ラスボスが鎮守府にいるんだが倒せない   作:リバプールおじさん

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第6話

 

 

初夏の午後特有の爽やかな暑さを体いっぱいに浴びながら母港のコンクリートの上で昼寝。猫が寝てばかりなのも頷ける。生まれ変わったら猫になりたい。できれば野良猫。

 

すると誰かが近づいてくる気配がした。はて、今は誰もいないはずだが、と疑問を抱いて目を開けると加賀の顔が写り込んだ。

 

「なんだ、加賀ちゃん。もう着任式終わったのか?」

加賀「いえ、まだよ。抜け出してきただけ」

 

そういうと彼女はコンクリートの縁に腰かけ、海を見据えた。少し俯いている。

風が流れていく。遠くから遠くへ。

 

「へえ、随分と不真面目な事だね。やっぱ嫌いなの?」

加賀「ええ。やはり信用できるかどうかの問題は簡単に解決しないわ」

「随分信用してないんだな。僕よりも信用してないんだ。敵なのに」

加賀「嫌いな味方より嫌いな敵の方がまだタチが悪くないわ」

「ははっ、それもそうだ。...ココアシガレット食べる?」

加賀「いただくわ」

 

彼女にココアシガレットを二本渡してもう一度寝転がる。背中にじんわりとした日差しの温もりが感じられる。あの深海には無い、温もり。

 

「...綺麗な海だ」

 

急に口を開いたのに少し驚いたのか加賀がこちらを見てくる。

 

「加賀ちゃんはさ、田舎のネズミと都会のネズミ、どっちになりたい?」

加賀「何のことかしら?」

「イソップ寓話さ。知らない?田舎のネズミは平穏に生きれるが美味しい餌にはありつけない。都会のネズミは美味しい餌がたんまり食えるが殺される危険が高い。...君はどっちになりたい?」

 

しばしの沈黙。先に口を開いたのは僕だ。

 

「平穏な不幸せとリスキーな幸せ、どっちがいいと思う?」

加賀「...質問の意図が理解できないわ。それを聞いてどうするつもり?」

「どうもしないさ。強いて言うなら平和だからかな」

 

加賀「都会のネズミね」

「ほう。理由は?」

加賀「幸せが掴めるからね」

「それだけかい?」

加賀「ええ」

 

 

「...僕は田舎のネズミでよかった」

 

そう呟いて加賀の隣に腰掛ける。

 

「ちょっと隣失礼するよ。...田舎のネズミが都会に行ったらどうなるかわかるか?」

加賀「さあ?知らないわ。何せその話すら初めて聞いたから」

「都会のネズミと田舎のネズミは入れ替えっこするんだけど結局環境に適応できずにそれぞれの故郷に戻ってめでたしめでたし。それでおしまい。でも現実は寓話じゃ無い。田舎のネズミと都会のネズミがいるんだったら何処にも居場所の無いネズミがいると思わないかい?」

加賀「いるんでしょうね。社会には」

「僕がそれだ。居場所の無いネズミがどうなるか分かるか?」

加賀「迫害...かしら?」

「そうさ。勝手に産んで勝手に殺しにかかるんだ。リスキーな不幸せを享受する存在ってのは案外何処にでもいるさ。君たちがそれにならない様祈るよ。そろそろ着任式終わるぞ。戻っておいた方がいい」

加賀「じゃあ戻る事にするわ。あまり寝ないで」

「はいはい。...あ、そうだ。一つ言おうとしたんだけどさ」

加賀「何かしら?」

「僕さ、厳密に言うと深海棲艦じゃ無いんだよね」

加賀「......は?」

 

 

 

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