ベノ「…。…。っはぁ…今何時だ?」
いつもはかけない眼精疲労を抑えるメガネを取って時計を見る。現在深夜三時。とっくに全員寝静まっている
ベノ「あ゛ー…。眠ぃ、だがこれを終わらさねぇと寝れねぇよなぁ」
チラリと見る資料の山は多くもないが少なくもない。とても一人でやるにはキツイ量だ。
ベノ「…。コーヒーでも入れるか…」
ポリポリと頭を掻いて部屋を出る。多人数生活の都合上、消灯時間が過ぎてから緊急時以外に灯りは付けられない。手元のランプだけが頼りだった
ベノ「…ったく…あんの穀潰しが…。仕事増やしやがって」
愚痴を言いながら歩くベノは眠気から不機嫌だ、そうこうしてる間にキッチンに差し掛かった
ベノ「?なんだ…?」
種族柄耳がいいベノはキッチンを素通りしてとある場所へ向かった。そこは彼らのシンボルでもある劇場だ
ベノ「だーれだっと…」
劇場の真ん中に立っていたのはカオティクスだった
カティ「夢は…夢のままで良いはずがない!叶えたあとも夢の続きを支えてくれる。叶えたら終わりじゃない!なにもしないのが夢なんかじゃない!!」
ベノ「そんなことは世迷い言だよ。夢なんて叶わないし見続けるものだよ。現に君は夢を叶えたのかい?」
カティ「それはっ…」
ベノ「こんな夢の中から出ることもできないまま、君は口だけが達者なんだね」
カティ「出る方法が分かればすぐにだって出てやる!」
ベノ「本当かな?現実の君がどんな状態かも知らずに?」
カティ「何を言って…」
ベノ「君の体は壊れかけてる。壊れた肉体から抜けた魂に、夢は叶わない。思いすら届かない。君はもう、ここから出られない…」
カティ「…。お付き合い、ありがとうございます。相変わらずですね、台本無しで台詞が出てくるのは」
ベノ「どうってことねぇよ、眠気覚ましにゃコーヒーより効いたぜ」
カティ「お互い眠れないんですね。僕は久しぶりの主役公演で…。」
ベノ「俺は下の不始末をお片付けってやつだ、かったるいぜ」
カティ「お疲れ様です」
ベノ「誤射で要人殺す護衛が普通いるかよ?もう我慢ならなくてよ、島流しだ」
カティ「先日言ってたダークネスポケモンの件ですか?」
ベノ「弾除けぐらいにゃなるだろ、表は任せて裏っ側の処理しなきゃな」
カティ「気は進みませんがこれも平和のためですしね…。人の命より世界の平和。ゲームの主人公なら失格ですよね」
ベノ「正解は一つじゃねぇよ。俺達ゃ神様じゃねぇ。救いたくても救えないもんもありゃとどかねぇ思いもあるってな」
立ち上がると目付きを変えてカティに振り向く
ベノ「今回のダークネスポケモン関連。全部計画されたものだと言うのがシャーヴァルたちの予想だ。となれば邪魔な俺達は狙われる可能性が高い。じゅうぶんに気を付けろよ」
カティ「はい…!」
数時間後…
ベノ「よし、リハーサル終わったな」
ラグナ「いい感じじゃねぇか?」
ベノ「おう。って言いたいが今のリハーサルでちょいと大道具のペンキが剥げちまった、しかもちょうど切らしたか…」
カティ「それなら僕が飛んで買ってきます。他の色は必要ですか?」
ベノ「悪いな、あればでいいんだが…。このメモの奴買ってきてくれ」
カティ「わかりました、行ってきます」
らんまる「すまない。てっきり予備があったはずと勘違いしていた…」
タマズサ「しゃーないって、案外どっかに隠れたんやって、そのうち見つかるえ。でもおかしいなぁ、確かにあったやろ?」
ベノ「あ?使いきったんじゃねぇのか?」
タマズサ「予備買ってあったえ?」
ベノ「うし、公演までちょいと探すぞ。モギリ担当はそろそろ準備しておけよ、その他最終点検!」
カティ「よし、必要な色はこれで全部ですね」
???「あ、カオティクスさん!」
カティ「あぁ、あやはるさん。お久しぶりですね」
あやはる「はい、何ヵ月ぶりでしょうか?こうして以前のように一つの地方に集まるはホウエン以来だと聞いてますが」
カティ「そうですね、どうでした?確かイッシュ地方のマリアナメトロポリスでしたっけ…?」
あやはる「はい…。友達が出来たんです。とてもかけがえない…。」
そう言いながら後ろで手を握り合うあやはる。笑顔から少し離れた顔にカティも少し察する
カティ「思い続ければ友達というのは永遠ですよ。今は遠く離れていても、互いの思いはつねに隣り合わせですからね」
あやはる「…やっぱり皆さんいい人ばかりですね、かけてくれる言葉が人間よりも多彩で、気丈で、強い…」
カティ「僕だけでは今のような台詞は言えませんでしたよ、あやはるさんにもいつかわかる日が来ます。今はそこへ歩んでる最中なんです。だから歩き疲れたら皆と歩いてください、皆、仲間と並走することを望んでます」
あやはる「はいっ!ところで文具屋さんに…ペンキですか?」
カティ「えぇ、舞台で使う道具の塗装が取れてしまって、っと…もうこんな時間ですか、ごめんなさい!劇が始まりますからこれで!」
時計を見るとカティは羽根を羽ばたかせてすごい勢いで飛んでいった…
あやはる「ほへー…。すごい速度…って私も早くしなきゃ!」
カティ「戻りました!」
ベノ「お疲れさん。あったか?」
カティ「はい!これを!」
ベノ「よし、お前は着替えてこい。もうすぐ入場が始まる。客が入ってからじゃドタバタできねぇぞ!」
カティ「はい!」
ベノ「…。相変わらず急いでるときはとことん猪突猛進なのな」
ヴィー!ヴィー!
ベノ「っ!?このタイミングでか…!」
ラグナ「ベノ!街中で火災発生!私服警備によると不審な集団がいるらしい!」
しゅヴぁる「ブザーは止めたが…どうする?集団なら早めに手を打たないとやっかいだぞ」
ベノ「…劇を止めるわけにゃいかねぇ。ここは最寄りに救援要請を送る。さて…やるぞ、笑顔の守りかたは一つじゃねぇだろ」
ルークス《皆様、ご安心ください。先程のブザーは誤りです。席を立たず、騒がず、落ち着いてお座りください。まもなく開演いたします。》
???「ほぅ、連絡を受けて来てみれば随分季節外れな花火大会だな。どれ…。人間と擬人化もいるのか、顔や声を隠していようと体臭が異なる」
人混みの外。マントをたなびかせ、火災現場から遠退く不審な影を見る紅い左目。ダークブルーのミディアムヘアーが歩みと共に揺れる
まお「まぁ安心するがよい。我の前で悪行を行えばそれは等しく罰するのみ。なにせ…ふふっ…我は…、魔王なのだからな!」
不適な笑みを浮かべて路地裏へとまおは消えていった…。途中肩のアーマーを壁にぶつけ、擦りながら
カティ「ここは…ここはどこ…?」
せいさい「ふふふっ」
カティ「誰っ!?どこにいるの!?」
せいさい「こっちだよ…こっち」
カティ「真っ暗なのにこっちだなんて…めちゃくちゃだよ!」
せいさい「君が願うならどんな夢も現実になる!ここは君の心の夢だもの!」
カティ「ここは…ぼくの心が見ている夢…?」
せいさい「そうだよ!だからあまーいお菓子だって!最新のゲームだって!そして…無くしたものもあるんだよ!」
カティ「そんなことあるわけ…」
せいさい「君の心の夢はどんなものなの?私に見せて?」
カティ「ぼくの…夢は…ここでは現実にならないよ、叶わない」
せいさい「叶わなくてもいいじゃない!現実になるなら!」
カティ「自分の名前も言わない他人のことなんか信じられない。もし本当に現実になるなら君の名前をぼくの心に刻み込んでみてよ」
せいさい「いいよ?君の心に教えてあげる。そして言ってみて?私の名前」
カティ「…リム。君の名前はリムだね?」
せいさい「うん!大正解!さぁ!もっと願って?次は何を願うの?」
ベノ「よし、連絡によるとまおが交戦してくれてらぁ。ありがたいことにアイツには珍しく隠密追跡してるらしい」
エクレール「あのクソデカショルダーと服装でよく隠密なんか出来てますねぇ…感心しますよ。まおさんとつけられてる奴等の鈍感さに」
ベノ「あっちは任せてこっちはこっちで備えるぞ。タイミングからして俺達にちょっかいのつもりでボヤ騒ぎ起こした可能性が高い」
らんまる「こちらにも火の手が迫ってもおかしくはない。ということか」
ベノ「そういうことだ。っとそろそろだな。暗転」
まお「…。あそこは工場…?何かやましいものでもしまってあるのか」
こっそりと忍び寄るまお。その服装や身形に似合わずかなり隠密性が高い動きをしている。そして慎重に中の様子を伺う。
まお「どれ…。ほぉーう?中々どうして、やる気らしいな?」
ベノ「まおからか。どうした?」
まお「ベノよ、連中は面白いオモチャを隠し持っていたぞ。巨大鎧機(ジーアーマード)だ」
ベノ「巨大鎧機か…。まさか実際に完成したとはな…」
らんまる「隊長。巨大鎧機とは?」
ベノ「巨大鎧機は簡単に言えば巨大なパワードスーツだ。馬力だって俺達生身なんざ一捻りできる。裏世界の情報屋からそんな物騒なもん作ってる奴等がいるとは聞いてたが…」
まお「そのために"アレ"を作ったのだろう?今こそお披露目時だとは思うが?」
ベノ「…よし。まお!こっちまで戻ってこい。試運転に俺とお前だけで迎え撃つ!」
まお「うむ。では先に準備をしていてくれ。念のため地組へ連絡を入れておこう」
カティ「夢は…夢のままで良いはずがない!叶えたあとも夢の続きを支えてくれる。叶えたら終わりじゃない!なにもしないのが夢なんかじゃない!!」
せいさい「そんなことは世迷い言だよ。夢なんて叶わないし見続けるものだよ。現に君は夢を叶えたのかい?」
カティ「それはっ…」
せいさい「こんな夢の中から出ることもできないまま、君は口だけが達者なんだね」
カティ「出る方法が分かればすぐにだって出てやる!」
せいさい「本当かな?現実の君がどんな状態かも知らずに?」
カティ「何を言って…」
せいさい「君の体は壊れかけてる。壊れた肉体から抜けた魂に、夢は叶わない。思いすら届かない。君はもう、ここから出られない…。羽をむしられた鳥のように、静かに散るのさ…。」
カティ「できるさ…!鳥は、空を飛ぶんだ。僕は翼を願う!ここから出るための!夢から覚めるための!そして!自分と向き合うための!」
せいさい「飛べない鳥に価値なんか無い。君は飛べやしない!」
カティ「確かに飛べない鳥に翼は不要かもしれない。それでも!飛ぼうとする意思までは奪えやしない!ここがぼくの夢で!心で!願いが叶うならば!ぼくはここから!飛び立つ!!」
ベノ「しらみつ!到着したか!」
しらみつ「はい!点検も済ませました!ベノさんとまおさんだけなら行けます!」
通信越しからしらみつが何か機械を調整しながら話す。すぐに通信は終わり、ベノが廊下を走っていると途中、別の廊下からまおと合流した
まお「ベノ!連中が巨大鎧機を動かして暴れだした!数は8機!」
ベノ「お前ら、後は任せた。いくぞまお!」
通信で待機しているメンバーにメッセージを送ると廊下の突き当たりにある絵が動き、その後ろにある穴にベノたちは飛び入った!
中で滑りながら衣服が全く違う服へと着替えられる。それは白兵戦はもちろん。これから彼らがやることにとても重要な意味のある服だった。
着替えが終わると彼らの絵が描かれた額縁付きの絵が傾いてベノ達が降り立つ。そして走る先には何か巨大鎧機のようなものがあり、二人はそれに搭乗した。
気合いを入れ、戦闘服の各所にチューブが取り付けられる。そして内部にあるスイッチを手動で切り替え、各種手順を終えるとそれはモノアイを赤く光らせ、蒸気を噴出しながら起動を始めた
ベノ「起動完了した!そっちは!」
まお「こちらもだ、射出準備もな!」
彼らの乗ったそれはリフトと共に移動。足を固定し、レールに沿って加速を付けて勢いよく外へ射出した!!
ベノ「てゐ国歌劇団!出撃!!」
火の手が回り、巨大鎧機が横暴する街。そんな奴等の前に二つの機体が高らかに空から立ちはだかった!!
まお「楯武 魔皇!!(じゃんぬ まおう)」
ベノ「覇桜華扇 天月!!(はおうかせん あまつき)」
まお「この世の平静を乱す悪よ!我らが来たからにはもう悪行もこれまでだ!!」
ベノ「どこで好き勝手暴れてやがるかたっぷりと教習してやらぁ!!覚悟しな!!」
拍手鳴り響く劇場に幕が降り、舞台「心の夢」は終演となった。そしてすぐさまメンバーは切り替えていつもの服装へと着替え、外で戦うベノたちをサポートすべく動き出す!
カティ「ぼくとせいさいさんでロビーのお客さんを誘導します!」
ルークス「それじゃあ私たちは地組と一緒に外の避難を手伝うわ!」
カティ「おねがいします!せいさいさん!行きましょう!」
せいさい「了解いたしました」
ベノ「おらよっ!これで三体!そっちは!?」
まお「ふんっ!こちらはすでに殲滅した。残るはその一機のみ!」
ベノ「っ!気を付けろ!敵性反応!真後ろだ!」
???「わかりました!」
ベノ「その声…!」
ベノ達が振り向いた直後、こちらに向かっていた巨大鎧機の内、先頭にいた二機が爆発!その前にいたのは…!
アデア「ベノさん!まおさん!」
まお「アデア!しかしその機体はまだ整備中ではなかったか!?」
アデア「えぇ!ですがしらみつさんが急ピッチで仕上げてくれました!!なんとか稼働します!大丈夫です!」
ガシャン!
音をたてて弾切れしたレールガンを捨てると丸腰で敵と対峙するアデアの機体へベノは覇桜華扇の刀を投げた!
ベノ「これ使え!」
アデア「ありがとうございます!インヴェルム・サクセサー ガーディアンアイギス!!行きます!」
ベノ「負けてらんねぇな!いくぜまお!アデアに続け!!」
まお「愚問よ!」
足裏のキャタピラで高速移動する三機。その速度や機動力には多少、差があるようだった
アデア「でりゃぁっ!!はああっ!!」
向かってくる巨大鎧機をすれ違いに切り、倒していくアデア。いつもは逆刃刀である鏡月だが急だったため。このガーディアンアイギスには現在、別機である覇桜華扇のデフォルト装備である刀を借りて装備している。だがそれでもこれだけの動きができるのはアデアの刀を使う腕前が素晴らしいからである
アデア「流石しらみつさんです!本当にオーダーメイド機なんですね。生身の時と変わらない動きやすさですよ!」
しらみつ「えぇ。そのおかげでまだ未完成が多いですが基本的には皆さんに三機から選んでもらい。コックピットや操縦桿。そこから性能やパーツまで。正直骨は折れますしアデアさんの機体の装備も完成していないのが申し訳ないですが現状です…。」
アデア「ですけどこれだけカスタマイズが自由なら機体の性能と僕たちの個性を引き出すには充分すぎます!頼もしい限りです!」
まお「ふっ。インヴェルム・サクセサーは速度に優れた機体。アデアとの相性は良好のようだな。そしてそれは我も同じ!楯武よ!」
巨大鎧機からの銃器攻撃を一斉に受け、白煙に包まれる魔皇。煙が晴れた時…。そこには堂々と仁王立ちをする魔皇がいた。その姿を見た敵は動揺していた
まお「手緩い!手緩いぞ!その程度の豆鉄砲ではこの魔皇に修理の一つも頼めぬではないか!貴様らの勇気は愚勇よ…!勇者ですらない!!ふふふははははは!!居ねぇい!!」
ハンマーの一撃が地を割り、巨大鎧機を大きく吹き飛ばし、壁へ打ち付けていく。そして落ちてきた所をまおはトドメの一撃を入れていった!
まお「我はまおう!まおうKであるぞ!!ひれ伏せ!!」
ベノ「前置きなんざぁねぇ!!死にてぇ奴から手前に来い!!」
背中から粒子を吹き出しながら覇桜華扇 天月はその手に持った打突剣で敵を粉砕していく。叩き壊し、コックピットに風穴を開け、剣先で細部も攻める!とにかく相手より攻める!この覇桜華扇は攻撃に特化した機体。他より多少脆いが早い話やられる前に徹底的にやればいいのだ。
そうこう言ってる間にベノはあっという間に敵を殲滅。レーダーやメインカメラで敵機を確認する
ベノ「ざっとこんなもんかよ。お前ら、首尾はどうだ?」
まお「敵性反応皆無と言ったところだな。乗り心地も思っていたより中々良好ではないか」
アデア「ですがまだ試作段階ですから粗は目立ちますね。それに進化水晶の調整もまだでしょう」
ベノ「よっしゃ。ともかくちょっと出てこい」
アデア「なんでしょう?」
まお「久しぶりにあれがやりたいのだろう?」
アデア「あっ、あれですか!」
ベノ「いくぜ?せーの…。勝利のポーズ!決めっ!!」
次回予告
まお「まおうKである。本名などではないがな。さて、一段落付いた我らだがすぐに問題が起こるのも我らだ。取って些細な事にも関わらず我が地組と兎組が意地を張り合い。結果として模擬戦で決着を付けると言い出した。もはや止めるのもバカらしくなった我とアデアはその結果を見届けることに…。まったく!仲間同士で争いなど下らん…!次回!†MULTIPLE AIGIS†!第三話。意地とプライド。争いは同じレベルの者でしか発生しない愚かな行為だ」
お疲れ様でした。