貌無し騎士は日本を守りたい!   作:幕霧 映(マクギリス・バエル)

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18.最果てにて、魔王は嗤う

「……知っていたさ。こうなる事は」

 

南スーダン。荒れ果てた荒野の中心で、魔王は立ち尽くしていた。

その体は痩せさばらえており、彼を慕う国民は最早一人も居ない。

全員が既に死んでいた。……否、『元に戻った』と言うべきか。

 

「もっと、力が要る……ドミネーターの核を喰らわねば、国民を維持できない……」

 

地に槍を突き立て、魔王は座り込む。

彼の持つ力ーーいや、槍の力は『概念の破壊』。

それにより彼は国民の"命"を破壊した。

"命"を持つ限り、餓えや恐怖からは逃れられないからである。

『最果ての魔王』は、命が消え失せ抜け殻となった肉体を眷族に変え、偽りの生を与えていたに過ぎない。

それさえ、力の枯渇により不可能になったが。

 

……南スーダンの人口は、一千万人。

彼は、その全員に自らの加護を与えていたのだ。

負担は尋常ではない。なにせ国一つ分の命を維持するのだから。

そのような神の如き所業、一個のドミネーターに過ぎぬ魔王では到底不可能だった。

 

「私は、必ず君たちを……」

 

横たえる子供の頬を撫でながら、うわ言のように魔王は呟く。

先日まで生きているように見えた南スーダンの民は、全て死体。

動いて、笑って、幸せで、感情がある、死体。

……今はただ腐りゆくだけの、魔王にとって大切な大切な家族。

それは、今の自分では絶対に取り戻せない存在。

そう。現在の、"八つしかドミネーターの核を喰らっていない"自分では、到底救えない存在。

 

「……ノンシェイプ・ナイト」

 

魔王はぼそりと、とある制圧者の名前を呟いた。

それは、言葉を解する稀有なドミネーターの名。

自分が唯一、おおよそ全ての能力を把握している、ドミネーター。

 

「……すまない。友よ」

 

ーー誰も殺したくはない。

ーー誰も失いたくはない。

ーー誰も悲しませたくはない。

 

……だが。

 

「私は、君を……!」

 

ーー彼なら、狩れる。

魔王はそう確信していた。

ノンシェイプ・ナイトと自分の能力は極めて相性が良いのだ。

正面からなら恐らく完封、悪くても腕の一本や二本で済む。と。

 

「ーー全ての力を以て、君を殺す」

 

ノンシェイプ・ナイトは強力だ。

あの核を喰らえば、きっと国民を救える。

そして日本は滅びて一億人以上が、死ぬ。

十の他人を殺し一の家族を生かす。魔王はそれを選んだ。

……時間が、無い。

死体が腐れば、加護を与えたところでまともな思考能力は持てないのだ。

そうなってしまえば、魔王の家族は本当の意味で『ただの死体』に成り果ててしまうのだ。

 

「……騎士と魔王の決闘、といこうかな」

 

魔王が虚空へ槍を薙げば、そこの空間が『裂けた。』

空間の狭間、その中に魔王は消えた。

 

 

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