特使には宰相クラスが来ると考えていたが、まさか王太子になりたての子供を寄越すとは。
しかし態度は気に入った、子供ながらも一国の王に対する挨拶の仕方・特使としての口上の述べ方は堂に入って大したものだ。
何よりも臆することがない。
このベンガーナ城の謁見室は特別に広く設計をされている。他の部屋の二階分の高さがあり、豪奢なシャンデリア・鏡のように磨きを掛けられた床・白亜の木をふんだんに使って作られた真っ白な壁は、この経済大国ベンガーナの粋を集めて作られた特別な部屋だ。
自国民には己の国の豊かさを実感してもらい、他国の使者にはこの国の力を見せつけ威圧をする為に設計させたというのに、このルイ―シャという子供は全く怯んだ様子がない。
部屋に入っても周りを一瞥する事無くひたすらに自分を見続けていた。
この部屋ではなくベンガーナ王である儂を見定めようとするかのように。
無論特使なのだから無遠慮にじろじろと見てくるだけではないが、視線の感じからして間違いはなかろう。その証拠に隣に座っている王后は早くも眉根を寄せて不快感をあらわにしている。
普段から自分が相手を値踏みしていると反対にされた時には敏感に察知するのだろうが、王の后たるものいついかなる時の冷静であり、表情を露にしてはいかんな。
それでは相手の思うつぼ、そう思っていたが!親書を渡され侍従長から受け取った時に自分も絶叫したぞ!なんだこの無礼極まる内容は!
「これは一体どういうつもりだ!!」
儂が怒鳴れば大概のものは青褪め即座に謝罪の意を表すはずが!
「どういうつもりも何も読んでいただいた通りの内容でございますよベンガーナ王。」
小憎らしいほど落ち着いたあの態度はなんだ!
いい年をしたおっさんが顔を赤らめて怒りに耐えているという図はなかなかシュールなものだな。うちの馬鹿官僚共に是非見習わせたい、なにせあいつらは私に対して顔を真っ赤にしながらわめいてくる無能ものばかりだからだ。
その点流石に一国のそれも大国を治めている人物は違うといったところだと言いたいが、新書見ただけで私でも分かる表情作ったらアウトだろう。
こっちの策が当たりましたと公言するようなもんだろうにいいのかそれで?
他国の王なのになんで私が心配してやらんばならんのだ?慇懃無礼のこの国の王を。
ベンガーナの王城に着いた時にはびっくりしたよ。アルキード以上の栄えた城下町よりも、絢爛豪華な王城よりも、アルキード国の特使にして正式な次期国王である王太子を出迎えたのがなんと下っ端だったのには流石の騎士団員たちもキレかけた。
ベンガーナが自国馬鹿にして侮っているのを隠す気もないんだから切れるのも無理はない。分からんでもないがとりあえずと立場上騎士団員を止めないわけにもいかない。責任者は自分だ、随員をすら御しきれない無様なアルキード国の王太子なんて不名誉御免だ。何よりアルキード国は話もできない野蛮な国だなんてレッテル貼られて三等国家なんてつけられた日には私がガチギレるな。
誰が止めようが知ったこっちゃない。
神獣モンスターの大進撃してやる。
キングスペーディオの疾風迅雷と皇帝ウィンディオの苛烈な暴風で全エリア攻撃で前線吹っ飛ばして、JESTERで全体デイン攻撃のギガクロスブレイク落として弱ったところをバルボロスの戦慄の咆哮で止めだ。
敵からの攻撃なんて出さす暇もなく圧勝だな。仮に敵の騎士団・兵士たちが全滅しても後方の魔法部隊が無事攻撃してきても幻獣カーバンクルのルビーの光で呪文全部跳ね返す。
魔道アイテムも着々と研究をして、将来はマホカンタ―属性に倍返し属性つけられないかを開発して八割出来ている。
戦場で試したやろうかな。魔王・大魔王だけが敵じゃない。はっきり言えば、私の身内に手を出す奴は全員敵だ。人間だろうが非人間だろうが知ったことではない。
「それでは案内をしろ。」
そんな事を夢想しながらも騎士団全員宥めつつ、案内係に非はないと大人の対応した私は褒められていいと思うぞ。
きちんと右手を胸に当てて王とその伴侶殿に言祝ぎの入った挨拶して、特使の件の口上きちんと述べてやったぞ。
玉座の階段下の左側に立っているのが私と同じ王太子やってるアリストで、右側に立って私の事をじろじろと見ているのがセインか。馬鹿っぽい顔だ、あれで伊達男名乗っているんだから笑える。
おっと新書寄越せと侍従みたいなやつが偉そうに言っていきた。しかも渡す際に金のトレーに乗せなさいとか、完全に見下した物言いしやがったよ。
この爺ぽっくり逝かせちゃ駄目だろか?駄目だろうな。
そんなむかつきはベンガーナ王の怒りマックス茹蛸顔見たから許してやろう。
あの新書の中身は婚約を受ける際の条件だ。
ぶっちゃけベンガーナからは何ももらうつもりはないし要求をするつもりもない。
結納金もいらない、結婚式に掛る諸経費は自国の第二王女ソアラだけではなくベンガーナ国第二王子のセイン王子に掛るものもアルキード国が一部負担をする。
嫁いだ後もソアラにかかる日常経費はもちろんの事、お小遣いも年間ではなく月決めで渡していく。
必要な日常の服から式典・夜会用のドレスも都度アルキード国が用意をする。
面倒はかけない分そちらの面倒もかけてくるな。
経済的にも軍事的にも頼るつもりは一切ないのでこちらからの物質的援助・知的財産援助を一切期待しないのであればソアラと婚約を認めてやる。以上
的な内容をソアラファンの文官達が死に物狂いな形相で、如何に美辞麗句に飾り付けつつも意図を確実に伝える文章をひねり出した新書だ。
もっと分かり易く言えばそっちには何にも期待してねぇ、嫁がせてもソアラの面倒は全てこっちで見てやるから国ぐるみでのお付き合いするつもりないがそれでもいいなら婚約なら許可してやるぜだ。
つまりソアラ出汁にしてアルキード国から何かを引き出そうとしても無駄だぜ。
しかも婚約は認めても結婚許可を出していないところがみそだ。婚約しても破棄する条項も確か盛り込まれていたはずだな。
こんな内容を可能にしたのはアルキード国から自国の第二王女をベンガーナに売り込んだわけではなく、ベンガーナ国側からの申し出だから言いたい放題できたわけだ。
そっちから言ってきたから検討して協議した結果に文句あんなら話をご破算にするだけだ。
幸いうちは小規模国家だから他国の輸入に頼っての生活ではなく、衣食住全て自国で賄えているからできる曲芸だ。
ご破算後に腹を立てたベンガーナが経済制裁しようにも売り買いしているものは全くなく、仮にアルキード国の商人たちが単独でベンガーナとの商人と商売をしているのをふいにされても売り先はカール・ロモス・パプニカと複数のルートを持っているから大丈夫。
他国と交易していないで自国で完結させているから独自色があると言えば聞こえはいいが発展性が全くなく古臭いともいえる。ただ今回に関してはそちらの方が功を奏している。
仮に親書の内容でソアラを嫁にと言われても痛くもかゆくもなく有言実行できる。
うちって本当に庶民を少し豪華にしたような王家だから、毎年国家予算で組んでもらっている王室予算が余ってる。
国庫に返そうとしても組まれた予算が滅茶苦茶になって仕事が増えると言われて二百余年。最初の設定と変えるつもりないと言われているのでたまる一方なので大丈夫。
だからベンガーナは仕返ししようにも経済的には出来ることはなく、とち狂って武力行使してきたら万々歳でさっき考えでいた進撃の神獣モンスター作戦して返りうちにしてやる。
婚約を申し込んでおいて、望んだものが手に入らずご破算になったからといって他国を攻める馬鹿な国はベンガーナであって正義はアルキード国にありだ。
これで国際的な非難も回避しつつ堂々と打ち破れるから是非とち狂ってくれないか。
あ~あ、父王の暴走を止めに行った王太子殿も新書渡されて読んでるうちに似たような茹蛸になってくれたなナイスだ!さあとち狂って暴走するがいい!
父が親書をお読みになりいきなり怒鳴り出したのには驚いた。
父はこれまでどのような局面であっても感情を覗かせることなく淡々とした態度で相手を圧倒し、自分はその姿を見て育ち幼き頃から憧れを抱いてきた。
いつも威風堂々とした父のような王になるのだと。
その父が同じ王太子とは言え子供を相手にするのだと言われた時には胸中に嵐が吹くのを感じた。
たかだがアルキード国のような小国が、大国である我が国と縁続きが出来るという僥倖に際して十歳の子供を寄越すとは。
王をとまでは言わないが宰相かそれに比肩できる身分と経験豊かな官僚をつけて、こちらが指名してやった第二王女自身が婚約と婚礼のを述べに来るのが筋である。
なのになんだこの内容は!こちらからの申し出をまるで迷惑だが話だけは聞いてやるという物言いは!!我が国を蔑ろにするつもりか二等国の分際で!
しかも涼し気にこちらの様子を見ているルイ―シャ王太子は一体何を考えている。
父の威圧を受けているかかわらず涼し気にしているなどあいつには神経というものがないのか!
ドラクエなのに冒険・修行ではなく政治の話しかない。
出てきた神獣モンスターの詳細を知りたい方ははお調べくださいますよう
名前は間違っていないので検索は可能・・多分?