怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 31ー

・7月12日 7:39 鹿児島県奄美大島 大川ダム公園付近

 

 

檜山が運転するセレナは国道58号線から山あいの山道に入った。舗装こそされているが片側一車線の道路はすれ違いが困難であることが予想できるほど狭く、強まる雨脚も相俟って運転する者に緊張を強いる。

 

檜山は運転に注意しつつ、伊藤姉妹、もといミラとリラ姉妹の語る話に意識を集中させていた。助手席の緑川も同じだった。特に、3日で古代文明を壊滅させたという黄金の怪獣ギドラの話題には興味を惹かれたようだった。緑川自身、ギドラがもたらした惨状を実際目にしているのだ。

 

古代に何があったのか、それが事実かはともかく、おおまかには理解できた。少なくとも、彼女たちが話す神、現在でいうところの怪獣は実際に現れ、再び人類に脅威をもたらしている。その怪獣たちでさえ、かつての人間がつくりだしたという話が事実であれば・・・檜山も緑川も人間の業の深さに暗澹たる気分が湧いてきた。

 

「昔、何があったのかはよくわかった。話を聴いた上で、いくつか質問があるのだが」

 

檜山が言うと、ミラとリラは「「どうぞ」」と声を揃えた。

 

「君たちと、そのモスラ、バトラがこの時代に蘇った理由は何だろうか?」

 

「いまの文明が、図らずともダガーラとバトラの眠りを醒まそうとしたことが、直接の原因です」

 

リラが答えた。

 

「ダガーラとバトラを封じた氷は厚く、そう簡単には崩れないはずでした。ですが、地球が歩んだ歴史の中で地殻が変わり、地表近くまで押し上げられた上、現在の文明は封じる氷そのものを文明維持の道具にしようとしています。氷を外され、蘇ったダガーラに呼応するように、バトラも目覚めました」

 

ミラが続けると、リラは一拍置いて話し始めた。

 

「バトラはモスラと異なり、本能的には他者への攻撃のみに性質を置いた存在です。モスラが在って初めて、その気性を抑制することができます。モスラがいなければ、果てしなく争いと破壊を続けることでしょう。ですので、モスラを蘇らせる必要があったのです」

 

「くそ、世界各国、貪欲にエネルギー採取合戦を繰り広げた結果がこれか」

 

歯噛みしながら、檜山は忌々しそうにつぶやいた。

 

「私も、良いかしら?」

 

緑川が訊くと、2人は頷いた。

 

「他にもいろんな怪獣が姿を現してきたのは、なぜ?」

 

「いずれも、ダガーラの復活を察知したのです」

 

「あるいは、ダガーラとバトラの波長を察知し、再び争うべく覚醒した神もいることでしょう。神々にとってダガーラは、自分たちの同族を滅ぼしたいわば仇敵であり、自分たちにとって危険な存在を排除すべく目覚めたのです。ベヒモスは、太古のモスラとの契りを守ろうとしているようです。もう一度ダガーラを封じようとしているようです」

 

「ですがダガーラにも明確な行動原理があります。自身本来の使命である、ギドラ討伐を果たそうとしてるのです」

 

「しかし皮肉にも、自身に近寄るダガーラを察知したギドラは、いまその眠りから眼覚めんとしているのです。バトラは今度こそダガーラを倒さんとするばかりでなく、ギドラが眠る地に寄らせまいと必死です。だがらこそ早くモスラも目覚め、バトラと共にダガーラを討つ必要があるのです」

 

「おい、するとギドラはダガーラの近くに眠っているのか?いったいどこ・・・」

 

そこからは訊くまでもなかった。テレビのテロップに【米国イエローストーン国立公園、噴火警戒レベル最終段階】と流れたのだ。

 

「まさか、このためにダガーラは北米に・・・?」

 

そうつぶやいた緑川は、身体からイヤな汗が滲んだ。二日酔いのためではなく、去年じかに目撃した名古屋の様子がフラッシュバックしたのだ。

 

「しかし、なぜ君たちはそのことがわかる?」

 

檜山が訊いた。

 

「私たちフツアの文明は、言葉ではなく精神を用いることで相手と対話することができました。人間だけではなく、モスラやバトラといった神々とも呼応できるのです」

 

「この時代における人類は、そうした能力は退化したようですね。最初に私たちはみなさんの精神に呼びかけたのですが、どなたともわかりあえず・・・言葉での対話を理解するのに時間がかかってしまいました」

 

そういえば、と緑川はつぶやいた。

 

「昨日初めてあなたたちと会ったとき、あたしを含め何人か空耳っぽいの聴こえたのは・・・」

 

「はい、私たちの呼びかけです」

 

「個人差でわずかながらその能力を残していた人々も、いらしたみたいです」

 

納得したように、緑川は頷いた。

 

「話は変わるが、君たちは双子の姉妹に憑依するのだったよな。なぜ、いま君たちが憑いている2人が乗った船が沈んだのだろうか?」

 

バックミラー越しに、2人の表情が曇ったのがわかった。

 

「それは、わかりません」

 

「沈んだ船の近くに、かつて沈んだフツアの文明があります。私たちはそこに眠る卵から解き放たれ、生命が絶たれようとした2人に憑依したのです。でも、なぜ2人の命が危機に陥ったのかまでは、わからないのです」

 

知りたい部分だったが、それなら仕方がない。檜山は不服ながらも頷いた。いずれ、船体を引き揚げれば何か掴めるだろう。そしてあかつき号が沈んだ海域で発見された文明は、かつて彼女たちが暮らした文明であるらしいことがわかっただけでも、大きな収穫だ。海上保安庁の仕事ではないが、文科省やオカルトマニア垂涎の話だろう。

 

「いろいろ訊いてしまい悪いが、もうひとつ、いいか。去年、日本にギドラが現れ、やはり大きな被害を残した。ゴジラと戦って海へ姿を消したが、いまはイエローストーン国立公園で地熱から力を蓄えていると考えて良いのか、そしてなぜ去年、君たちも君たちの神も目覚めなかったのだ?」

 

するとミラとリラは不可解な顔をした。何を言われているかわからない、といった表情だった。

 

「ギドラが?」

 

「ゴジラ・・・?」

 

2人は互いを見遣った。何か答えようとしたとき、テレビのワイドショーが騒がしくなった。

 

『ええーっと、ここで速報が入ったようですね?』

 

『報道フロアよりお伝えします。報道フロアの、安住さーん?』

 

『・・・報道フロアよりお伝えします。さきほど瀬戸内閣総理大臣より、九州南西海域を航行する国籍不明の潜水艦は、潜水艦ではなく巨大生物と判明、この巨大生物に対し、海上警備行動を発令、海上自衛隊並びに海上保安庁へ対応を指示したとのことです。これを受け午前8時より、望月官房長官による記者会見が行われ・・・・・新しいニュース・・・・・え、いま新しいニュースが入りました。新潟県上越市から柏崎市の日本海沿岸に、一昨日富山を襲った巨大フナムシと酷似した物体が数多く漂着した模様です。新潟県警によれば、いずれもすべて死亡しており、現在フナムシによる被害の有無を確認中とのことです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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