怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 22ー

・7月11日 20:47 東京都千代田区永田町2丁目 首相官邸5階 総理執務室

 

 

桜島の大噴火を受け、岩手に出現した怪獣に関する会議から、そのまま緊急災害対策本部が設置され、閣僚たちは省庁からの情報を汲み上げ、20:30からの官房長官緊急会見へと繋げることに奔走した。

 

官房長官会見は5分で終了し、気象庁担当による会見で詳細を語ってもらうこととし、20:40から再び緊急の閣議となった。

 

「現在、鹿児島県全域で鉄道の運行を停止、また鹿児島空港は滑走路に許容量を上回る火山灰が降り積もったため、閉鎖されています。上空1万メールに達した噴煙の降下により、明日には種子島、屋久島から宮崎、熊本の各空港も、滑走路の使用が不可能となる見込みです」

 

佐間野は官僚から渡されたメモを読み上げた。何人かは交通網の破断による経済的損失を憂い、目を覆った。

 

「20:45現在、鹿児島県庁と連絡がつかない状況です。火砕流の直撃を受け、機能を果たせていないことが考えられます。市消防本部も、同様の状態です」

 

北島が続いた。いつもは冷静な彼女も、珍しく声が上擦っている。

 

「陸自の国分駐屯地から、第12普通科連隊が装甲車両で鹿児島市へ向かってますが、避難に伴う渋滞が深刻である上、火山灰が予想以上に多く、市内到達にはさらなる時間がかかると報告を受けています。また鹿屋航空基地は同じく火山灰の影響により、機能不全に陥ってます」

 

高橋が述べたところで、「防衛大臣、何も、ヘリなら低空だし滑走路を使わん。さっさと飛ばして被害状況を確認させてはどうだ」と柳農水相がダミ声を上げた。

 

「残念ながら、噴火による火山灰降下中はヘリであろうと飛行はできません。エンジンに火山灰が入り込んだ場合、噴射熱で溶解の後エンジンにからみつき、墜落の恐れがあるためです。いずれ、火山灰が落ち着く頃にはヘリを飛ばせますが、少なくとも今夜のうちは不可能でしょう」

 

高橋は威圧感ある柳に負けじと、威厳を含ませた口調だった。

 

「噴火の規模や損害はともかく、人的被害は?避難は、順調なのだろうか」

 

瀬戸は関係閣僚を見ながら訊いた。だが佐間野は天井を仰ぎ、高橋は下を向いた。

 

「残念ですが、現地の行政、消防とも連絡がつかないため、正確なことはわかりかねます。ただ、噴火の規模から考えた場合、相当数の犠牲者、あるいは怪我人が出てると思われます。また避難活動も、行政の初動を待つことなく住民による避難が始まったと考えれば、統制が為されたものとは言い難いと考えます」

 

北島は無念そうではあるが、はっきりと言った。

 

「そうか、わかった」

 

瀬戸は目をつむり、言った。米沢が瀬戸に近寄り、なにかをささやいた。

 

「閣議の途中ですが、火山学の有識者が到着したため、これより10分、有識者会議を設けます」

 

望月が宣言し、瀬戸を促した。宰相が席を外したため、各大臣たちはそれぞれ情報収集と報告事項申し送りの時間となった。

 

「ねえ、いまさら火山学者と懇談しても、正直無駄だと思わない?」

 

隣席の北島が喋りかけてきた。

 

「仕方がないさ。文科省は噴火予知のため、昨年から莫大な予算を計上してる。いざ想定外の噴火が起きたときには、最高責任者へ言い訳する時間も必要だ。状況に則してない、と言われてしまえばそれまでだがな」

 

PTA連合会から政界入りした北島とは違い、佐間野は親子三代続く政治家一家だ。一見無駄とも思える行動にも、それなりの政治力学や省庁の思惑が働くことを理解していた。だがそrでも、現況では北島の言葉が正しいだろう。

 

尾関が再びスマホを見せてきた。

 

『落ち着いたら連絡がほしい』

 

檜山からSMSが入っていた。

 

「すまない、2分時間をくれ」

 

報告に訪れた官僚に断りを入れ、佐間野は廊下に出た。檜山は3コールで電話に出た。

 

『忙しいところすまない』

 

開口一番、檜山が言った。

 

「むしろ、こちらこそだ。お前の言った通りになった」

 

『オレだって本音言えば、半信半疑さ。それより、桜島の状況はどうだ?』

 

「報道の通りだ。鹿児島の第十管区海上保安部とも連絡がつかない。というか、お前はいまどこにいるんだ?噴火は大丈夫なのか?」

 

『・・・奄美に向かう船の中だ』

 

「何だと?」

 

『場合によっては職務放棄かもしれんが、訳がある』

 

一瞬、佐間野は二の句が継げなかった。

 

「お前、今度こそ左遷では済まんぞ」

 

『覚悟はしてる。実は、あかつき号の生存者である双子の姉妹による進言なんだ。2人して著しい記憶障害を罹患していると、報告をあげているが』

 

それは、今朝報告を受けている。

 

『実は、その姉妹が言った通りの状況になっているんだ』

 

「すると、お前の言う予言者というのは、生存者であるその双子なのか」

 

『そうだ。これも信じられないかもしれないが、姉妹にはまったく別の人格が現れている。精密治療が必要かもしれないが・・・今のところ、彼女たちの言った通りになっている』

 

「オカルト雑誌にでも寄稿できそうな話だな。信じられんが、その後彼女たちはなにか予言したのか?」

 

『桜島の噴火は、火山に眠る神・・・というか、怪獣によるものだそうだ。そしてその怪獣は、すでに現れたと話している』

 

「ちょっと待て、怪獣だと?」

 

『ああ。えっと、何と言ったか・・・』

 

近くに誰かいるのだろうか、檜山は誰かに訊いている様子だった。

 

『バラナスドラゴン、あるいはバラゴンとかいうらしい。とにかく、怪獣が』

 

「ちょっと待て」と、佐間野は遮った。

 

「鹿児島とは連絡が断絶していることもあるが、怪獣が出現したとの報告は受けていない」

 

『あの噴火規模では、そうだろうな。明日にならないと、現地へ行くことはできんだろう』

 

「・・・なお確認する。そして、お前はなぜ奄美に向かってる?まさか、奄美にも怪獣がいるとか?」

 

『どうやらそうらしい。だが奄美に眠る怪獣は、少なくともオレたちに敵対する存在ではなさそうだ。そして他の怪獣を鎮める力を持っているらしい。断片的な話だが、その怪獣が復活する鍵を、双子姉妹は握っているようだ』

 

「いずれにせよ、とても閣議で話せる内容ではない。だがこれからも逐一、情報を伝えてほしい。すまないがタイムリミットだ」

 

檜山の短い返事を聞き、佐間野は電話を切った。まったくバカげた話だが、こうも言った通りになるのであれば無視するわけにはいかない。とはいえ閣議で発言できるはずもない。

 

情報は独占することに価値がある。さきほどは防衛機密に触れたことで高橋の逆鱗に触れてしまったが、佐間野自身、官邸と共有する機密を持っている。

 

現在極秘のうちに、米国籍の時価総額世界一であるIT企業、ガルファーと共同で中部日本再興計画をブチ上げているが、官邸と国交大臣の佐間野、そしてごく一部の官僚のみ知りうる計画だ。

 

予言など非科学的だが、上手く情報を握り操ることができれば、佐間野にとって今後政界を生き抜くことが容易くなるだろう。

 

執務室からは、早く報告したくてたまらなさそうな官僚が顔を覗かせている。佐間野は手を挙げ、執務室に戻った。

 

 

 

 

 

・同時刻 新潟県佐渡市両津福浦 居酒屋『まつや』

 

 

昨夜富山で発生したお化けフナムシ襲撃により、安全のため今日一日の禁漁が漁協より伝えられたため、漁師たちは朝からまつやに入り浸り、酒盛りをしていた。

 

漁に出なければ金にならないが、1日くらい朝から酒ざんまいなのも悪くない。両親から居酒屋を受け継いだ若夫婦は苦笑いしながらも、漁師たちの要請で朝から店を開けていた。

 

漁師たちの酒量は底無しで、夕方過ぎまで賑やかに酒盛りしていたが、海外から伝わった怪獣出現、そして桜島噴火のニュースが報じられると、酔いが醒めたようにテレビに夢中になった。

 

「こりゃあ、去年のゴジラとガイガンに黄金龍以来の大事だっちゃ」

 

漁師の棟梁である武蔵が揚げ出し豆腐をつつきながら、言った。

 

「あーあ、ありゃあ鹿児島もうダメだな」

 

「オレ、かあちゃんと冬に南九州旅行いくはずなんだけどなあ」

 

カウンターの漁師たちも、口々に言いながら日本酒を含む。

 

『ここで、速報です』

 

いままで鹿児島のニュースを報じていたアナウンサーが言うと、全員がテレビに注目した。

 

『アメリカ連邦危機管理庁によれば、アメリカ中西部、イエローストーン国立公園にて、小規模な噴火が相次いでいるとのことです。スポークスマンによれば、これがただちに大噴火となるかは調査中だが、予断を許さぬ状況だと・・・・・』

 

「おいおい、アメリカでも噴火だってよ」

 

「そういえば、『2012』って映画でやってたなあ。イエローストーン国立公園が噴火すると、世界滅亡するらしいっちゃ?」

 

「じゃあ、明日にでも世界の終わりが来るっちゃね?」

 

「おい若、後悔しねえよーに今晩のうちに嫁さん抱いとけ」

 

全員が爆笑し、若夫婦が苦笑いしたとき、「おーい、政二だあ」と、外から声がした。

 

「政二のヤロー、言いつけ守んねーで船出しやがって」

 

文句を言いながら武蔵が戸を開けると、思わず腰を抜かした。

 

「ま、政二、オメエそれ」

 

震える指で、政二が持っている物を指した。巨大な甲殻類のような、フナムシだった。

 

色めき立つ漁師たちだったが、「大丈夫、もう死んでる。こいつら、海いっぺぇに浮かんでやがる」と説明した。

 

「若、駐在さん呼べぇ」と、武蔵が言った。

 

「政二、オメエ顔青いぞ」

 

言われた通り、青白い顔をする政二。

 

「どうした、フナムシのバケモノにビビったか」

 

「ち、ちがう」

 

大げさに首を振る政二。

 

「海に浮かぶこいつらに気がついたとき、海が光ったんだぁ」

 

「・・・・はぁ?」

 

「海が、青く光ったんだよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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