地獄の渡り鳥、再び   作:ヒトアマゾン

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前編「斗いは出会いの後で」

夕焼けが街を照らし、人々が一日の反省と明日への期待や不安を抱えている頃、街の悪が一人の人生を狂わせようとしていた。

 

 

-都内某所、路地裏-

 

 

女性「や、やめてくださいっ!」

 

怪しい店の若者「大丈夫、慣れれば楽だから、ね? 一回来てみなよ…」

 

女性「嫌だと何度も言ってます…だから…やめてください!」

 

女性から発せられた、か細い叫びは都会の喧騒によって無情にも掻き消されてしまった。

 

女性は若者によって無理矢理、店の中に引き摺り込まれそうになっていた。

 

怪しい店の若者「ほらっ! 早く入って! 」

 

女性「いやぁ…いやぁぁ!」

 

怪しい店の若者「だからぁ、叫んでも無駄だって言って…ん?」

 

路地裏に、ギターの音色が鳴り響いた。

 

怪しい店の若者「誰だ…出て来いっ!」

 

その一言が発せられると、黒いウェスタンルックに身を包み、ギターを弾いた一人の男が路地の角から現れた。

 

?「俺かい? 俺はアンタの様な悪ーい奴に、人生を狂わされた男さ。 だからな、アンタの様な奴が大嫌いなのさ…」

 

怪しい店の若者「チッ…五月蝿ぇんだよぉ、クソジジイがよぉ!」

 

激昂した若者は女性を乱暴に突き飛ばし、謎の男に殴りかかった。

 

…が、その一撃は軽くいなされ、逆に謎の男は若者の鳩尾をギターで突いた。

 

若者は呻きながら地に崩れ落ちた。

 

女性「ぇ……あ、ありがとう…ございます。」

 

?「いやぁ… お怪我は?」

 

女性「ちょっと、掴まれた所が痛みますが…大したことありません。」

 

?「そうですか、それは良かった… 暗い路地裏は危険だから、直ぐにここから出た方が良い。それじゃ…」

 

女性「あの!」

 

?「ん、どうかしましたか?」

 

その場から立ち去ろうとする謎の男を、女性は引き留めた。

 

女性「お名前だけでも、教えて頂けませんか?」

 

?「俺かい? そうだな…“早川 健”とでも言っておきましょう…お嬢さんの名前は?」

 

女性「す、すみません! 名前を聞いておいて、自分だけ名乗らないのは失礼ですよね…“東条 結衣”といいます。」

 

早川「東条…?(まさか…東条とれい子さんの!?)」

 

結衣「あの…どうかなされました?」

 

早川「もしかして、君のお父さんは刑事さんじゃないのかい?」

 

結衣は、目を見開いて驚いてみせた。

 

結衣「今は定年退職していて、保護司の仕事をしていますが…父のお知り合いですか?」

 

早川「まぁ…な、昔々の話さ。俺と東条は、大きな悪と斗っていた…俺の親友だ。」

 

結衣「あなたが…何時も父が話しています。昔、早川という何でも日本一の男と一緒に大きな組織と戦った…って!」

 

早川「そうか…東条がそんな事を。 家はこの辺りなのか?」

 

結衣「ここから徒歩10分位です。 今日は近道をしようとしたら…」

 

早川「…家まで送ろう。 これからもっと暗くなる。」

 

結衣「そうですね…お願いします。」

 

 

-同時刻、ジャパリパーク・キョウシュウチホー火山付近-

 

 

夕方になり、閉園時間を迎えたジャパリパーク。 来園者達は名残惜しそうに動物やフレンズ達に別れを告げ、家路についていた。 そんなパークの一角、本来なら関係者以外立ち入り禁止のエリアに、怪しい者達が拠点を構えていた。

 

 

黒い服の男「武器の調達、完了しました。」

 

スーツの男「そうか。 全く…此処のセキュリティは堅すぎる。 一々武器を分解して運ばなければならない。」

 

黒い服の男「これで、注文した武器や用具が揃いました。」

 

スーツの男「これで、これでやっと計画を始められる。我が組織を再建する為の予算を…」

 

スーツの男は、息を殺しながら笑い続けた。 その笑顔からは、残忍な様子が伺えた。

 

 

-東条宅-

 

 

結衣「お父さん、お母さん、ただいま!」

 

進吾「お帰り、結衣。 遅かったじゃないか。」

 

玄関から見えるドアから、一人の男性が出てきた。

 

結衣「お客さんを連れてきたの…!」

 

れい子「えぇ、お客様!? お部屋綺麗にしなきゃ!」

 

結衣「入ってきていいよ、早川さん!」

 

進吾&れい子「「早川!?」さん!?」

 

玄関の結衣の後ろから、帽子を指で押し上げながら早川が現れた。

 

早川「よぉ、東条。 久し振りだな。」

 

慎吾「早川…早川じゃないか!」

 

東条 進吾は、涙を堪えながら早川の名を呼んだ。

 

れい子「早川さぁん! お久し振りです!」

 

結衣「えっ、お母さんとも知り合いなの!?」

 

早川「昔、色々とあってな。 幸せそうだな、お二人さん♪」

 

れい子「どうぞどうぞ、上がって下さいな!」

 

早川「いや、迷惑じゃないかい?」

 

進吾「いいんだ早川。俺もお前と話がしたくてな。」

 

結衣「そうだよ早川さん、お礼させてよ!」

 

早川「そうかい? なら、お言葉に甘えて…」

 

早川は、東条一家に歓迎されながら家の中に入っていった。

 

そこで夕飯を共に食べ、今日何があったか、そして昔の想い出を語り合っていた。

 

その日は、早川は東条宅に泊まらせてもらえる事になった。

 

 

-ふたば幼稚園跡-

 

 

かつては子ども達で賑わっていた幼稚園も、老朽化の影響で安全性が疑われ、今では取り壊し作業が行われていた。 夕方になり、作業の続きは次の日に行われる。 取り壊された幼稚園を、物悲しそうに見つめる女性がいた。

 

女性「まだかしら…あと20分で来るって言ってたけど。あれから30分近く経ってるじゃない。」

 

その女性に、手を振りながら駆け寄って行く男性の姿があった。

 

男性「おーい! 遅れてごめん!」

 

女性「もぉ…遅いよ、オサム君!」

 

女性の所まで辿り着いたオサムと呼ばれる男性は、肩で呼吸をしながら謝る仕草をしてみせた。

 

オサム「ごめんごめん、みどりさん。あ、これ、“ジャパリパーク”のチケット! 二人分当たったから、みどりさんと行きたいと思ってさ!」

 

みどり「良く当たったわね。 本当なら、早川さんとも行きたかったけどね…」

 

オサム「そうだね…けど、早川さんとは連絡が取れないんだよ。」

 

みどり「早川さん…今はどうしてるのかしら。」

 

オサム「きっと、今も流離ってるんでしょ。憧れるなぁ…」

 

 

-深夜、東条宅-

 

 

結衣とれい子が先に眠りにつき、リビングでは早川と進吾が缶ビールを飲みながら話をしていた。

 

進吾「早川、今も旅をしているのか?」

 

早川「まぁ、そんな所だ。 あの時の様な…」

 

進吾「…流石、日本一の私立探偵だ。もう情報を掴んでいたとは…」

 

早川「そこん所も、俺は日本一さ。…まさか、ダッカーの残党が動き始めるとは…」

 

進吾「…早川。 今回ばかりは警察に任せてくれないか。 今の俺は、もう刑事じゃないが…それでも、警察を信じてくれないか。」

 

早川「任せても良いかもしれない…が、やっぱり…俺の手でケリを。」

 

進吾「止めても…無駄か。 だが、無理はするなよ。 お前とて年は取るからな。」

 

早川「分かってるって。…で、確か奴らが目を付けたのは…」

 

進吾「少し前にオープンした、“ジャパリパーク”という施設だ。」

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