ラスボスが鎮守府にいるんだが倒せない 作:リバプールおじさん
お盆に至る直前、東京は猛暑に晒されていた。
下からはジリジリとアスファルトから熱が照り返し、上からは焦がす様な日光が降り注ぐ。
「全く無茶させるよ、僕水生なのに...」
バイトだと偽って仕事に参加させた元帥の爺さんに対して愚痴を垂らしながら、指定された公園へと向かった。
下町。この地域を表すなら確実にそれだろう。
地下水の汲み取り過剰の影響で所謂海抜0メートルになったこの土地は、2010年代からようやく再開発が進み始めたが、未だ長屋などがギッシリと詰まっているのが決して珍しくない。
そんな下町の一角にある寂れた公園。指定された住所はそこだ。
探していた人物はすぐ見つかった。
僕は彼に近づいて。
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脚の長い人だ。
初めてみたとき、そう思ってしまった。
「やあ、君が田中君かな?はじめまして。僕エンちゃんって言うんだ。これからよろしく」
そう言って自分が座っているベンチの隣に腰掛けてくる。脚を崩すとこちらにも足が伸びてくるので鬱陶しい。
「多分事前に配達した紙に配られてると思うんだけどさ。まぁ結構な機密だし、君の家上がらせてもらいたいんだけど、構わないかな?」
田中「...別にどっちでも。アンタ国の人だろ?変な事はできないだろうし上げてあげるけどさ。でも国家機密を扱う割には何で家に来るのか疑問なんだけど」
「.........キミ、本当に小三?」
そう言って呆れた様に白い髪の男は笑った。
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大抵においてこの辺の住宅はボロボロだ。築四十年なんて珍しく無い。
だが、目の前にあるその小さな一軒家は、周りとは比べ物にならないほどに朽ちている様に見えた。夏休みの健康的な喧騒も、この家には無いようだ。
「ここがキミん家かい?お邪魔させてもらうよ」
田中「靴はちゃんと脱いでよ。偉い人でも、ちゃんとしてよね」
「噛み付くねえキミ。ちゃんと脱ぐさ」
田中「お茶、いる?」
「いや要らない。お茶のみにきたわけじゃ無いからね。さっさと本題入っちゃおうよ。....君の妹さんのお話なんだけどさ」
田中「知ってるよ。連れてくんだろ、艦娘にするためにさ」
「おっ、話が早いねえ。そうそう、君の家の妹さんに適性あったんだよね。どう?妹さん預けてくれない?」
田中「勝手にしろよ」
「...怒ってるねえ」
田中「どうせ断っても連れてっちゃうんだろ。こんな所までノコノコ来ないで勝手に連れてきゃいいじゃんか。子供より国が大切だろ?」
よく口の回る子供だな、と感じた。賢い奴だとも思った。
だからこそ、ちゃんと説明しなきゃいけない。
「そりゃそうさ。子供なんて腐るほどいるに決まってるじゃんか。1人より国だ。分かるでしょ?」
田中「...じゃあ連れてきゃよかったじゃんか」
「そういう訳にもいかないんだよねえ、一応僕達国家権力だしさ。面倒な手続きしなきゃダメなんだよ。とりあえず妹さんって何処かな?まだ学校?」
田中「...友達の家に」
「じゃあちょっと待たせてもらおうかな。君ともお話ししたいし」
10分ほどして、戸が開いた。
びくり、と兄の肩が震えた。
「ただいま、お兄ちゃん。.....お兄ちゃん?」
田中「あ、ああ、お帰り睦美」
「あ、睦美ちゃんだっけ?お邪魔してるね。どうも、海軍の人なんだけど」
よく分からない、と言った調子で目の前の幼女が首を傾げる。
択捉型2番艦、松輪。
その艦娘の適応者が目の前に現れた。