縁壱さんが思ってたよりもチートだったので初投稿です
今週の鬼滅感想
なんで指導力まで化け物なんだよ…誰かが縁壱さんの呼吸を解明して作って広めたのかと思ったらそれぞれ個別に呼吸を一人で指導って…わけわからんぞお前!
言われてみたら人間レントゲンだから適した呼吸作るの便利そうだな!もうお前おかしいよ!日輪刀もお前が発祥ってことないよな?
僕には2人の兄がいる。
一人はいつも怖い顔をしてるけどとっても強い王馬兄さん
もう一人はいつもぼーっとしたような顔をしているけど僕を守ってくれる縁壱兄さん
でも縁壱兄さんはもういない。
王馬兄さんが言うにはトラブルを避けるために家を出たそうだ。
そう言われても幼い頃の僕にはよくわからなかった。ただ、きっと縁壱兄さんは自分よりも他人を優先する人だったからきっと誰かのために家を出たんだろう…そう当時の僕は考えた。
当時、端的に言うと僕はいじめを受けていた。
なぜなら僕の生まれたこの黒鉄家は伐刀者の家系、いわゆる名門。
そんな名家にしかも直系で生まれたというのに僕は伐刀者が持つ平均的な魔力の10分の1という少なさ。僕はいわゆる落ちこぼれだったというわけだ。
生まれた時から、伐刀者の魔力は変動しない…それはこの世界における常識であり、いくら増やそうと努力しようとも変わることがない絶対的な法則だ。
当時は能力こそ不明だったものの、そんな少ない魔力じゃできることもたかが知れてる。そう思った親やその周囲の人間からは基本存在しないものとして扱われ、ひどい時には周囲の人間たちから罵倒や暴力を振るわれることもあった。
ある時、僕は思った。
どうせいてもいなくてもどうでもいいと思われているならこっちから消えてやろうと。この家にいては僕は生きている意味が無い。なら家出をするしかないと。
今思えば幼い発想だ。癇癪を起こして家出などそんな余計なことをするなら鍛錬だと今でなら言えるが当時の僕にとっては一大決心だったのだ。
その日、僕は誰にも告げず家を出た。
普通の道を歩くと誰かにばれると思った僕は裏山を経由して街に出ようとした。
しかしその日の山はあいにくの悪天候、家を出る前の空と打って変わり、空には雲が覆い雪も降り風も吹いてくる始末。普通の人間なら諦めて家に戻るのだろう。しかし僕は伐刀者、魔力を使い山を登るが所詮は落ちこぼれ。山の中腹にたどり着くころには魔力は尽き、最早意地だけで登っていた。
とうとうそれも尽き、歩くことさえままならなくなり意識が薄れてくる。
僕は死ぬのか…そう思ったときに薄れた視界に人影が。
その人影は曽祖父だった。
その時の曽祖父との会話で僕は強くなるため騎士を目指すという目標を見つけることができた。
もしあの頃、家出をしようと思っていなかったら僕はきっとただひたすら惨めな自分のままだっただろう。
曽祖父に助けられ、曽祖父に剣を教わるようになった少し経ったある日、兄さんに初めて出会った。
その日、曽祖父は稽古が終わったあと少し待ってろと言い席を離れた。
「ようやく顔見せる気になったかこいつめ」
戻ってきた曽祖父はそう言いながら僕よりも少し年上の額に炎のような痣が印象的な少年を連れてきた。
「一輝、こいつは縁壱。お前の兄だ」
突然、曽祖父に僕の兄だと紹介されたその人は第一印象から、なんというかぼーっとした人だった。
なにせ曽祖父に首根っこを掴まれながらも何も考えてなさそうな表情を維持していた人だ、そう思ってもしょうがない。
曽祖父がわざわざ嘘をつく理由もないと考え、僕が知らなかったのは何か理由があったのだろうと納得しその人を兄と認識するようになった。
しかし彼はあいさつにもただ一言よろしくとだけ答え、あとはひたすら縁側で日向ぼっこをしているかプラスチックのオカリナを吹いてるだけだった。
なんだか気の抜けた人だなっていうのがその人に対する印象だった。
曽祖父に剣を教えられ僕がひたすら剣を振るっている時でも、彼はたまにこちらを見てくる以外はいつものようにぼーっとしていた。
そんな事が日常になりつつあったある日、
その日は、分家が黒鉄家に一同に会し会合を開く日だった。
と言っても、大抵は美味い料理と自分の子供の自慢話や過去の武勇伝を肴にお酒を飲んでいるだけの場だ。
もちろん僕は参加できるわけもなく、縁壱兄さんは普段どこで何をしているのか不明、曽祖父もやつらは気にくわないと言って数日間出かけるとのことだったので一人寂しく離れの庭で訓練を行っていた。
だが分家の子供たちが来ているのに離れとはいえ外で訓練をしていたのがまずかったのだろう。
彼らに見つかった。魔力の少ない僕がいくら抵抗しても焼け石に水、たちまち訓練用の木刀を取り上げられて罵倒され暴力を受けた。
泣き喚きごめんなさいと卑屈になればまだマシだったのかもしれない。しかし僕が目指すのは曽祖父のような強い人間だ。曽祖父ならそんな事をしない。
そう思い、痛いのを我慢し声を押し殺していたら彼らは舐められていると思ったらしく魔力を行使しようとしてきた。名前はわからないが彼らの中でも比較的、年上の少年が手をかざすと庭にあった複数の石が宙に浮き猛スピードでこちらに向かってきた。
流石にこれはキツイなと思い、せめてダメージを軽くしようと体を丸めたが、いつまでたっても石がぶつかったような感覚は来ない。恐る恐る顔を上げてみるとそこに広がっていたのは先程まで取り上げられていた木刀を持った縁壱兄さんの姿と気絶して倒れ伏したらしき分家の子供たちという普段の兄さんの姿を知っていれば考えられないくらいに異様な光景だった。
「大丈夫か、一輝」
兄さんは最初に聞いた時のように感情が抜け落ちたような声で語りかけてきた。
「う、うん。大丈夫だよ。でも何が起きたの?」
余りの異常事態に思考が停止しかけたがなんとか返事を返す。
「魔力を使うのはやり過ぎだと思った。だから止めた。それだけだ」
兄さんは何でもないようにそう返してくると倒れた分家の子供たちを放置し、僕を片手で抱き上げるように持ち上げると離れの部屋へと運んだ。
離れにあった救急箱で兄から傷を手当てしてもらいながら、先程の事を聞く。
「さっきのあれについて何だけど、止めたって具体的に何をしたの?」
「彼らを気絶させながら木刀を奪い、お前に向かっていった石を叩き落とした」
?この人は何を言ってるんだろう?
確かにそれだけなら、曽祖父や王馬兄さんなら出来るだろう。だがそれをあんな短時間で近くにいた僕にも気づかれないほど静かに行う事が出来る人なんてどれだけいるだろう。
聞いた話じゃ兄さんは魔力をもって無いはず、だが嘘というには余りにも無意味だ。そもそも嘘をつく必要が兄さんにはない。もしかしたら兄さんには魔力をもってない代わりに何か特殊な方法を使ったのではないのだろうか。それがもし僕にも使えたら僕より魔力のある人間にもいつか勝てるようになるかもしれない。
藁にもすがる思いで僕は聞いた。
「何で兄さんは魔力無しでそんなに強いの?何か秘密があるの?だったら教えて!僕は強くなりたいんだ!」
そりゃもう必死に頼み込んだ。
そんな僕の様子を見て兄さんは少しの間何かを考えるように目をつぶった。
そして目を開けると、
「出来るかどうかと分からないがそれでもいいか?」
兄さんは僕の目をじっと見ながら聞いてきた。
「うん、強くなるためには出来ることは何でもやりたいんだ!」
そうして僕は兄さんからとある技術を教えてもらった。
兄さんが言うには自分に適した呼吸を行うことで通常時より何倍もの強さを手に入れる事が出来るらしい。
更にそれを突き詰めると今よりも強靭な肉体を手に入れる事が出来るらしい。
正直兄さんは余り喋るような人じゃないため、自分でも出来るかどうかと不安だったが丁寧にそれでいてわかりやすく指導してくれるその姿を見て誰?と思わなくもなかったが、無事呼吸を身に付ける事ができた。
しかし兄さんからは今度はそれに合わせた動き方を自分なりに追及しろと言う課題が出された。
……しかし数日後、兄さんは黒鉄家から姿を消した。
数日後、王馬兄さんから渡された僕の名前が書かれた手紙を読むとそこにはこんなことが書かれていた。
まず、呼吸の訓練を最後まで見られないことに対する謝罪、自分の呼吸にあった動きがわかるコツ、自分は特異体質なのか体内の魔力の有無が判別しにくいらしいこと、少ない魔力を卑下するのではなくそれをどう使うかに力を入れてみるべき、自分のせいで黒鉄家にこれから更に不当な扱いを受けるかもしれないこと、何故魔力が少ないだけで両親からも存在しないものとして扱われているのかについて、父の性格について、何なら曽祖父を利用してでも両親と腹を割って話すべきなど、困ったことがあれば曽祖父や王馬兄さんに頼めばきっと助けてくれるだろう、ということが書かれていた。
なんかもう色々詰め込み過ぎた内容で正直気が滅入ったが、この手紙を読んで新しい目標ができた。
とりあえず、この無愛想だけど優しくて人より何歩も先に行きすぎた兄に肩を並べるような男になる。それはきっと強い人間になるという目標に反しないはずだ。
次回は巌勝さんの退社式を読んでどうするか決めるので来週以降の予定になります
…ちなみに感想下さいって言ったら感想って本当に来るんですか?