人外に愛されすぎる者   作:ドゥナシオン

23 / 25
大戦前のこそこそ話


23

「なぁアバン。近頃さ、なんかやばくね?」

「ロカ、貴方の長所は物事の本質をズバリと言えることですが、流石に色々と省かれすぎて何を言われているのか分かりませんよ。」

 

夕暮れ時のカール王国の兵舎の一室にて少しくたびれ果てたロカがテーブルにだらしなく体を伸ばして目の前に座っているこれまたおなじくらいにくたびれているアバンに愚痴ろうとしていた。

 

「だってさ、モンスターの凶暴化は留まることを知らずに、昨日まで大人しかったスライム達も襲ってくんだぞ?間抜けな面して昼寝してたやつら迄・・」

 

ロカは言い募りながら段々と声を落とし、遂には突っ伏して黙り込んでしまった。

ここ半月はそんな感じの襲撃で騎士団も魔法師団も休めずに連日の討伐隊で大わらわしている。

だがロカは好きでモンスター達を倒しているわけではない。

この男は見た目こそ厳つくぶっきらぼうでデリカシーに少々欠けているところがあるがその辺の者よりも繊細な心を持っている。

 

ロカの言う通り日に日にモンスター達の襲撃の頻度が増している。

それこそ大人しく、天気のいい日は街道の横で涎を垂らして昼寝をしていて、中には餌付けで村の子供と仲良くなってしまったスライム達が目をいからせ制止の為の怒声や威嚇にもひるむことなく襲い掛かって来る。

 

「あの子たちを殺さないで!」

 

討伐の為に守りに行った村の子供の言葉がロカの耳から離れず苦悩し、それでも村を守るために襲撃に加わっていたスライム達を倒したが心は晴れずにもやもやが溜まっていっているのをアバンも本当は分かっている。

 

一体この異常事態を引き起こしている原因はなんであるのか。

 

アバンだとて座して今世界各地で起きている異常事態を静観しているわけではない。原因を突き止め、自身で解決できないか、それが無理でも沈められる手立てがないかを寝食の時間を半分削って調べている。

王立図書館の文献や、それに匹敵する学者の家・知識の宝庫と呼ばれているジュニアール家に代々受け継がれている古文書を漁ってみたが、群れの異常繁殖・毒草やそれに類するものを口にしての集団錯乱などの記述以外で、モンスター達の凶暴化についての事例は見つけられなかった。

 

世界各地で起きている事に当てはめようとしても無理があり、独力では限界であることをアバンは察しているが、如何せん王国を守りながら原因を見つけるなど土台無理な話である。

 

きっと今起きている事はそんな片手間で突き止められる程生易しいものではない

 

そんな予感に、アバンは一人震える夜を幾日過ごしたかもう覚えていない。

 

近頃はどの街も村も、それこそ王城内でも寄ると触るとモンスター達の襲撃話で暗い影が落とされている。

 

「山奥からドラゴンの鳴き声が聞こえたとか。」

「普通の木だと思って切ろうとした木こりが、実は人面樹で食われかけたとか・・」

「魚たちも逃げてしまったのか漁に行っても穫れんよ。」

 

溜め息と遣る瀬無さが国を蔓延し始める。

これこそがハドラーの狙いである。

 

地上は今まで人間たちによる争いしかなく、魔王が現れればその強大な邪気によってほぼすべてのモンスター達が凶暴化をして魔王の手下になり人間達に牙を剥く。

残念ながら魔界からの侵攻は五百年前が最後となり、その時の事を詳細に記した文献は全て散逸してしまい、歌物語の勇者と魔王の戦いもひたすら勇者を美化した楽しいお話と成り果て、短命な人間の記憶は全て風化してしまい、アバンにも調べる手立てがなかった。いや、無い状態になってしまっていた。

 

魔王ハドラーは強運に見舞われている。

モンスター達の凶暴化から足が付き、魔王を探し出して討伐しようとされる恐れがこの時代では全くないからだ。

宣戦布告と同時に各地のモンスター達を一斉に襲わせれば各国は恐怖で大混乱になり勝つのはたやすいかもしれない!

 

・・・いや、慢心はよくないな。

あの奇妙なさまよう鎧もどきは魔王の存在を知ってしまっている。

だがその割には人間達が自分を知った様子はなく、偵察のために目の前の王城・パプニカの城に潜ませたズバット達の報告では、襲撃に対処しても原因は分かっておらずに根本的な対策が取れずに連日答えの出ない会議をしていると言う。

 

あのみょうちきりんな鎧もどきの中身は人間のはずなのだが。

それに気がかりな事はまだある。

各地で順調にモンスター達が凶暴化しているように見えるが-とある三国-で凶暴化が一切見られないと方向が上がってきている。

一体なぜなのだ!!

 

「一体なぜなんだろうね~ミスト。」

「・・・・・」

「地上に出て来て孤軍奮闘で頑張っている健気な魔王君の邪気が及んでいない国が三つもあるじゃないか。」

 

死の大地の奥深くにて、死神キルバーンは親友の無口参謀ミストバーンにお茶を淹れてもらいながら優雅に足を組んで、今の地上の状況を目の前に立っている親友と自分の左肩にちょこんと座っているピロロに話していた。

 

「どこの国の事を言っているのキル?」

「いいかいピロロ、今上は大騒ぎになっているけれど残念ながら全部じゃない。

一つはロモス王国。まぁここは何となく分かるね。あそこにはバーン様とミストが目を付けている天下の獣王君の縄張りだから、彼の強さが健気魔王君の邪気をはねつけているみたいだからね。

彼を仲間にするのは説得するのに骨がいるそうだねミスト~。」

「・・・・」

「キル、後の二つは?」

「ん?あ~それがね、アルキード王国とテラン王国なんだよ。」

「そこにも強いモンスターがいて縄張りで守られているの?」

「いやそれがね、たしかにアルキード王国には神獣モンスターがいるんだけど、あれは性格が気紛れで配下達がどうなろうとも知ったこっちゃないを地で行っている奴だったはずなんだよ・・・・前にバーン様の命で仲間にしようと勧誘しに行ったとき確かそんな感じで周りに無関心で断ってきて、縄張り質にとろうとしたけど守る気ないから好きにしろってやる気零な奴だったよ。」

「ふ~ん?ならどうして混乱がないの?」

「そこなんだよね、テランに至っては聖母竜マザードラゴン信仰と竜の騎士の為の神殿があるんだけれどモンスターが凶暴化しないような浄化作用があるはずないんだよ。」

 

使い魔のピロロに解説をしながら時折紅茶を飲んでまた話し出すが、話せば話すほどロモス以外の二か国の謎が深まるばかり。

アルキード王国も、まして今この時期に国民に武装解除をさせたテランにも凶暴化と襲撃の混乱は一切訪れずに、精々他国では大変だ、自分達も備えなければいけないと感じている程度で日常生活に影響が見られない。

 

「この事をバーン様はどう見てるんだろうねミスト。」

「・・・・今はまだ様子を見られている・・」

「そう、まぁそうだろうね。これから起こる大戦は-僕たちが起こす大戦-じゃない。高みの見物で魔王君の活躍を見て今の地上の戦力を測るだけだもんね。」

 

バーンたちからすれば魔王ハドラーと言う男は実に都合のいい男であった。

 

実力はそこそこあるようで大戦を起こせば間違いなく世界中を巻き込み大混乱を引き起こせるだろう。

生物とは大混乱の中にあっても命の危機を感じれば真価を十全に発揮して対処する。自分達が生き残るために。

それは人間とても例外ではなく、バーンからすれば天から降ってきた・・いや、そもそも地上に行きたがっていたハドラーの目の前に地上に出られる亜空間の穴を人為的に開けたのは死神キルバーンの仕業であった。

地上に憧れ支配欲が強く実力の高いものとしてバーンの目に留まり、弱い者であれば本当に死んでしまう過酷な亜空間の穴をキルバーンが設定して開けて試験をし、見事ハドラーは合格をした。

 

だからと言ってハドラーには何の手助けもしていない。

今ハドラーが築きあげている勢力は間違いなくハドラーだけの力でなしえている。

もし大戦が起こりハドラーが勝利した場合は、ハドラーがすべての邪魔な勢力を一掃して人間達を無力化した後にハドラーを殺して地上界を一掃して魔界を浮上させる。

ハドラーが敗れれば助けて部下にする腹積もりだ。

 

その為にハドラー同様に地上を監視しているが、アルキード王国とテラン王国の謎が全く解けないでいる。

戦には情報は何よりも必要不可欠。

 

「なんとしてでもあの二国の謎を解きたいものだよ。」

 

キルバーンは長話で冷めてしまった紅茶を美味しくなさそうに一気に流し込み、獲物を狩る冷たい瞳で言い放つ。地上界全てが大混乱していないのは自分にとっては詰まらない。阿鼻叫喚の地獄絵図が見られると思ったのに何かが邪魔をしている。

邪魔ものは全て死神の大鎌で摘み取るべきだ。それが人であれ事象であれ。

 

 

「そろそろ大戦始まるか・・・テラン助けてるけど大丈夫かな?」

 

ハドラー・バーン達を悩ませている二か国の黒幕ことルイ―シャは現状このままでいいのかほんの少しだけ考え込む。

 

テランの王様大好きだ。落ち着いた老紳士で、理想にも共感できるところが多々ある。一般人が武器持つのは好ましくないだろう、喧嘩したければ素手で殴りあえ武器持つな。

その代わり民達は王国の兵士が守ると本気で考えている熱いハートに惚れてしまってこっそり破邪結界をテランに細工して施して上手くいってしまったんだなこれが~。アルキード王国は強いからいいけどテラン下手に目を付けられて攻められたら壊滅の憂き目にあうのは嫌だな。

 

「国王陛下~。」

「・・・」

「ん?陛下。」

「・・・お父様じゃぞルイ―シャ。」

「・・・・仕事なので陛下、お隣のテランに緊急事態になったらうちから援軍出して国境無条件で通してもらえる条約結んでほしい。」

「は?藪から棒に何を言っとるのだ?」

「あそこ今武器が(国民達は)ほぼ持っていないようで碌な武装してないらしいので・・」

「なんと!あい分かった!!儂に任せておけルイ―シャ。隣国は助け合ってこそじゃ!おーい宰相!」

 

うん、世の中素敵な父様を持った奴が勝つんだな。

たったの二日でテランと助け合い条約結べちゃったよ。

これでテランも大丈夫。




様々なところの裏話
ようやく大魔王ファミリー出せました( ´艸`)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。