人外に愛されすぎる者   作:ドゥナシオン

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この世界で生きていく




めんどい、この世界の私って詰んでるだろ。

 

三歳の頃に妹が生まれて確信をした。

母は妹を生んで死んでしまい、父は取り縋って泣いていた。

 

「ルイ―シャよ、其方の妹のソアラだ。今日より我ら親子三人だ。」

 

ソアラ、この国の名前はアルキード。

不味いな、アルキードのソアラ王女なんてこの世界の死神確約の名前だろう。

どうやら私の生まれたこの世界はダイの大冒険のようだ。

生前の自分の唯一のお気に入りの漫画。

 

あの本は大好きだった。

同じ境遇の男の子が主人公で、様々な出会いを得て遂には世界を助けた分かりやすい主人公。

困難が起こると真正面から粉砕する時と、逃げてしまう時と揺れ動く人間味のある性格が好ましかった。

其の度に仲間に助けられながら互いに成長をしあい、最後にはラスボスから-人間に疎まれたらどうするのか―と問われたときのあの言葉。

 

お前を倒して俺はこの地上を去る

 

完全なる滅私奉公精神だ。

 

守りたい者達に好かれたいから戦うのではない、守りたいから守るのだと一貫したあの確立した正義感がたまらなく好きなのだが・・・この国に居たら私は確実に死ぬだろう。

この今はフニャフニャとした可愛い妹が原因で。

 

・・・・止めるか、未来知っているからこの国救う方向で。

 

幸いにして自分がどうやら次代の王になるらしい。

阿呆な父王のおかげにて。

 

「父様、再婚はされないのですか?」

 

母の国葬をしてから十日後に聞いてみた。

いくら最愛の妻がなくなっているとはいえ、王としての責務があるだろうからこのタイミングならば聞いても失礼にはならんだろ。

 

「せぬぞ、お前という後継ぎがいるのだから必要はなかろう。」

「・・・・私は女ですよ?」

「何を言う、アルキードに女王がいたことはないが他国にはままあることだ。」

前例がなくとも大丈夫、心配するなと笑って頭をわしゃわしゃにされた。

豪快な父親だ。

娘の結われた頭をぐしゃぐしゃするんだから。

 

どうやら私が調べ物をしていたのはとっくにお見通しか。

齢三つの私がこの国の書物を読み漁っているのは有名だからな。

 

「見て見て!王女様はもう書物を!」

「なんと、王女様は神童だ!」

「この国の将来は安泰ですはね。」

 

周りが騒いでいたが、自分だってびっくりだ。

何故ならどの書物を読んでも日本語で書かれているからだ。

それこそ学者たちが解読中の古文書もだが、流石にそれは読めないことにしておいた。

ただでさえ騒がしいのにもっと上がれるのは流石に面倒だ。

その過程でアルキード王家の系譜も網羅しておいた。

この国は二百年以上の歴史があるが、女王は一度としてない。

 

そのことを父様は大丈夫だと、膝に私を乗せながらニコニコと話してくる。

ここ執務室なのにいいのか?

どうやらソアラが将来伴侶となったバランにあそこまで入れ込んだのは父様に似たのか。

父様が再婚しない理由はただ一つ、母様を愛しているからだ。亡くなった今でも。

愛情過多気味か、親子だな~。

 

幸いソアラ王女と私のソアラとは物凄い違いがある。

私という存在だ。

ソアラ王女は跡取り娘で、とてもではないが見知らぬ旅の戦士とは結ばれることは皆無だ。

バランが竜の騎士であってもだ。

神よりの使いの世界を守る騎士だろうが、この国は相当保守的なので周りは反対するのが目に見えている。

なにせ私が出した徴税方法の献策にぎゃんぎゃん噛みついてきた老害が多い事。

 

五歳のころ、国に日照りが続いて作物の収入ががた減りで宰相達も連日の会議を組んでいた。

無いものを徴税することはできない、ではどこから徴収をするか。

農村部ではなく、街はまだ体力がある。

ならば一時的に街の徴税を上げるかと官僚たちからの意見に私が真っ向から反対をした。

農村部のツケを都市部のみに負わせれば、いつか不満のタネになると。

 

街の者達とて情報は入ってくる。

自分達の生活にかかわることならば尚の事集めるだろう。

いきなり税が上がれば何故かと調べる者達が出てくるのは自明の理だ。

そして必ずいう者が出てくるだろう、農村のツケを自分達が合うのかという馬鹿どもが。

 

街に住んでる者達の中には勘違いをする者がいる。

街に住んでいるものは同じ国民であっても、農村部の者達よりも上なのだと無駄に偉ぶるのがいる。

まぁそういうのは貴族の方が多いのだが今はそこではない。

少数の不満が国のごたごたになる可能性があるのが問題だ。

 

なにせこの国は貴族・神官達に甘すぎる。

国に尽くすべき、模範となるべき貴族達の税金が安すぎる。

頭くるな、元庶民からすればふざけるなと言いたい。

 

夜会に来るたびにとっかえひっかえしている絢爛豪華な衣装、無駄にきらきらさせている宝石に税金掛けろ。

 

その発案を宰相に相談した。

六十のご老人で、白髪の綺麗なもの柔らかな私の師だ。

知識が五歳児にはあり得ない私に嫌な顔をしないで様々な事を教えてくれる。

十五で死んだ私が徴税にくちばしを挟めたのはそのおかげだ。

妹と父様を死なせないためにも知識は欲しい、物凄く。

寝食惜しんで勉学励んだ結果、五歳とはいえ国策に物言える王女様の誕生だ。

 

奢侈税

 

それが私が発案をして、きちんと宰相が国策にしてくれた法案の名前だ。

当然貴族連中から反発があり、父様も難色を示していたが宰相の言い分に粉砕をされた。

 

国の危機に範たる貴族が率先をしなくてどうするか。

 

一朝事があれば軍を率いて事に当たり、国を守るのが大前提だからこそ貴族も王室も成り立っているのを忘れてはならないと。

その担保を崩して国民ばかりに苦労を強いるのはいつか国を滅ぼすのだと。

 

こっそりと会議を覗き見をしていた私は笑いをこらえるのに必死だった程に痛快だったな。

 

ステルス掛けたから姿は見えずでも、声がしたら流石にばれるだろう。

重要会議の盗み見は、王女の自分でもアウトだ。

きちんと王太子殿下の称号をもらえるまでは、こうして盗み見をして勉強だ。

 

そうして少しずつは力を蓄えて行くことになった。




主人公の能力の始まり書きたい。

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