貌無し騎士は日本を守りたい!   作:幕霧 映(マクギリス・バエル)

1 / 47
改稿が、大方完了致しました。
待ってくれてた人が居たらありがとうございます。
以前との変更点としては、

・ 『天使の聖骸布』戦闘シーンの大幅強化
・不評だった10話以降の展開が完全に新しく
・ 新ドミネーターのエピソード追加
・一話から最新話まで、文体や描写の推敲
などとなります。
他に訂正した方が良い要素があれば、感想までお願いします。


1.終わりの光景

ーー太陽が堕ちてきた、とでも形容すべきだろうか。

 

天を焼き尽くし、ビル群を呑み込み、終いには大地さえ熔解させる。

さながら『星が星を喰っている』様な光景を、彼はただ見ている事しか出来なかった。

 

「……また、か」

 

ーー熱い、熱い、熱い

 

巨大な瓦礫がハウスダストみたくパラパラと舞い、人々の命を刈り取っていく。

彼もその例に漏れず、熱さを感じた次の瞬間、目の前に灰色のアスファルトが広がった。

 

ばちゃり、と。

 

命の弾ける音が近くで聞こえる。

 

彼の意識は、闇に包まれた。

 

■□■

 

世界、述べ一億人が犠牲となった同時多発隕石災害。

その日を境、世界各国に『ドミネーター』と呼ばれる怪物達が降り立った。

 

奴らは互いに殺しあい、その遺骸を喰らう。

そしてその“ドミネーター“は強化されるのだ

そして最後まで生き残った制圧者及び制圧地帯が、この星の覇権を握る、と。

 

アメリカのワシントンDCには、“空を覆う赤色の大樹“が。

中国の北京には、“液体状の炎“が。

イギリスのロンドンには、“災禍の星“が。

韓国のソウルには、“抉る幽霊“が

ロシアのモスクワには“荒ぶる剣神“が

 

……そして、日本にはーー

 

(どうしてこうなった……!?)

 

ーー何かの間違いで『ドミネーター』の仲間入りをしてしまったこの俺。“無貌の騎士“が、君臨している。

 

■Before

 

「ッ、ァ……?」

 

目を開くと、何故か若干狭くなった視界に光が流れ込んでくる。

上体を起こし辺りを見回すと、正に阿鼻叫喚という有り様で、人々の悲鳴と慟哭が崩れた文明の中で響き渡っていた。

……何が、起こったんだ?

 

「た、す、けて……っ!」

 

俺が頭を抱えていると、どこからか助けを求める声が聞こえた。

かなり切羽詰まっている声色だ。

……助けに行った方が、良いよな。

 

試しに手をグーパーしてみると、力はちゃんと入る。むしろ入りすぎるぐらい。

足に力を込めると、ちゃんと立ち上がれた。

目線がかなり高い気がするが、多分混乱してるだけだろう。

 

悲鳴の主は、意外とすぐに見つかった。

女の子が、倒壊したコンクリートの下敷きになっていたのだ。

顔から血の気が引くのを感じる。早く助けなければ。

俺はそこに駆け寄り、瓦礫に手を掛ける。

そしてーー

 

「ぐぉぉぉ!」

 

ーー彼女を安心させるために『大丈夫ですか!?』と言おうとしたら、獣みたいな呻き声が出た。

 

「きゃぁぁぁっ!?」

 

瓦礫の下にいる女の子が、俺を見て悲鳴をあげる。

まるでジャミラに苦戦していたらゼットンが来た。みたいな顔をしている。

とにかく絶望がより深くなったのは間違いない。

な、なんでだ!?俺ってそんなにグロメンなの!?

マジで傷付くんですけど!死にかけてるんだから、普通どんな奴が来ても喜ぶよね!?

 

「な、何ですか貴方!コスプレイヤーか何かですか!?」

「ぐおっ!(違うよ!)」

「日本語しゃべって下さいよぉぉぉ!」

 

現在進行形で瓦礫に潰されてるのに元気だなこの子。

と言うか、なんで喋れないんだ俺。

どれだけ頑張っても『ぐお!』とかしか出ない。

国語の成績は低かったが、言語能力はマトモだった筈だ。少なくともさっきまでは。

 

「た、助けてくれるんですか?」

 

瓦礫に手を掛けた俺を見てか、恐る恐る、という感じで少女は言った。

ああそうだ。早く助けなきゃ。

……と言っても、これ撤去できるのか……?

一人の人間の動かせるサイズじゃないだろ……

そう思いながらも、瓦礫を握る指に力を籠める。

 

「ぐおっ!?」

 

ーーすると、パキ、と音を立てて、握っていた場所が俺の指の形に抉れた。

まるで、千切られたみたいに。

なんだ……?ここだけ脆くなってたのか?

 

「あの、無理なんですよね!?できれば私のお墓は海の見える丘の上に……うわぁぁぁん!やっぱり死にたくないよぉぉぉ!」

 

死に対する恐怖で頭がおかしくなったのか、少女が叫び出す。

こ、こうなったらヤケクソだ!全力で押してみて駄目だったら大人しく他の人を連れてこよう!

そう決意し、俺は助走を付けて瓦礫に突進した。

 

「ひゃぁぁぁっ!?」

 

ーー瞬間、耳元で何かの砕け散る音が聞こえた。

何事かと思い後ろを見ると、そこには驚く先程の少女と、バラバラになった瓦礫の残骸が散乱している。

 

「……ぐぉ?(……へ?)」

 

俺のタックルで、コンクリートブロックが砕けた?

……いやいやいや!?どうなってんだよ!?

思わず頭を抱えていると、後ろから男の声が聞こえる。

 

「ちょっと君。そんな格好で何してるの?」

「ぐおお……?」

 

ーー振り向くと、自衛隊らしき迷彩柄の男が訝し気な目で俺を見ていた。

……あっ、そっか……そりゃ災害なんだから、救助とかに来るよね。

自衛隊ってほんとに有能だな。こんな早くに来てくれるなんて。

俺も助けてもらおう!

 

「ぐぉ、ぐおぉ、ぐおっ!(なんか、目が覚めたら喋れなくて困ってたんですよ!いやー!良かった!自衛隊さんが来てくれたなら安心ですよ!ほんと!)」

「とりあえず。手錠させてもらうよ。」

 

カチャリ、と。

手首に銀色のワッパが嵌められた。

へー、手錠、手錠ね……はいはい……

 

「ぐぉっ!?(ヘアッ!?)」

「お兄さん多分、クスリとかやってるよね?それにそんな……騎士みたいな格好、どう見てもヤバイ人だよ」

 

き、し……?あの、『騎士』か?

誰が、俺が?

 

「あ、あのっ!待ってください!その人は私を助けてくれたんです!変な格好ですけど、多分、きっと、恐らく、悪い人じゃないです!」

 

人生初めての手錠に俺が唖然としていると、先程の少女が自衛隊へ向かってそう叫んだ。

いや、『多分きっと恐らく』の三段活用って……そんなに自信無いの……?

 

「じゃあ、輸送車に行こうか」

「ぐぉ……(ハイ……)」

 

自衛隊の人に引っ張られ、俺は近くに停めてある車の方に歩いていく。

……はあ。どうなるんだろ俺……状況が全く分かんないし。

そもそも俺が騎士ってどう言う事だ?

輸送車のドアが開き、俺は車内に無理やり入れられた。

 

「あれ、先輩どうしたんですか……ってなんですかその人!?」

「ああ。なんか、不審者っぽい。手錠はしてあるから、お前が見張っといてくれ。」

「ちょっ、せんぱっ……ああもう!いっつもあの人面倒ごとばっかり押し付けるんだから……それに何の権限も無く手錠はマズイですよ!?」

 

俺を車に押し込んだ自衛官は、そそくさとどこかへ行ってしまった。

車内に残されたのは、俺ともう一人の自衛官のみ。

場を、静寂が支配した。

 

「……あのー。先輩がすいません。なんかしちゃったんですか? それにその服装?カッコいいですね!」

 

気まずさに耐えかねたのか、自衛官が振り向いて俺に話題を振ってきた。

黒髪青目の幼げな女性で、外国人とのハーフなのかもしれない。色白で結構可愛い。

……いや、それは良いとして。仮にも自衛官が不審者と世間話しようとすんなよ。

そもそも俺、なぜか今喋れないし。

……紙とかあれば、意思疏通はできるのかな……

 

「ぐお、ぐおぉ(紙と、ペンって無いですか?)」

 

俺は身ぶり手振りで、『紙』と『ペン』をジェスチャーしてみる。

 

「えっ……食パンと、ウィンナーですか?そう言えば今日お昼ご飯食べてないな……」

 

違う違う!なんで食い物と結び付けんだよ!

 

「ぐおぉぉ……」

「あ、すいません電話来たので後にして貰っても良いですか?」

 

女自衛官は、携帯を耳に当て、その向こう側にいる誰かと会話を始めてしまった。

あぁ……ほんとにどうしよう……

 

「……え?ドイツが消滅?怪物によって?あははは!え、ちょっと、冗談きついですよー!あははは…………え、マジですか?……なんですかドミネーターって。」

 

なんか前の方から凄い会話が聞こえてきている気がするが、今はそんな場合じゃない。

これから自分がどうなるかを考えなければ。

 

「現場に変な怪物みたいなの居なかったかって? 私の後ろに、騎士っぽい鎧着た変な人居ますけど……捕まえちゃいましたよ。……へ? それが、日本のドミネーターだって? うぇ、ちよっ、切らないでっ!」

 

ブツリ、と音を鳴らした携帯を座席に置き、女自衛官が、ギギギと効果音が付きそうなぐらいの速度でこちらに振り向いた。

物凄い形相で、冷や汗をダラダラかいている。

 

「ぐぉ?」

「あ、ぁ、あの。ぅあ、っ、えぇ、と、てててて、てじょー、はずしししししっ!」

「ぐぉぉ!?」

 

テンパり過ぎて、女自衛官は舌が回らなくなってしまった。

小刻みに振動しながら、『てててててっ』と言っている

ど、どうしたんだ!?怖いぞ!?

 

「ぐおっ!(深呼吸、深呼吸!)」

「ぇ、あっ、あ、ありがとう、ございます?」

 

肩に手を乗せてあげると、少し落ち着いたのか振動は止まった。

よ、良かった。人間が高速でバイブレーションする光景は、中々ショッキングなものがあったからな。

 

「あ、あの。私の事、殺すんですか?」

「ぐお!?(は!?)」

 

いやいやいやいや!殺すってなに!?俺、虫さえ潰さずに窓から逃がす派の人だよ!?

つか誰を殺すの!?この人を!?なんで!?

 

「ぐおおん!(殺さないからね!?)」

「あっ……殺さないんですね。なんとなく何言ってるか分かるようになってきました……」

 

ほっとしたのか、『はぁぁぁ……!』と溜め息をついて女自衛官はへにゃへにゃと座席からずり落ちた。

俺が大丈夫かと聞こうとすると、窓が外からドンドン叩かれる。

窓ガラスの向こうには、若い男がいた。

 

「無事か!?結城二士!」

 

何事かと思いながらも、俺は窓を開ける。

 

「ぐぉぉ!?(なんですか!?)」

「うわぁぁぁ!化物ぉぉぉ!」

「ぐぉっ!?(なんでさ!?)」

 

俺の顔を見た自衛隊員は、泡を吹いて倒れてしまう。

車の周りはかなりの数の自衛隊員が包囲しており、臨戦態勢、という感じだった。

 

「ぐぉぉ……(俺が何をしたって言うんだよ……)」

 

ーー誰か助けてくれ。いやマジで。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。