鬼滅の騎士   作:gilgan

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なんか思い浮かんだので初投稿です



兄から見た彼

俺は自分が特別な人間だと思っていた。

 

 

日本を実質的に牛耳っていると言っても過言ではない由緒正しい伐刀者(ブレイザー)の家系である黒鉄家、そこの長男…つまり次期当主として生を受け、この世界に魔力を持って産まれ、しかもそれが世界でもトップクラスのAランク。

将来は黒鉄家の立派な当主になるべく厳しい教育も受け、武芸に於いても厳しく鍛えられた。

それでも俺は人間だ。やりたいことだってあるし、叶えてみたい夢だってあった。

ただ、当主になるためには我慢しなければならなかった。それが選ばれた人間の責務だと思っていたからだ。

 

幸い、俺も勉学はともかく武芸…特に剣を振るう事が好きだったからか、暇さえあればひたすら剣の腕を磨いていた。

振るえば振るうほど自分が磨かれていくのがわかる。

まだ剣を教えてくれる指導役には敵わないが、それでも日々強くなる実感を得るのは、なによりも楽しかった。

 

何事もなく成長していったら、俺は当主になっていただろう。

しかし、俺には双子の弟がいた。

魔力Aランクという人類でも数えるほどしかいない俺とは対照的に弟は身体から魔力を感知出来ず、産まれながら額に揺らめく炎のような不気味な痣があった。

黒鉄家は由緒正しい伐刀者の家系。

後に産まれた魔力がわずかながらにある弟の一輝、俺ほどではないがそれでも優秀と言える珠雫。当時は余裕が無く、気づけなかったが三男の一輝ですら無いよりましレベルの魔力はあったものの、それでも虐待じみた扱いをされていたのだ。

それが魔力がない弟だともはや人だとすら思われなかったのだろう。

当時は余りにも不気味がられたため殺すか養子に出すなりすべきだと言う話まで出た。

しかし父と母それに当時ほぼ隠居状態だった曽祖父まで出張ったため、結局黒鉄家で育てられることとなった。ただし、黒鉄という名をつけられず、母の昔の名字をつけられた。周囲の嫌悪ぶりが見てとれる。

だが殺すか殺さないという話題まで出た子供だ。恐れて誰も近寄らず結果、曽祖父が暮らしている離れにて曽祖父が育てることになった。

 

弟は俺が喋れるようになった時期でも一切喋らず、ただこちらをみて微笑んでいるだけ、後はひたすら曽祖父について回る自分とは正反対とも言えるその在り方は見ていて子供ながらに哀れだった。

周りから蔑まれ陰口を叩かれる弟を見て、魔が差したのだろう。

時折、周りに気づかれぬように遊んでやった。

 

ある時、俺がいない間する事がなさそうな弟を哀れに思った俺は、いつもみたいに誰にも見られないように離れに行き、学校で作ったオカリナを弟にやった。作ったと言ってもただ組み立てただけのプラスチック製の安物でしかなく、俺にとっては当主になるためには必要のないゴミみたいなものだった。学校にも通わせてもらえず、娯楽に疎いであろう障害持ちの弟に施しを与えることで優越感に浸りたかったのか、それはわからない。

しかし、それを貰った弟は嬉しそうに微笑み

「ありがとうございます」と言った。

その時の俺の驚きはかつてないほどと言えた。

口を聞けないと思っていた弟が突然流暢に礼を言ってきて気が動転したのだろう。

その日、俺は逃げるように母屋へと帰った。

それ以来、弟とは距離を置いてしまった

 

暫くして、俺は曽祖父がかつて大きな戦いでこの国を勝利に導いた英雄サムライ・リョーマと呼ばれた剣の達人と知った俺はさらなる強さを得るべく曽祖父に教えを請いに離れへと赴いた。

内心、弟がいるのか気になってはいたが離れにはおらず、肩透かしを食らった俺だったが気持ちを切り替え、曽祖父に教えを請い何とか指導を受けられることとなった。

今まで教えてくれた指導役には悪いが、曽祖父の教えは素晴らしかった。

今までの指導で強くなっていく自分とは何なんだったのだろうと思うほど強くなるスピードが増した。

いつしか指導役に勝てるようになり、時折訪ねてくる闘神と呼ばれる曽祖父の友人から将来が楽しみだと言われ、彼にも指導されるまでになった。

 

この時の俺の人生はまさに最高と言っても過言ではなかっただろう。

そんな日々の中、いつもの様に黒鉄家で雇っている指導役との訓練の合間で休憩していた俺の横にいつのまにか弟が立っていた。

「兄上は世界で一番の騎士になりたいのですか?」

そう、弟が話しかけてくる。

「あぁ、そうだ…」

俺は気づかぬうちに横に座っていた弟に対し、言い知れぬ感情を抱いたがそれをどうにか落ち着かせながら答えた。

それを聞いた弟は、

「なら、私は世界で二番目の騎士になりたいです」

微笑みながらそう答えた。

しかし、そんな弟を嘲笑うかのように声が響き渡る。

 

「あーはっはっはっは。坊ちゃん貴方は魔力が無いのですよ?それなのに騎士?やはり忌子、常識というものを知らないようですね」

休憩から戻ってきたのだろう。

指導役が厭らしい笑みを浮かべながら言った。

彼は最近替わった指導役で若いながらも、周りから天才と言われるほどの実力者だった。

そんな彼の言い方には物申したいが、騎士とは伐刀者の中でも選ばれたものだけが成るものであり、ましてや魔力を持って無い弟は論外。成れるはずがないのである。

「あまり王馬様の手を煩わせるものではありませんよ。彼は私と同じ天才なのですから、貴方なんぞにかまけて才能を腐らせる訳にはいかないんですよ。何ならやってみますか?それで騎士になるとはどんなものか思い知るでしょう」

そう言いながら、弟の足元に木刀を転がしてきた。

付き合いが浅いため気づかなかったが、彼はどうやら典型的な選民思想の持ち主だったようだ。

 

流石にやり過ぎだと思い、指導役を諌めようとすると弟が無言で足元の木刀を拾った。

そんな弟に面を食らったのか哀れに思ったのか或いは両方だったのかわからないが、弟に基本的な持ち方と構え方を教えた。

「本当にいいんだね?後でどうなっても知らないよ?」

流石に良心が痛んだのかそう言っても構えを変えない弟を見て諦めたのか俺に審判役を頼んできた。

審判ならもし弟が危機に陥っても助けられると思った俺は了承した。

「始め!」

その俺の合図が響いた次の瞬間、想定外のことが起こった。

弟の姿がブレたと思ったら指導役が先程まで俺が休憩していた岩に叩きつけられたのだ。

後で知ったが、この時指導役は魔力で防御していたのにも関わらず首、肩、胸、腹、足がそれぞれ見てて痛々しいと感じるほど腫れ上がっていたらしい。

それ以降、弟は俺の訓練を見にくることはなかった。

 

弟の強さの謎を解明すべく、俺は弟に問い詰めた。何故目にも留まらぬ速さで指導役を倒したのだと、

弟は落ち込んだ表情を見せながら、ぽつりぽつりと喋り出した。

自分には人が透けて見えること、その透けて見えたものを見て相手がどう動くのかわかること、みんなが魔力と呼んでるものが見えるようだと、今まで見た人間たちは曽祖父の友人の南郷さんと自分以外は皆鎖に縛られているように見えていること。

こいつにとって剣とは遊び以下のものであり、これほどの強さにもかかわらずそれをどうでもいいものとして扱っていると。

この瞬間に気づいた。こいつに対して感じていた感情、それは気味が悪いという恐怖の感情だった。

こいつの本当に恐ろしいところはその肉体だ。

初心者が握り方と構え方を教えられ相手の動きが分かったとしてもあそこまでは動けない。

ましてや魔力を使わず魔力で防御した相手を認識すらされずに吹き飛ばしたのだ、その力は異常という他あるまい。

この時、初めて俺は特別な人間ではないこと。そして本当に特別な人間がいるとすれば、それはこいつなのだろうと思い知った。

 

その夜、俺は寝付けずにいた。

将来を嘱望された騎士があそこまでボロボロにされたのだ。黒鉄家が気づかないはずがない。弟はどうなる?弟より劣る俺はどうなる?そんな事が頭から離れない。

そんな中、ふと襖の向こうから声がした。

「兄上?起きていますか?」

「…あぁ、起きている」

未だ抑えが利かない恐怖を弟に悟らせないように必死に抑えながら答えた。

「あぁ、よかった。実は私は今宵にて家を出ることになりました」

「何?どういうことだ?何故家を出るのだ?」

「申し訳ありません。時間が足らず後は離れの私の部屋にある手紙を読んでください」

「待て!どういうことか説明しろ!」

そう言いながら襖を開ける。

そこには涙を流している弟がいた。

今までのこいつからは想像できない姿に思わず思考停止してしまった俺に対し、

「この家での思い出やこのオカリナをいただいた時のあの喜びを一生忘れません。こんな私を気にかけてくれてありがとうございました」

そう言うとヤツは悲しげな表情を浮かべ、俺に向かって深々と頭を下げた。

 

何を言ってるんだ?こいつは?安物の暇つぶしの道具だぞ?それはそんな大したものじゃない!お前を哀れんだだけだ!

そんな事を考えていたらアイツは音も無く消えていた。

 

 

 

 

後日、アイツの部屋に行くと手紙が父、母、曽祖父、俺、一輝、珠雫にそれぞれ宛てられた手紙があった。

俺は手紙をそれぞれに渡し終えた後、部屋にて自分宛のものを読む事にした。

其処には様々な事が書かれていた。自分は非伐刀者ではないということ、まだ発現していない俺の固有霊装や能力について、曽祖父の暗殺計画についてとその首謀者、今まで自分が行ってきた一輝へのイジメの対処を代わりやって欲しい、一輝と珠雫と兄弟三人仲良く暮らして欲しい、自分の事は忘れてくれて構わない。という事が書かれていた。

俺は自分を恥じた。

自分が如何に周りを見てなかった事、ましてやそれを見下していた弟に教えられてしまった事を。

何が次期当主として相応しくだ!何が厳しい教育だ!そんな物を一生懸命やったところで、アイツの足元にも及ばないではないか!巫山戯るな!

そんな余計なもの、俺のような凡人には要らない。むしろ邪魔だ。

ならば次期当主など捨てる。

余計なものを削ぎ落とし、ただひたすらに強さをもとめる鬼となろう。

目指すは最強、アイツ…いや"縁壱"を超える最強の騎士だ!





縁壱
生まれながらの魔人
最初から魔人だったため、生まれた時点では魔力が0だった。(なお初めて剣を握った時点で既にステラクラス、しかも周囲に悟られないレベルにまで制御されていた)

原作の鬼滅の刃では何も訓練してないのに生まれた時から痣発現、至高の領域に到達という正真正銘の化物。そら無惨様も腰抜かしてトラウマになると読者を納得(ドン引き)させたやべーやつ。なのに本人はみんないつか到達するよ、俺ら以上なんてこの後わんさか産まれるよとか抜かしてる。真面目に無惨様を倒そうという気概があまり見られない。富岡さん枠では?といわれてる

この世界では原作縁壱さんの要素に加えて魔力感知版の透き通る世界、人の霊装や能力がわかったり、魔人かそうでないかも分かるなどこの落第騎士の世界に生まれたらこんな感じかな?という要素をぶち込んだ。あくまでもオリ主のため、別に転生した縁壱さんとかではない。

この後、南郷さんに勧められとある孤児院に。
黒鉄家は王馬くんが計画を本人にチクったため、おじいちゃんが死なず原作時でも元気。
一輝もおじいちゃんの庇護のもと順調に強化。珠雫も剣術強化。
パパと一輝もある程度お互いの心情を理解して和解しているが結果は出せと言われている。
王馬くんはひたすら訓練、風ギプスしながら絶食しつつ岩柱の訓練もどきとかしたりして限界を超えるべく日々頑張っている。
ちなみに王馬くんは言われた通りに素直に兄弟仲よくしてる。と言っても話しかけられたら言葉を返す程度、現状はお労しや案件にはならない模様

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