オーダー66が発令され、ジェダイ騎士団は壊滅した。

銀河の頂点はシス卿の手に渡り、銀河系は暗黒に包まれた。

皇帝の圧政は日に日に苛烈さを増していき、民衆は自らの誤りに気付くものの、全てはもう遅すぎた。


しかし、彼等は、彼女達は諦めていなかった。

―――共和国アウター・リム第3艦隊

未知領域探索を任務としていたこの艦隊は、シスと分離主義者の関係を突き止めて、"分離主義者"から共和国を奪還するべく活動を開始した。

彼等は、彼女達は―――――未だに、クローン戦争の渦中にあった。

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「夢幻航路」で煮詰まっているので、気分転換に今まで考えていたネタを形にしてみました。
夢幻航路は、今月中に次回更新目指して頑張ります。


prologue――開戦の号砲

 無限に広がる大宇宙……

 

 静寂に支配された漆黒の世界、創造と破壊に満ちた神秘の世界―――

 

 そんな世界を、あたかも我が物だと言わんばかりに悠々と進む、白亜の集団。

 

 

 ―――銀河帝国が誇る恐怖の権化、スター・デストロイヤー

 

 

 インペリアルⅠ級艦〈インペリアス〉を旗艦に、複数のインペリアルⅠ級、ヴェネター級スターデストロイヤー、アークワイテンズ級軽クルーザーから成る純白の楔型集団が向かう先は、水の惑星、カミーノ。

 

 惑星全土を海と嵐に支配されたこの惑星では、卓越した生物工学技術を有する原住民族、カミーノアンが暮らしていた。

 

 彼等は本来、銀河帝国の一員であった。

 

 それどころか、銀河帝国の成立に多大な貢献をした功労者でもある。

 帝国建国の為の重要なプロセス、オーダー66。

 それが成功したのは、他ならぬカミーノアンの協力があってこそだった。

 

 しかし、当の彼等は、恐怖に駆られていた。

 

 "オーダー66"なるプログラムの目的が、彼等が想像していたものとは全く違うものがだったからだ。

 共和国のため、と思って、議長の名前を信頼して行った行為が、他ならぬ共和国の崩壊を導いてしまったからだ。

 

 

 われわれの帝国は、市民により運営される。新しい憲法を持つ!政治家ではなく、法そのものにより治められる帝国だ!正しい社会を造り、守ることに献身する帝国だ!安全で、安定した社会を!この帝国は、一万年もつづくだろう!――――

 "皇帝"パルパティーンは、建国時にそう宣言した。

 カミーノアンの元老院議員も、拍手喝采をもって"皇帝"を迎えた。

 

 しかし、パルパティーンがその約束を守ることはなかった。

 非人類種族の弾圧から始まる数々の恐怖政策を、数年もしないうちにこの皇帝は始めたのだ。

 

 以来、温和な"議長"から一転して恐怖を撒き散らすように変わり果てた"皇帝"の影に怯えながら暮らしていたカミーノアンは、次第に自らに忠実な軍隊を求めるようになっていく。

 

 そうして造り出されたもう一つのクローン軍――アンチ・トルーパーによる反乱が始まったのが、つい数日前。この軍隊をもって、カミーノは独立を宣言した。

 

 当然、帝国は―――皇帝は怒りに震えた。

 

 裏切り者を始末せよ。

 

 ――命令は、至極簡素だった。

 

 皇帝の命を受けた帝国軍は直ちに作戦行動を開始、この反乱運動の鎮圧に乗り出す。

 

 碌な艦隊も持たないカミーノの防衛線を易々突破した帝国軍艦隊は、惑星の軌道上に陣取って軌道爆撃と地上軍の展開を開始する。

 

 

 そうして帝国軍が地上にだけ注意を向けていた時、突如として"白い霧"が出現した。

 

 帝国軍艦隊の後方に現れたその霧からは、紅白に彩られた艦隊が続々とハイパースペースから飛び出してくる。

 

 雲海を切り裂くかのように姿を現した紅白の楔型集団―――帝国に再編された消滅した筈の、共和国宇宙軍艦隊。

 "亡霊"じみた、存在しない筈の艦隊。

 

 彼女達は、それが当然だと言わんばかりに帝国軍艦隊へと突撃し―――砲撃戦を開始した。

 

 

 

 ~戦艦〈インフィニティ〉~

 

 

【BGM:ドヴォルザーク 交響曲第九番「新世界より」第四楽章】

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「全艦、戦闘開始!分離主義者共を蹴散らせ、主砲発射(Feuer)!!」

 

了解(Yes sir)!!」

 

 

 銀河共和国残存勢力―――リパブリック・レムナントの旗艦、改ベラトール級超弩級戦艦〈インフィニティ〉の艦上にて、艦隊指揮官にして残党軍(レムナント)を一纏めに掌握する総司令官、シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将は高らかに開戦の号令を宣言する。

 

 レムナントのクローン・トルーパー達は彼女の命令を忠実に実行し、かつての兄弟達に向けて青色のレーザーとミサイルの発射ボタンに手を掛けた。

 

「な、何事だ……ッ!」

 

「て――敵襲です!正体不明の敵が、わが艦隊に攻撃を加えています!」

 

「ええい………正体不明だと!?」

 

 想像もしなかった方角からの奇襲により、帝国軍艦隊は大打撃を受けた。

 満足にスターファイターを展開する暇もなく、スターデストロイヤーのシールドには次々と青色の稲妻が降り注ぐ。

 

「第1戦隊は本艦の両翼につけ!〈フォーミダブル〉と〈イラストリアス〉は展開して敵艦隊を包囲しろ!」

 

 シャルロットの手足のように、レムナント艦隊は迅速に陣形を再編成する。

 ハイパースペースから出たばかりの無秩序な隊形から、惑星を相手の背にしての包囲殲滅陣形へと。

 

 第1戦隊を編成するレガシー級重巡洋艦〈リダウタブル〉〈リレントレス〉は〈インフィニティ〉の両舷に寄り添うように展開し、旗艦に向かうミサイルを撃墜し、砲撃をシールドで受け止める。

 

 一方で、分艦隊旗艦の役割を与えられたヴェネターⅡ級戦闘空母〈フォーミダブル〉と〈イラストリアス〉に率いられた部隊は、艦を横隊に並べて封鎖線を築き、砲火を帝国艦隊へと集中させる。

 

「艦載機隊、発進!」

 

「了解、ファイター隊発進します」

 

 布陣を完了したレムナント艦隊は制圧戦に移行し、各艦からスターファイターが続々と射出される。

 旗艦の〈インフィニティ〉は勿論のこと、空母としての能力が高いヴェネター級は、護衛艦のアークワイテンズ級と改ペルタ級フリゲートに囲まれた輪形陣の内側から、帝国から完全に制宙権を奪うべく数十機にも及ぶファイターを発進させる。

 

 ARC-170戦闘攻撃機から成るレムナントのスターファイター部隊は、敵のスターファイターの出撃が完了する前に護衛艦に殺到し、震盪ミサイルと爆弾の雨を降らせて敵の防空網を粉砕する。

 

 そこにBTL-B艦上爆撃機が突入し、スターデストロイヤーの武装やセンサー類目掛けて大量の爆弾を投下、帝国軍の戦闘能力を奪っていった。

 

「護衛艦、また一隻撃沈されました!このままでは……」

 

「本艦にも被害が蓄積しています!艦橋部のシールド出力、62%まで低下!」

 

 帝国軍艦隊旗艦〈インペリアス〉の艦橋では、オペレーターの悲痛な報告が響く。

 

 旧式で脆い護衛艦のアークワイテンズ級帝国軍軽クルーザーは、レムナントの苛烈なミサイル攻撃により全身穴だらけとなって宇宙を漂うデブリと化した。

 

「狼狽えるな!艦を反転させろ!主砲を敵艦隊に向けるんだ!」

 

 艦長は冷静に、的確な指示を飛ばしていく。

 次第に統制を取り戻した帝国軍も、レムナントに対抗すべく残ったスターファイターを全て発進させる。

 帝国のヴェネター級スターデストロイヤーとクエーサー・ファイア級クルーザーキャリアーからはボールに板を付けたようなH字形の簡素な戦闘機――TIE/ln制宙スターファイターが吐き出され、自分達のわが家とも言える母艦の頭上で暴れまわるARC-170スターファイターとBTL-Bボマーに襲い掛かった。

 帝国軍の爆撃機は惑星上に展開しているため、呼び戻すには時間がかかる。だが今の帝国軍は、戦闘機さえあれば良いのだ。艦隊を守るファイターさえあれば、忌々しいレムナントの爆撃機は引き揚げざるを得なくなる。なので帝国軍は敢えて爆撃機を呼び戻さず、艦載機を防空に専念させた。

 

 レムナントと帝国軍艦載機は死のダンスを繰り広げ、ARC-170とTIE/ln戦闘機は互いにレーザーの応酬に専念し、逃げ遅れたBTL-BはTIE/lnに襲われてしめやかに爆破四散する。

 

「わが軍は、制宙権を取り戻しつつあります」

 

「ようし、その調子だ」

 

 次第に立ち直り、本来の強さを発揮しつつある帝国軍に、士官達は満足する。

 だがそこに、更なる凶報が舞い込んだ。

 

「な、て………敵艦隊の一部が突出、速い!!」

 

「ぬぅっ……突出した敵艦隊に集中砲火を加えろ!」

 

「やっていますが………敵が速すぎます!」

 

 レムナントは次なる一手として、駆逐艦による宙雷突撃を敢行する。

 後方に布陣するヴェネター級とペルタ級、そして新型重巡洋艦マハムント級に援護されたレムナント宙雷戦隊は、回避機動を取りながら敵空母を目指して吶喊する。

 

 新型軽巡洋艦オーソンムント級1隻に率いられた改アークワイテンズ級駆逐艦2隻から成るユニットが2セット、それぞれ帝国軍艦隊に交錯するよう左右から猛烈な勢いで接近する。

 付近を飛行するTIEファイターを艦首で強引に押し潰しながら航行したレムナント宙雷戦隊は、射程距離まで近づくと一斉に量子魚雷を発射した。

 中にはギリギリまで接近して魚雷を発射し、空母のヴェネター級を討ち取る戦果を挙げる艦もいる。

 

「………あの艦は?」

 

「はっ!――第192駆逐戦隊の〈ハードケース〉です!」

 

「ほぅ、中々に気概のある奴じゃないか。よぅし、我々も負けてられんな。ここで一気に畳み掛ける!VLS解放、対艦巡航ミサイル、第二斉射!艦首マスドライバーキャノン、充填開始!」

 

 宙雷戦隊の勇戦に触発されて、主力艦隊の攻撃もいっそう苛烈さを増していく。

 先の突撃で駆逐艦2隻が大破、ないしは沈んだものの、レムナントの優勢は変わらない。

 ここで一気に更なる攻勢に出て敵艦隊を叩くべきであると、シャルロットは判断した。

 

「敵旗艦から高エネルギー反応!」

 

「いかんッ、躱せ!」

 

「無理ですっ、間に合いませんッ!!」

 

「こうなったら………ハイパースペースに逃げ込め!行き先などどうてもいい!」

 

「しかし……それでは地上軍が…」

 

「そんなものに構ってられるか!やると言ったらやれ!」

 

「り、了解――!」

 

 〈インペリアス〉を始めとする帝国軍艦隊は、包囲網を抜けるべく活動を開始する。

 一度射出したファイターを大急ぎで回収しながら、〈インフィニティ〉の射線から抜けるべく、敢えて距離を縮める賭けに出る。

 しかし、軍配はレムナントの側に上がった。

 

「マスドライバーキャノン……発射(Feuer)!!」

 

 〈インフィニティ〉の艦首から、猛烈な勢いで特大の砲弾が射出される。

 雷光の矢と化したマスドライバーキャノンの砲弾は一瞬のうちに帝国軍艦隊に到着し、〈インペリアス〉の右隣を航行していたヴィクトリーⅠ級スターデストロイヤーの艦首に着弾。同艦の艦尾付近で炸裂した。

 艦首から艦尾まで貫かれたヴィクトリー級艦は内側から膨れ上がるようにして爆散し、その直後、残存帝国軍艦隊はハイパースペースへと逃げ帰るように突入した。

 

「………敵艦隊、反応全て消失しました」

 

「うむ。―――初戦にしては、上出来だな」

 

 潰走する敵艦隊を前に、シャルロットは満足気に笑みを溢す。

 

 ―――さて、重要技術はこれで押さえたも同然だが、連中は果たしてどう出るものか……

 

 艦隊だけでなく、軍そのものを率いる立場にあるシャルロットは、この後に起こるであろうカミーノアンとの交渉と、帝国の報復に対して頭を悩ませなければならなかった。

 

 

 

 ―――時に、ヤヴィンの戦いの9年前。

 

 過去の戦争(Crone Wars)に囚われた共和国の残滓と、分離主義者と同じく暗黒卿が支配する銀河帝国。

 両陣営の戦いは、ここに火蓋を切って落とされた。




■艦船解説

○マンデイターⅢ-bis級スターデストロイヤー
全長:7800m
同型艦:〈インフィニティ〉
リパブリック・レムナントの総旗艦。KDY社から流出したマンデイターⅢ(ベラトール)級スターデストロイヤーの設計図を元に、レムナントが改良した軍艦。
本来なら「夢幻航路」第二部用にデザインしたものだが、それを流用したもの。


○ヴェネター級スターデストロイヤー
全長:1137m(Ⅰ級)
   1155m(Ⅱ級)
銀河共和国の主力艦船。レムナントは「戦闘空母(バトルキャリア)」に分類している。膨大な艦載機搭載能力と2つの艦橋が特徴的なクラス。
なお、Ⅰ級はクローンウォーズ、Ⅱ級はエピソードⅢのヴェネター級と本作では設定されている。


○レガシー級スターデストロイヤー
全長:1400m
対艦戦闘を主眼に置いた、共和国の主力艦。
レムナントは「重巡洋艦」に類別して運用している。


○マハムント級重巡洋艦
全長:750m
従来の楔型艦船とは一線を画す設計思想に基づいて建造されたレムナントの重巡洋艦。遠距離での砲撃戦に重点を置いている。
「無限航路」に登場するマハムント級巡洋艦を持ってきたもの。


○オーソンムント級軽巡洋艦
全長:605m
従来の楔型艦船とは一線を画す設計思想に基づいて建造されたレムナントの軽巡洋艦。高い速力と汎用性を持つ。
本級も「無限航路」からの参戦。「夢幻航路」より早く出ることに……


○アークワイテンズ級軽クルーザー
全長:325m
銀河共和国が運用していたクルーザーで、帝国でも小規模艦隊の旗艦や護衛艦として使用されている。
レムナントは本級を改良して魚雷兵装を搭載し、駆逐艦として運用している。


○ペルタ級フリゲート
全長:282m
共和国の汎用フリゲートで、クローン戦争では輸送船や医療船として用いられた。
レムナントは本級にエンジンと武装を増設して、防空フリゲートとして運用している。


○インペリアルⅠ級スターデストロイヤー
全長:1600m
帝国軍の主力戦艦。堅牢な艦体と強力な武装を持ち、帝国の象徴として恐れられている。
"スターデストロイヤー"の名の通り、惑星を一隻で制圧できるだけの航空戦力と陸上戦力を搭載可能。


○ヴィクトリーⅠ級スターデストロイヤー
全長:900m
銀河共和国が建造した戦艦で、大気圏内でも安定して戦闘ができる程の航行能力を特徴とする。代わりに機関出力に問題を抱えており、そのため単艦や数隻での長期間任務には向かないクラス。


○クエーサー・ファイア級クルーザーキャリアー
帝国軍の軽空母。主に惑星駐留艦隊など、スターデストロイヤーを必要としない小規模艦隊の航空戦力として配備される。



■登場人物

○シャルロット・フォン・ブリュッヒャー
リパブリック・レムナントを指揮する最高司令官。階級は上級大将。元々はジェダイだが、ジェダイ・オーダーが壊滅した現在では規律や掟よりも軍人としての自身に重きを置いており、そもそも騎士団のことはあまり信用していない。
服装は黒い軍服でセーバーの色は赤なので、傍から見たら完全にシスである。だが本人は共和国の赤だと抗弁している。
名前は銀英伝の帝国っぽさをイメージして付けたもの。なので古くさい。


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