人外に愛されすぎる者   作:ドゥナシオン

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少しずつ読んでくださりありがとうございます。


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「この地球儀凄いな!ホルキア・ライリンバー・ギルドメインにマルノーラ大陸がしっかりと描かれているではないか。

しかも今や死の大地となった大陸もカール沿岸の諸島に・・デルムリン島まで!!」

「こっちは天球儀か!よもや数百年前に星の運航を全て模型にしたと言ったアルゴーレ博士の紛失された遺産か⁉」

「キラーマシーンの製造法?魔法と魔道の違いにどのような運用の差があるのかの論文・・・ここは知識の宝庫か何か主よ!!」

 

何だこやつは!さまよう鎧の分際で人語を話すは、人様の部屋にずかずか入ってきたと思ったらバルトスの養い子を抱えたまま物色してはいちいち悲鳴のような感想を述べるは・・・しかも感想内容がとっても的確だわ何なのだ?

しかし、この部屋の価値が本当に分かっているようだなこやつは。

 

「おい」

「あ!これは魔道具を分解したのか?中身を確かめた形跡があって再構築しているところ?自前で魔道具作りたいのか?」

「む・・・単なる手すさびだ。お前はこの部屋見たさに地底魔城に侵入してきたのか?」

そうだと言って来たら相当な馬鹿だろうこやつは。

 

あ、しまった。この部屋の中身の凄さに当初の目的を丸っと忘れていたな。

 

ルイ―シャの悪癖。凄いものや興味をそそられたものが目の前にあれば、余程の事でない限りそちらに気を取られて当初の目的を丸っと忘れて没頭してしまう。

流石に命の遣り取りに類する事や、愛天使・ソアラに関することは決して忘れないが後は大体ハドラーに指摘され手は赤っ恥を掻いている。

 

今も腕の中にいる最重要案件のヒュンケルを見ては落ち込む。

この人いきなり何叫んでるんだろう、変な人だとヒュンケルの心の声が目に現れていて、まじまじと見られているのがかなりきつい。

 

「こほん。」

 

ここは気を取り直して優雅にやり直して今の醜態帳消しにしよう!

気取った咳をしておいて、この腹黒王太子の心の中身は割と小心者の屑っぽさがある。

まるでどこぞの三流魔王と瓜二つな思考なのかもしれない。

 

「私はこの城の門番をしていると言うバルトスとやらの息子を森で拾った。

泣いても帰りたくないとしつこかったので理由聞いてみたらいたく感心したので送りに来たんだよ。

ヒュンケル、もう一度帰りたくない理由を自分で言ってみろ。」

 

矢張りバルトスの養い子のヒュンケルか。

三年前にあいつを禁術で作って、その半年後に赤子を拾って名前に悩んでいたのを俺様が命名してやったんだっけか・・・人間のガキに興味が無いから今まで放っておいたが、見目はそこそこで利発そうだな。

大方自分と周りのモンスター達との差異に嫌悪感でも覚えたか?

 

今の今まで自分が名付けた子どもをまじまじと見た事のないハドラーはヒュンケルの見目と理知を感じる瞳を見て家出理由をそう推察をした。

利発な子供は何処にでもいる。この地底魔上にも鏡くらいはあるのでミイラ男にゾンビやくさったしたいが主な地底魔上軍団と自分を比べてはまぁ嫌になっても仕方がない気もしないではない。

親にいたっては骸骨だしな。

 

男手で、もといその骸骨の手で必死に育てられてきたヒュンケルは、そんなハドラーの超絶失礼な推察をガンガンに蹴散らした。

 

「僕みたいな弱い人間がいたら!魔王様のお邪魔になるからです!!」

え?

「父さんは魔王様の門を守る大切な役目があって!!弱い僕は足手まといになるか、侵入してきた敵の人質に使われてしまうかもしれません。」

はい?

「父さんの周りの人たち(?)は優しいから今までそんな事を言われたことないけど・・新しく来た人達(?)が教えてくれました。僕は弱い人間と言う生き物で、ここにいるだけで父さんと魔王様のお邪魔になる存在だって。

僕は父さんが大好きです!立派な騎士様です。そんな父さんがお守りする魔王様はきっともっと立派なお方です!そんな人達の邪魔になるくらいなら僕はこの場所から・・・」

「もうよい!!」

 

ヒュンケルは己の内にある不安や悩みを切々と語った。

慰めてほしいのではない、まして止めてほしいのでもない。分かってほしいから、いかに自分が、人間がここにいてはいけないかをこの場にいる者達に。

分かってこのさまよう鎧と共にどこか遠くに行くように言ってほしいから。

その為の告白は大音声で途切れた、途切れてしまった。

この目の前の人も分かってくれないのだろうか?自分のこの思いを、いかに父を愛し、お仕えしているまだ見たことはないが父が常々語ってくれる魔王様のお邪魔になりたくないことを。

 

「お前はこの城に住む資格がある者だ。他の者の戯言に耳を傾ける必要などないぞヒュンケル。」

「・・・何言っているんですか!僕は!」

「俺の地底魔城に住む資格を決めるのはこの俺様自身だ。

名乗っていなかったなヒュンケルよ。

俺様が貴様の父バルトスが仕えている魔王ハドラーだ。」

 

ヒュンケルの切なる理由は確かにハドラーの心の奥底までに届いた。

父ばかりかまだ見た事もない自分の邪魔になりたくない、なんと健気で崇高な心なのだとハドラーの心を震わせるほどに。

配下も周りも己の道具か精々役に立つ大切な道具かしか考えてこなかった打算だらけの男が、この役にも立たないはずの人間の子供に手を差し伸べる程の美しく清らかな精神であった。

この子供を手放したくないと瞬時に思う程の。

 

 

おやおや、この男自分から名乗ったよ。

 

ルイ―シャとしてはこの展開は少々思っていたのと違い少なからず面食らっている。

 

てっきりこ今のヒュンケルの一大告白も、子供の戯言と片づけ五月蠅がってバルトス呼んで終わりにするかと思いきや真摯に受け止めている。

知識では力だけがある風格・心の在りようが三流と大魔導士マトリフに揶揄されていた小物だとばかりだと思っていたが、実際はなかなかどうして。

この部屋にある大量の知識・インテリの数々、何気なく置かれている机や家具もどっしりとしていながらもどこか風雅さを感じさせる様は王城内の自室と遜色のなさ。

実際に生きて話す魔王ハドラーとはもしかしなくとも凄い大人物なのだろうか?

そもそもそうでなくては生来のカリスマ性だけで魔王は張れず、大軍団であと一歩のところまで人類を追い詰める大戦を引き起こせるはずもないか。

実戦経験・豊富な知識に今もさらに知識を吸収して己の物にしようとする貪欲さがあったればこその魔王な訳か・・・・クロコダインは何処見てハドラーを小物と評価したんだか。

そっちは今度聞くとして今はヒュンケルどうするかだったな。

 

「この子供を罵った輩をぶちのめしたくてここまで来たんだが、それは任せてよさそうだな。」

「む、ヒュンケルを返してもらうぞ。」

「返す返さないではなく、それはヒュンケルが決めることだ。

ヒュンケル、目の前にいる子の魔族の男がお前の父が仕えていると言う魔王の様だぞ。その魔王自らがここに住んでいいと言っているがどうする?」

「僕、ここに・・」

「いろ!俺がいていいと言っているんだぞ。」

「邪魔には・・」

「ふん!貴様くらい守れないほど俺は弱いと言いたいのか!」

「そんな!違います!」

「ならばお前が邪魔になる理由はない。精々今この瞬間に俺の貴重な時間を使って無駄にしているのが邪魔なくらいだ。俺様の邪魔をしたくないと言うのならばさっさとバルトスに謝っておとなしくこの城にいろ。

分かったかヒュンケル。」

 

魔王ハドラーまさかのツンデレ

 

今も昔もツンデレは最強のようだ。

悲壮な顔をしていたヒュンケルん顔が上気して、ハドラーに熱い視線送りながら無言でコクコク首を縦に振って頷いちゃってるよ。

これってハドラー倒した奴は父バルトスの仇と敬愛した魔王様の仇も漏れなく付随するのか?

 

不味い、何かやらかした気がする。妙なフラグでも立ててしまったか?

まぁいい、そうなったらなったでアバン達鍛えて(ボコボコにのしながらの強化)をすればいいだけの話だ。

ヒュンケルの下にもちょくちょく来て、大戦中の外の様子教えてどっちが勝っても恨む道理はないこと植え付けて復讐の鬼になる道はつぶしていか。

 

「おいさまよう鎧もどき。」

「なんだ、子供の前だからと言ってすっとぼけるのか?お前くらいなら私の正体などとっくにお見通しだろうに。」

「ふん、野暮な奴だ。せっかく言わんでおいてやっているのだからありがたくさまよう鎧もどきでいたらどうだ?

それともそんなお遊びもできない野暮天か?」

「言ってくれるな、良いだろう。

それでそのさまよえる鎧もどきに何の用だ?」

「ヒュンケルを保護してくれた礼に何かくれてやる。」

「ほう、良いのか?」

「俺様に二言はない、この部屋の物をいたく感心していたからな。好きなものを一つやるから選べ。」

 

こいつ何処までも上から目線でツンデレなのな。

しかし気前がものすごくよすぎやしないか?だったら・・・

 

「あ~それともう一つ。俺様の配下にならんか?

好待遇の幹部に迎えてこの部屋にあるものすべてを好きにして良いぞ。」はい⁉

 




人外(魔王様込み)にも愛されそうな主人公
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