Hearts of Kancolle IV ~crisis Mod~   作:連絡会議

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カイロの予兆

 ――英領エジプト、カイロ。

 

 海軍基地で優雅に紅茶を嗜んでいる女性がいた。

 白い海軍の衣装に身を包み、その長い金髪を風にたなびかせている。

 ひとたび戦地に赴けば32年製の新型艤装を背負い戦う王立海軍(ロイヤルネイビー)東洋艦隊のフラッグシップ(部隊長)、ネルソンである。

 

「……いや、遅いな」

 

 壁にかかっているカレンダー。補給のために立ち寄ったカイロだが、二日あれば問題無いだろうとされていたものが、既に四日は経っていた。

 一日程度の遅れであればまあいいのだが、この期に及んで半分も作業が終わっていないというのだから驚きである。

 これほどまでに物資調達が遅れたのはなぜか。

 

 

 深刻な砂漠化だ。

 現地の駐在員も進む砂漠化に頭を抱えているという。

 ……この人類生誕の地で、いったい何が起こっているのだろうか。

 

「ネルソン?What's the matter(どうしたの)?やけに顔が怖いわよ」

「ジャーヴィスか。なに、物資の補給がかなり遅れそうでな……」

「まあ察してたけど、どのくらいになりそう?」

「あと一週間は」

 

 うげ、と顔を顰めるジャーヴィス。髪にも肌にも悪いとカイロを好んでいない娘だ。

 あまり長居したくはないのだろう。海のほうが余程髪にも肌にも悪影響を及ぼすと思うのだが艤装があるから大丈夫、らしい。

 

「水でもばら撒いたらいいんじゃないの?」

「おいおい、このカイロでか?」

 

 水は豊富な方だがそれも河川の流域のみだ。

 少し離れれば砂と灼熱の太陽光が待ち構える。

 

「紅茶を淹れる水はどこから持ってくるのかね」

「あらやだ、私としたことが。じゃあコーヒーでも撒きましょうか」

「ナイスアイディアと言っておこうか」

 

 笑いながらカップを傾ける。とりあえず、アフリカの地で紅茶が栽培されていないことに安堵しておこうか。

 

 

 

 

 

 ――日本、東京

 

「さむい、寒いぞ響」

「おおすごい、雪だ……鉄道は大丈夫だろうか」

「大丈夫じゃないだろうから早く帰ろう今すぐ帰ろう」

「そうだね、私たちの宿舎に帰ろうか」

 

 外套とマフラーに身を包みまだ寒いと凍える司令官に対し私は薄手の手袋とマフラーを付けた以外は大して変わっていない。

 これは艦娘が気温の変化に対し高い耐性を持つためだ。

 では司令官が寒さに弱すぎるのかというとそれは違う。

 

 単純に寒すぎるのだ。

 気温は氷点下を数え、北海道や南樺太、千島列島では通常の経済活動が行えないほどの寒波だと聞く。

 寒さに対し艦娘の中でも突出した耐性を持つ海防艦娘が防寒着を着ても寒すぎるというほどらしい。

 そんな彼女らは陸軍の車両を使って配給活動を行っているという。いやはや感嘆するばかりだ。

 ――そのぶん下手な駆逐艦より高給らしいが。

 

「一週間前と気温が変わりすぎているね……」

「ホワイトクリスマスには二ヵ月早いぞ畜生め……」

 

 司令官を半ば引き摺るように歩くと駅はなんとかやっているようだ。

 蒸気機関車の煙突から煙が上がり続けている。

 

「横須賀行きのは……あとニ十分か」

「待合室は温かいかな……」

 

 懐炉で我慢してくれ。

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