LEGEND CARD   作:MёY

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TURN4

追っ手集団に捕まり、アカデミアの地下牢獄へと連行させられた未弥と妃奈柚。

牢獄に身柄を確保されてからも隙を見て抜け出そうと試みたものの隅々に設置された監視カメラがそれを阻止する。

結局脱出する術もないまま、身柄を拘束されてから数時間が経過していた。

既に脱出する事を諦めて釈放されるまでおとなしく待つという結論まで出していた二人だが、その二人に転機が訪れる。

 

「おい。 そこの白髪のねーちゃん」

「…なんですか」

「ここから出たいか?」

 

先ほど未弥達の身柄を確保した一人の男が話しかけた。

高身長で中々に肩幅の広い、まさに牢獄の番人とも言えるような体格をしている男。

自分らが拘束したにも関わらず出たいか否かを問いかけるとはどの口が言ってるのか、未弥は兎も角妃奈柚はそう思っているかもしれない。

 

「出たいと言えば出していただけるんですか?」

「地下牢獄とは言えここだってアカデミアの一部。デュエルで俺に勝てたら二人とも解放してやろう」

「本当ですか?」

「アカデミアはデュエルが全てを決める世界。当然ここもそのルールに従わないといけない」

 

決闘者養成校であるデュエルアカデミアはデュエルが全てを支配する。

アカデミアの傘下であるここもそれは例外ではなく、囚人が門番とのデュエルに勝利した場合は解放しなくてはならない。

しかし、ここで囚人が敗れた場合は再挑戦は出来ない。それがここのルール。

勝てば無条件で釈放、負ければデュエルによる釈放は不可能。リスクもあるがそのリターンも囚人には魅力的である。

 

大会本戦の事、レジェンドカードの事もあるのでずっとここで囚われの身と言うわけにもいかない。

未弥と妃奈柚が出す答えは一つ。

 

「わかりました。デュエルしましょう」

「未弥、負けたらダメよ?」

 

勝てば釈放。それは他の囚人の例に漏れず未弥達にとっても魅力的。

チャンスは一回だけと言う事で未弥に掛かる責任は大きい。

それでも、二人の眼に不安はなく、特にデュエルのできない妃奈柚は未弥に全てをまかせているようにも感じる。

お互いに全幅の信頼を置いているからこその表情だろう。

 

「白髪の方がデュエルするんだな? よし、なら白髪だけこっちに来てもらおうか」

 

開かれた牢獄から未弥は一人出ると、そのまま男の待つ方へと歩みを進める。

僅か数メートル先にあるデュエルリンク。

ここが釈放を掛けた牢獄デュエルの舞台となる場所。

一般的なデュエルリンクと広さなどに変わりはないが、牢獄でのデュエルと言う事もあり雰囲気はまるで違う。

この独特の雰囲気に呑まれてしまい、本来の実力を出せないまま敗れた囚人も多いと聞く。

もっとも、雰囲気に呑まれてしまうようではその程度の実力なのだろうともとれるのだが。

 

「デュエルする前にだ。これをディスクにつけてもらおうか」

 

リンクに立つ未弥へと、男からアンカーらしき物が投げられる。

 

「? …何ですかコレは」

「逃亡防止用のアンカーとでも思っておいてくれればいいさ」

 

いきなり投げられたアンカーに疑問は隠せないが、未弥は指示に従い自らのディスクにアンカーを装着した。

リスクの大きいデュエルだから劣勢になった囚人がいきなり逃亡する可能性も0ではない。

だから逃亡防止でアンカーをつけさせると言えば納得はできるだろうか。

逃亡したところで結局また牢獄へと逆戻りになるだけなのだが。

 

「自己紹介がまだだったか。俺はここの管理人の黒条だ」

「私は雪代未弥、そしてこっちの眠そうな方が椿妃奈柚です」

「眠そうな方って何よ!ちゃんと紹介してよ!」

 

牢獄から一人ツッコミを入れる妃奈柚を余所に、黒条と名乗る男と未弥はリンクで対峙した。

自身と妃奈柚の釈放を掛けたデュエルが幕を開ける。

 

『デュエル!』

 

未弥 LP8000 手札5枚

黒条 LP8000 手札5枚

 

黒条のディスクにDRAWの文字が浮かび上がると同時に、黒条の先行で始まる。

 

「先行は貰う、ドロー。アレキサンドライドラゴンを攻撃表示で召喚」

 

黒条の場に現れたのは光り輝く美しい鱗を纏いしドラゴン。

その美しい鱗は見る者を魅了させる程。

ドラゴンは一つ大きな咆哮をして見せれば、瞬時に対戦相手の未弥へとその視線を移した。

 

「さらにカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

黒条 LP8000 手札3枚 場:アレキサンドライドラゴン(Atk2000) 伏せ2枚

 

1ターン目から攻撃力2000のモンスターを召喚してきた黒条。

攻撃はできないとは言え下級モンスターで攻撃力2000は簡単に倒せる数字ではない。

攻撃は出来なくても相手の攻撃を躊躇させる楯になる。攻撃は最大の防御であるとは良く言ったものだ。

それに加えてセットされたカードは2枚。

未弥の攻撃を牽制する役割としては充分だろう。

 

「私のターンですね、ドロー。(倒せない以上、様子見が得策でしょうか) 私は手札よりシールド・ウィングを守備表示で召喚します」

 

美しい鱗を持つドラゴンとは裏腹に、未弥が召喚したのは緑色の体と大きな白い翼を持った鳥。

シールドの名に相応しいその大きな翼は自らの体を守るには十分すぎるほど。

 

「リバースカードを1枚セットしてターンを終了します」

 

未弥 LP8000 手札4枚 場:シールド・ウィング(Def900) 伏せ1枚

 

攻撃力2000のモンスターをいきなり破壊するのは難しい。

戦闘だけがモンスターを破壊する手段では無いものの、除去するカードと言うのは序盤にポンポン使いたいものでもないだろう。

倒す術がないなら無理せずに守備に徹する。それが未弥の判断だった。

 

「俺のターン、ドロー。ガード・オブ・フレムベルを守備表示で召喚し、バトルだ。 アレキサンドライドラゴンでシールド・ウィングを攻撃」

 

主の指示を聞き、アレキサンドライドラゴンは咆哮し力を込める。

口に溜まりし炎の弾丸は今すぐにでも放出されそうな勢いだ。

 

「シールド・ウィングは1ターンに二度まで戦闘破壊されませんよ」

「破壊出来なくてもダメージは与えられる。攻撃宣言時にリバースカード『龍の逆鱗』発動」

 

龍の逆鱗

永続罠

自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

リバースカードの発動と共に、アレキサンドライドラゴンの火炎弾がシールド・ウィングへと向けて放出される。

シールド・ウィングの守備力はアレキサンドライドラゴンの攻撃力を下回るものの、未弥の言うように効果により1ターンで2回まで戦闘破壊されないモンスター。

壁モンスターとしては中々に優秀なモンスターだが弱点はそのステータスの低さ。

 

――シールド・ウィングはその自慢の翼で攻撃を防ぎきる。

しかし、その攻撃はシールド・ウィングを超えて未弥自身へと襲いかかった。

 

「くっ――」

 

未弥 LP8000⇒6900

 

龍の逆鱗によってアレキサンドライドラゴンは所謂貫通効果を付与される。

本来守備表示モンスターが戦闘する場合ダメージは受けないが、貫通効果の場合、攻撃力が守備力を上回った場合に超過ダメージをプレイヤーに与えられるのだ。

戦闘破壊されないと聞けば壁モンスターとして聞こえはいいものの、未弥のシールド・ウィングのようにステータスの低いモンスターにとってはこの貫通効果は天敵となる。

 

アレキサンドライドラゴンの攻撃の流れ弾が襲いかかり、それがそのまま未弥のライフを奪う。

 

「――っ!? きゃぁぁぁぁ!」

「未弥!?」

 

ダメージを受けた瞬間、ディスクを通じて未弥の体に電流が走る。

当然普通のデュエルでは起こり得ない現象であり、当事者の未弥はその電流攻撃に悲鳴を上げ、妃奈柚は檻から未弥に呼び掛けるしかできない。

強烈な電流攻撃が終わると同時に、未弥は崩れるように地面に膝をついた。

 

「言ってなかったな。このデュエルではお前がダメージを受けるとアンカーを伝って電流が流れるようになってるんだ」

 

アンカーをつけさせたのは始めからこれが理由。

デュエル開始時に言っていたように逃亡防止も兼ねているのだろうが、本当の目的は電流攻撃だろう。

いくらデュエルが全てを決める世界とはいえ、一応囚人。囚人とただのデュエルで決着をつけるはずがない。

勝てば釈放と言う条件に踊らされてそこまで考えは及ばなかったか。

 

「受けたダメージに比例して流れる電流も強くなる。電流を恐れて受け身に回るか、ダメージを受ける前に攻めるか、それはお前次第だ」

 

地面に崩れた未弥を余所に黒条は淡々と話を続けた。

下手をすれば命すらも落としかねない危険なデュエルだが、そのリスクを背負うのは未弥サイドのみ。

この牢獄の管理人である黒条は主催する側だからそのリスクを逃れる事が出来る。

理不尽だが世の中とはそういうものだ。

美味しい話には必ず何か裏があると考えれば実に上手く出来ている。

 

「未弥、大丈夫!?」

 

自分のせいでこういう状況になり、しかもデュエルのできない自分の代わりにデュエルをしてくれている。

やはり妃奈柚も未弥が心配なのだろう、囚われの状況から頻りに呼びかけた。

 

「……大丈夫です。むしろこの方がスリルが生まれて燃えますよ」

 

妃奈柚の呼び掛けにこたえるようにフラフラと立ち上がると、軽く笑って見せた。

体に与えられたダメージは決して小さいものではないが妃奈柚に心配をかけまいと言う未弥なりの気遣いだろうか。

だが、その瞳には電撃に対する恐怖心は感じられず、この状況をどこか楽しんでいるようにも見受けられる。

この状況に飲まれるどころか楽しむ余裕すらあるというのだろうか。

 

「大体の人間は一度電流を食らえば気絶するんだがな。良いだろう、俺はこのままターンエンドだ」

 

黒条 LP8000 手札:3枚 場:アレキサンドライドラゴン(Atk2000/攻撃) ガード・オブ・フレムベル(Def2000/守備) 龍の逆鱗 伏せ1枚

 

「私のターン、ドロー (下手なモンスター展開は貫通と高い攻撃力で自分の首をしめるだけですね)」

 

自分の手札と場の状況を見ながら考える。

守備表示でモンスターを展開しても龍の逆鱗による貫通効果でダメージを受け、かといって攻撃表示で展開すればその高い攻撃力の餌食となる。

攻撃力の高いモンスターが場を制圧する力は決して小さいものではない。

 

「(しかし、このままシールド・ウィングがサンドバックにされてダメージ蓄積させられる位なら…)シールド・ウィングをリリースして神禽王アレクトールを攻撃表示でアドバンス召喚します」

 

未弥が選択したのは上級モンスターの展開。

戦闘破壊はされないとは言え貫通する現状で低守備力をさらけ出すのはライフを削られるだけと判断してだろう。

そして、未弥の場に現れるのは神々しい空気を醸し出す鷹の様な猛禽。

神禽王の名に相応しい雰囲気さえ感じられる。

 

「神禽王アレクトールでアレキサンドライドラゴンを攻撃します」

 

主の指示に従い、アレクトールはアレキサンドライドラゴンへと素早く移動し攻撃態勢に入った。

猛禽の王と名乗るだけありその動きはほれぼれするほど美しい。

だが、標的を前にしてその動きが止まった。

 

「その攻撃は通さん、トラップカード『レベルクライム・ウイルス』発動!」

「レベルクライム・ウイルス…?」

 

聞き慣れぬカード名に思わず未弥もその動きを止める。

デュエルモンスターズの世界にはウイルスカードと言う強力な効果を持ったカードがいくつか存在するが、これもそのウイルスカードの一部だろうか?

 

「俺はガード・オブ・フレムベルをリリースしてその効果を発動。お前の手札とフィールド上のレベル4以上のモンスターを破壊する。さぁ手札を見せてもらおうか」

「…わかりました」

 

レベルクライム・ウイルス

永続罠

自分フィールド上のレベル4以下の通常モンスター1体をリリースして発動する。

発動後、相手フィールド上と手札に存在するレベル4以上のモンスターを全て破壊し墓地へ送る。

又、相手のドローしたカードを全て確認しレベル4以上のモンスターを破壊する。

 

その効果によってアレクトールは破壊され、結局アレキサンドライドラゴンを破壊できずに裏目に出てしまった。

おろか手札のレベル4以上のモンスターも全て墓地に送られ、カード一枚で戦力を大幅に削られてします。

手札を見られるという事は情報の流出を意味しそれだけで大きなアドバンテージを相手に与えてしまうという事だ。

戦力を削りつつ相手の情報も仕入れる事が出来る、これをたった2枚のカード損失で出来るのだから強力だろう。

 

――未弥は静かに自身の手札を展開し黒条へと見せた。

 

「レベル4以上のランス・リンドブルムと場の神禽王アレクトールを墓地に送れ」

 

ランス・リンドブルム 手札⇒墓地 神禽王アレクトール 場⇒墓地 手札4枚⇒3枚

 

「永続的に私の戦力を削りつつピーピングも行える…。なるほど、中々厄介なカードですね。私はこのままターン終了です」

 

未弥 LP6900 手札3枚 場:モンスター無し 伏せ:1枚

 

サンドバックを警戒して新たなモンスターを展開したが結局それは裏目に終わり、相手のモンスターの数を減らすことには成功したが状況は悪化した。

まだ序盤の序盤ではあるもののライフ、場の状況から見てもここまでは未弥の劣勢。

序盤からカードパワーで未弥を上回り未弥に流れを渡さなかった。

 

場にモンスターがいない以上、未弥の頼みの綱は1枚のリバースカード。

このカードに希望を載せて黒条のターンへと移る。

 

「俺のターン。再びガード・オブ・フレムベルを守備表示で召喚」

 

レベルクライム・ウイルスのコストで墓地に送られ、モンスターの数は減ってももう一枚のガード・オブ・フレムベルが現れて守りを固める。

ここまで黒条が使ってきたモンスターは特殊な効果を持たない所謂バニラモンスターだが、効果を持たない分戦闘能力が高いモンスターも多いのが特徴であり、サポートも豊富である。

現に、ここまではそのパワーを生かして場を制圧している。

効果モンスターが主体となってきた中でも、効果がない分違う戦い方もでき運用し甲斐のあるモンスターとも言えるかもしれない。

 

「そして、アレキサンドライドラゴンでプレイヤーにダイレクト――」

「今度は通しませんよ。速攻魔法『コマンド・サイレンサー』」

 

先ほどとは違いその身を守るモンスターはおらず、この攻撃が通るとアレキサンドライドラゴンの攻撃力分のダメージをそのまま受けることになる。

だが、その指示を言い終える前に未弥は伏せていたカードを発動した。

 

コマンド・サイレンサー

速攻魔法

相手プレイヤーの攻撃宣言時に発動する事が出来る。

その攻撃宣言を無効にしバトルフェイズを終了する。

 

「コマンド・サイレンサー? ――うっ…なんだこの音は…」

「コマンド・サイレンサーは相手の攻撃宣言時、その攻撃宣言を無効にしてバトルフェイズを終了させる速攻魔法です」

 

レベルクライム・ウイルスの時に未弥が見せた様な反応を黒条も見せる。

攻撃反応型のカードだが、他のカードとの明確な違いは「攻撃宣言」を無効にする。つまりモンスターではなくプレイヤーに干渉する効果だという事だろう。

 

牢獄内に鳴り響く轟音が黒条の耳を塞がせ、その攻撃宣言を遮った。

命令が届かなければモンスターは動く事が出来ない。

耳を覆いたくなるような轟音が止まると同時にバトルフェイズの終了が宣告される。

 

「なんとかこのターンは凌いだみたいだが、防戦一方でどうするつもりだ? ターンエンド」

 

黒条 LP8000 手札3枚 場:アレキサンドライドラゴン(Atk2000/攻撃) ガード・オブ・フレムベル(Def2000/守備) 龍の逆鱗 レベルクライム・ウイルス

 

攻撃を通すことは出来なかったものの多少の余裕からか軽口も叩いてくる。

フィールド上のアドバンテージに加えて、ウイルスにより戦力的にも大きく有利だから気持ちはわからなくもない。

攻撃が通せなかった事を特に惜しむ様子も見せず、ターンを未弥に渡す。

 

「私のターン、ドローします」

「レベルクライム・ウイルスの効果でドローした確認させてもらうぞ」

 

レベルクライム・ウイルスが場に存在する限り、未弥はドローするたびにそのカードを公開しなければならず、それがレベル4以上のモンスターならそのまま墓地に送られる。

手札に加わってもそれが相手にばれているというデメリットは消す事が出来ないし、レベル4以上のモンスターなら手札も増やせないと未弥にとっては厳しい状況。

だが、未弥は平然とドローカードを晒して見せた。

 

「ドローしたカードは『マジックアーム・シールド』です」

「罠カードか。手札に加えて良いぞ」

 

ドローしたのは罠カード。

条件に引っかからないカードなので手札に加えることは出来るが、引いたカードがばれるという大きなアドバンテージの損失をどうカバーするか。

 

「(手札は全てばれてますけど時間稼ぎ位は出来るはずです)…ドラグニティ―ブラックスピアを守備表示で召喚します」

 

未弥の手札に存在する中でレベルクライム・ウイルスの影響を受けなかったモンスターであるドラグニティ―ブラックスピア。

小さな龍騎士の様なモンスターが未弥を守るように壁となったが、アレキサンドライドラゴンの守備力には及ばない。

 

「さらに、リバースカードを2枚セットしターンを終了します」

 

ステータスの低いブラックスピアと、リバースカード2枚を場に出してターンを終える。

劣勢の状況下で手札を無意味に消費するのは非常にリスキー。

恐らくこれは未弥の賭けだろう。

 

未弥 LP6900 手札1枚 場:ドラグニティ―ブラックスピア(Def1000/守備) 伏せ2枚

 

「ドロー。その頼みの綱を消し去ってやろう、サイクロン発動」

「破壊できるのは一枚だけ――私の手札を見てるなら、私がどこに何を伏せたかもわかりますよね?」

 

手札を見ているならどこに何をセットしたかもわかるはず。

効果を把握していても破壊したいカードを破壊できなければその情報戦は無意味に終わる。

今どのカードを破壊するべきか、選んだカード次第でその未来は変わるのだ。

 

「さっき引いたマジックアームはセットしてない。ならばどちらを破壊しても大して変わらないさ。俺から見て左だ」

「――ネフティスの羽吹雪。こっちで良いんですね?」

 

そのカードを墓地へ送ると同時に未弥の顔に笑みが浮かんだ。

相手を試すような物言い。

まるで、自分がこの賭けに勝った事を確信するかのような。

 

「セットされたネフティスの羽吹雪が効果によって墓地に送られた時、相手フィールド上のカードを3枚まで道連れに出来ます」

「何ぃっ!」

「レベルクライム・ウイルス、龍の逆鱗。そしてアレキサンドライドラゴンの3枚を墓地に送って貰いましょうか」

 

黒条が選択したカードは墓地に送られた時に本領を発揮するカード。

不確定要素こそあるものの相手の除去を消費させつつ、道連れに相手のカードを墓地へ送るという非常に強力な効果を持つ。

相手を揺さぶるブラフとしてはこの上ないカードだったというわけである。

 

レベルクライム・ウイルス 場⇒墓地 アレキサンドライドラゴン 場⇒墓地 龍の逆鱗 場⇒墓地

 

「貫通がくる状況で敢えてモンスターを守備表示で出し、2枚のリバースカード。何か企んでると踏んで除去したくなるのは必然です。尤も、除去を誘うのが私の企みでしたけどね」

 

展開するしかないとはいえ、貫通ダメージを食らう場面で守備力の低いモンスターを守備表示で展開した上で2枚のカードを伏せれば除去したくなる。

人間の心理の底をついての裏をかいたブラフ。

未弥にとっては厄介きわまりなかったレベルクライム・ウイルスを墓地送りに出来た事が大きいだろうか。

 

「それから、この効果で墓地に送った枚数まで私は墓地からカードを手札に加える事が出来ます」

「なんだと!?」

「私は墓地にあるコマンド・サイレンサーとランス・リンドブルムを手札に戻します」

 

未弥 手札1枚⇒3枚

 

相手のカードを除去しつつ自分は墓地からカードを補充。

まさに未弥の一発逆転の賭け。

一発逆転の賭けなだけあって未弥が得たアドバンテージは非常に大きい。

人はこの大きなアドバンテージを求めてギャンブルにはまっていくのだろうか。

 

「――俺はハウンド・ドラゴンを召喚し、ドラグニティ―ブラックスピアを攻撃する」

 

小型ながら鋭い牙を持つドラゴンが小さな龍騎士に襲いかかる。

 

ドラグニティ―ブラックスピア 場⇒破壊

 

「俺はこのままターン終了だ」

 

黒条 LP8000 手札2枚 場:ハウンド・ドラゴン(Atk1700/攻撃) ガード・オブ・フレムベル(Def2000/守備)

 

相手の除去を誘う事で不利な状況をひっくり返す事に成功した未弥。

場のカードを削りつつ自らのアドバンテージを積極的に稼ぐ。これが未弥の戦い方。

自分・相手のターンに関係なく除去や手札補充、特殊召喚なども平然と行い相手のペースを乱し、自然といつのまにか自分のペースに――。

元々未弥のデッキは安定性は低いが嵌った時の爆発力と言うのは高いデッキ。安定性が無いというのは短所だが、その短所は時に大きな長所にも変わる。

 

未弥の場のモンスターを破壊し、黒条はターンを渡した。

 

「私のターン、ドロー。厄介なカードは消えました、ここから反撃開始です」

 

―Go to The Next Turn―




~今日の最強カード~

レベルクライム・ウイルス
永続罠
自分フィールド上のレベル4以下の通常モンスター1体をリリースして発動する。
発動後、相手フィールド上と手札に存在するレベル4以上のモンスターを全て破壊し墓地へ送る。
又、相手のドローしたカードを全て確認しレベル4以上のモンスターを破壊する。

未弥「ウイルスカードの一種で、攻撃力関係なくレベル4以上のモンスターを破壊するカードです」
妃奈柚「ウイルスカードの例に漏れず、ドローカードも確認されるし発動時に手札も確認されるのよね」
未弥「他のウイルスカードと異なるのは『永続』なので場に残るという事です。これが長所でもあり短所でもあります」
妃奈柚「破壊されなければ永続的にピーピングやモンスター破壊出来るけど、永続故に破壊されやすい。そんな所ね」
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