クロノス(ミライドン)「あれ?イマイチ理解できない感じです?」
ベノ「そりゃあな…。もう少しちゃんと説明できねぇか…?その口調とか…」
応接室にてベノは困り果てていた。目の前には変な言葉遣いで意味不明な言葉を喋る少女がボディーランゲージをしながらまたも口を開く
クロノス「ではもう一度説明するお」
ベノ「(だからその意味不明な語尾はなんなんだよ…)」
クロノス「私氏(わたし)はクロノス。クロノ・スージー・ヴィオレッタ。破滅の未来からやってきたんだよね。今からどれくらいかは言えないけど。で私氏の役目はその未来をねじ曲げて破滅回避させること。ここまではおk?」
ベノ「とりあえずは」
クロノス「で、私氏はネゴシーター。できうるなら話し合いで解決し、ダメならぶちころめがっす!ってのがお仕事なんだよ」
ベノ「そのネゴシーターがなんでここに来たんだよ。素直に原因ぶちのめせばいいだろうが」
いい加減面倒くさくなってきたベノは手っ取り早い方法を提案した。しかし返ってきたのは意外な言葉だった
クロノス「え?やっていいの?タイムパラドックスの怖さ、味わってるとは思うんだけど」
ベノ「…!てめぇ…、なんの話をしてやがる」
その瞬間、空気が変わった。てゐ劇の、それも自分達しか知らないはずのことをさも当然のように口にしたからだ。これには動揺よりも背筋が凍るような感覚と共に警戒心が一気に高まる
クロノス「私氏…いや、私ってウソ発見機みたいな機能もあるんだよね。一瞬の心拍の変化とかホントに些細な体の動きとかね…。未来から来たと言ったはずですよ」
警戒してじっと見るベノをよそに横へ移動してくるクロノス。その目付きは先程の作り笑顔と違い、まるで本当に見てきたかのようなすました目をしていた
ベノ「…。いきなり真面目モードかよ。これから先の未来もお見通しってか」
クロノス「もう予想ですけれどね。私がこの時間軸に来た時点で未来は少しずつ変化していってます。そんなゆっくり変化してる時に一気に変えてしまえば…どうなるんでしょうね?」
ベノ「殺気剥き出しでごちゃごちゃるっせぇな、とっとと来るなら来いよ」
打突剣を出現させるとその切っ先をまっすぐクロノスへ向ける。それを見てクロノスは僅かに微笑んだ
クロノス「では小手調べに」
リジェ「なるほど、裏世界にも居場所が無くなった。故にこの場所に身を置いてると言う成や?」
リタ「いい加減疲れきってな、幾千もよく旅して廻れてると私は貴様を少し尊敬したよ」
場所はガラッと変わって三階のサロン。そこでは不老不死四人がお茶会をしながら同窓会と洒落込んでいた
レムニム「あんたはそもそもだらしなさすぎるのよ」
リタ「貴様も後百年生きればわかるさ、結構退屈だぞ」
ラビアン「わかるわぁ。私も五百年ぐらいから毎日ボーッとしてた時あったもの。時間が手持ちぶさたになっちゃうのよね」
リタ「そもそも貴様ら二人はルミナスメイズでぐーたら自由気ままに暮らしてただろ。私のように追われたこともないくせに…」
せいさい「マスター、皆様、お茶のおかわりはいかがですか?」
リタ「すまんなせいさい、いただこう。…なんだ貴様ら、その目は」
三人は信じられないものを見るような目でリタを見ていた。レムニムはドン引き、ラビアンは泣きかけ、リジェはガトーショコラを食べる手が止まっていた
レムニム「あのリタが感謝の言葉を口にするなんて…」
ラビアン「昔はとにかく口が悪いあのリタが…」
リジェ「一生童子でも成長はするのかとしみじみ成や…」
リタ「ほぉーっ?いい度胸だな貴様ら、同窓会ついでにまとめて石ころに変えてやろう、ババアから左に並べ」
その時、窓の外からドカァァン!と轟音が鳴り響く。立ち上がったリタが目をやるとそこではベノとクロノスが戦っていた
ベノ「タイプのハンデあるくせにやるじゃねぇか。目からビーム出た時は驚いたが…手品はそれで終いか?」
クロノス「まさか、そこまで一本芸ではないですよ」
蹴り飛ばされて壁を貫通したクロノスがそう言いながら肩の埃を手で払う。ベノへ歩みを進めてまだ不敵な笑みを浮かべる
ベノ「未来から来たなんて言うんだったら不思議なポッケから秘密の道具でも出して見せろよ。てめぇさっきから本気じゃねぇだろ」
クロノス「あれ?バレてたんですね?」
ベノ「あんまり舐めんなよ。どれくらい先の未来から来たか知らねぇが明らかにパワーセーブしてるのまるわかりだぜ」
クロノス「まさか本気でぶたれたいと?」
ベノ「ぶてるもんならぶってみろよ!」
クロノス「ちなみに二度?お父さんにぶたれたことは?」
ベノ「は、はぁ…?なんだか知らねぇが親父になら死ぬほど殴られたがってそんなんじゃねえ!あぁ…!こいつの問答に付き合ってると調子狂うぜ…」
絶妙に噛み合わない会話に頭を抱えるベノ。変わらずクロノスはニコニコしながら口を開いた
クロノス「せっかくニーズを合わせてあげていますのにね。さてそれはともかく、私は今から高速移動します」
ベノ「わざわざ教えてくれてありがとよ」
ビュンッ!!と風を切る音、そしてガキィン!と固いものがぶつかり合う音が周囲に躍動を彩る。ベノが真っ正面からクロノスの攻撃を弾き返した音だ
クロノス「…!!」
ベノ「速え奴になんでもかんでもアルタイル使うと思ったかよ?未来から来た、わざわざ俺に接触してきた、これだけでもこいつが関係してることが軽く連想できたぜ。そろそろ教えてもらおうか、目的は、なんだ?」
クロノス「…。少し、未来がかわりましたね。合格さんです」
ベノ「はぁ?」
クロノス「改めてお話ししましょうか、1から20くらいまで。そのためにもとある人を連れてきて欲しいのです」
完全に戦闘体勢を解いたクロノス。その顔は先程違って嬉しそうなのに笑っていない
ベノ「おう、連れてきたぞ」
しらみつ「名指しとは…、いったい何が…」
ベノ「知るか、あいつに聞け」
連れてこられたのはしらみつだった。突然のことで自分がなぜ呼ばれたのかわからず困惑している。第二応接室の扉が開くとクロノスがまるでメイドのように深々とお辞儀をしていた
クロノス「お待ちしておりました。こんにちは、ドクターフラッシュ」
しらみつ「…!あなたは何者なんです?その名を知る者は私の知り合いぐらいですが」
ドクターフラッシュ。それは過去にしらみつが呼ばれていた名前だ。今ではその名を知るものは少数に限られる
クロノス「未来から来ました。クロノ・スージー・ヴィオレッタです。別名FS-EX-∞(フラッシュシリーズイクスインフィニティ)…」
しらみつ「!!」
ベノ「!!ってことはお前…!未来のしらみつが…!?」
しらみつ「失礼…。体表はオリハルコンブレイズ…、ガイノイドでありながら動力源を自分で賄っている…。となれば首の後ろも失礼します。…やはり」
手元の機械で分析を始めたしらみつは彼女の首の後ろを見て苦い顔をする
クロノス「未来のあなたが言ってました。「君のことを昔の自分に見せれば必ず首の後ろを見る」と」
ベノ「何があるんだ?」
しらみつ「私の癖ですよ。緊急停止装置と製造番号を背面のどこか、アクセスしやすい場所に配置する。進化水晶機も背面のどこかしらに配置してます」
クロノス「万が一、敵に利用されたり暴走した時の保険として、ですよね?」
その理由まで言われてしらみつは顔に手を被せて溜め息を漏らすと顔をぬぐってメガネをかけ直した
しらみつ「未来の私は我ながら最低ですね…こんなもの隠すこともできるでしょうに…」
クロノス「あえて残したらしいです。それとこれも…」
突如、天井の一部が不思議な感じに変化し、そこから何が静かに舞い降りてきた。それは紛れもなく進化水晶機だ。天井すれすれ、少しの身動ぎで部屋が壊れそうだ
しらみつ「え…!!?どこから出てきたんですか…!?」
クロノス「私の意思で未来から転送してもらえるんです」
ベノ「お前自分がさらっとやべぇこと言ってる自覚あるか?」
クロノス「事実を申し上げているだけです。仕組みは明かせませんがこれらと私は単体でタイムワープできます。ただし他の者は連れていけませんし移動できるのも元の時間とこの時間軸だけです。ドクター曰くもう少し時間があればもっと自由に時間移動が可能、つまりタイムマシンを作れたらしいのですが」
話ながら再び発生させたワープゲートに進化水晶機を通らせて帰すとクロノスは胸に手を当てて少しもの悲しい顔をした。その表情に恐る恐るしらみつは質問をする
しらみつ「もう少しということは未来の私は…」
クロノス「えぇ、生きてますよ」
ベノ「明らか死んでるみたいな言い回しだったじゃねぇか!」
さらっと言われた生存報告にずっこける二人。しかしクロノスは変わらずたんたんと話を進める
クロノス「タイムマシンを作ると今度は自分達が未来を壊しかねない。言っておられましたよ、第二のアルタイルにはしたくないと」
ベノ「!、ってことはやっぱりこいつが未来を壊すってのか…?」
クロノス「いつかはわかりません。ですがアルタイルによってこの世界の時空に修復不可能なヒビが入ります。そのヒビは日に日に世界を蝕み世界を徐々に破壊している。それをずっと解決できないかと奔走していたドクターは私を造り出しました。未来を救うために」
しらみつ「そのためにあなたやこの進化水晶機を現代のパーツや技術のみで製造するとは…」
ベノ「結局だがよ、お前はアルタイルをどうしたいんだ?」
クロノス「どうもしません。それが未来を歪める原因ですが下手を打って事態を混沌にしたくありません。それにアルタイルはあなたのみが使用できるとお聞きしてます。ですから私はあなたへネゴシエーション(交渉)しているのです。未来のために」
ベノ「(あくまでも目的最優先ってか…。とはいえ俺も未来に遺恨は残したくねぇなぁ…)」
頭に浮かんだのは以前未来から現れた自分の娘、ベノフィーユの姿だった。今は覚えがなくとも未来に存在する娘だ、何も思わないはずがない
ベノ「…。わかった。お前を地組へ配属する」
しらみつ「ベノさん!?」
ベノ「仕方ねぇだろ、毒組に置いても。それよかお前の側に置いときゃ何かと便利じゃねぇのか?お前も色々見たいだろ」
しらみつ「確かにそうですが…」
クロノス「一応メンテナンスは未来に戻ってやれますが」
しらみつ「未来の私がですか?」
クロノス「専用ガレージで自動修復です」
しらみつ「先程の進化水晶機もですか?」
クロノス「はい、あれこそインヴェルムサクセサー 2023オーバーショートです」
しらみつ「中身はどうなっています?」
クロノス「座れませんよ。私が…」
リタ「ぼーや!探したぞ!!」
ベノ「取り込み中だ、飴やるから帰れロリババア」
バッコーンとドアを蹴り飛ばして意気揚々笑顔で現れたのはリタだ。お約束のベノからのツッコミも付いてきた
リタ「逸材を見つけたのだぞ!取り込み中だの言ってる場合ではない!」
ベノ「はぁ?ったく…秒で追い返してやるから連れてこい!」
リタ「とのことだ、歓迎されておらんようだぞ?」
リジェ「ならば実力で奪い取るまでと知り奉れ」
ぬっとリタの後ろから現れたリジェは断りも入れず椅子に腰かけるとそのまま机に両足を乗せた
クロノス「!!(知らない…。ドクターから貰ったデータの中には居ない人材…!もしかすると…)」
ベノ「ずいぶん無作法なんだな。それにTPOもわきまえねぇと門前払いだぜ?」
リジェ「てぃーぴーおー…?」
リタ「せいさい」
せいさい「時、場所、場合をさすアルファベットの簡略語です」
クロノス「あの二人そんな意味も知らないとはアホですか…?」
リタ「貴様…初対面にアホとは言ってくれるな」
ベノ「事実だろ」
リジェ「吾はともかくなぜ現代語に精通してる貴様が知らぬ成や」
あっちこっちからツッコミが飛び交う中リジェはため息気味で立ち上がりベノに向かって歩み寄るとお互いの鼻がつきそうな距離で用件を言い放つ
リジェ「リジェーネ・アンティーカ・エスカ・ルラータ。長旅に疲れた。故に腰を下ろさせてもらう」
ベノ「強情にして傲慢たぁ胆がすわってるな。頼む側の態度じゃねぇだろ」
リジェ「リタに聞いた。実力主義が強いと、だからこその態度であるが…?」
お互いにヒリつきだす場、まさに一触即発だ。そこにリタが笑みを浮かべながら提案をした
リタ「試してみてはどうだ?これほどまで自信がある奴も珍しいだろう?」
ベノ「冗談抜かせ!こんな気性難入れれるかよ。勝っても負けても入れるつもりがさらさら起きねぇな」
リジェ「その考え、改めるようにねじ曲げて見せよう」
ベノ「言っても聞かねぇか、ここじゃなく病院で生活させねぇとわかんねぇみてぇだな。着いてこい」
クロノス「ドクター、私ってあれやらなくても良いんですかね?」
しらみつ「配属が決められましたから後日のデータ取りの模擬戦まではやらなくて良いかと思いますよ」
クロノス「それは気が楽ですね(さて…未知の存在、その強さ。見定めさせてもらいましょう…)」
場所はバトルスタジアム。天井が無いダイマックス仕様のスタジアムだ。結構広々としているが今の二人には関係ない
ベノ「来いよ」
打突剣を召喚して構えるベノ。一方のリジェは…
リジェ「剣か…。ならば鏡合わせよう」
ベノと同じ様にどこからともなく自分の身の丈程の両手剣を召喚。それを片手で軽々と持つと瞬間、ベノの真上から剣を振り下ろした!
ベノ「ほお…?」
あまり驚くこともなく太刀筋をかわしていくベノ。ただ受け止めるようなことだけはせず動きを冷静に観察していく
ベノ「(この速さであのデカイ剣を振り回せるか…)」
隙を狙って武器をはたき落とそうと剣で腕を狙うベノ。リジェはそれを見てなお剣を振り下ろす。その剣はベノに当たらなかったもののベノの剣もリジェには届かなかった
リジェ「直前で判断を変えた。良い判断成や」
リジェの腕には丸い楯。ベノが腕を狙ったタイミングで召喚したようでそれを見てベノは瞬時に剣を受け止めるために打突剣を構え直した
ベノ「くそ意地汚ぇ手品だなおい!」
リジェ「勝つために手段は選ばないのはお互い様ではないか?」
ベノ「そうかもな!」
瞬時に消えてリジェの背後から空中かかと落としで強襲するベノ。リジェは勢いのまま地面に刺さった両手剣を手放すと一飛びで大きく距離を離しながら今度は弓を構える。だが狙いすませたその場所にベノはいない
リジェ「瞬時に他の場所に移動している…。否、移動の気配が見られない…だが!」
時を微細に止めながら移動するベノ。時が動くと同時に自分の目の前に矢が飛んできた。流石にヒヤリ汗が頬を伝い再び時を止めるしかない
ベノ「(アルタイルで移動してるのに動きを普通にした瞬間的確に矢を放ってきやがる…バケモンかあいつ…!)」
リジェ「逃げ惑うか、だが音の速さには叶うまいよ」
ベノ「(弓を捨てた…?ん…?アイツってオッドアイだったか…?)」
そこにいたリジェの左目は桃色になっていた。ベノは警戒しながらも時を動かす
リジェ「破滅の糾弾…!ラアアアアアアアアァッッ!!!!」
ベノ「ぐっ!ぐああああああああああ゛っ!!!」
突然の爆音がベノの聴覚を襲った。微かな物音でも察することのできるニドラン系統の癖で警戒する時に聞き耳を立ててしまったがばかりに音の攻撃がクリーンヒットしてしまった。観客席のリタたちでさえ耳を塞いでいるくらいの五月蝿さだ、ベノはキーンという耳鳴りしか聴こえない。たまらず転げ、のたうち回る
ベノ「こな…くそぉぉぉぉっっ!!!!」
だがただで転ぶベノではない。自分を思いっきり殴って気合いを入れると地面を思いっきり抉る勢いで蹴ってリジェへと向かっていく
リジェ「(近づいて来るか、ならば…!)荒八敷茸綱(あらやしき たけつな)の守護霊よ!」
袖から霊符を出すとそれが緑色に変化し光となってリジェに纏われる。そしてリジェの右目が開くとその色も緑色に変化していた
リジェ「菅笠投げ!!」
肥大化した楯を片方投げると地面を切り裂きながらベノへ、それを避けると壁に反射してブーメランのように戻ってきたものをまた避ける。リジェは受け止めると再び楯として腕に装着した
リジェ「そちらの手品はもう使わないのか」
ベノ「なにほざいてんの聴こえねぇよ!!」
一気に距離を詰めたベノの攻撃を楯で防ぐリジェ。かなり硬いのか押しきれず鈍い音で弾かれる
ベノ「っ!!(硬ってぇ…!っていうかなんか舞ってねぇか…!?)」
リジェ「粉塵…暴発!!(ふんじんぼうはつ)」
弾かれた隙に乗じて周囲に振り撒かれる羽毛混じりの粉塵。ベノが離れようとする前にリジェは楯をかち合わせて自分を中心に大爆発を起こす!
ベノ「ぐあっ!!」
衝撃で壁に叩きつけられ声を漏らすベノ。頭を振ってリジェに備える。そのリジェは爆煙の中から無傷の姿を露にした
ベノ「なろぉ…。芸達者じゃねぇか…!」
やっと耳が聴こえてきたベノは歩いてリジェに近づく。リジェは少し切なそうな顔で語り始めた
リジェ「遥か昔、吾に従じた者達がいた。その者達とは寿命で今生の別れをした。だがその者たちは吾にその御霊を、魂を授け、吾の力となってくれた」
ベノ「それがその力の一つってか。何人いるかは知らねぇがやってやろうじゃねぇか」
リジェが不敵に笑うと右目が元の色に戻っていく。続けざまに霊符を取り出すと水色に変化、背中から赤い翼が生え、左目が水色に染まる
リジェ「鏖魔ヶ怒切 月重(おうまがどき つきえ)の守護霊よ。これは追いきれまい!」
翼を広げ、羽を散らしながら飛びかかるリジェ。それをベノは冷静に胸ぐらを掴んで捕まえると先ほどのお返しとばかりに壁へ放り投げた!
ベノ「わりぃな、身内にそういうの居るんだよ!」
しかし激突には至らず壁を蹴った勢いでリジェはまた飛び込んでくる。迎え撃つベノの攻撃を細かい空中機動で避けて空中回し蹴りで攻撃。打突剣で受け止めつつもう片方の腕で殴りかかるがリジェはそれを受け流しつつ今度は縦回転しながら回し蹴り。それも間一髪で避けるベノ。お互いに決定力を入れられないまま距離を離す
ベノ「天月嘩檄斬!!」
リジェ「月か…。ならばこちらは太陽!!朧十六夜…!金烏玉兎!!(おぼろいざよい きんうぎょくと)」
飛ばされてきた天月嘩檄斬を爪による引っ掻きでバラバラにするリジェ。そのまま左目の色が元に戻るとベノに向かいながら霊符を取り出す
リジェ「捕らえた!巨牙転原引轍(きょがてんばら ひきわだち)の守護霊よ!!全裂罷通(ぜんれつまがつ)!!」
右目が紺色にそまりながらベノの胸ぐらを掴んでそのまま地面に引きずり回す。ベノは昏倒しかけながらもなんとか振りほどこうとするがリジェは頃合いを見て手を離し、ベノはそのまま大きく転がる。なんとか立ち上がっては口の中の血反吐をペッと吐き出した
ベノ「…。(さっきから特徴的な動きをする時、奴のどちらかの目が変色してやがる…。おそらくあの霊符によって力を宿し、何かしらの条件か任意で力を解くことができる…。そしてその何かしらはおそらく必殺技…。奴自信長時間別の奴の力を借りることができないかキャパシティがあるってことか…)」
ベノの予想通りリジェの右目からは紺色が抜けていた。だがまだ確信には至らない
ベノ「(これもおそらく…。奴は今使っていた力を再度使うには時間を要するはずだ…。そのための体力管理も考慮するならそんなにバカスカできねぇだろ…普通ならだが…)」
リジェ「言葉を失うほど余裕が失われたか」
ベノ「遊園地みたいな奴だなって思ってたんだよ(後何種類か、初見の攻撃をどうにかするよりぶっ倒す方が早えよな…!)」
攻守交代と飛び出すベノ。リジェは地面に突き刺さったままだった両手剣を引き抜いてベノに備える
ベノ「(やっぱそう構えるよな…)」
先程と同じ構え、先ほどは突如召喚された楯に邪魔されてしまった
ベノ「(ってことはこうすりゃ…!)」
まるでリプレイのように先程と同じ動きになる二人。厳密には少し違った。それは先程よりリジェが早めに両手剣を振り下ろしたことだった。これではベノには当たらない
ベノ「貰った!!」
それを予想していたベノは素早く回り込んでビリビリと何かが裂ける音を響かせる
リジェ「ぬ…」
ベノ「まだやるか?」
地面に散らばったのは大量の霊符。そしてポトリとリジェの巫女服の袖が落ちた
リジェ「ほう。吾の御霊宿しを封じただけで勝てると?」
ベノ「長期戦に持ち込まれると困るのはてめぇだろ」
リジェ「…!」
ベノ「全部使うまでやってやろうか?俺がつっ立ってるか、てめぇが膝付くか、試してやっても良いんだぜ?」
リジェ「吾の御霊宿しの弱点がそれと?」
ベノ「本当に全部全力で使えるならもうやってんだろ。一つ一つ出してるってことは別の奴と併用できず、尚且つ時限式ってことだ。ましてや他の奴に肉体を明け渡す都合上精神面も大なり小なり磨り減ってるはずだろ。俺の見立てでは少なくとも今さっき使った能力は宿せないかさっきほどの力では扱えないはずだ」
リジェ「正直に言えば半分正解半分的外れ成や。他の御霊と併用できないのは正解、時限式は的外れ、精神等微塵も磨り減っていない、そして連続では同程度の力で振るえぬは正解。初見でそこまで見るとは大した観察眼成や」
ベノ「相手の強味や弱味を観察するのは癖みたいなもんでな。てめぇは御霊宿しとやらを封じれば地力では俺とどっこいぐらいだ。その地面の札、拾えるもんなら拾ってみろよ、かがんだ瞬間その顔面ぶん殴ってやるからよ」
地面の札を見ているのか前髪で目が隠れるリジェ、その口元は徐々に口角が上がり、笑い始めた
リジェ「ふっ…ははははは!!ずいぶんと自力を軽く見られていたのだな!…、あまり霊符を汚したくもない、となれば今回はこれを最後の一撃としようか」
胸当ての中からごそごそと一枚の霊符を取り出してニヤリと笑うリジェ。ベノは嫌な顔をしながら舌打ちをする
ベノ「便利なポケットじゃねぇか…」
リジェ「乙女の特権、奥の手成や」
リタ「ババアが乙女を自称するか」
リジェ「外野の胸無し童子が何かほざいておる成や」
リタ「は?」
ベノ「最後の一発ってんなら付き合ってやる。来いよ…!」
リジェ「ふっ…。嘘は言わん。事実これを使えば吾はその日の力をほとんど使い果たすだろう」
リタ「…。おいぼーや!本気でやれ。あれの言ってることは事実だ」
ベノ「てめぇのお墨付きとはな」
軽い返事に反した力の高まり。ベノは打突剣の刀身にエネルギーを溜めていく
リジェ「…。ゆくぞ…!本宮寺屍桜(ほんぐうじ しかばねざくら)の守護霊よ!!力を貸したもれ…!」
ぶわっ!と舞い上がる無数のさくらの花びらの形をしたエネルギー。それまで片手で持っていた剣を両手で持って大きく振りかざす。瞳を閉じて集中。開いた眼は桜色に染まっていた
リジェ「破邪剣聖!桜華崩神!!!(はじゃけんせい おうかほうしん)」
たった一太刀。その桜色の剣撃がまっすぐベノへ向かっていく!ベノも渾身の力を込めて技を返す!
ベノ「天月…嘩檄斬っつ!!」
ほぼ同じ形の光の刃が激しくぶつかり合う!!わずかに拮抗したように見えたがすぐに破邪剣聖桜華崩神が上回ってきた!
ベノ「1日一発は伊達じゃねぇってか…!」
打突剣を放り投げてすぐに破滅の十字架のセットアップに入るベノ。予想通り天月嘩檄斬では抑えられず四散したところに破滅の十字架が蹴り混まれた!!譲らない二つは攻撃の衝撃波で空間が軽く捻れたように見えるほどの衝撃が二人を襲う
ベノ「こいつ…!こっちフルパワーじゃないにせよマジかよ…」
リジェ「驚いた、まさか拮抗するとは…」
クロノス「まずいですね…」
しらみつ「同じことを考えましたか、あまりにも互角すぎてどっちの力も分散されていませんね。このままぶつかり合えばこの場が消滅するでしょう」
クロノス「いえ、それだけではありません。時空が歪んでいます。あれを放置すると別の世界や過去未来と必要ないトンネルができてしまいます。それだけは未然に防がないと…!ドクター、力を貸してください」
しらみつ「わかりました。私はどうすればいいですか?」
クロノス「とびきり強い必殺技ぶちこめる人!連れてきてください!」
ベノ「お前っ…!クロノス!なにするつもりだ!?」
スタジアムに跳んできたクロノスはぶつかり合う技二つを睨み付けるとベノの方へ顔を向けた
クロノス「このぶつかり合う不安定なエネルギーを止めます。そのために…!クロノス!ショータイム!!」
虹色の時空間が出現しその中から現れるインヴェルムサクセサー 2023オーバーショート。それに続いてポケモンの形をしたマシンが複数出現した
クロノス「フラッシュフォゥメイション!!」
蒸気を噴出しながらコックピットのある部分を見せるオーバーショート。そこには窪みしかなくそこへ変形したクロノスがはめ込まれて合体。続いて複数のポケモンマシンが周囲を巡回してエネルギーの渦の中で姿を変形える
クロノス「コネクトミッション!!ランブリング!ガンローゼン!エレキボーグ!アイスコール!トライバース!レポイゾン!」
まず下半身がぐるりと回転したオーバーショートの脚部にランブリングと呼ばれた物体が変形合体して脚に、続いてガンローゼンとエレキボーグが変形、合体して胴体に、最後にアイスコールとトライバースが変形合体して腕となってレポイゾンが変形して背部へドッキング。オーバーショートの頭頂部にロボットの頭部のようなものが隆起した。どことなくミライドンを思わせる造形だ。約一分の合体だがこのエネルギーの渦の中では時空が歪んでいるのかほんの数秒でその姿を露にした
クロノス「グレェェェットッ!クロノス!!」
高さ25mほどのロボットに合体したクロノス。その名をグレートクロノスという。グレートクロノスはぶつかり合う二つの力をそっと包み込むように一部を除いてバリアを展開。そこへしらみつが現れた
しらみつ「連れてきましたよ!くぃーんさん!お願いします!!」
くぃーん「許可が出るとは嬉しいな…!サイコノヴァッ!!」
ぶつかり合う狭間へ放たれるさらに強大な一撃。そしてとくぃーんはサイコノヴァが混じったそれとグレートクロノスを遥か上空、大気圏付近に一瞬でテレポートさせた。宇宙空間で背後からの光を浴びて、今にも大爆発しそうなそれを狙いを定める
クロノス「大丈夫…。これは未来を紡ぐための破壊の力…神にも悪魔にも未来を壊させないための…!!」
オーバーショートの正面の装飾がスライド変形。熱を帯びながらプラズマがバチバチと発生する
クロノス「拮抗が崩れたこの不安定な力を大爆発前に臨界させるっ!エレクトロンッ…!ブラスタァァァァッーーー!!!」
赤いプラズマ光線が胸のオーバーショートから勢い良く照射!軽々と大爆発寸前のそれを覆い、滅却せんとする!
クロノス「リミッター解除!フルパワー!」
完全に覆われた瞬間。赤いプラズマの中で爆発が食いつくされるように融解。照射を終えた瞬間まるで焼いた餅のように膨れ上がったエネルギーが爆発した。地上からでも視認できるほど大きな爆発を間近で受けたグレートクロノスは微動だにしていなかった
クロノス「ドクター…」
遥か未来…
未来のしらみつ「以上が過去で起こりえることです。それを阻止するためにもアルタイルをどうにかしなければ行けません。ベノさん自身も気づいていたのでしょうかあれはまだ私たちには速すぎた代物です。よって最悪の場合グレートクロノスごと封印してください」
クロノス「その…、ドクター…」
未来のしらみつ「なんでしょう?」
クロノス「それはつまり過去を変えることですよね…?過去が変わってドクターが消滅してしまう。そんな可能性は無いでしょうか?」
未来のしらみつ「可能性はあるとは思っています。少なくとも私は最悪自分自身が消滅するだろうと考えています。現代のためとはいえ時間に干渉してしまってますからね、世界がそれを許してくれることはないでしょう」
クロノス「何かしら世界を保つためにそう言った現象が起こると…?」
未来のしらみつ「ですが安心してください。クロノスさんはどうあがいても消滅しませんよ。他でもないあなたの理由はそのボディにあります。あなたのその体は私の進化水晶機、銀色蛍を分解して製作しています。銀色蛍は過去にある進化水晶機ですのであなたは未来が変わっても消滅しません」
クロノス「…ドクター」
未来のしらみつ「どうしました…?」
クロノス「ドクターは自分が消えることが怖くないのですか…?私は嫌です、ドクターと会えなくなるなんて…!」
目をおどおどさせて不安になるクロノス。そこにしらみつはしわ枯れた手で頭を撫で、肩に手を置いた
未来のしらみつ「大丈夫です。これはお別れではありませんよ、今の私、過去の私。この架け橋の上にあなたはいるのです。あなたが繋げてくれたならもしかしたら私も未来に残れるかもしれません。未来は誰にもわからないのです。それを破滅に導くか、平和へ導くか、それはあなたに今委ねられました。クロノスさん。あなたが私達の新しい未来を創るのです。私はあなたならより良い未来へ行けることを信じていますよ」
クロノス「ドクター…私は必ずやりとげて見せます。それが未来への交渉者(ネゴシエーター)たる私の成すべきことなのですから…!」
地上へ落下しながら各パーツが分離して虹色のゲートを通って帰って行く。最後にオーバーショートから射出されたクロノスは元の姿に戻り、静かにベノたちの元に降り立った
クロノス「私の名前はクロノ・スージー・ヴィオレッタ。この先にある破滅の未来を変えるためのネゴシエーター」
ベノ「…」
胸元から取り出したアルタイルを見つめるベノ。それをクロノスに黙って差し出す
クロノス「それはあなたが持つべきものです」
ベノ「こいつが破滅の未来って奴の原因なんだろ?」
クロノス「えぇ、ですがそれを防ぐのもアルタイルの役目です。もしも本当にどうにもこうにもならなくなった時…」
アルタイルを持つベノの手を強く握りしめるクロノス。微かに震えているようにもベノは感じた
クロノス「私がアルタイルを、あなたから奪い取ってでも封印します」
ベノ「未来から注意勧告、しっかりと受け取ったぜ」
クロノスが手を離すとベノはアルタイルを胸に仕舞うと…
ベノ「ふんっ!!」
リジェ「ぬ゛っ!」
ベノ「合格祝いだ、てめぇは俺の組で面倒見てやる。明日に備えて覚悟してろよ」
リジェの顔面に一発ストレートパンチをぶちこむとベノはスタスタと屋内に戻っていった
リタ「良かったじゃないか、元無職」
リジェ「黙りたもれ、くっ…」
リタ「貴様、不老不死だからと相変わらずその技を何度も使っているな、昔与えてやった忠告を忘れたのか?」
リジェ「忘れてなど無い。この技は…奴の…」
クロノス「大丈夫ですか?ふらついてますよ?」
リジェ「あ、あぁ…あの技は少し疲労が伴うなりや…少しすれば…」
「 み 」 つ 「 け た 」
リジェ「…!!」
次回予告
ただいな「皆さんこんばんは、ただいなです。新しく入ってきたお二人、リジェさんとクロノスさんとの親睦会でリジェさんと私が成り行きで模擬戦をすることに…。ベノさんと引き分けた相手なのに私に勝てるのでしょうか…。いえ、最初から諦めては行けませんね、きっと父上もそう言うでしょう。いざ、尋常に勝負です!次回、†MULTIPLE AIGIS†第十二話、屍桜。その太刀筋…、あ、あなたはいったい…」
お疲れ様でした。そして見てくださりありがとうございました。現在ありとあらゆる創作意欲、モチベーションが完全に死んでおります。Xでいいねを押すだけのマシーンになっています。文章もまる一年半ぐらい手付かずでこれと前話で年跨いでいますね。今回ハッキリ申し上げると個人的な義を通すために無理やり体に命令して書かせました。これ以降本当に何もできない、次回予告は書いたものの書けるかわかりません。私の心の中の創作という炎は最初はとても大きなものでした。ですが時が立つにつれて、その炎は火になりました。どれだけ薪をくべても、どれだけ風を送ってもその火は炎にはなりませんでした。いつしか私の心境に曇りが出始めました、「止めてしまえばいい」「どうせ誰も見ていない」「誰にも刺さらない」「つまらない」「時間の無駄」 それらは雨風となり私の残り火を消し去りに来ました。私は身を呈してそんなことはない、やめたくない、刺さらなくてもいい、つまらなくてもいい、ただ私の物語を、キャラクターたちに命を吹き込みたいだけなんだ でももう疲れたんです。だってそこにあったはずの残り火はもう灰と炭になっていたんですから
私はなんのためにこれをやっていたんだろう。それがもうわからないのです。私はもう立ち上がれない。私はあなたたちが知っているようなヒーローでもなんでもないただの凡人だ。私はヒーローには、ウルトラマンのようにはなれない。あなたのようには、なれない
長々とここまで見ているあなたは物好きですね、そんなあなたに教えてあげましょう。ここが諦め腐った凡人のお墓ですと