怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 39ー

・7月12日 13:01 東京都千代田区永田町2丁目 首相官邸地下1階危機管理センター

 

 

「日米韓合同による誘導弾攻撃は第一波、第二波とも命中。メガギラスは隠岐の島沖合の日本海に落下しました。現在、海自と海上保安庁が落下した海域の警戒・調査に当たっております。また、メガギラスの体液とおぼしき、紫色の液体が多量に浮かんでおり、メガギラスは誘導弾攻撃により相当な損傷を負ったものと推察されます」

 

高橋はメモをチラチラ見つつ、淡々と述べながら総理以下閣僚を見渡した。昨年のカマキラス東京出現時には広域停電によって機能できず、浜名湖決戦では逐次且つ散発的な攻撃しか加えられなかった戦績を考慮すると、日米韓合同とはいえ今回のメガギラス掃討作戦は自衛隊の面目躍如とも言えた。

 

「引き続き、落下したメガギラスには注意を払うとして、九州沖を航行している巨大生物に関しては?」

 

瀬戸が訊いた。高橋は背後の村田に目をやると、すかさずメモが渡された。

 

「目下、呉基地所属の潜水隊により追跡を続行中。このまま日本海流黒潮の流れに乗り、攻撃地点として三重県志摩半島沖を想定しております。なお正確な測定の結果、対象は全身の長さが113メートル、当方の潜水艦と同程度の航行能力を備えておるものと考えられます」

 

海上自衛隊創設以来、太平洋と日本海において同時に作戦を展開することは初めてであったが、日本海側のメガギラスは掃討作戦の成功によりひとまず活動は収束したものと考えられ、目下太平洋を北上する生物への警戒・攻撃が急務といえた。

 

「太平洋の怪獣は、やはりゴジラなのでしょうか?」

 

望月が訊いた。高橋は村田を見たが、正否のはっきりしない表情だった。

 

「大きさから考えてゴジラと思われる、潜水隊からはそのような報告があります。引き続き追跡を行いつつ、観測を続行します」

 

高橋も断定を避けた玉虫色の返答をする他なかった。

 

「防衛大臣、鹿児島に出現したとされる怪獣はどうなったのかね?」

 

柳が手を上げた。この男、他者の痛いところを突いてくる。

 

「残念ながら、出現の予兆が観測されません。第一、状況証拠こそ揃っておりますが、鹿児島市の混乱もあり、怪獣が出現したという根拠すら不明瞭なままです」

 

「国交省、気象庁でも、地下を移動すると仮定して、地震計などの観測強化を行っております」

 

すかさず佐間野が助け舟を出してきた。

 

「だがなあ、地震が起きたと思ったら地中からひょっこり顔を出した、そんなことになったらどうする?すぐさま対応できるのか?」

 

柳は口をすぼめて、高橋に訊いた。

 

「現状、当方の出来うる限り観測を強化する他ないと、考えます」

 

なぜ閣議の席で、野党への答弁並に言い訳がましいことを言うのだろうか、高橋は答えながら柳を睨みつけた。

 

「鹿児島の怪獣には現状での対応として、北島さん、能登半島沖で発生した海中爆発と地震・津波による被害は?」

 

空気を換えるように望月が矛先を北島に向けた。

 

「金沢測候所によれば、震源は石川県珠洲岬沖北西15キロ、地震の規模を示すマグニチュードは4.7、石川県輪島市で最大震度4を観測しました。また石川県・福井県の日本海沿岸に高さ20センチ前後の津波が押し寄せましたが、幸い被害は確認されておりません。ただ・・・・」

 

北島は言い淀み、隣の佐間野、そして控える気象庁予報課長を見遣った。

 

「発生した津波は、震源から発生したにしては不自然な広がり方をしました。金沢測候所の報告では、震源そのものが移動をしたようだ、ということです」

 

言葉を選んで慎重に発言してくれ、閣議前に佐間野は北島に念押ししていたのだが、臆することなくそう表現した。案の定首を傾げる閣僚、思わず失笑する閣僚半々だった。

 

「また海中爆発と思われる白煙ですが、海底火山に伴う噴出物などは水蒸気以外観測されず、原因は不明とのことです」

 

場の空気を引き締めるべく、佐間野が言った。

 

「メガギラスが日本海に落下したことと、何か関係があるのでは・・・」

 

氷堂が遠慮がちに言うと、柳は鼻で笑った。

 

「あんた、隠岐の島から能登半島までけっこう距離があるじゃないか」

 

「しかしですよ、メガギラスはあれほど高速で飛行できます。海中という制約があれど、かなりの速さで泳ぐことができたと考えてはどうでしょうか」

 

そんなバカな、柳を筆頭に何人かは失笑したが、北島が手を上げた。

 

「ゴジラやガイガン、黄金龍だけでなく、これほどまで多くの怪獣が日本と世界各地に出現しています。我々の常識に当てはまるはずがないことは、我が国はとっくに実証済みではありませんか」

 

数人の閣僚が北島に険しい視線を送った。

 

「生意気な・・・」

 

ボソリとつぶやいた柳を、北島は睨み返した。

 

「まあひとまず、メガギラスに攻撃が有効だったとしても、死に至った確証もありません。引き続き、こちらへも警戒を行うとして、奄美から出現した蝶型の怪獣はいかがですか?」

 

望月がいつもの穏やかな、それでいて力のある口調で訊いた。

 

「百里基地よりスクランブル発進したF15が和歌山県沖で会敵するも、その直後姿を消しました。急にレーダーの反応もなくなったそうです」

 

高橋が答えた。一同は背筋が薄ら寒くなるのを感じた。

 

「氷堂さんのご意見を、無碍にできないと思います、私も」

 

佐間野がつぶやいた。

 

「たしかに、それまで存在していたはずの物体が急に消え去るなどと、常識の範疇では語れませんからな」

 

高橋も同調したが、佐間野を見る目は険しかった。大いに疑念を含んだ視線だった。

 

ちょうど佐間野の背後がにぎやかになった。島崎予報課長が慌ててメモを渡してきた。

 

「根室の管区海上保安署からの報告です。北海道東海岸に、流氷が流れ着いたそうです」

 

全閣僚が身を乗り出した。

 

「おい、暑さのあまり蜃気楼でも見たんじゃないのか」

 

柳の野次も、佐間野の報告にかき消された。

 

「関連して、北海道沖の海水温がこの時期として過去最低を記録。北方領土国後島では、日中の最高気温が10℃とのことです」

 

 

 

 

 

 

 

・同時刻 鹿児島県奄美大島住用町 国道58号線

 

 

「そんなことできるのか?」

 

山を下り、ようやくアスファルト舗装の国道に出たところで檜山は訊いた。

 

「はい。地球の引力圏に居る限り、モスラは地球外での活動も可能です」

 

リラが答えた。

 

「バトラとダガーラの戦いは激しさを増しています。一刻でも早くバトラを助けるため、モスラは大気圏外まで高速上昇し、衛星軌道上から降下してバトラとダガーラを目指すことにしたのです」

 

捕捉するようにミラが答える流れは、既に固定化されている。

 

つけっぱなしにしているテレビでは、米国ミネソタ州にバトラとダガーラが達し、振り落とされたバランがミネアポリスに落下、市街地に甚大な被害が出たと報じている。

 

「「とはいえ」」

 

姉妹口をそろえた。

 

「いくら元気なモスラでも、大気圏を行き来するのは大きな負担です」

 

「大気圏突破による摩擦熱に2度も耐えなくてはなりません。それだけで相当量の体力を消耗してしまいます」

 

檜山は唇を噛んだ。助手席では緑川がスマホを操作している。ミラとリラの要望に応えるべく、奄美から東京への直行便を検索しているのだ。

 

「でも、このままではバトラはダガーラに負けてしまうかもしれません」

 

「ダガーラを倒すには、モスラの力が必要なのです」

 

「力が必要、って、何か秘策でもあるのか?」

 

前方に注意を払いつつ、檜山は訊いた。再び雨足が強まり、それほど交通量の多くない国道58号線が渋滞しつつあるのだ。

 

「ダガーラを倒すには、身体から発するベーレムの霧を封じるしかないんです」

 

「それができれば、モスラはバトラと協力してダガーラに立ち向かうことができます」

 

姉妹は降りしきる雨が舞う空を仰いだ。

 

「モスラ、大丈夫かな?」

 

スマホから目を離し、緑川は訊いた。

 

「「きっと大丈夫です。ただ・・・」」

 

言い淀んだ2人に、緑川と檜山は怪訝な顔をした。

 

「私たちも、モスラが語る恐るべき波動を察知しました」

 

「何なのかわからないのですが、こんな生物が存在するなんて・・・」

 

それはいったい何だ、檜山はそう訊きたかったが、2人とも正確に理解できていない様子だった。

 

雨はより強まってきた。長過ぎる信号待ちの時間に、檜山はナビの天気予報を操作した。

 

『さきほど、鹿児島県奄美地方、そして新潟県南部地方に、大雨洪水警報が発令されました。対象地域の方は、急な大雨、川の増水、土砂崩れに厳重に警戒してください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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