ラスボスが鎮守府にいるんだが倒せない   作:リバプールおじさん

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台風19号で被害に遭われた方の復興をこの場を借りてお願い申し上げます。


第三話

 

 

川内「ねえ」

「はいはい」

川内「夜戦しない?」

「やです」

 

彼は即答してゴロン、と執務室の床に寝っ転がる。彼は基本執務室で寝泊まりしている。本人曰く時々来る海軍の人を揶揄うため、だそう。

 

確かにコイツは喋る。本当によく喋る。そして煽る。ため込んでいたものを吐き出すかのように。本人は楽しげだが。

 

そして彼は何と眠らない。夜中ずっとゴロゴロと執務室で転がりながら何かをいじっている。でも基本的には無音だから夜戦に誘おうと思っていたのだけど。

 

 

「やです。お帰りください」

「なんでさ!何もしてないじゃんか!夜中暇なんでしょ!ずっと起きてるじゃん!」

「何でお前がここの様子知ってんだよ怖いよ!夜中はお前らに撃たれないから安心できんのさ。早く帰ってくれや」

 

やはりどんな索敵と回避と運が高くても何処からでも狙われる、と言う状況は恐怖でしかないらしい。

 

川内「ねえ!いーじゃん!装備つけないから!鬼ごっこだけでいいから、ね?」

「マジ?」

川内「マジだよ、だからさ、夜戦しよ?」

 

 

 

 

川内「それじゃー夜戦鬼ごっこ行ってみよー!」

「結局来ちゃった...」

川内「じゃあルールは簡単!私が逃げるからエンちゃんはこの探照灯で私を照らしてね」

「はいはい。分かったよ」

川内「じゃあ制限時間3分ね。スタート!」

 

そう言うが早いが闇に沈んだ海を疾走する。

夜は好きだ。慌てたのか彼が探照灯をあちこちに照らすのがわかる。

これだから、鬼ごっこはやめられない。

 

 

「よっしゃ勝ったああああああ!」

川内「全然だめじゃん!勝てないって!」

「俺のステータス見たでしょ?索敵カンスト済みだよ?ラスボスなんだよ?補正かかるでしょ」

川内「むう...火力無いくせに...」

「合計値はとんでもない事になってるのでセーフ。どうする?もう一回戦やる?目も慣れてきたし」

川内「えーやだ。どうせやられるし」

「アンタ自分で誘ったんじゃ無いのか....じゃあ帰るか」

 

そう言って僅かな光が灯す鎮守府に帰ろうとする。

だが少し、聞きたいことがあった。

 

川内「ねえエンちゃん」

「はいはい?」

川内「エンちゃんはさ、海の上走れるじゃん?なのに何で砂浜に打ち上がってたの?」

「んー、何でだろうね?ま、魚だって打ち上がるしそんな感じでしょ。早く帰ろ。...あ」

 

彼の声に振り返ると、向こう側に影が見えた。

今日は新月だが、これでもかと言うほどに強調される巨腕。軽巡ツ級。

 

川内「しまったあ!私何も装備持ってないよエンちゃん何とかしてよ!」

 

装備を何も持ってきていない。私なんて装備がなければただの海の上を歩ける一般人だ。

鎮守府まで走っても間に合わない。捕まるし、逃げ切れても確実に鎮守府に被害が出る。

だからヤケクソで彼に助けを求めたのだが。

 

「あ、いいすよ。早く走っていっちゃいなよ」

川内「え」

「いやだからいいって。早く逃げとけよ。私歌って踊れて走れるラスボスさんだぞ?」

 

そう言って私の背中をグイグイと鎮守府へと押し出す。

 

川内「本当?いや死なないんだろうけど鎮守府に被害は出さないでね!?」

 

そう言って鎮守府へと全力で走り始めた。

 

 

_______

 

 

 

速イ。ナンダコイツ!?

 

艦隊カラ逸レテシマイ、サマヨッタアゲク敵ノネジロヲ見ツケ、試シニ攻撃ヲシカケタラ艦娘デモナイ男二邪魔サレタ。速イ。攻撃シテモ全ク当タラナイ。

ソンナ、バカナ。

 

ツ級「ワタシハ、ツキュウダゾ!?」

「ちょっと自分語りさせてよ。...僕ァ戦う人ってのが好きだ。スポーツ選手もそうだしゲームのキャラクターもいい。艦娘なんて最高だな。そう言う面ではお前らも好きなんだよ、同胞。でもな」

ツ級「何ヲ言ッテイル!」

「モブは嫌いなんだな」

 

言ウガ速イガ奴ハ自分ノ顔ヲ手デ鷲掴ミニシタ。

 

ツ級「何ヲ?」

 

 

暗転。

 

 

_______

 

報告書

 

◾️月◾️◾️日 

 

佐原鎮守府近海にて、当該鎮守府に所属する川内と、[削除済み]が自主夜戦演習中に、艦隊から逸れたと思われる軽巡ツ級に遭遇。

川内は戦闘装備を所持していなかった影響もあり、[削除済み]を殿に逃走。

戦闘詳細は不明だが、数分ほどで[削除済み]は当該鎮守府に帰還した。

3日後、砂浜に打ち上がったツ級の艤装のみが発見された。

民間人への影響を配慮し、ツ級の艤装を回収。

ほぼ完全な形で残っていたが、腕部への接合部分のみ、風化したような裂傷が見られた。近くにはその結合部分から外れたと思われる欠片が転がっていた。

 

 

_______

 

「はい黒潮、株券3枚。...ヘックショイ!」

黒潮「3枚じゃ$240,000やな。どないした?風邪か?」

「いや、誰か俺の噂してんだな、ヘックショイ!」

 

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