怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 60ー

・7月13日 11:12 東京都大田区羽田空港 羽田エクセルホテル東急 小会議室

 

 

『・・・ご覧いただいておりますのは、現在のサンフランシスコ市の様子です。いまからわずか10分ほど前、イエローストーン国立公園から出現した黄金の怪獣により、サンフランシスコ及び周辺の都市圏が壊滅状態となりました。現在、サンフランシスコ沖100キロ沖合にまで達した黄金の怪獣に対し、米軍の攻撃が行われようとしております。この怪獣は、昨年フィリピン沖から出現し日本に飛来、ゴジラと争ったことで東海地方を壊滅させた怪獣と同一の存在と見られます。現在北米から西へ向けて猛烈な暴風雨を伴いながら進行しており、飛行ルートによっては再び日本への襲来も懸念されます。ここまでは、米国に出現した怪獣のニュースでした。続いて、ゴジラ関連のニュースです。11:00現在、利根川沿に進行を続けるゴジラは群馬県前橋市に到達、進行方向と見られる利根川から5キロ圏内に避難指示、10キロ圏内には避難勧告が発令されております。またゴジラに先駆け、群馬県山間部より出現した2体の怪獣も利根川を南進しており、今後の首都圏への侵入、避難に伴う混乱が大変心配されております。なおこれを受けて瀬戸総理大臣を本部長とする官邸の緊急災害対策本部は、今後の避難活動及び、自衛隊による防衛作戦展開を決定するための閣議を始めたとのことで、望月官房長官による定例会見が・・・』

 

テレビに映し出されたサンフランシスコの光景に、一同は言葉を失っていた。特に昨年、黄金の怪獣による惨劇を直視した緑川は小刻みに身体が震えている。

 

ミラとリラはモスラと交信してるらしく、目を閉じているが深刻な表情を増している。

 

「モスラは、何か話していたか?」

 

やがて目を開いた2人に、檜山は訊いた。

 

「やはり・・・こちらにギドラが飛来することは避けられぬようです。それを察知した他の神々・・・ベヒモスに、火の神バラゴン、海の神タイタヌスも動き始めています。モスラとバトラはギドラに立ち向かいますが・・・時間稼ぎくらいにしかならないだろう、と」

 

「これほどの暴虐を伴いながら飛ぶギドラには、モスラの鱗粉もバトラの閃光も効果が見込めません。動きを止められれば、可能性はあるかもしれませんが・・・復活したダガーラもギドラに向かっているようですが、どうなるかは・・・」

 

かつて、ギドラと呼ばれる暴虐の神を討つべく造り出されたダガーラだったが、彼女たちの話ではギドラと交戦した機会はこれまでなかったようだ。

 

「さきほどからの話を総合すると、ギドラというのか?あの黄金龍が日本、それも東京へ飛来するということかね?」

 

サンフランシスコ壊滅が報じられるまで、檜山たちはミラとリラの存在、怪獣たちのことを本人たちを交えて三上らに説明していた。それを受けた三上の問いかけだった。ミラとリラは無言で頷いた。

 

「おいおい、だとすればかなりヤバイな。我々も避難・・・ってもなあ」

 

斉田は外を見て、もじゃもじゃの髪の毛をボリボリ掻いた。ゴジラ、そしてサンダとガイラの首都圏接近を受け、JAL、ANAが緊急時の政令による北日本と西日本への臨時便増便を決定したことで、羽田空港には続々と避難者が押し寄せていた。ロビーに入り切れない避難者はホテルにも入り出し、騒然とし始めている。

 

また首都圏の鉄道も、怪獣対策基本法に基づく緊急時無料開放により、JR私鉄問わず混雑は深刻さを増している。ギドラなる黄金の怪獣が現れてからはその傾向に拍車がかかっている。言わずもがな、高速・一般道の渋滞は警視庁・各県警本部の交通管制も虚しく、いたずらに伸びるばかりだった。

 

「逃げようにも、いったいどこへ、て話だよなあ」

 

心底困り果てたように口を曲げる斉田だった。傍らの秋元は、先ほどの説明をまとめ、自社のツイッターにて特ダネ級の投稿を続けている。

 

「怪獣たちは、ギドラがここへ来ることを察知してるってことなのか。だがなぜ、ギドラはここを目指すんだ?」

 

檜山が訊くと、ミラとリラは顔を曇らせた。

 

「私たちにも、はっきりとわからないのですが・・・」

 

「ギドラは、見境なく暴れ回り、すべてを破壊し尽くす行動しかとらないはずなのです。今回のように、何かを目指して向かってくるなどといった動きは、私たちもモスラもバトラも初めて察知するものです」

 

「まさか・・・」と、恐怖と過去のトラウマに苛まれていた緑川が口を開いた。

 

「去年の浜松でもそうだった。ゴジラに向かっているんじゃ・・・?」

 

「おい、何か根拠でも?」

 

斉田が訊いた。

 

「確証はないけれど・・・でも・・・」

 

緑川は偏頭痛を抱えるように、頭の片方を手で覆った。

 

「そうかもしれません・・・他の神々と異なり、ギドラもゴジラもその意思を読み取ることはできませんが、まるで互いを目指して行動してるように思えます」

 

「すると・・・ゴジラと、モスラやその他大勢の怪獣たちが、ギドラと戦うってのか、この東京で?」

 

口にした斉田自身、言いながら顔が青ざめていった。

 

「あるいは・・・それぞれが殺し合う、などということもなりかねん」

 

三上が深刻な表情で口を開いた。

 

「なんですかそれ、何の因果でここで怪獣どもがバトルロワイヤル繰り広げなくちゃいけないんですか」

 

心底うんざりとばかりに、斉田は声が上擦った。

 

檜山はスマホを取り出し、つながらないとわかっていながら佐間野へかけた。檜山のいう通りに事態が進行することもあり、閣議中でも秘書が対応するから、連絡をあげてくれと言われていたのだ。

 

 

 

 

 

・同日 11:20 東京都千代田区永田町2丁目 官邸危機管理センター

 

 

国内に複数出現した怪獣に対し、作戦展開中の相模湾における海上自衛隊を除き、自衛隊は怪獣への攻撃行動を断念、首都圏の住民避難に注力をする方針・・・。幕僚本部から上がった方針を高橋が読み上げたところ、閣僚一同が一瞬凍りついた。

 

「高橋さん、それは自衛隊が仕事を放棄したということか!」

 

真っ先に柳が金切り声を上げた。

 

「ゴジラが進行している群馬はともかく、入間と、習志野・木更津の部隊で防衛線を構築する能力は保有しているはずだ。それに富士教導団の特科高射部隊もあります。まだ打つ手はあるのではないですか?」

 

感情を荒げる柳と違い、防衛政務官を務めたこともある氷堂が声を上げた。

 

「攻撃地点さえ特定されれば、地元自治体への避難徹底を要請します。攻撃へ舵を切ることはできないんですか?」

 

北島は怒りで声と手が震えている。

 

「遺憾ながら、攻撃は現実的ではありません」

 

苦渋半分、毅然半分といった具合で高橋が答えた。

 

「国民がどうなっても良いのか!」

 

激昂する柳を、高橋は鋭く睨みつけた。

 

「第一に、比較的速度の遅いゴジラだけならともかく、ゴジラに先んじて進行する二体の怪獣を迎撃する準備が整っておりません。第二に、昨年の浜名湖決戦に於ける戦力の逐次投入という悲劇を繰り返してはならないということ。何より、いまは武力行使よりも国民保護に全力を傾けることが肝要。以上が、幕僚本部の結論であり、自衛隊を預かる身としても、当方針を推挙したいと考えます」

 

「そんな弱腰で国民保護などできるものか!」

 

「自衛隊は武力行使がすべてではない!無為無策の攻撃行動に走るよりも、少しでも国民の避難に協力することが真の国民保護ではないのですか!」

 

声を荒げ続ける柳に耐えられんとばかりに、高橋は堪忍袋から声を吐き出した。

 

「私も、防衛省方針に同意します」

 

紅潮した空気を冷ますように、佐間野は冷静に声を絞った。

 

「ゴジラが前橋、二体の怪獣は高崎にまで達したため、上越・北陸新幹線はおろか、高崎線、両毛線が全線で運行停止を余儀なくされている上、北関東・関越道も通行止めになりました。今後も進行に伴い、さらなる交通網の破綻が避けられません。自衛隊が避難活動に加わることで、少しでも迅速な避難が実施されることが最善と考えます」

 

佐間野が語るわきで北島は悔しそうに握り拳を作ったが、埼玉県にて避難停滞の報告が寄せられ、ため息をつくばかりだった。

 

「首都圏における避難状況は?」

 

瀬戸が訊いた。

 

「小嶋埼玉県知事より、県内の避難遂行率が想定の17%との報告が上がりました。大沼都知事にも報告を求めておりますが、都内の混乱は埼玉を上回っており、正確な状況すら把握困難です」

 

唇を悔しそうに噛むと、北島は答えた。

 

「群馬・埼玉からの避難者は武蔵野線、湘南新宿ラインへ誘導し、極力都内進行を避けるよう指示しております。都内においては、群馬方面を除いて放射状に避難が可能であるため、JR私鉄各線とも保有車両を最大限活用して避難行動に尽力してますが、すでに全路線がパンク以上の混雑となっており、また今後ゴジラと他の怪獣が埼玉まで達した場合、東北新幹線、宇都宮線も運行取り止めとなります。いま以上の混乱は、避けられません」

 

佐間野が答えた。ちょうど秘書がメモを持って走ってきた。檜山からのようだ。

 

それとは別に、新たなメモを受け取った北島が挙手した。

 

「ゴジラ、先んじる二体の怪獣が進行する利根川に、避難ぜず近寄る住人が多数報告されています」

 

「どういうことだね?」

 

瀬戸が眉を吊り上げた。

 

「YouTuberを名乗ってます。既にインターネット上にて、ゴジラと二体を捉えた映像が多数配信されている模様です」

 

「なんという・・・」「逮捕しろ」と、吐き捨てる閣僚。

 

「去年、ゴジラとガイガンが争う最接近映像を流したYouTuber・・・近藤悟でしたな。あれで数億も稼いだせいでしょう」

 

高橋が険しい顔をした。そこへ新たなメモが届けられた。

 

「総理、首都圏の各師団は、既に避難援助態勢を整えております。また今後の避難混乱、非常事態下における治安低下を考慮し、現行の防衛出動から治安出動への切り替えを進言します」

 

進言を受けた瀬戸は、かたわらの望月に視線を向けた。望月は黙って首を縦に振る。

 

「相模湾での作戦行動を除き、現時点をもって、対怪獣への武力行使を中断。爾後は自衛隊に対し防衛出動から治安出動を命じ、首都圏住民の避難、治安維持に全力を尽くすよう」

 

そのとき、高橋がメモを片手に顔を強張らせた。

 

「相模湾の怪獣が急速に進行、警戒網を突破し三浦半島に接近しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

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