われる過程で爆発霧散することこそあったが、この異形はどうだ。ほとんど血の意思を持っておらず、水で薄めたような薄味だ。いや、乾いているという表現の方が合っているか。そんな不味い相手が霧散するとは、不可解極まる。どうやら異郷では色々と勝手が違うらしい。何か別の要因が働いているのか?

 

思考に耽りかけた狩人だが、次々と自分に突き刺さる視線に感付かないほど未熟ではない。見れば先程と同じような異形がわらわらとここに押し寄せてきている。撒き散らされた血の匂いにつられたか。無手の者、斧槍を担いだ者、異様に肥大化した巨体に鉄塊のような大槌や大剣を持ったトゥメルのデブを思い出させる者まで、多種多様な魑魅魍魎の群れが押し寄せてきていた。

 

いくら狩人が上位者の端くれとはいえ、狩人は実態を持った存在に過ぎない。死んでも復活こそするが相応に消耗する。ならば狭い通路に引き込んでの各個撃破である。馬鹿正直に正面から殺り合うのはこの状況では愚策だ。狩人は廃墟の瓦礫の隙間を縫うように、奥へ奥へと逃げ込んでいく。曲がり角で待ち伏せ、油壺を投げつけて火炎瓶で燃やし、背後から不意を突く。地形を状況を最大限利用し、常に有利に立ち回る。

 

ヤーナムの狩りをご覧に入れようではないか、獣ども。

 




青ざめた血英

少女が女王へ身を堕とした際に零れ落ちた断片。
本来の持ち主を求めて不気味に青く煌めいている。

記憶を紡ぐ特異な力の持ち主に渡せば、
血英の持ち主の記憶を垣間見ることができるだろう。
同時にそれは少女の悪夢へと繋がる門となる。
生半可な覚悟で覗くものではない。

青ざめたそれは、まさしく上位者の萌芽に他ならない。
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