怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 66ー

・7月13日 15:07 東京都大田区羽田空港第二ターミナル

 

 

『えー、千葉県庁危機管理室、猪瀬室長でした。お伝えしております通りさきほど14:45頃、千葉県銚子市、並びに柏市に怪獣が出現しました。銚子市に上陸した怪獣は先日ロシア・ムルマンスクにて発見された氷漬けの怪獣と思われます。また柏市に出現した怪獣は、先日大噴火を起こした鹿児島県桜島より出現したとされる4足歩行の機怪獣であるとされています。怪獣出現に伴うものか不明ですが、千葉県銚子市から成田市までの広い範囲に積雪、柏市一帯には大規模な火災が発生しております。また降雪により、成田国際空港は滑走路が閉鎖され・・・ここで、新たな情報です。以後政府の通達に従い、銚子市に上陸したマンモス型の怪獣をベヒモス、柏市に被害をもたらしている怪獣をバラゴン。また、本日神奈川県逗子市・横須賀市を襲った首長龍型の怪獣をチタノザウルス、本日群馬県より出現した怪獣がそれぞれサンダ・ガイラ。また奄美大島より現出した蝶のような怪獣をモスラ。このモスラに酷似し、ロンドンを襲撃した怪獣をバトラ。岩手県八幡平より出現したムササビ型の怪獣をバラン。また、米国西部・ハワイ州を壊滅させた黄金の怪獣をギドラと呼称します。NHKでは政府の通達に従い、以降の報道においてご覧の名称にて怪獣を呼称します。また警察庁、東京消防庁より、怪獣の首都圏蹂躙に伴い、これまでの避難行動を刷新。地下、堅牢な建物への避難を呼びかけるとして・・・・・』

 

ホテルのテレビに目を通す人が、果たしてどのくらいいただろうか。

 

羽田空港は第一、第二、第三ターミナルいずれも避難者でごった返していた。

 

羽田空港は昼間のチタノザウルス出現以降、滑走路を制限。またギドラの日本接近により、航空機を用いた避難の中止をアナウンスしていた。

 

日本航空・全日空他格安航空会社は16時を以てして羽田発の避難用臨時便を運航中止を決定していた。これほどの緊急時でも保安検査を行うため検査場からの列は施設外まで伸びており、増して航空機での避難すら間に合わない雰囲気が漂い始めると、あちらこちらで小競り合いが起きていた。

 

空港警察は取り締まりを強化し、職員に怒鳴りながら食って掛かる避難者を暴行罪で連行するという強硬手段を取っていた。故に表立って騒ぐ避難者こそ減ったが、避難者も空港職員も取り締まる側も、緊張と不安は極度に達していた。

 

「本気なのか?」

 

そんな中、羽田エクセルホテル東急を出た檜山たち一行の中で斉田が素っ頓狂な声を上げた。

 

「「はい。いざギドラと戦うこととなれば、近くにいた方がモスラへの祈りが通じるのです」」

 

さも当たり前のように答えるミラとリラだった。

 

「だからって・・・避難の動きに逆らって怪獣たちが暴れ回る間近へ行くってか!」

 

怒り半分、斉田は声を張り上げた。入口付近で避難者をさばいている警官がこちらに鋭い視線を向けてきた。

 

「おかしな話に聞こえるだろうけれど」と、緑川が言った。

 

「2人の望み通りにしたいの」

 

「正気の沙汰じゃない。何考えてんだァ!」

 

斉田と緑川のやり取りを見ていたミラとリラは、互いの顔を見遣ると頷きあった。

 

「「ご迷惑であれば・・・私たちだけでもモスラとバトラのそばに行きたいんです」」

 

「だから、そういう問題じゃねえんだって」

 

エキサイトする斉田だったが、「私が一緒に行く」と緑川が言った。そんな緑川に、斉田は奇異な視線を向けた。

 

「お前、それ業務外だろが。労災下りねえぞ?」

 

「大丈夫。ノルマ達成のために自分にもうちの会社の保険かけてるから」

 

「そういう問題じゃねえって言ってんだろが・・・」

 

弱り果てた斉田は、くしゃくしゃの髪の毛をボリボリ掻き始めた。

 

「斉田さん、彼女たちの面倒はオレがしっかり見る」

 

それまで黙っていた檜山が言った。

 

「檜山さん、あんたまで・・・何なんだよ、もう!」

 

「オレは彼女たちの保護者だしな。危険な目に遭うようなら守らなきゃいかん」

 

「あのー」と、今度は秋元が口を出してきた。

 

「私も、一緒に行きます」

 

照れたように笑みを浮かべているが、眼は真剣だった。

 

「取材にもなるし・・・それに、女の勘、なのかな?2人が言うこと、なんだかわかる気がしてならないんです」

 

あきれたような斉田に、追い打ちがかかった。

 

「こうなれば乗りかかった船だ、私もお相伴に預かろう」

 

三上が声を上げた。

 

「なあに、私も妻を亡くした身だ。誰も悲しむ人はいないし、私もその、KGI損保の生命保険に加入してるからな」

 

「ありがとうございます」と、緑川は反射的に頭を下げた。

 

「そんなわけで公ちゃん。こっちは心配しないで、避難してもらって大丈夫だからね」

 

半ば本気で緑川は言うが、斉田は頭をブルブルと振るった。

 

「ここまできたら、オレだけ逃げたらなんか卑怯者じゃないか!それに仲間外れにされたみたいで感心しないな!!」

 

一緒行けばいいんだろもう、と毒つくと、斉田は妻にLINEを打ち始めた。

 

「ねえ、やはりギドラは東京に来るの?」

 

緑川はミラとリラに訊いた。

 

「・・・なんとも、言えないです」

 

「ゴジラの攻撃で、ギドラは相当なダメージを受けたようです。もしかしたら、ここまでたどり着く前に、地上へ降りるかもしれません」

 

「そうか。それにしても、ゴジラにあれほどの能力があったとはなあ」

 

檜山は繰り返し映される、霞ケ浦上空を猛烈な勢いで流れる青い熱線の映像を見ながらつぶやいた。

 

「じゃあ、ギドラが降りた場所で、モスラとバトラは攻撃を仕掛けるってこと?」

 

緑川が訊くと、2人は頷いた。

 

「となれば・・・現時点でどこへ向かえば良いのかはわからないってことか」

 

檜山と緑川は困惑気味に顔を見合わせた。

 

「「あるいは」」と、ミラとリラが口を開いた。

 

「他の神々の中には、ギドラが舞い降りる土地を察知している者もいるのかもしれません」

 

「そうなのか?いや、もしそうなら・・・」

 

檜山はテレビに目を走らせた。柏市の定点カメラが、住宅街の先にそそり立つ炎の波を映し出している。また別のテレビでは、成田空港のカメラに収まっているベヒモスを報じていた。すっかり雪化粧を施した広大な滑走路の向こうを、悠然と進んでいる。

 

「ったく嫁のやつ、オレに何かあったら後は頼むって言ったら、生命保険で借金清算しとくときやがった」

 

苛立ち気味にぼやく斉田がスマホをしまった。

 

「でもまあ、君たちはその、モスラの巫女なんだろ?なら、この状況なんとかしなきゃいけないのもわからなくもないな」

 

斉田の背後では、空港職員に「せめてこの子だけでも乗せてあげてください!」「お願いします、どうか妹を飛行機に乗せてください」と悲痛に訴える家族の姿があった。

 

ふいに空港の滑走路が濡れ始めた。

 

「嵐がくるな・・・」

 

檜山がつぶやいた。風雨は少しずつ強まりつつあった。

 

 

 

 

 

 

15:39、航空自衛隊第一高射群によるPAC-3を用いた波状攻撃が、千葉県九十九里沖50キロにまで迫ったギドラに対し実施された。従来なら横須賀の海上自衛隊及び在日米軍第7艦隊所属のイージス艦による対空ミサイルも同時に展開していたのだが、チタノザウルスによって横須賀の艦隊制御機能は喪われていた。

 

入間、習志野、霞ケ浦に展開している高射砲隊は、東部方面総監の命により一斉に誘導弾を発射。それから2分後、太平洋上のギドラに次々と着弾した。幾度も炸裂する誘導弾だったが、ギドラは速力を落とすことなく日本本土に迫った。

 

すかさず第二波攻撃が実施され、誘導弾発射より前に出撃していた航空自衛隊百里基地所属のF15、並びに三沢基地所属のF35がギドラ迎撃に当たった。

 

サイドワインダー、そして空対空中距離誘導弾が続々発射され、ギドラを爆炎に包んだ。それらの攻撃も意に介さぬギドラだったが、飛行高度が徐々に落ち始めていた。ゴジラが放った超長距離熱線の直撃を受けたことで羽根を大きく損傷していたギドラは、地上に足をつかせまいと大きく羽根を振るいながら千葉県九十九里・茂原市に達した。

 

風速100メートル近くの暴風は家屋も山林も根こそぎなぎ倒し、また本能の破壊衝動に従ったのか、3つの口から引力光線を吐き散らしながら房総半島を縦断するギドラ。暴風と引力光線を受けたF15、F35数機が空中分解しながら落下していく。

 

ギドラはそのまま市原市から千葉市へと進み、狂ったように吐き出される引力光線が地上をなめ尽くした。そのうちの幾筋かが京葉工業地帯に炸裂し、石油コンビナート群が大爆発を繰り返しながら炎上していく。

 

その間もギドラは高度をさげていき、両脚がビル群を引きずるように破壊していく。

 

16:08 ギドラはその巨体を船橋市宮本町・JR東船橋駅付近に滑り込ませた。大地に舞い降り、3つの首で大きく吼える。一帯に豪雨が降り始め、耐えることのない雷光と雷鳴が空を轟かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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