区別がつくように、
タイトルも俺ガイル方式ではありません。
が、FLOWERS方式の童話タイトルにはできず。
むつかしね。
──本当に、ただ偶然目に留まっただけだった。
『高校生活を振り返って』というテーマのレポート。
私のクラスでも課題となり、個人的にどの科目の課題よりも頭を悩まされた。うんと悩み、最終的に去年図書委員として活動したことを捻り出して書き上げたことは記憶に新しい。
それを、文章の何処かから感じ取ったのだろう。作文を返却される際、担当の平塚先生からお昼休みに呼び出しを受けた。
これまで学業に関してそれなりの成績だった私にとって、人生初めての教員からの呼び出しだった。その上、平塚先生は現国の担当ではあるが、生活指導も兼任されている。心当たりは無いが、どんなマズいことをしてしまったのかと、内心戦々恐々としながらそれに応じた。
実際は、何か悩みがあるのではないか、と心配されただけだった。以前から孤立していた私を気に掛けてくれていたらしい。自身の小心から怯えていたのが申し訳ないくらい、とても親身な先生だった。
心当たりは、ある。
というか、それが短いながらも、私の歩んできた人生最大最長の悩みであった。
友人が、できないのだ。
始めは皆話しかけてくれる。だけど、引っ込み思案で内気な性格が災いする。
次第に、私の周りから人はいなくなった。
それだけでなく、あまりにも周りに迷惑をかけるから、申し訳なくなり、ついには自宅学習に…………。
このままではいけないと一念発起し、進学校である総武高校に入学したのが一年前。
でも、状況は変わらなかった。
新しい学校。新しい級友。新しい環境。
であろうとも、何より私の中身が変わっていないのだ。改善などあるはずもない。
拒絶されるかと思うと、話しかけるのが怖い。
いずれ失望されるかと思うと、話しかけられるのが怖い。
そうして色のない高校生活一年目を、泥のように過ごした。
そんなことを、訥々と平塚先生に話した。
彼女は「そうか」と口にし、何かを数秒思案した。
そして、顔上げると、
「すまない、昼食がまだだろう。放課後にまた来てくれるか」
とだけ言った。平塚先生の視線の先を追うと、壁掛け時計はお昼休みを丁度半分を過ぎていることを表していた。
私は、はい、とだけ答え職員室を後にする。
先生が相手とは言え、自分の恥部を晒してしまった。次第に後悔と恥ずかしさが襲ってきた私は、その日は気も漫ろに午後の授業を受けることになった。
そして、放課後。
言われた通り、また職員室に訪れた。
気は、かなり重い。友人ができないことが悩みなんて、まるで小等部の子どものようだ。
気の重さを吐き出すように、小さな溜め息を一つ吐き、意を決して職員室の扉を開けた。
失礼します、と一度頭を下げ、昼間呼び出された平塚先生の席に向かう。
しかし、そこに平塚先生の姿は無かった。
(留守? 早く来すぎたのかしら?)
二年生に上がっても、相変わらずクラスに居場所の無い私は、帰りのホームルームが終わるとすぐに教室を出る。確か平塚先生はクラスを受け持ってはいなかったはずだから、ホームルームが長引いているわけではない。ここにいないということは小用で少し外しているだけだろう。
緊張する職員室内で待つより外で待っていようと、考えを巡らせた私の視界に、
『青春とは嘘であり、悪である』
本当に、ただ偶然目に留まっただけだった。
その書き出しに書痴としての性分故か、つい目を奪われてしまった。同じ課題に取り組んだ同級生のものだと頭では判りながらも、つい続きが気になり、読み進めてしまった。
読み進めるにつれ、息を呑んだ。
自分が欲して止まない、友情。私にとってそれは尊い輝きそのものだ。
でも、この人にとっては違う。
本当の友情なんて存在しない。
彼らの感じているそれはまがい物でしかない。
そんな主張が、臆面もなく書き綴られていた。
自分の憧れているものを否定された憤りや悲しみは、不思議と湧いてこなかった。
ただ、気になった。
これを書いた人は、どんな人なのだろうか。
少なくとも表面的には私と同じ、一人でいることの多い人だろう。それも、おそらく昔から。
これまでの学校生活で、周りの仲良くしているクラスメイト達をただ見ていた時、何を思い、何を感じ、何を考え、過ごしてきたのだろうか。
(氏名、比企谷、八幡…………)
私は、平塚先生が戻ってくるまでの間。
顔も見たことのない、その“彼”に思いを馳せた。
そんな“彼”と出会うまで、あと数分──。
Alstroemeria
アルストロメリア
花言葉:未来への憧れ