「提督、今までありがとうね」
「あぁ、お前も……内地で元気でな」
「えぇ」
舞鶴鎮守府、その執務室にて二人の男女が向かい合っていた。三十代後半と思われる男性と、今年で二十六歳になる駆逐艦(仮)霞、その人である。
長い銀髪を一つに縛り後ろで括ったポニーテール。昔は提督の胸程の身長だったそれも、今では頭半分程度に収まっている。
そして今日、この日――彼女が【艦娘本土防衛協定】にて結んだ契約期間、その最終日であった。本日を以って駆逐艦霞は艦娘としての任務を終え、ただの一般人として内地に戻る。
長い間苦楽を共にし、歩んできた二人は暫くの間じっと互いを見つめ合っていた。
「それじゃあ、さようなら」
「……おう」
霞は素っ気なくそう告げ、提督は後頭部を掻きながら頷く。別れは既に済ませてある、昨日の夜、遅くまで送別会を開いた。酒も浴びる程呑んだし、涙も流した。霞は大きなキャリーバッグを引いて執務室を後にし、提督はその背を見送った。
ばたん、と。
扉が閉まり、霞の背中が見えなくなる。
「―――さて、と」
そして廊下へと進んだ霞は目を伏せ――それから鋭い視線で周囲を見渡した。
「…………」
廊下には誰も居ない。それを確認し、霞は執務室の直ぐ脇で壁に背を凭れる。時計に目を落とし、じっと時を待つ。十秒、二十秒、三十秒、四十秒――そして二分が経過した頃。
ごとん、と。部屋の中で何か大きな物が倒れる音がした。
「―――」
霞はそれを見逃さない。足音を殺しそっと執務室の扉を開け、中を覗き込む。するとそこには床に倒れ伏し、書類をぶちまけた提督の姿が。霞は再度周囲を見渡し、誰も居ない事を確認して執務室の中に踏み込む。
「眠った……わよね」
呟き、恐る恐る近付く。倒れ伏した提督の傍に屈みまず瞼に手を当て、それから鼻に指を翳した。
「眼球運動、呼吸、弛緩具合、えぇ、効いているわ、十二分に」
頷く。量は少し多めにしていたが、やはり耐性があったのか効き目は遅かった。しかし、確かに目的は果たした。霞は持ってきたキャリーバッグを提督の傍に寝かせ、素早く散らかった書類を纏め机に戻す。
「昼食から少し時間が掛かったけれど、想定の範囲内ね」
一度傍を離れて扉の隙間から念入りに廊下を見渡す。人通り確認、なし。行くなら今しかない。霞は持ち込んだバンドで提督を素早く拘束。目隠しに防音イヤーマフを被せる。提督が起きる気配はない。寝かせたキャリーバッグを開く。霞の体格と比較して大きく感じるソレ、中身は空。提督は私物を沢山詰め込んだものと考えていただろう。しかし違う――人間ひとりを詰め込める大きさにしたのは、この為だ。
「ごめんなさい提督、少し窮屈かもしれないけれど、我慢してね」
霞は一言謝罪し、提督をキャリーバッグの中に詰め込む。膝を折りたたみ、赤子の様にすれば何とか詰め込むことが出来た。一応痛くない様に緩衝材も出来る限り備え付けてある。霞は提督の入ったキャリーバッグを立たせ、そのまま何事もなかったかのように執務室を後にした。
そして建物の外に出ると、駐車場の方へと速足で向かう。途中、駐車場に駐屯する守衛と会い、霞はそれとなく手を挙げた。守衛の方も相手が霞だと分かると朗らかに笑い、手を挙げる。
「あぁ、霞さん、今出立ですか?」
「えぇ、少し前に提督への挨拶も終えたから、今から車に向かうところよ」
「そうでしたか……長い間、お疲れ様でした」
「ありがとう、後は頼んだわよ」
「えぇ、お任せを」
霞は微笑みを浮かべながら歩く。霞の車は駐車場の端に止めてあった。何の変哲もない乗用車。四人乗りで、大した特徴もない。霞は後部座席の扉を開けると、其処にキャリーバッグを丁寧に乗せた。丁度前座席と後部先の間に、挟み込む形で。滑ったりしない様に位置を調整し、そのまま運転席に乗り込みエンジンを掛けて外へ。駐車場を出る時、守衛が帽子を取って頭を下げた。霞も小さく頭を下げ、そのまま公道へ。
少し走って、ふとバックミラーに目を向けた。
そこには血走った目で、口元を歪めた自分の顔が見えた。
「へっ………へへへッ………」
にやけ顔が止まらない。震えた笑い声が、止まらない。
「へへへ、えへへへへへへッ……!」
もう十分離れただろう。だから、まぁ、問題ない筈だ。ハンドルを持つ手が震える。しかし走行は安定したものだった。何せ一番大変だった部分をやり遂げたのだ。後はボーナスステージ、否、【ヤる】だけだ。
「し、仕方ないわ、そ、そう……こ、これは仕方ない事なのよ」
霞は喉を震わせながら汗を流す自身の額を拭う。これは恐怖と、興奮と、幸福によるものだ。
やった、やってしまった、自分はトンデモナイ事をしようとしている。その自覚がある。
けれどもう止まらない、止められない、止まりたくない。霞は指先でハンドルをこつこつと叩きながら、言い訳の様に口を尖らせた。
「だって、だってこうでもしなきゃ? わ、
汗が凄い、額から頬から流れるソレを乱雑に拭う。そして自身の不安と興奮を少しでも和らげる為に、自分に向けた言い訳を次々と口にした。
「そ、それに? ほら、何だかんだ言っても提督も私の事、き……嫌いではなかっただろうし? 実質和姦、そうこれはもう合法ックスよ、そうに違いないわ、えぇ、間違いない――えっへ、へへへッ!」
笑い、自分にそう言い聞かせる。そして暫く公道を走り続け三十分程――目的地へと到着。
車を駐車場に止め、後部座席からキャリーバッグを下ろす。場所は十年間以上貯めた給与で買った一軒家。庭付き駐車場付き、命がけの職場であった為給与は良かった、終戦直後は人が戻って来るだろうと、数年前から契約して購入したものだ。ローンもない、二階建ての白い家。何度か下見に来ては掃除もしてある。霞はポケットに入れていた鍵を取り出し玄関の扉を開く。キィ、と軋んだ扉が開くと塗料の匂いがした。余り頻繁に顔を出していなかったからだろう、人の生活している気配はない。キャリーバッグを引いて中へ。靴を脱ぎ、キャリーバッグはそのまま中へと運ぶ。そして家の奥、物置用のクローゼット――その床にある四角形の扉。
分かりにくい場所にある扉は地下室へと繋がっている。元々避難場所として設計されたものだ、非常食に簡素な寝具、そして上にモノを置いてしまえば入口の発見すら困難。霞は自身の口もとがにやけるのを自覚した。扉を持ち上げ、下へと降りる急こう配の階段を一段一段、ゆっくりと下る。
「っしょ……うん、しょ」
十数段の階段を下りた先に地下室はあった。大きさは畳八畳ほど。壁際には保存食や水、そして端っこに二人は寝ることが出来そうなパイプベッドがある。霞はベッドの近くまでキャリーバッグを運ぶと、ゆっくりとその口を開いた。
「……大丈夫、まだ、寝てる」
一応振動にも気を付けたつもりだ。乱雑に扱っていなかった為か、提督は未だ意識を取り戻していない。霞は苦労してベッドの上に提督を寝かせると、首と腕を回して緊張を解した。
「ふぅ……」
手足の拘束は外した。視覚、聴覚は封じ、口も塞いである。後は服を脱がして、ベッドに縛り付けるだけ。そこまで考え、霞は思わず生唾を飲み込んだ。そして恐る恐る、提督の衣服に手を伸ばす。
「あぁー……、あぁぁぁぁー……!」
妙な声を漏らす。まずは上着、ボタンをはずして上着を退かし、シャツ姿となった提督の裾を捲ると、素晴らしい肉体が顔を覗かせた。軍人らしい鍛えられた肉体だ。心なしか香ばしい匂いもする。霞は必死に自身の理性と戦いながらシャツを脱がせた。
「駄目、駄目よ提督、誘っているの? 誘っているのね! いけない! 私を誘惑するなんて、いけない提督! ハレンチ、ハレンチな提督!」
でも手は止まらない。片手で脱がせつつ、もう片方の手でこれでもかと言う程腹筋と胸襟を撫でまわす。
「ふーッ、ふっ……ふぅッ!」
そして数分の格闘の末、上半身を裸にする事に成功した。持ち込んでいたロープで両腕をベッドに縛り付け、下半身の方に目を向ける。
下半身――ズボンと、パンツである。想像し、プッと思わず鼻血が噴き出した。霞はそれをワイルドに拭い、震える指先をズボンに向ける。
「ず、ズボン、そうね、ズボンだけ、ね……!」
恐る恐るベルトを外して、ゆっくりと――ゆっくりとズボンを下ろす。すると視界にボクサーパンツが見えて、その下にお山が。お山が。
「あーッ、困りますくそ提督! アーッ、クソ提督困ります! あーッ、くそ提督! あーッ!」
気付けばパンツに頬ずりしながら叫んでいた。意識を取り戻した時は既に遅し、なにやら素晴らしい香りが鼻腔を擽り、そのまま飛びつきたくなる。しかし、駄目だ、まだ駄目だ。霞は理性を総動員して意識を繋いだ。
「ッ! 駄目よ霞! しっかりしなさいッ!」
慌てて離れ、荒い息を繰り返す。中途半端に脱がされたズボン。そしてそのまた座に見えるお山様。霞はぐっと己の唇を噛んだ。
「あ、危なかった……全くクソ提督ったらインキュバスね……! この私を誘惑して操るなんて、本当に変態なんだから……ッ!」
霞は戦慄する。あれはきっと全自動艦娘ホイホイか何かに違いない。
今度は深呼吸を繰り返し、幾分か心を落ち着けさせズボンを脱がしにかかる。そしてなるべくお山を見ない様にしながら提督の両足を拘束した。
「ま、まぁでも? この霞さん(26歳)に掛かれば? この程度? 全然? これっぽちも効かないんですけれどね? もうっ、全ッ然? これっぽっちも?」
拘束しながらそんな強がりを口にし、提督のパンツ越しに山を撫でる。見ない様にと言いながらチラチラ見ていたし、もうどうにもならない。そして自然、そんな急に撫でつけなんてすれば。
「あっ、あーっ、あっ……わぁーっ……」
当然の如く大きくなった。
下着を押し上げ、隆起する物体。それを霞はわなわなと震えながら見つめていた。
「ち、ちんちん(ボソッ)」
霞の頬が赤く染まる。何かもうイッっちゃてるとしか言えない表情で指先を伸ばし、両手で提督の下着を掴んだ。無意識の行動だった。
「て、提督の……提督の、ちん……」
ごくりと、唾を呑んだ。早鐘を打つ心臓、もう、ここまで来たのだ。
退くという選択肢は――ない。
「や、ヤるしかないわ……ヤるのよ、霞……!」
覚悟は決まった。血走り、危ない覚悟を決めた瞳で山を射抜き、霞は気負い良く提督の下着を脱が
(省略されました。全てを読むにはワッフルワッフルと叫んで下さい)
わっふるわっふる。