Hearts of Kancolle IV ~crisis Mod~   作:連絡会議

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何か不吉なものの前触れのような


カリフォルニアの赤潮

『米国、カリフォルニアにて大規模な赤潮が発生』

 

 この国の(さが)と言うべきか、何千メートルにも渡るであろう大規模な異常事態であってもまるで他人事のように――国が違うという意味では実際他人事なのだが――報道する。

 同じ太平洋の国家としてもう少し警戒心は持てないものか。溜息はつくものの私の抱く危機感も米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)と比べたら些細なものだろうし、そういう意味では私も大して変わりはしないのだろう。

 

「ひ~び~き~ちゃ~ん?」

「明石、その呼び方はやめろと」

 

 新聞を丸めて明石に叩きつける。まったくこの女は。

 普段は咎める役目を務める司令官も小型主砲の設計で三徹に突入しようかというところで同じく三徹に突入し掛けた夕張と一緒に布団に叩き込み、止めるやつがいない。

 まあ、私の担当する設計も十分暗礁に乗り上げており三徹もやむなしというところまで追いつめられているのだが。

 

 新型タービン、「小型高出力」とは簡単に言ってくれるが言うは易しの典型的なものだ。

 そもそもタービンというものは基本的に設計よりも工作機械のレベルがモノを言う世界であり、決して悪くはないがよくもない日本の技術レベルに合わせると列強の物よりも一回り劣るものができてしまう。こればっかりはしょうがないのだが「技術レベルを設計で上回れ」など無茶にもほどがある。

 まあ血税で食わしてもらっている以上やらなければならない。気は乗らないが。

 

「で、タービンできたの?」

「性能はほぼ据え置きで、整備性と信頼性を向上させたタイプだね」

「はーつまんないの」

 

 私の描いた設計図を見ながらそういえば、と明石が切り出す。黙って続きを促す。

 

米国(アメリカ)だったか英国(イギリス)だったか忘れましたけど、なんかものすごい効率が出るかもしれない理論が発表されたんですよ」

「原子力のことなら独国(ドイツ)だぞ。まあ胡散臭いことこの上ないが」

「もし本当に作れたら?」

「やけに食い下がるね……もし本当に作れたら、か」

 

 わずかな質量から膨大なエネルギーを生み出せる。実現したらエネルギー問題は一気に片付くだろう。

 だがここは軍で、そしてそんなものを研究するのはこれまた軍程度で。

 

「私なら主機よりも爆弾に使うかな」

「やっぱりです?本邦(うち)でも計画が立ち上がってるらしいですよ」

「なに?東京工廠第五設計局(ここ)からは人員を出さないよな?」

「帝大が音頭を取ってるようです。大丈夫でしょ」

 

 ただでさえ人手が足りていないのだ。ここから抜かれるなんて冗談じゃなかった。

 そこはさすがにわかっていてくれたようで助かった。

 

「……あ、ここのタービンブレード、直した方が良いですよ」

「いや、そこはあえて簡略化をしていてな」

「それなら呉が作ってるタービンブレードを使ってみてはどうです?」

 

 呉、呉海軍工廠のタービンブレードか。

 しかし、奴ら(海軍)は協力するか?……いや、させよう。させようじゃないか。

 

「明石、東京駅までの足と呉までの切符を用意するように言っておいてくれ、それと……」

「いや、それには及ばん」

「司令官、起きてたのか」

 

 目を向けると上着を脱いだ司令官の姿。今先ほど起きたところなのだろう。まだ少し眠そうだ。

 

「呉には俺が連絡を入れておく。明日の〇六○○(マルロクマルマル)に横田から飛ぶ。今は仮眠しとけ」

「司令官?」

「俺も呉に飛ぶ。技術が頭に付くとはいえ大佐だ。ある程度は楽に話を通せるだろう」

 

 司令官も一緒に呉に行く。うむ、少し楽しみだな。

 司令官と二人きり……これは『デート』というものだろう。

 ふふふ、なかなかに楽しみに

 

「て~とくぅ~……私も連れて行ってくれてもいいんですよ?キラキラ」

「こいつめ……まあちょうどいい。気分転換もかねるか。夕張にも伝えておいてくれ」

 

 ……ちっ、明石め。司令官と二人きりにはさせないということか。

 こちらを見てにやついてる様子を見るに外れてはいないらしい。いつか解体(コロ)して……いや、それはさすがに不味いか。

 

 すると、ノックの音。入れ、と司令官が声をかけると憲兵が扉を開く。

 書類袋を持って入り、提督に手渡しながら話しかける。

 

「提督殿、こちらを」

「どなたからかな」

「植村中将閣下からのものです」

「植村中将閣下?いや、確かに受け取った」

「では小官はこれにて」

「うむ、お疲れ」

 

 敬礼をして憲兵は出て行った。司令官が執務机に腰掛けながら書類に目を通す。

 一通り読み終わったのか、書類を置いて口を開いた。

 

「呉への遠征は無しだ」

 

 ……は?

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