ラスボスが鎮守府にいるんだが倒せない 作:リバプールおじさん
「じゃあまず簡単に説明させてもらっちゃうね。睦美ちゃんも聞く?君についてのお話なんだけどさ」
睦美「う、うん」
「OK。まずね、僕海軍から来たんだけどさ。睦美ちゃんに艦娘としての適応性が認められたんだよね」
睦美「?」
田中「つまり艦娘になれってことだよ。睦美」
睦美「ご飯は?」
「三食だすよ」
睦美「お家は?」
「艦船としての姉妹と一緒の部屋をあげる」
睦美「お金は?」
「ちゃんと出すよ」
睦美「...お兄ちゃんは?」
「...」
睦美「お兄ちゃんは?」
田中「無理だ。お前だけでいけ」
「男はなれないんだよね。艦娘。ま、海軍になれば会えるかもしれないけど...」
睦美「じゃあお兄ちゃんも連れてってよ!」
「厳しいね、君まだ小三だろ?何歳だ?」
田中「...8歳だ」
「じゃあ駄目だな。どんなに早くても後10年必要だ」
田中「それまで....睦美が幸せになる可能性は?」
そんな質問をした瞬間、その男の双眸が一瞬赤くなったような気がした。
「無え。絶対に無え。それだけは断言する」
いやに凄みのある声色だった。
だがそんなに幸せになれないのなら、断言するなら、連れて行かなければいいのに、と思った。
無意識の内に睨んでいたらしい。睦美が怯えている。
「そんな怖い顔しないでよ。ちゃんと命の保証はしてあげる。...時間も時間だな。帰るよ。明後日何か持って来るよ。よろしく」
そう言って彼は部屋から出ていく。
部屋にはには、怯えた妹と怒りを抑える兄が残った。
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そして怒りを抑えているのがここにも1人。
誰であろう、奴である。
艦娘というのはもともと資材の足し算によって生まれる。
だが今回、理論上人間と艦娘に大差のないことが判明したので、人間と資材を足し算すれば資材の負担が減るのではないか、と言う話だ。
そこで今回、適当に健康で、敵性のある人物を見繕ったらしい。それがあの田中睦美だったと言う話だ。
くだらない奴ら。心の底、そう思った。まさか、こう言うことが嫌で海から来たのに陸でもまたこんな役になるとは...。
電車に揺られて、1時間。鎮守府の最寄駅に着いた。
いつもは近い1km程の道が死ぬほど遠く感じられる。
眠い。とにかく眠たかった。
いつも夜中に寝転がっている執務室に無言で上がり込んで、体を横にする。
摩耶「お、おい。ちゃんと手洗えよ」
「洗ったよ。......なあ、あのさ」
摩耶「なんだよ。腹減ったは無しだかんな」
「そんな食い意地は無いよ。.....なんでお前ら、そこまで人を守りたいんだ」
摩耶「は?」
「守るとか、人とかさ、意味ある?」
摩耶「...。」
「今日、その艦娘になる女の子に会ってきたんだ。賢そうな子だった。...疲れた。おやすみ」
摩耶「もう寝やがった...ん?なあ、エン、お前なんだか背高くなったか?」