人外に愛されすぎる者   作:ドゥナシオン

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滅んだ国というのは設定を好きにできて便利




「私に自前の親衛隊を?」

夕食の席でなにを重大ごとをぶち上げてるんだこの父様は。

 

昨日の約束通り今日は父様とソアラと一緒に夕飯を堪能しているところにいきなりさらりと

「ひと月でお前自身の親衛隊を創設しなさい。」

まるで明日お使い言ってきてほしいとかな気軽に何の前触れもなく行ってきやがった。

 

半年後の王太子即位の儀が始まる前に子飼いを作っておけというご命令か。

確かあの人の良い宰相以外は騎士団長を始めとして主要大臣たちは皆王太子時代の父様の親衛隊だったと教わったけど、

「急ですね、親衛隊創設は王太子即位後に少しずつ決めるのが慣例だと記憶していますが。」

王族とは言えたかだが九歳の子供が、国の中枢になるものを見込んで共に切磋琢磨する人材を把握しつくしているわけないだろ。

 

王太子になれば、父王について重要会議・書類仕事を共にするわけでそこからどの仕事にはどのような人材が必要かを自ら学び、其の上で親衛隊のメンバー選出をしていくはずなんだが。

いきなりひと月でできるか、残された資料の過去最短記録でも一年かかってるだろう。

阿呆を言わないでほしいと思いながらコンソメスープ飲んでたら父様の言葉で吹く羽目になった。

「お前はもう独自の貴族指定の集団を持っているじゃろう。」

 

父様の言葉を聞いたとたんに驚いて飲みそこなって吹き出してしまったではないか!

てか何で知ってる⁉

 

「お前達の父様はこの国の王様なのじゃぞ。」

この城内での出来事なぞすべて把握しているとどや顔で言う王様ってどうなんだ。

 

「お姉様しっかり!」

「いや・・すまないソアラ、もう大丈夫だから席に戻りなさい。」

可愛い妹に背中をさすってもらってようやく落ち着いたが、まさか自分の周辺交友関係全部把握されていたとは恐れ入る。

「報告をしたのは-彼ら-ですか?」

ちらりと天上を見ながら言ってやれば、動揺した気配が伝わってきたのは未熟だな。

アルキード国の影達。

あれらを使えるの父様か現宰相のみの諜報員たちだ。自分は心の中で御庭番と呼んでいる。

常時他国に諜報員を放ち、その国に住まわせる草もおり、時として王以外の王族たちを警護または監視をしているのだから御庭番だろう。

その存在も、本来ならば王太子になってから知らされるはずなんだろうな。だって自分聞いたことないし。

知れた理由はこの国に住み着いている精霊たち情報だから、自分が知っているのを明かしたのは少し不味ったか?

 

「ルイ―シャは本当に聡いの~。」

 

・・一国の機密情報に触れたのが自分の子供とはいえ、叱らなくていいのか父様。

 

 

 

 

「おい、誰か頭領にお伝えしろ、我らの存在はルイ―シャ様には最早知られているのだと。」

「末恐ろしき御子だ、本当に九歳の子供なのか?」

「あ~あ、王ってばデレデレになって頭撫でてるけど機密情報漏れ心配しなくていいのか?」

「妹君はルイ―シャ様が言っている事分かってないけど、姉君が褒められてるとお喜びだな。本当に仲のいいご家族だ。」

「お守りのし甲斐のあるお方たちだ。」

 

最後の一言事にその場にいる影達全員が力強く頷く。

城内の見る目の無いバカ者どもはルイ―シャ様の上辺のみを見て悪し様に言っているが、

国を陰日向なく守ってきている自分達からすればこれほど心強い方はいない。

このお方がこのままたゆまずに王足らんとするならば、きっと歴代の中でも最良の女王陛下の誕生だ。

その姉君をに追いつかんとする妹姫もまた然り。

彼女は姉姫ほどの才覚がなくとも、姉姫にないものがある。

それは人を温かくして癒していく力。

ルイ―シャ姫が月のような方ならば、ソアラ姫は太陽のようなお方。

力・才覚あるものはルイ―シャ姫についていけるが、人間そんなに有能な者達ばかりではない。

才覚なきものをルイ―シャ姫に叱られ落ち込んでいるところをソアラ姫に慰められて救われ、更に共に頑張ろうという言葉に奮起をして勉学・剣術・魔法に励んでいる。

 

ルイ―シャ姫が生まれながらの王ならば、ソアラ姫は王佐の才を持つお方。

もしかしたらルイ―シャ姫がアルキード国初の女王となるのに際し、ソアラ姫は初の姫宰相と御成りになるかもしれないと影達は今から心を逸らせていたりする。

 

だからこそ、後年彼らはルイ―シャ以上に-入り婿-に対して辛辣になるのだがそれはまたのちのお話。

 

 

 

さて、ぶっちゃけどうしよう。

「私の親衛隊にならないか、ハルバルト。」

少々ぽっちゃりとした栗色の髪を短髪にした一つ年上のハルバルトに直球勝負だ。

「それって冗談じゃなくて本気なのルイ―シャ?」

一国の王女相手にクッキー頬張りながらため口きいての返答もどうなんだ?

実家の男爵家がこの場に居たら卒倒してるだろうな。

ハルバルト、デリング男爵家の次期当主なのだが騎士団員を代々輩出しているのだがどうしてかこいつは魔法に特化しているあり得ないやつ。

 

齢四歳の頃には火炎呪文・氷系呪文・爆裂呪文・風圧呪文の初級を全て契約をしている。

契約だけならば誰も驚かない、才が身の内にあるのならば契約呪文が自動的に感知をして訳してくれるのだが、この目の前のぽっちゃり君は契約したその場で魔法を発動したという。それも完璧な制御をして。

魔法のコスパもすごかったよとは、ハルバルトの事を教えてくれた精霊達からの言だった。

そんなに凄いのに、こいつは家族から爪弾きにされている。剣士としての才がないというくらいのくだらない理由でだ。

勿体ないので拾いに行ったら、中身くそ生意気なお子様だった。

 

「バケモノ姫がなんの用?」ドストライクな超失礼な奴。それ誰かに聞かれたら即刻打ち首の上家名断絶もんだぞ。

なにか耳障りの言い文句を用意してきたのが馬鹿馬鹿しくなった。

「お前の事をきちんと使ってやるからありがたく思えバケモノ神童。」

自分がバケモノ姫と呼ばれているなら、こいつはバケモノ神童呼ばわりされているのは知っている。

何故ならこいつは七歳で三呪文を全てコンプリートして新呪文を作った奴だからだ。

氷系呪文ヒャダインを極めた後こいつは氷系呪文を研究し始めて、半月で完成をさせた。

出来た呪文がえぐい事えぐい事。敵にの体の一部に切り傷を作って接近をしてヒャドを流し込む。

 

コスパが少ない呪文であっても、体内に入れば血管・神経・筋組織破壊が出来るだろうとさらりと説明をしていた七歳児という者が、バケモノ神童と呼ばれたのだから納得だ。

しかもそれを実践で成功させているのが発案をした当人だけなのも理由の一つだろう。

今この世界は剣士・戦士が前衛で魔法使いは後方支援の概念が凝り固まって、-ポップ-

-マトリフ-といった者達はいない。

勇者のような万能な者達も残念ながら現アルキード国にはいない。

だったら剣士が傷をつけたところに魔法使いが接近してヒャド放てばという案も上手くいっていない。

今この世界の敵と言えばモンスターだけだが、手負いになったモンスターに零距離程の近くに寄る身体能力と胆力がある魔法使いがいない。

騎士団の中にも剣術と魔法を使えるものもいるが、傷をつけた後に素早く魔法を編成して放つのが出来ない。

ハルバルト以外は。

 

「剣振るっている間に魔法を編んでおけばいいじゃないか。」天才児様の一言は凡人の大半に喧嘩売ったとなったわけだ。

考案をした四日後にキラーエイプサルの群れが森に大量発生したと報告を受けた王が、即座に軍を派遣うことを決定した。

時期が時期でちょうど収穫のころで森のすぐ側がこの国の穀倉地帯だからだ。

絶対に死守もんだろ。

式神で報告から一連の流れを見ていると、いかに父様が有能かつ最良の王なのかが分かってしびれた。

でもそこじゃない、この騒動で目をつけたのは。

七歳のハルバルトが軍に従軍をして発案した新術で五体の敵を屠ったほうだ。

しかも無力化をさせたものを入れれば全部で九体。五十近くいた中での九体とは本気で畏れ入って青田買いに行って以来、こいつと私の関係は腐れ縁だ。

 

こいつは将来魔法団団長にする予定だ。

コスパを低くする安定の制御をいずれ言語化させて教科書にするつもりだ。

こいつ感覚で魔法使っている奴だから相当時間かかるだろうけど、やる価値はある。

うちの騎士団はリンガイアやカール騎士団までのレベルはない。

ならば魔法団を強化して連携プレーの強化をすればいい話だ。

サクサク親衛隊決めをしよう。




主人公の周りの人間もしっかりとバケモノ。

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